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情報公開条例に基づく処分に係る審査基準

更新日:2021年4月22日 印刷ページ表示

(平成18年4月1日制定)

改正 平成18年6月20日

改正 平成19年10月1日

改正 平成19年11月1日

改正 平成20年4月1日

改正 平成21年4月1日

改正 平成22年10月28日

改正 平成25年3月26日

改正 平成29年3月29日

改正 平成30年4月1日

改正 令和2年3月25日

改正 令和3年3月31日

群馬県情報公開条例(平成12年群馬県条例第83号。以下「条例」という。)に基づき群馬県知事が行う処分に係る群馬県行政手続条例(平成7年群馬県条例第44号)第5条第1項の規定による審査基準は、次のとおりとする。

第1 開示決定等の審査基準

条例第18条の規定に基づく開示又は非開示の決定(以下「開示決定等」という。)は、以下により行う。

1 公文書の全部又は一部を開示する旨の決定(条例第18条第1項)は、次のいずれかに該当する場合に行う。

(1)開示請求に係る公文書に非開示情報が記録されていない場合

(2)開示請求に係る公文書の一部に非開示情報が記録されている場合であって、当該非開示情報が記録されている部分を容易に区分して除くことができるとき(条例第15条第1項)

ただし、この場合には、非開示情報が記録されている部分を除いて開示する。

(3)開示請求に係る公文書に非開示情報が記録されている場合であっても、公益上特に当該公文書を開示する必要があると認めるとき(条例第16条)

2 開示しない旨の決定(条例第18条第2項)について

(1)開示しない旨の決定は、次のいずれかに該当する場合に行う。

ア 開示請求に係る公文書の全部に非開示情報が記録されているため、すべて非開示とする場合

イ 開示請求に係る公文書の一部に非開示情報が記録されている場合であって、非開示情報が記録されている部分を、それ以外の部分と容易に区分して除くことができないとき

ウ 開示請求に係る公文書が存在しているか否かを答えるだけで非開示情報を開示することとなるため、開示請求を拒否する場合(条例第17条)

エ 開示請求に係る公文書を当該実施機関が保有していない場合

オ 開示請求の対象が、条例第2条第4項に規定する公文書に該当しない場合

カ 開示請求の対象が、条例の適用除外規定により、条例による開示請求の対象外である場合(条例第40条)

キ 開示請求の対象が他法令等により条例第22条本文に規定する方法と同一の方法で開示すると規定されているため、当該同一方法による開示を認めない場合(条例第25条)

ク 公文書の特定が不十分である場合等、開示請求に形式的な不備がある場合

ただし、当該不備を補正することができると認められる場合は、原則として、開示請求者に補正を求めるものとする(条例第12条第2項)。

ケ 権利濫用に関する一般法理が適用される場合

権利濫用に当たるか否かは、開示請求の態様や開示請求に応じた場合の実施機関の業務への支障及び県民一般の被る不利益等を勘案し、社会通念上妥当と認められる範囲を超えるものであるか否かを個別に判断する。実施機関の事務を混乱、停滞させることを目的とする等開示請求権の本来の目的を著しく逸脱したような開示請求は、権利の濫用に当たる。

(2)開示しない旨の決定を通知する際には、行政手続条例第8条に基づく理由の提示、行政不服審査法第57条に基づく教示(不服申立てをすることができる旨、不服申立てをすべき実施機関及び不服申立てをすることができる期間)及び行政事件訴訟法第46条に基づく教示(取消訴訟を提起することができる旨、当該訴訟の被告とすべき者及び当該訴訟の出訴期間)を書面により行うことが必要である。

 このうち、理由の提示については、単に条例上の根拠条項を示すだけでは足りず、申請者が拒否の理由を明確に認識し得るものであることが必要である。したがって、非開示情報の内容が明らかにならない限度において、どのような類型の情報が記録されているかを示すことになる。

 また、開示請求に係る公文書に複数の非開示情報が記録されている場合や一つの情報が複数の非開示情報に該当する場合には、そのそれぞれについて、理由の提示が必要である。なお、非開示情報が多く、かつ、散在しており、それぞれについて個別に理由を提示することが困難な場合には、理由の提示の趣旨が損なわれない範囲で、同種・類似の事項をまとめて理由を記載することはあり得る。

3 前2項の判断に当たっては、公文書に該当するかどうかの判断は「第2 公文書該当性に関する判断基準」に、開示請求に係る公文書に記録されている情報が非開示情報に該当するかどうかの判断は「第3 非開示情報該当性に関する判断基準」に、部分開示をすべき場合に該当するかどうかの判断は「第4 部分開示に関する判断基準」に、公益上の理由による裁量的開示を行うかどうかの判断は「第5 公益上の理由による裁量的開示に関する判断基準」に、公文書の存否を明らかにしないで開示請求を拒否すべき場合に該当するかどうかの判断は「第6 公文書の存否に関する情報に関する判断基準」に、それぞれよる。

4 次のいずれかの場合においては、口頭の決定により写しの交付を即日にできることとする(条例第18条第3項)。

(1)全部を公開(公表)することについて既に実施機関として意思決定したもので、その後事情の変更がないもの

ここで「実施機関として意思決定した」とは、群馬県事務専決規程第4条及び第7条等により条例第18条の事務に係る専決権限を有する課長(部に置く室の室長を含む。)又は所長の決定がなされている状態をいう。

(2)法令等の規定により閲覧等がなされているもの

第2 公文書該当性に関する判断基準

開示請求の対象が条例第2条第4項に規定する公文書に該当するかどうかの判断は、以下の基準により行う。

1 「実施機関の職員」とは、実施機関が職務上指揮監督権を有するすべての県職員をいい、県設立地方独立行政法人及び公社については役員を含む。

2 「職務上作成し、又は取得した」とは、職員が自己の職務の範囲内において作成し、又は取得したことをいう。作成し、又は取得したかどうかについては、文書管理台帳に記載すること、収受印があること等群馬県文書管理規程(昭和61年訓令甲第1号。)等が定める手続的な要件を必ずしも満たす必要はない。

 なお、「職務」には、法定受託事務のほか、地方自治法第180条の2又は第180条の7の規定により、実施機関又は実施機関の職員が委任を受け、又は補助執行している事務も含まれる。ただし、地方職員共済組合や地方公務員災害補償基金の事務等、実施機関の職員が法令の規定により従事しているほかの団体の事務は含まれない。

