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個人情報保護審議会諮問事件第29号

更新日:2014年1月28日 印刷ページ表示

1 件名

 「平成24年10月1日以降の群馬県警本部110番通報のうち、請求者に係るもの」の個人情報部分開示決定等に対する審査請求

2 諮問庁・処分庁

 公安委員会、警察本部長

3 開示等決定年月日及び内容

 平成24年12月6日 個人情報不存在決定
 平成24年12月6日 個人情報部分開示決定
 平成25年1月17日 個人情報部分開示決定
 平成25年3月22日 個人情報部分開示決定

4 不服申立て

(1)申立年月日

 平成25年2月6日

(2)趣旨

 ア 平成24年12月6日付けの個人情報不存在決定で不存在とされた個人情報を、資料を当たり直して開示することを求める。
 イ 部分開示された○○警察署の個人情報のほかに、平成24年11月に請求人を保護しようと企てた請求人に係る個人情報の開示を求める。
 ウ 請求人自身による110番通報の記録のほかに、他の通報者から同人が通報された記録の開示を求める。

(3)理由

 ア 処分庁が不存在決定した個人情報については、○○警部はメモ書きには存在することを認めている。公文書に記載された自身の個人情報だけを請求したわけではない。公文書にないからといって不存在とするのは法解釈や事実の誤認である。
 イ 請求人には警察官がだましてまで請求人を保護しようとしたのは明白である。
 ウ 条例第13条第3号イでは、慣行として知ることができるものは他人の個人情報であっても開示する旨定めてあるが、他の通報者が誰であるかは慣行として請求人が知ることができる。

5 諮問年月日

 平成25年5月15日

6 審議会の判断

(1)結論

 群馬県警察本部長の決定は、群馬県個人情報保護条例の解釈及び運用を誤ったものではなく、妥当であると認められる。

(2)判断の理由

判断に当たっての基本的な考え方について

 条例は、第1条に規定されているとおり、個人情報の適正な取扱いの確保に関し必要な事項を定めるとともに、県の実施機関が保有する個人情報の開示、訂正及び利用停止を求める権利を明らかにすることにより、県政の適正かつ円滑な運営を図りつつ、個人の権利利益の保護及び県民に信頼される公正で民主的な県政の推進を目的として制定されたものであり、自己情報の開示請求に対する決定を行うに当たっては、原則開示の理念のもとに制度の解釈及び運用がなされなければならない。
 しかしながら、この自己情報の開示請求権も絶対無制限な権利ではなく、条例第13条各号に規定された非開示情報に該当する場合には非開示となるものである。

本件事案における争点

 当事者の主張から、本件事案における争点は、『ア 「組織としての利用を予定していない個人のメモについては、条例第12条で開示請求できるとされている公文書には該当しない」として行った処分庁の個人情報不存在決定は妥当か。
 イ 「請求人を保護した、あるいは保護しようとしたことが認識できる公文書は存在しない」として行った処分庁の個人情報部分開示決定は妥当か。
 ウ 「110番通報は通報者の秘密を守るという信頼関係に基づいて行われており、請求人の主張する他者の通報の有無について回答すべき理由はない」として行った処分庁の個人情報部分開示決定は妥当か。』の3点である。

(ア)争点アについて
 条例第12条第1項では、「何人も、実施機関に対し、公文書に記録されている自己の個人情報の開示の請求をすることができる」と規定されているが、条例第2条第4項の規定によれば、この条例における「公文書」の定義については、「実施機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書、図画及び電磁的記録であって当該実施機関の職員が組織的に用いるものとして、当該実施機関が保有しているものをいう」とされている。
 そのため、「処分庁の職員が作成したメモが仮に存在するとしても、組織としての利用を予定していない個人のメモについては、条例第12条で開示請求できるとされている公文書には該当しない」とする諮問庁の説明に、不合理な点は見出せない。
 したがって、処分庁が行った当該個人情報不存在決定は、妥当であると認められる。

(イ)争点イについて
 処分庁は、平成25年1月17日付けで行った個人情報部分開示決定とは別に、再検索の上、平成24年11月中における○○警察署の現場対応等の記録のうち請求人の個人情報と認められるものについて、改めて追加処分として平成25年3月22日付けで個人情報部分開示決定を行っているが、これらを含め、請求人を保護した、あるいは保護しようとしたことが認識できる公文書については、存在しなかったとする諮問庁の説明について、特に不自然又は不合理な点は見出せない。
 したがって、請求人が主張する個人情報が記録された公文書は存在しないとして行った処分庁の当該個人情報部分開示決定は、妥当であると認められる。

(ウ)争点ウについて
 諮問庁の説明によれば、「110番通報は、事件・事故等の当事者又は目撃者等の関係者が警察にその対応を求めるために行うものであり、通報内容に特定個人を識別する情報が含まれていたとしても、当該情報は通報者が発した通報者個人に関する情報である」とされる。
 確かにこのような場合においては、当該情報は、通報者個人に関する情報であるが、そのことによって、通報者以外の者の個人情報該当性が喪失する訳ではない。つまり、通報者個人に関する情報ではあっても、当該情報において、通報者以外の者についても個人として識別できるのであれば、当該情報は通報者の個人情報であると同時に当該通報者以外の者の個人情報でもあると観念できるものであるといえる。
 しかしながら、そのことをもって当該情報が当該通報者以外の者にも開示されるべき情報であるといえるかについては、また別の検討が必要である。
 まず、110番通報が当該通報者以外の者の個人情報である場合においては、当該情報が同時に通報者の個人情報でもある以上は、当該通報者以外の者からすれば、通報者に関する情報は第三者の個人情報である。また、当該情報は、通報者にとっては通常他人に知られたくない情報と考えられ、諮問庁の説明にもあるように、こうした情報を通報者以外の者に開示すれば、当該通報者の権利利益を害するおそれがあるともいえる。よって、当該情報は条例第13条第3号に該当すると認められる。
 次に、110番通報は、事件・事故やその端緒となる事実を見聞した者が当該事実を警察に緊急に通報するための制度であり、仮に、110番通報の内容を通報者以外の者に開示することになれば、事件や事故の当事者から通報者の生命若しくは身体等に危害が加えられ、又はその地位若しくは正常な生活が脅かされるおそれがあるのみならず、事件・事故やその端緒となる事実を見聞した者が、通報内容が開示される可能性を考慮して通報をためらうことにより、犯罪の予防、捜査に支障が及ぶおそれがあると考えられる。
 よって、110番通報の内容を通報者以外の者に開示することは、公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると実施機関が認めることにつき相当の理由があるとともに、実施機関が行う事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると考えられ、当該情報は条例第13条第5号及び第7号に該当すると認められる。
 したがって、処分庁が行った当該個人情報部分開示決定については、妥当であると認められる。

結論

 以上のことから、「(1) 結論」のとおり判断する。
 なお、請求人はその他種々主張するが、当審議会の判断を左右するものではない。

7 答申年月日

 平成26年1月29日(個審第204号)

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