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令和2年度答申第11号

更新日:2021年2月16日 印刷ページ表示

件名

 不動産取得税賦課決定処分についての審査請求

第1 審査会の結論

 本件審査請求には、理由がないので、行政不服審査法(平成26年法律第68号)第45条第2項の規定により審査請求を棄却すべきである。

第2 審査関係人の主張の要旨

1 審査請求人

 令和元年○○月○○日付け不動産取得税賦課決定処分(以下「本件処分」という。)の課税対象となった本件土地は、隣接する道路より低く、かつ、道路幅が狭く車の通行が極めて困難で、耕作放棄されてから○○年ほど経った土地であり、近隣地に○○が放置された土地があることなどから、住宅地としても農地としても利用価値がなく、太陽光発電でしか利用できない異常な土地である。本件土地の評価額○○円(以下「本件評価額」という。)は、実際の取得価格○○円(以下「取得価格」という。)と乖離しており、処分庁のいう適正な時価に該当しない。
 近隣の○○の太陽光発電設備の評価額を参考に試算すると、課税額は18,202円が適当である。
 さらに、審理員の審理手続は、審査請求人の主張に対し、処分庁の意見を確認しないこと等の行政不服審査法に違反したものである。また、審査請求人が、標準宅地と同程度の土地にするための造成費等を算出し、雑種地補正前の本件評価額のうち平地部分の按分額から減額する試算をすると、マイナスの額になってしまうことから、審理員意見書に記された雑種地補正が適正なものでないが、このような反論が生じることは、審理が尽くされていないからである。

2 審査庁

 審理員意見書のとおり、本件審査請求を棄却すべきである。

第3 審理員意見書の要旨

 本件評価額は、本件評価額に地価下落修正率の補正をした評価額が、翌年度である令和2年度の固定資産課税台帳の価格と同じであるから、本件土地の評価方法は、固定資産評価基準(昭和38年自治省告示第158号)に基づく適正なものと認められる。
 また、不動産取得税の課税標準となるべき不動産の価格とは、当該不動産の取得時における客観的な交換価値をいうとされるから、取得価格を基準にして本件評価額が高いという審査請求人の主張は採用することができない。
 さらに、仮に本件土地の近隣に○○があったとしても、それは本件土地の区画や形質等に変化を生じさせるものではないから、当該事情は本件評価額に影響を及ぼすものではなく、審査請求人の主張は採用することができない。

第4 調査審議の経過

当審査会は、本件諮問事件について、次のとおり、調査審議を行った。
令和2年10月28日 審査庁から諮問書及び諮問説明書を収受
令和2年11月5日 調査・審議
令和2年12月10日 調査・審議
令和3年1月22日 調査・審議

第5 審査会の判断の理由

1 審理手続について

(1)審査請求人の主張

 審査請求人が提出した主張や証拠書類について、審理員は処分庁に対し意見を確認すべきであるのにこれを行わなかったことは、違法な審理手続である。また、審査請求人の納得する説明のないまま終結された審理手続は、違法である。
 訴訟では、一方の主張に対して他方が反論しない場合、当該主張について他方が認めたことになるから、課税額は18,202円が適当であるという審査請求人の主張を処分庁が認めたことになる。

(2)審査会の判断

ア 審理手続の適正について

 行政不服審査法第41条第1項は、「審理員は、必要な審理を終えたと認めるときは、審理手続を終結するものとする。」と規定しており、審理関係人の主張が尽くされ、審査庁がすべき裁決の内容について審理員の心証が形成されたときは、「必要な審理を終えた」と認められる。
 また、民事訴訟においては、「弁論主義」が採られ、当事者が主張しない事実は裁判の基礎としてはならないとされる。一方、審査請求手続では、「職権探知主義」が採られており、最高裁昭和29年10月14日第一小法廷判決(行政不服審査法の前身である訴願法に係る裁判例)において、「訴願においては訴訟におけるが如く当事者の対立弁論により攻撃防御の方法を尽す道が開かれているわけではなく、従つて弁論主義を適用すべき限りではないから、訴願庁がその裁決をなすに当つて職権を以つてその基礎となすべき事実を探知し得べきことはもちろんであり、必ずしも訴願人の主張や事実のみを斟酌すべきものということはできない。」と判示されている。
 審査請求人の審査請求書提出後の主張は、審理員意見書に記載のとおり、処分庁の意見を聞かずとも判例等により判断できる争点であるから、審査請求人の追加の主張について処分庁の意見を聞かずに審理を終結したことについて、違法な点はない。
 また、審理員は、処分庁の弁明書、審査請求人の反論書及び両者の証拠書類の提出について、それぞれ期限を定めて求め、また、審査請求人の申立てにより口頭意見陳述を行い、行政服審査法上必須となる審理手続を行っていることが認められることから、本件審査請求の審理手続が違法なものであったとはいえない。

イ 主張の採用について

 アで述べたとおり、審理の仕方には審理員の裁量が認められていることから、審査請求人の主張についての処分庁の反論がないからといって、処分庁が審査請求人の主張を認めたことにはならない。