3 「文書、図画及び電子的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られた記録をいう。」とは、実施機関において現に事務又は事業において用いられている記録の形式を網羅するものである。

「文書、図画」とは、人の思想等を文字又は符号若しくは象形を用いて有体物の上に可視的状態で表現したものをいい、紙の文書のほか、図面、写真、これらを写したマイクロフィルム等が含まれる。

「電磁的記録」とは、電子計算機による情報処理の用に供されるいわゆる電子情報の記録に限られず、録音テープ、ビデオテープ等のように内容の確認に再生用の専用機器を用いる必要のある記録も含まれる。また、電子計算機による情報処理のためのプログラムについても、電磁的記録に該当するが、ディスプレイに情報を表示するため一時的にメモリに蓄積される情報、ハードディスク上に一時的に生成されるテンポラリファイル等は含まれない。

なお、電磁的記録を用紙に出力したものは、「文書」又は「図画」としてこの条例の対象となる。

4 「実施機関の職員が組織的に用いる」とは、作成又は取得に関与した職員個人段階のものではなく、組織としての共用文書の実質を備えた状態、すなわち、当該実施機関の組織において、業務上必要なものとして利用又は保存されている状態を意味する。

したがって、組織としての利用を予定していない個人のメモや、職員が自己の執務の便宜のために利用する決裁文書の写し、職員の個人的な検討段階にとどまる資料等は、これに当たらない。ただし、これらであっても、決裁・供覧文書に添付された場合には、「組織的に用いる」ものとなる。

5 「実施機関が保有しているもの」とは、作成又は取得に関与した職員個人が所持している段階のものではなく、実施機関が業務上の必要から組織として所持している状態にあるものをいう。この「所持」は物を事実上支配している状態をいい、当該文書を文庫などで保管している場合にも、当該文書を事実上支配(当該文書の作成、保存、閲覧・提供、移管・廃棄等の取扱いを判断する権限を有していること。)していれば、「所持」に該当し、保有しているということができる。

なお、一時的に文書を借用している場合など、当該文書を支配していると認められない場合には、保有しているとはいえない。

6 「官報、県報、白書、新聞、雑誌、書籍その他不特定多数の者に販売することを目的として発行されるもの」(条例第2条第4項第1号)とは、紙媒体のものに限られるものではなく、インターネット上で不特定多数の者への有償頒布を目的として発行される新聞、雑誌、書籍等も含まれる。本号に規定するものは一般に入手、利用が可能なものであることから、「公文書」から除外したものである。

7 「群馬県公文書等の管理に関する条例第2条第4項に規定する特定歴史公文書等」(条例第2条第4項第2号。)については、一般の行政事務処理上の必要性からではなく、県の諸活動や歴史的事実の記録であるという資料的価値に着目して、県政の適正かつ効率的な運営並びに現在及び将来の県民に説明する責務の全うという目的のために、群馬県公文書等の管理に関する条例(以下「公文書等管理条例」という。)の規定により文書館において適切な保存及び利用等を図る対象とされていることから、公文書等管理条例の規定に添った取扱いがなされることが適当であるため、「公文書」から除外したものである。

8「群馬県立文書館その他規則で定める県の機関において、歴史的若しくは文化的な資料又は学術研究用の資料として特別の管理がされているもの」(条例第2条第4項第2号)について

 (1)本号に掲げるものは、一般の行政事務処理上の必要性からではなく、図書館、博物館等において、歴史的若しくは文化的観点又は学術研究の観点からその資料的価値に着目して管理されており、それぞれの文書等を管理する趣旨に沿った取扱いがなされることが適当であるため、「公文書」から除外したものである。

 (2)「その他規則で定める県の機関」としては、県民センター、群馬県立近代美術館、群馬県立館林美術館、群馬県立歴史博物館、群馬県立自然史博物館、群馬県立土屋文明記念文学館、群馬県立世界遺産センター、群馬県議会図書館、群馬県立図書館、群馬県立ぐんま天文台、群馬県立ぐんま昆虫の森及び群馬県生涯学習センターが指定されている。

 (3)「特別の管理がされているもの」とは、次の方法により管理がされているものとする。

 ア 専用の場所において適切に保存されていること。

 イ 目録が作成され、かつ、当該目録が一般の閲覧に供されていること。

 ウ 次に掲げるものを除き、一般の利用が制限されていないこと。

 (ア)当該資料に条例第14条第1号から第3号までに掲げる情報が記録されていると認められる場合にあっては、当該資料(当該情報が記録されている部分に限る。)の一般の利用を制限すること。

 (イ)当該資料の全部又は一部を一定の期間公にしないことを条件に法人等又は個人から寄贈又は寄託を受けている場合にあっては、当該期間が経過するまでの間、当該資料の全部又は一部の一般の利用を制限すること。

 (ウ)当該資料の原本を利用させることにより当該原本の破損若しくはその汚損を生ずるおそれがある場合又は当該資料を保有する施設において当該原本が現に使用されている場合にあっては、当該原本の一般の利用の方法又は期間を制限すること。

 エ 利用の方法及び期間に関する定めが設けられ、かつ、当該定めが一般の閲覧に供されていること。

 オ 資料に個人情報が記載されている場合、個人情報の漏えい防止のために必要な措置を講じていること。

第3 非開示情報該当性に関する判断基準

開示請求に係る公文書に記録されている情報が非開示情報に該当するかどうかの判断は、以下の基準により行う。

なお、当該判断は、開示決定等を行う時点における状況に基づき行う。

1 法令秘情報(条例第14条第1号)についての判断基準

(1)「法令等の定めるところ…により、公にすることができないとされている情報」とは、法令等の規定で明らかに開示することができない旨が定められている情報のほか、法令等の趣旨、目的から開示をすることができないと認められる情報を含むものであり、例えば次のようなものをいう。

ア 明文の規定をもって開示が禁止されている情報

イ 目的外の使用が禁止されている情報

ウ 手続の公開が禁止されている調停等に関する情報

エ 個別法により守秘義務が課されている情報

オ その他法令等の趣旨・目的から、開示をすることができないと明らかに認められる情報

(2)「実施機関が法律上若しくはこれに基づく政令により従う義務を有する各大臣その他国の機関の指示により、公にすることができないとされている情報」とは、例えば、法定受託事務における各大臣からの指示(地方自治法第245条の7)等法的拘束力のあるものをいう。

