本文
個人情報保護審議会諮問事件第25号
1 件名
「平成○○年○○月○○日○○市○○町で発生した私の交通事故にかんし○○警察署に保管してある写真」の個人情報開示請求拒否決定に対する審査請求
2 諮問庁・処分庁
公安委員会、警察本部長
3 開示等決定内容及び理由
(1)決定内容
平成23年9月12日 個人情報開示請求拒否決定(以下「本件処分」という。)
(2)非開示理由
■条例第29条第2項第2号該当
対象となる公文書は、訴訟に関する書類であり、群馬県個人情報保護条例の適用を受けないため
4 不服申立て
(1)申立年月日
平成23年10月4日
(2)趣旨
本件処分の取消しを求める。
(3)理由
- 交通事故(人身事故)の交通事故現場見取図と実際の車のぶつけられた所が一致しないため及び条例第29条第2項該当に対して私は不服なので請求の理由とする。
- 私の交通事故の個人情報は、民事裁判での資料であり、交通事故現場見取図は開示されているのに、写真は開示できないというのは納得できない。
5 諮問年月日
平成23年12月8日
6 審議会の判断
(1)結論
群馬県警察本部長の決定は、群馬県個人情報保護条例の解釈及び運用を誤ったものではなく、妥当であると認められる。
(2)判断の理由
ア 条例第29条第2項第2号について
条例第29条第2項第2号は、個別の法令の規定により、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(以下「行政機関個人情報保護法」という。)第4章(開示、訂正及び利用停止)の規定の適用を受けないこととされる個人情報については、当該各法令との整合性の観点から、条例においても開示請求等の規定を適用除外することを定めたものである。
本号に関連して、刑事訴訟法(以下「刑訴法」という。)第53条の2第2項では、「訴訟に関する書類」については、行政機関個人情報保護法第4章の規定は適用しない旨を規定しているため、「訴訟に関する書類」は、条例に基づく開示請求等の規定の適用が除外されることとなる。
なお、刑訴法第53条の2第2項が「訴訟に関する書類」を行政機関個人情報保護法の適用除外とした趣旨は、「訴訟に関する書類」については、(ア)刑事司法手続の一環である捜査・公判の過程において作成・取得されたものであるが、捜査・公判に関する活動の適正さは、司法機関である裁判所により確保されるべきであること、(イ)刑訴法第47条により、公判開廷前における訴訟に関する書類の公開を原則として禁止する一方、被告事件終結後においては、刑訴法第53条及び刑事確定訴訟記録法(以下「刑事記録法」という。)により、一定の場合を除いて何人にも訴訟記録の閲覧を認め、その閲覧を拒否された場合の不服申立てにつき準抗告の手続によることとされるなど、これらの書類は、刑訴法第40条、第47条、第53条、第299条等及び刑事記録法により、その取扱い、開示・不開示の要件、開示手続等が自己完結的に定められていること、(ウ)これらの書類は、類型的に秘密性が高く、その大部分が個人に関する情報であるとともに、開示により犯罪捜査、公訴の維持その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれが大きいものであることによるものであるとされている。
イ 本件個人情報について
本件個人情報は、請求人を被害者とする人身交通事故の発生に伴い、交通事故の実況見分に際し、司法警察職員が撮影した事故現場や事故車両の写真である。
人身交通事故は、「交通事故の適正捜査に関する訓令」(以下「訓令」という。)において、基本書式、特例書式及び簡約特例書式等の各種捜査書類を作成することが定められており、本件事故は、請求人の受けた傷害の程度が約3週間以下であったこと等から、訓令第70条に規定する簡約特例書式を使用する事故事件に該当する。簡約特例書式は、犯罪事実認定に必要とされる捜査事項を簡記できるよう項目化された捜査書類であり、写真の添付は必要とされていないことから、検察庁へ送致されず○○警察署に保管されているものである。
ウ 条例第29条第2項第2号(適用除外)該当性について
刑訴法第53条の2第2項の「訴訟に関する書類」とは、被疑事件又は被告事件に関し作成された書類をいい、種類及び保管者を問わないと解されており、裁判所・裁判官の保管する書類に限らず、検察官、司法警察職員、弁護人等の保管している書類や不起訴となった事件の書類も含まれると一般に解されている。
これを踏まえて検討すると、本件個人情報は、人身交通事故の発生に伴い、司法警察職員が刑事司法手続の一環である捜査の過程において、検察庁に送致することを目的として作成されたものであって、結果的に○○警察署に保管されることとなったが、被疑事件及び被告事件に関して作成された書類であると認められるものであり、「訴訟に関する書類」に該当すると判断される。
したがって、処分庁が本件個人情報を刑訴法第53条の2第2項に規定する「訴訟に関する書類」に該当すると判断し、条例第29条第2項第2号の規定に基づく適用除外として本件処分を行ったことは妥当であると認められる。
エ 結論
以上のことから、「(1) 審議会の結論」のとおり判断する。
7 答申年月日
平成24年3月28日(個審第171号)