2 本件処分に係る法令等の規定について

(1)不動産取得税の課税標準について

 地方税法(昭和25年法律第226号。以下「法」という。)第73条の13第1項及び群馬県県税条例(昭和25年群馬県条例第32号。以下「条例」という。)第71条第1項において、「不動産取得税の課税標準は、不動産を取得した時における不動産の価格とする。」と規定しており、この価格について法第73条第5号において「適正な時価をいう」と規定している。
 価格の決定については、法第73条の21第1項及び条例第81条第1項において、「固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されている不動産については、当該価格により当該不動産に係る不動産取得税の課税標準となるべき価格を決定するものとする。但し、当該不動産について、増築、改築、損かい、地目の変換その他特別の事情がある場合において当該固定資産の価格により難いときは、この限りでない。」と規定している。
 そして、上記の固定資産の価格により難いときについて、法第73条の21第2項及び条例第81条第2項において、「固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されていない不動産又は前項但書の規定に該当する不動産については、(法)第388条第1項の固定資産評価基準によつて、当該不動産に係る不動産取得税の課税標準となるべき価格を決定するものとする。」と規定している。

3 本件処分の妥当性について

(1)本件土地の課税標準について

 本件土地は、○○における平成31年度固定資産税評価額証明書によると、平成31年度固定資産課税台帳(平成31年1月1日現在)には、現況地目に農地転用を受けた田を意味する「田(介)」と、評価額に○○円(以下「本件登録価格」という。)と登録されていた。その後、平成31年○○月○○日付けで、地目を田から雑種地に変更する地目変更登記が行われ、同月○○日に売買により審査請求人が本件土地を取得した。
 本件土地については、平成31年度の固定資産税の賦課期日である平成31年1月1日から、審査請求人が本件土地を取得するまでの間に地目の変更があったことから、法第73条の21第1項ただし書及び条例第81条第1項ただし書に規定する「増築、改築、損かい、地目の変換その他特別の事情」に該当し、本件土地の課税標準となるべき価格の決定については、本件登録価格により難いと判断できることから、法第73条の21第2項及び条例第81条第2項の規定により、処分庁が評価基準によって課税標準となるべき価格を決定したものである。

(2)本件評価額の算定方法の適法性について

 処分庁は、本件評価額の算定について、○○から通知された本件土地の評価見込額を参考に、審査請求人の取得時における本件土地の現況を確認し地目を雑種地と認定した上で、評価基準に基づいた雑種地の評価方法により決定したと主張している。
 このことに関して、当審査会が、土地の不動産取得税の課税標準となるべき価格について県の取扱いを調査したところ、法第73条の21第1項ただし書及び第2項並びに条例第81条第1項ただし書及び第2項の規定により県が自ら決定する場合には、当該土地が所在する市町村から当該土地の評価見込額を徴し、その額を県の評価額として課税標準となるべき価格を決定していること(以下「本件取扱い」という。)が確認された。
 そもそも、最高裁昭和50年12月18日第一小法廷判決によると、「法が固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されている不動産については原則として当該価格により当該不動産に係る課税標準となるべき価格を決定するものとしているのは、固定資産税の課税対象となる土地及び家屋の範囲は、(中略)不動産取得税の課税対象となる不動産と同一であり、固定資産の課税標準となる価格も不動産取得税のそれと同じく適正な時価をいうとされ、両税に用いられる固定資産の評価基準をもとに自治大臣の定める同一の固定資産評価基準であるところからみると、不動産の価格の評価の統一と徴税事務の簡素合理化をはかるためであると考えられるのであって、要するに、固定資産税の課税標準となるべき固定資産課税台帳に登録された固定資産の価格が、原則として、不動産取得税の課税標準である当該不動産の適正な時価をあらわしていると認められるからにほかならない」と判示されている。さらに、当該判例では、土地の取得時点において当該年度の固定資産課税台帳に価格が登録されていたか明らかでなかった事例であるが、「仮に(中略)右価格が登録されていなかったとすれば、前記説示のとおり法73条の21第2項に基づき都知事が自治大臣の定める固定資産評価基準によって右土地に係る不動産取得税の課税標準となるべき価格を決定すべきものであるが、この価格は、前記のような不動産取得税及び固定資産税に関する不動産の価格の評価のしくみから考えれば、のちに昭和39年度の固定資産税の課税標準となるべき価格として固定資産課税台帳に登録されるにいたった価格と同一になるべきものであるから、右登録価格を課税標準としてした本件賦課処分は違法とはいえない。」と判示されていることからすれば、本件取扱いが違法なものであるとはいえない。
 よって、本件取扱いどおりに、○○から通知された評価見込額と同額である本件評価額に基づいて行われた本件処分は、違法とはいえない。
 なお、審査請求人の種々の主張は、このことに影響を与えるものではない。

第6 結論

 以上のとおり、本件審査請求には理由がないから、「第1 審査会の結論」のとおり、答申する。

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