2 個人に関する情報(条例第14条第2号)についての判断基準

(1)特定の個人を識別することができる情報等(条例第14条第2号本文)について

ア 「個人に関する情報」(以下「個人情報」という。)とは、個人(死亡した者も含む)の内心、身体、身分、地位その他個人に関する一切の事項についての事実、判断、評価等のすべての情報が含まれるものであり、個人に関連する情報全般を意味する。したがって、個人の属性、人格や私生活に関する情報に限らず、個人の知的創作物に関する情報、組織体の構成員としての個人の活動に関する情報も含まれる。

イ 個人の権利利益を十全に保護するため、特定の個人を識別することができる情報(以下、「個人識別情報」という。)を一般的に非開示とし、本号本文の判断に当たり、原則として、公務員等に関する情報と非公務員等に関する情報とを区別していない。ただし、前者については、特に非開示とすべきでない情報を本号ハにおいて除外している。

ウ 「事業を営む個人の当該事業に関する情報」は、個人情報の意味する範囲に含まれるが、当該事業に関する情報であるので、法人その他の団体に関する情報と同様の要件により非開示情報該当性を判断することが適当であることから、本号の個人情報からは除外している。

エ 「その他の記述等」としては、例えば、住所、電話番号、役職名、個人別に付された記号、番号(振込口座番号、試験の受験番号等)などが挙げられる。氏名以外の記述は、単独では必ずしも特定の個人を識別することができない場合もあるが、当該情報に含まれるいくつかの記述等が組み合わされることにより特定の個人を識別することができる場合も多いと考えられる。また、群馬県個人情報保護条例(平成12年条例第85号)第2条第1項第2号に規定する「個人識別符号」に該当する旅券番号、自動車運転免許証番号、国民健康保険等の被保険者証の記号・番号及び保険者番号等については、無条件で「その他の記述等」に該当する。

オ 「特定の個人を識別することができるもの」の範囲は、当該情報に係る個人が誰であるかを識別させることとなる氏名その他の記述の部分だけでなく、氏名その他の記述等により識別される特定の個人情報全体である。

カ 「(他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)」とは、当該情報単独では特定の個人を識別することができないが、他の情報と照合することにより識別可能となるものについても、個人識別情報として非開示情報となるという趣旨である。

 照合の対象となる「他の情報」としては、公知(周知)の情報や、図書館などの公共施設で一般に入手可能なものなど一般人が通常入手し得る情報が含まれる。また、何人も開示請求できることから、仮に当該個人の近親者、地域住民等であれば保有している又は入手可能であると通常考えられる情報も含まれる。他方、特別の調査をすれば入手し得るかもしれないような情報については、一般的には、「他の情報」に含めて考える必要はないものと考えられる。

 照合の対象となる「他の情報」の範囲については、当該個人情報の性質や内容等に応じて、個別に適切に判断することが必要となる。

キ 個人識別性の判断に当たっては、厳密には個人識別情報ではないが、当該情報の性質、集団の性格、規模等により、個人の権利利益の十全な保護を図る観点から個人識別性を認めるべき場合がある。例えば、特定の集団に属する者に関する情報を開示すると、当該集団に属する個々人に不利益を及ぼすおそれがある場合がこれに当たる。

ク 「特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお、個人の権利利益を害するおそれがあるもの」とは、実施機関が保有する個人情報の大部分は、個人識別情報であり、これを非開示とすることで、個人の権利利益の保護は基本的には十分確保されると考えられるが、中には、匿名の作文や無記名の個人の著作物のように、個人の人格と密接に関連したり、公にすれば財産権その他の個人の正当な利益を害するおそれがあると認められるものがあり得る。

(2)法令等の規定により公にされている情報等(条例第14条第2号イ)について

ア 「法令等の規定」は、何人に対しても等しく当該情報を公開することを定めている規定に限られる。公開を求める者又は公開を求める理由によっては公開を拒否する場合が定められていれば、当該情報は「公にされている情報」には該当しない。

イ 「慣行として」とは、公にすることが慣習として行われていることを意味するが、慣習法としての法規範的な根拠を要するものではなく、事実上の慣習として公にされていること又は公にすることが予定されていることで足りる。

 当該情報と同種の情報が公にされた事例があったとしても、それが個別的な事例にとどまる限り、「慣行として」には当たらない。

ウ 「公にされ」とは、当該情報が現に公衆が知り得る状態に置かれていることを意味するが、現に公知(周知)の事実であることまでは必要としない。

 過去に公にされたものであっても、時の経過により現に公衆が知り得る状態に置かれていなければ、開示決定等の時点では公にされているとはいえない場合があり得る。

エ 「公にすることが予定されている情報」とは、将来的に公にする予定(具体的に公表が予定されている場合に限らず、求めがあれば何人にも提供することを予定しているものも含む。)の下に保有されている情報をいう。ある情報と同種の情報が公にされている場合に、当該情報のみ公にしないとする合理的な理由がないなど、当該情報の性質上、通例、公にされるものも含まれる。

(3)人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報(条例第14条第2号ロ)について

ア 非開示情報該当性の判断に当たっては、開示することの利益と開示されないことの利益との調和を図ることが重要であり、個人情報についても、公にすることにより害されるおそれがある当該情報に係る個人の権利利益よりも、人の生命、健康等の保護の必要性が上回るときには、それを開示する必要性と正当性が認められることから、当該情報を開示しなければならない。現実に、人の生命、健康等に被害が発生している場合に限らず、将来これらが侵害される蓋然性が高い場合も含まれる。

 この比較衡量に当たっては、個人の権利利益には様々なものがあり、また、人の生命、健康、生活及び財産の保護についても保護すべき権利利益の程度に差があることから、個別の事案に応じた慎重な検討が必要である。

イ 人の生命、健康等の基本的な権利利益の保護以外の公益との調整は、公益上の理由による裁量的開示の規定(条例第16条)により図られる。

(4)公務員等に関する情報の取扱い(条例第14条第2号ハ)について

ア 公文書には、公務遂行の主体である公務員の職務活動の過程又は結果が記録されているものが多いが、県の諸活動を説明する責務を全うするという観点からは、これらの情報を公にする意義は大きい。一方で、公務員についても、個人としての権利利益は十分に保護する必要がある。

 この両者の要請の調和を図る観点から、どのような地位、立場にある者(「職及び氏名」)がどのように職務を遂行しているか(「職務遂行の内容」)については、たとえ特定の公務員が識別される結果になるとしても、当該公務員個人の権利利益を不当に侵害するおそれがある場合を除き、本号に規定する非開示情報には該当しない。

 なお、独立行政法人等及び地方独立行政法人の役員及び職員については、独立行政法人等及び地方独立行政法人が行政を担う主体であり、その役員及び職員については、行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成11年法律第42号)においても公務員と同様の取扱いをしていることから、本号においても公務員と同様に取り扱うこととする。また、群馬県住宅供給公社(以下「公社」という。)の役員及び職員についても、公社が広い意味での県行政を補完する業務を行っていることから、公務員と同様に取り扱うこととするものである。

イ 「公務員等」の職務遂行に係る情報が職務遂行の相手方など公務員等以外の個人情報である場合がある。このように一つの情報が複数の個人情報である場合には、各個人ごとに非開示情報該当性を判断する。すなわち、当該公務員等にとっての非開示情報該当性と他の個人にとっての非開示情報該当性が別個に検討され、いずれかが非開示情報に該当すれば、当該部分は非開示とする。

 「公務員等」とは、広く公務遂行を担任する者を含むものであり、一般職か特別職か、常勤か非常勤かを問わず、国及び地方公共団体の職員のほか、国務大臣、国会議員及び地方議会議員並びに独立行政法人等、地方独立行政法人及び公社の役員及び職員等を含む。また、公務員等であった者が当然に含まれるものではないが、公務員等であった当時の情報については、本号ハの規定は適用される。

ウ 「職務の遂行に係る情報」とは、公務員等が行政機関その他の国の機関、地方公共団体の機関、独立行政法人等、地方独立行政法人又は公社の一員として、その担任する職務を遂行する場合における当該活動についての情報を意味する。例えば、行政処分その他の公権力の行使に係る情報、職務としての会議への出席、発言その他の事実行為に関する情報がこれに含まれる。

エ 本号ハは、具体的な職務の遂行と直接の関連を有する情報のみを対象とし、例えば、公務員等の情報であっても、職員の人事管理上保有する健康情報、休暇情報等は管理される職員の個人情報として保護される必要があり、本号ハの対象となる情報ではない。

 なお、「休暇情報等」でも、特定の日に職務に従事していなかったこと、職務専念義務が免除されていたこと、欠勤していたこと等の情報は本号ハに該当する可能性がある。ただしこの場合にも、年次有給休暇、病気休暇などの休暇の種別や、職務専念義務免除の個別具体的な内容、欠勤の理由等は本号ハに該当せず非開示情報として取り扱う。

オ 「そのおそれがあると認めて実施機関が定める職にある公務員の氏名」は、職務の性質上、個人の権利利益を害するおそれが強いと実施機関が判断した職にある公務員を保護するために設けたものである。これに該当する職にある者として、警察本部告示(平成14年群馬県警察本部告示第1号)において、「警部補以下の階級にある警察官及びこれに相当する警察職員をもって充てる職」が指定されている。

(5)本人からの開示請求について

本条例の開示請求制度は、何人に対しても請求を認めていることから、本人から、本人に関する情報の開示請求があった場合にも、開示請求者が誰であるかは考慮されない。したがって、個人識別情報等(本号本文)であれば、本号イからハ又は公益上の理由による裁量的開示(第16条)に該当しない限り、非開示となる。

なお、本人情報の開示請求は、「群馬県個人情報保護条例」に基づき手続きを行うこととなる。

3 法人等又は事業を営む個人の当該事業に関する情報(条例第14条第3号)についての判断基準

(1)法人その他の団体に関する情報及び事業を営む個人の当該事業に関する情報(条例第14条第3号本文)について

ア 「法人その他の団体」には、株式会社等の会社、一般財団(社団)法人、公益財団(社団)法人、学校法人、宗教法人等の民間の法人のほか、政治団体、外国法人や権利能力なき社団等(民事訴訟法第29条)も含まれる。

 国、独立行政法人等、地方公共団体、地方独立行政法人及び公社については、その公的性格にかんがみ、法人等とは異なる開示・非開示の基準を適用すべきであるので、本号から除き、その事務又は事業に係る非開示情報は、条例第14条第6号等において規定している。

イ 「法人その他の団体に関する情報」とは、法人等の組織や事業に関する情報のほか、法人等の権利利益に関する情報など、法人等と何らかの関連性を有する情報を指す。

 なお、法人等の構成員に関する情報は、法人等に関する情報であると同時に、構成員各個人に関する情報でもある。

ウ 「事業を営む個人の当該事業に関する情報」は、事業に関する情報であるので、イに掲げた法人等に関する情報と同様の要件により、事業を営む上での正当な利益などについて非開示情報該当性を判断することが適当であることから、本号で規定しているものである。

(2)人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報(条例第14条第3号ただし書)について

当該情報を公にすることにより保護される人の生命、健康等の利益と、これを公にしないことにより保護される法人等又は事業を営む個人の権利利益とを比較衡量し、前者の利益を保護することの必要性が上回るときには、当該情報を開示しなければならない。この場合には、現実に人の生命、健康等に被害が発生している場合に限らず、将来これらが侵害される蓋然性が高い場合も含まれる。

なお、法人等又は事業を営む個人の事業活動と人の生命、健康等に対する危害などとの明確な因果関係が確認されなくても、現実に人の生命、健康等に対する被害などの発生が予想される場合もあり得る。

(3)公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれ(条例第14条第3号イ)について

ア 「権利」とは、信教の自由、集会・結社の自由、学問の自由、財産権等、法的保護に値する権利一切を指す。

イ 「競争上の地位」とは、法人等又は事業を営む個人の公正な競争関係における地位を指す。

ウ 「その他正当な利益」とは、ノウハウ、信用等、法人等又は事業を営む個人の運営上の地位を広く含むものである。

エ 権利、競争上の地位その他正当な利益を「害するおそれ」があるかどうかの判断に当たっては、法人等又は事業を営む個人には様々な種類、性格のものがあり、その権利利益にも様々なものがあるので、法人等又は事業を営む個人の性格や権利利益の内容、性質等に応じ、当該法人等又は事業を営む個人の憲法上の権利(信教の自由、学問の自由等)の保護の必要性、当該法人等又は事業を営む個人と行政との関係等を十分考慮して適切に判断する必要がある。

 なお、この「おそれ」の判断に当たっては、単なる確率的な可能性ではなく、法的保護に値する蓋然性が求められる。

オ 条例第14条第3号イに該当する可能性のある情報の会社における具体例としては、製造工程、製造方法など生産・管理のプロセスに関する情報であって、公にすることにより当該情報が競争相手に知られる蓋然性が高いなど正当な利益を害するおそれがある情報、資金調達状況など通常一般に入手できない財務に関する情報、販売計画など販売上の戦略が明らかにされ又は具体的に推測される情報で通常一般に入手できないもの、雇用方針など経営方針が明らかにされ又は具体的に推測される情報で通常一般に入手できないもの等が挙げられる。

なお、これらの例は他の法人等においても同様に考えることができるが、法人により根拠法令・適用法令が異なるため、本号イに該当する範囲もおのずと異なることに留意する必要がある。

(4)任意提供情報(条例第14条第3号ロ)について

ア 「実施機関の要請を受けて、公にしないとの条件で任意に提供されたもの」には、実施機関の要請を受けずに、法人等又は事業を営む個人から提供された情報は含まれない。ただし、実施機関の要請を受けずに法人等又は事業を営む個人から提供の申出があった情報であっても、提供に先立ち、法人等又は事業を営む個人の側から非公開の条件が提示され、実施機関がこれを受諾した上で提供を受けた場合には、含まれ得る。

イ 「要請」には、法令等に基づく報告又は提出の命令は含まれないが、実施機関が報告徴収権限を有する場合でも、当該権限を行使することなく、任意に提出を求めた場合は含まれる。

ウ 「公にしない」とは、本条例に基づく開示請求に対して開示しないことはもちろんのこと、第三者に対しても当該情報を提供しないという意味である。また、特定の行政目的以外の目的には使用しないとの条件で情報の提供を受ける場合も通常含まれる。

エ 「条件」については、実施機関の側から公にしないとの条件で情報の提供を申し入れる場合も、法人等又は事業を営む個人の側から実施機関の情報提供要請に対して公にしないとの条件を付すことを申し出る場合も含まれるが、いずれにしても双方の合意により成立するものである。また、条件を設ける方法としては黙示的なものも含まれる。

オ 「法人等又は個人における通例」とは、当該法人等又は個人の個別具体的な事情ではなく、それらが属する業界における通常の取扱いを意味し、当該法人等において公にしていないことだけでは足りない。

カ 公にしないとの条件を付すことの合理性の判断は、情報の性質に応じ、当該情報の提供当時の諸般の事情を考慮して行うものであるが、必要に応じその後の変化も考慮するものである。したがって、公にしないとの条件が付されていても、現に当該情報が公にされている場合には、本号ロには当たらない。

(5)法人等を代表する者が職務として行う行為に関する情報は、第2号の個人情報ではなく、法人等の事業に関する情報として非開示情報該当性を判断する。

4 公共の安全等に関する情報(条例第14条第4号)についての判断基準

(1)公共の安全と秩序を維持することは、国民全体の基本的な利益を擁護するために国及び地方公共団体に課せられた重要な責務であり、情報公開制度においてもこれらの利益は十分に保護する必要がある。

そこで、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある情報を非開示とし、その判断の司法審査に当たっては、実施機関の裁量を尊重することとするものである。

(2)「犯罪の予防」とは、犯罪の発生を未然に防止することをいう。なお、県民の防犯意識の啓発、防犯機材の普及等、一般に公にしても犯罪を誘発し、又は犯罪の実行を容易にするおそれがない防犯活動に関する情報については、本号に該当しない。

 「犯罪の鎮圧」とは、犯罪が正に発生しようとするのを未然に防止したり、犯罪が発生した後において、その拡大を防止し、若しくは終息させることをいう。

 「犯罪の捜査」とは、捜査機関が犯罪があると思料するときに、公訴の提起(検察官が裁判所に対し、特定の刑事事件について審判を求める意思表示をすることを内容とする訴訟行為をいう。)などのために犯人及び証拠を発見、収集又は保全することをいう。刑事訴訟法によれば、犯罪捜査の権限を有する者は、検察官、検察事務官及び司法警察職員であり、司法警察職員には、一般司法警察職員と特別司法警察職員とがある。

 「公訴の維持」とは、提起された公訴の目的を達成するため、終局判決を得るまでに検察官が行う公判廷における主張・立証、公判準備などの活動を指す。

 「刑の執行」とは、犯罪に対して科される制裁を刑といい、刑法第1編第2章に規定された死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留、科料、没収、追徴及び労役場留置の刑又は処分を具体的に実施することをいう。保護観察、勾留の執行、保護処分の執行、観護措置の執行、補導処分の執行、監置の執行についても、刑の執行に密接に関連するものでもあることから、公にすることにより保護観察等に支障を及ぼし、公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがある情報は、本号に該当する。

(3)ここでいう「公共の安全と秩序の維持」とは、犯罪の予防・鎮圧又は捜査、公訴の維持及び刑の執行に代表される刑事法の執行を中心としたものを意味する。

 刑事訴訟法以外の特別法により、臨検、捜索、差押え、告発等が規定され、犯罪の予防・捜査とも関連し、刑事司法手続に準ずるものと考えられる犯則事件の調査、独占禁止法違反の調査等や、犯罪の予防・捜査に密接に関連する破壊的団体(無差別大量殺人行為を行った団体を含む。)の規制、暴力団員による不当な行為の防止、つきまとい等の規制、強制退去手続に関する情報であって、公にすることにより、公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあるものは、本号に含まれる。

 また、公にすることにより、テロ等の人の生命、身体、財産等への不法な侵害や、特定の建造物又はシステムへの不法な侵入・破壊を招くおそれがあるなど、犯罪を誘発し又は犯罪の実行を容易にするおそれがある情報や、被疑者・被告人の留置・勾留に関する施設保安に支障を生じるおそれがある情報も、本号に含まれる。

 一方、風俗営業等の許可、伝染病予防、食品、環境、薬事等の衛生監視、建築規制、災害警備等の、一般に公にしても犯罪の予防、鎮圧等に支障が生じるおそれのない行政警察活動に関する情報は、本号に該当するものではなく、第6号等により開示・非開示が判断されることとなる。

(4)「その他の」公共の安全と秩序の維持とは「犯罪の予防」、「犯罪の鎮圧」、「捜査」、「公訴の維持」又は「刑の執行」のほか、平穏な市民生活、社会の風紀、その他公共の安全と秩序を維持するために必要な活動をいう。

(5)「支障を及ぼすおそれがある」とは、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序を維持するための諸活動が阻害される、若しくは適正に行われなくなる、又はその可能性がある場合をいう。

(6)実施機関の第一次的判断

「支障を及ぼすおそれがあると実施機関が認めることにつき相当の理由がある情報」としているのは、本号に規定する情報に該当するかどうかの判断に当たっては、実施機関の裁量を尊重するという趣旨である。すなわち、本号に規定する情報の開示・非開示の判断には、犯罪などに関する将来予測としての専門的・技術的判断を要するなどの特殊性が認められることから、司法審査の場においては、裁判所は実施機関の第一次的な判断を尊重し、その判断が合理性を持つ判断として許容される限度内のものであるか(「相当の理由」があるか)否かを審理・判断するのが適当であるとして規定したものである。

(7)具体例

対象となる公文書は、捜査機関が作成又は取得したものに限らず、開示請求を受けた実施機関自らが作成し、又は捜査機関等から取得したものも該当する場合がある。

本号に該当する情報は、例えば次のようなものをいう。

ア 犯罪の捜査等の事実又は内容に関する情報

  • 麻薬覚せい剤協力調査に関する情報

イ 犯罪捜査の手法、技術、体制等に関する情報

  • 犯罪捜査等に用いる機材等の性能に関する情報

ウ 情報提供者、被疑者、捜査員等関係者に関する情報

エ 犯罪の予防、鎮圧に関する手法、技術、体制等に関する情報(犯罪の目標となることが予想される個人の行動予定、施設の所在や警備の状況に関する情報を含む。)

  • 火薬庫台帳
  • 毒物・劇物台帳
  • 麻薬・覚せい剤・大麻の取扱業者名簿
  • 庁舎警備業務日誌

オ 被疑者・被告人の留置・勾留に関する情報

5 審議、検討等情報(条例第14条第5号)についての判断基準

(1)「審議、検討又は協議に関する情報」とは、県の機関等の事務又は事業について意思決定が行われる場合に、その決定に至るまでの過程においては、例えば、具体的な意思決定の前段階としての政策などの選択肢に関する自由討論のようなものから、一定の責任者の段階での意思統一を図るための協議や打合せ、決裁を前提とした説明や検討、審議会等又は実施機関が開催する有識者、関係法人等を交えた研究会などにおける審議や検討など、様々な審議、検討及び協議が行われており、これら各段階において行われる審議、検討又は協議に関連して作成又は取得された情報をいう。

(2)「率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ」とは、公にすることで、外部からの圧力や干渉などの影響を受けることなどにより、率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがある場合を想定したもので、適正な意思決定手続の確保を保護利益とするものである。

 例えば、「率直な意見の交換が不当に損なわれるおそれ」としては、審議、検討等の場における発言内容が公になることにより、発言者やその家族に対して危害が及ぶことが危惧され、発言を抑制してしまうおそれが考えられる。(この場合には、条例第14条第4号等の非開示情報に該当する可能性もある。)また、「意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ」としては、実施機関等の内部における政策の検討が不十分な段階での情報が公になることにより、外部からの圧力によって当該政策が不当な影響を受けるおそれが考えられる。

(3)「不当に県民の間に混乱を生じさせるおそれ」とは、未成熟な情報や事実関係の確認が不十分な情報などを公にすることにより、県民の誤解や憶測を招き、不当に県民の間に混乱を生じさせるおそれがある場合をいう。適正な意思決定を行うことそのものを保護するのではなく、情報が公にされることによる県民への不当な影響が生じないようにするという趣旨である。

(4)「特定の者に不当に利益を与え若しくは不利益を及ぼすおそれ」とは、尚早な時期に事実関係の確認が不十分な情報などを公にすることにより、投機を助長するなどして、特定の者に不当に利益を与え又は不利益を及ぼす場合を想定したもので、事務又は事業の公正な遂行を図るとともに、県民への不当な影響が生じないようにするという趣旨である。

 例えば、施設などの建設計画の検討状況に関する情報が開示されたために、土地の買い占めが行われて地価が高騰し、開示を受けた者等が不当な利益を得るおそれや、違法行為の事実関係についての調査中の情報が開示されたために、結果的に違法・不当な行為を行っていなかった者が不利益を被るおそれがないようにすることをいう。

(5)上記(2)、(3)及び(4)のおそれの「不当に」とは、審議、検討等の途中の段階の情報を公にすることの公益性を考慮してもなお、適正な意思決定の確保などへの支障が看過し得ない程度のものを意味する。予想される支障が「不当」なものかどうかの判断は、当該情報の性質に照らし、公にすることによる利益と非開示にすることの利益とを比較衡量した上でなされる。

(6)審議、検討等に関する情報については、意思決定が行われた後は、一般的には当該意思決定そのものに影響が及ぶことはなくなることから、本号の非開示情報に該当する場合は通常少なくなるものと考えられる。

 しかし、当該意思決定が政策決定の一部の構成要素であったり、当該意思決定を前提として次の意思決定が行われるなど審議、検討等の過程が重層的、連続的な場合もあり、このような場合には、意思決定後であっても、政策全体の意思決定又は他の意思決定に関して本号に該当するかどうかの検討が行われるものであることに注意が必要である。

 また、審議、検討等が終了し意思決定が行われた後であっても、当該審議、検討等に関する情報が公になると、県民の間に混乱を生じさせたり、将来予定されている同種の審議、検討等に係る意思決定に不当な影響を与えるおそれがある場合などがあれば、本号に該当する。

 なお、専門的な検討を経た調査データ等の客観的、科学的事実又はこれに基づく分析等を記録したものについては、審議、検討等に関する情報であっても、意思決定が行われた後は本号に該当する可能性が低いものと考えられる。

6 事務又は事業等に関する情報(条例第14条6号)についての判断基準

(1)「公にすることにより、次に掲げるおそれその他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」(条例第14条第6号本文)について

ア 「次に掲げるおそれ」としてイからホまで掲げたものは、県の機関等に共通して見られる事務又は事業に関する情報であって、その性質上、公にすることによりその適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると考えられる典型的なものである。これらの情報のほかにも、同種のものが反復されるような性質の事務又は事業に関する情報であって、ある個別の事務又は事業に関する情報を開示すると、将来の同種の事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるものなど、「その他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれ」のある情報はあり得る。

イ 「当該事務又は事業の性質上」とは、適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるかどうかを判断するに当たっては、当該事務又は事業の本質的な性格、具体的には当該事務又は事業の目的、その目的達成のための手法などに照らして行うという趣旨である。

ウ 「適正な遂行に支障を及ぼすおそれ」については、実施機関に広範な裁量権限を与える趣旨ではなく、各規定の要件の該当性を客観的に判断する必要がある。また、事務又は事業の根拠となる規定又はその趣旨に照らして公益的な開示の必要性などの種々の利益を考慮した上での「適正な遂行」といえるものであることが求められる。

 「支障」の程度は名目的なものでは足りず実質的なものが要求され、「おそれ」の程度も単なる確率的な可能性ではなく、法的保護に値する蓋然性が要求される。

(2)「監査、検査、取締り、試験又は租税の賦課若しくは徴収に係る事務に関し、正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為を容易にし、若しくはその発見を困難にするおそれ」(条例第14条第6号イ)について

ア 「監査」とは、主として監察的見地から、事務又は事業の執行又は財産の状況の正否を調べることをいう。

 「検査」とは、法令等の執行確保、会計経理の適正確保、物資の規格・等級の証明等のために帳簿書類その他の物件等を調べることをいう。

 「取締り」とは、行政上の目的による一定の行為の禁止又は制限について適法又は適正な状態を確保することをいう。

 「試験」とは、人の知識、能力等又は物の性能等を試すことをいう。

 「租税」には、国税、地方税がある。「賦課」とは、公租公課を特定の人に割り当てて負担させることをいい、「徴収」とは、租税その他の収入金を取り立てることをいう。

 上記の監査等は、いずれも事実を正確に把握し、その事実に基づいて評価又は判断を加えた上で、一定の決定を伴うことがある事務である。

イ これらの事務に関する情報の中には、例えば、監査等の対象、実施時期、調査事項等の詳細な情報や試験問題などのように、事前に公にすれば、適正かつ公正な評価や判断の前提となる事実の把握が困難となったり、行政客体における法令違反行為又は法令違反に至らないまでも妥当性を欠く行為を助長したり、巧妙に行うことにより隠蔽を容易にしたりするおそれがあるものがあり、このような情報については、非開示とする。また、事後であっても、例えば、違反事例等の詳細についてこれを公にすると他の行政客体に法規制を免れる方法を示唆するようなものは該当する。

(3)「契約、交渉又は争訟に係る事務に関し、県、国、独立行政法人等、他の地方公共団体、地方独立行政法人又は公社の財産上の利益又は当事者としての地位を不当に害するおそれ」(条例第14条第6号ロ)について

ア 「契約」とは、相手方との意思表示の合致により法律行為を成立させることをいう。

「交渉」とは、当事者が、対等の立場において相互の利害関係事項に関し一定の結論を得るために協議、調整などの折衝を行うことをいう。

「争訟」とは、訴えを起こして争うことをいい、訴訟、行政不服審査法に基づく不服申立て、その他の法令に基づく不服申立てがある。

イ 県の機関等が一方の当事者となる上記の契約等においては、自己の意思により又は訴訟手続上、相手方と対等な立場で遂行する必要があり、当事者としての利益を保護する必要がある。

 これらの契約等に関する情報の中には、例えば、入札予定価格等を事前に公にすることにより、公正な競争により形成されるべき適正な額での契約が困難になり財産上の利益が損なわれるおそれや、交渉や争訟等の対処方針等を公にすることにより、当事者として認められるべき地位を不当に害するおそれがあるものがあり、このような情報については、非開示とする。

(4)調査研究に係る事務に関し、その公正かつ能率的な遂行を不当に阻害するおそれ」(条例第14条第6号ハ)について

ア 県の機関等が行う調査研究(ある事柄を調べ、真理を探究すること)の成果については、社会、県民等にあまねく還元することが原則であるが、成果を上げるためには、従事する職員がその発想、創意工夫等を最大限に発揮できるようにすることも重要である。

イ 調査研究に係る事務に関する情報の中には、例えば、【1】知的所有権に関する情報や調査研究の途中段階の情報などで、一定の期日以前に公にすることにより成果を適正に広く県民に提供する目的を損ね、特定の者に不当な利益や不利益を及ぼすおそれがある場合、【2】試行錯誤の段階の情報で、公にすることにより、自由な発想、創意工夫や研究意欲が不当に妨げられ、減退するなど、能率的な遂行を不当に阻害するおそれがある場合があり、このような情報は非開示とする。

(5)「人事管理に係る事務に関し、公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれ」(条例第14条第6号ニ)について

県の機関等が行う人事管理(職員の任免、懲戒、給与、研修その他職員の身分や能力等の管理に関すること)に係る事務については、当該機関の組織としての維持の観点から行われる一定の範囲で、当該組織の独自性を有するものである。

人事管理に係る事務に関する情報の中には、例えば、勤務評価や人事異動、昇格等の人事構想等を公にすることにより、公正かつ円滑な人事の確保が困難になるおそれがあるものがあり、このような情報は非開示とする。

(6)「県、国若しくは他の地方公共団体が経営する企業、独立行政法人等、地方独立行政法人又は公社に係る事業に関し、その企業経営上の正当な利益を害するおそれ」(条例第14条第6号ホ)について

 県、国若しくは他の地方公共団体が経営する企業(地方公営企業法第2条の適用を受ける企業及び特定独立行政法人等の労働関係に関する法律(昭和24年法律第257号)第2条第2号の事業を行う国の経営する企業をいう。)及び独立行政法人等、地方独立行政法人又は公社に係る事業については、企業経営という事業の性質上、条例第14条第3号の法人等に関する情報と同様な考え方でその正当な利益を保護する必要があり、これを害するおそれがある情報は非開示とする。

 ただし、正当な利益の内容については、経営主体、事業の性格、内容等に応じて判断する必要があり、また、その開示の範囲は条例第14条第3号の法人等とは当然異なり、その事業に関する情報の非開示の範囲は、より狭いものとなる場合があり得る。

第4 部分開示に関する判断基準

開示請求に係る公文書について、条例第15条に基づき部分開示をすべき場合に該当するかどうかの判断は、以下の基準により行う。

1 非開示情報が記録されている場合の部分開示(条例第15条第1項)について

(1)「開示請求に係る公文書の一部に非開示情報が記録されている場合」とは、1件の公文書に複数の情報が記録されている場合において、各情報ごとに条例第14条各号に規定する非開示情報に該当するかどうかを審査した結果、該当する情報がある場合を意味する。

 開示請求は、公文書単位で行われることが原則であるため、条例第13条では公文書に全く非開示情報が記録されていない場合の開示義務を定めているが、本項の規定により、実施機関は情報単位での開示・非開示の判断を行わなければならない。

(2)「容易に区分して除くことができるとき」とは、非開示情報に係る部分とそれ以外の部分とを分離することが、物理的、技術的に困難でなく、また、時間、経費などから考えても著しい負担を要しないと判断される場合をいう。したがって、開示情報と非開示情報を容易に区分し得ない場合には、部分開示を行えなくてもやむを得ない。

 「区分」とは、非開示情報が記録されている部分とそれ以外の部分とを概念上区分けすることを意味し、「除く」とは、非開示情報が記録されている部分を、当該部分の内容が分からないように黒インクを塗る等により、公文書から物理的に除去することを意味する。

 例えば、文章として記録されている内容そのものには非開示情報は含まれないが、特徴のある筆跡により特定の個人を識別することができる場合には、識別性のある部分を区分して除くことは困難である。また、録音されている発言内容自体には非開示情報が含まれていないとしても、声により特定の個人を識別できる場合も同様である。

(3)文書の記載の一部を除くことは、コピー機で作成したその複写物に黒インクなどを塗り再複写するなどして行うことができ、一般的には容易であると考えられる。

 一方、録音、録画、磁気ディスクに記録されたデータベース等の電磁的記録については、区分して除くことの容易性が問題となる。例えば、複数の人の発言が同時に録音されているがそのうちの一部の発言内容のみに非開示情報が含まれている場合や、録画されている映像中に非開示情報が含まれている場合などでは、非開示部分のみを除去することが容易ではないことがあり得る。このような場合には、容易に区分して除くことができる範囲で、開示すべき部分を決定する。なお、電磁的記録について、非開示部分と開示部分の分離が既存のプログラムでは行えない場合は、「容易に区分して除くことができない場合」に該当する。

(4)部分的に削除すべき範囲は、文書であれば、一般的には、文、段落等、表であれば個々の欄等を単位として判断することをもって足りる。

(5)本項は、義務的に開示すべき範囲を定めているものであり、部分開示の実施に当たり、具体的な記述をどのように削除するかについては、実施機関の本条例の目的に沿った合目的的な裁量に委ねられている。すなわち、非開示情報の記録部分の全体を完全に黒く塗るか、文字が判読できない程度に被覆するか、当該記録中の主要な部分だけ塗りつぶすかなどの方法の選択は、非開示情報を開示した結果とならない範囲内において、当該方法を講ずることの容易さ等を考慮して判断する。その結果、観念的にはひとまとまりの非開示情報を構成する一部が開示されることになるとしても、実質的に非開示情報が開示されたと認められないのであれば、実施機関の非開示義務に反するものではない。

 なお、文字のあった部分を削除したのか、元々文字はなかったのかが判別できないような削除方法をとることは適当ではない。

(6)「有意の情報が記録されていないと認められるとき」とは、説明責任が全うされるようにするとの観点から、非開示情報が記録されている部分を除いた残りの部分に記載されている情報の内容が、開示をしても意味がないと認められる場合を意味する。例えば、残りの部分に記載されている内容が、無意味な文字、数字等の羅列となる場合などである。

 この有意性の判断に当たっては、同時に開示されるほかの情報があればこれも併せて判断されるべきである。

 また、有意性の判断は、個々の請求者の意図によらず、客観的になされるべきものである。つまり、開示請求者が知りたいと考える事柄との関連によってではなく、請求の趣旨を損なうか否かで判断する。

2 個人識別情報が記録されている場合の部分開示(条例第15条第2項)について

(1)個人識別情報は、通常、個人を識別させる部分(例えば、氏名)とその他の部分(例えば、当該個人の行動記録)とから成り立っているが、個人を識別させる部分を除くことにより残りの部分を開示しても個人の権利利益保護の観点から支障が生じないときには、当該残りの部分については条例第14条第2号に規定する非開示情報には該当しないものとして取り扱う。したがって、当該部分は、他の非開示情報の規定に該当しない限り、前項の規定により開示することとなる。

 ただし、前項の規定を適用するに当たっては、容易に区分して除くことができるかどうかが要件となるので、個人を識別させる部分とそれ以外の部分とを容易に区分して除くことができない場合には、当該個人に関する情報は全体として非開示となる。

(2)「(特定の個人を識別することができるものに限る。)」としているのは、「特定の人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるもの」(第14条第2号本文の後半部分)については、そもそも特定の個人を識別させる部分が存在しないため、本項の規定を適用する余地がないからである。

(3)個人を識別させる要素を除去することにより誰の情報であるかが分からなくなれば、残りの部分については、通常、個人情報としての保護の必要性は乏しくなるが、個人識別性のある部分を除いても、開示することが不適当であると認められるものもある。例えば、カルテや作文など個人の人格と密接に関連するものや、個人の未発表の研究論文など開示すると個人の権利利益を害するおそれがあるものである。

 このため、個人を識別させる部分を除いた部分について、公にしても、個人の権利利益を害するおそれがないものに限り、部分開示の規定を適用する。

第5 公益上の理由による裁量的開示に関する判断基準

公益上の理由による裁量的開示(条例第16条)を行うかどうかの判断は、以下の基準により行う。

1 開示請求に係る公文書に非開示情報が記録されている場合には、条例第14条及び第15条の規定により非開示情報の部分を開示しないが、個々の事例における特殊な事情によっては、公にすることによって生ずる支障を上回る公益上の必要性がある場合がある。本条は、このような場合について実施機関の高度な行政的判断により裁量的に開示する余地を与えたものである。

2 法令秘情報については、法令等によって開示が禁止されている情報であり、本条例による開示の余地がないものであるから、裁量的開示の対象から除外する。

3 「公益上特に必要があると認めるとき」とは、条例第14条第2号ロ及び第3号ただし書の規定による人の生命、健康等の保護のため必要な場合の開示義務に比べ、より広い社会的、公共的な利益を保護する特別の必要のある場合をいう。

4 本条は、非開示情報の規定により保護される権利利益があるにもかかわらず例外的に公開するものであるから、適用に当たっては、非開示情報の規定により保護される権利利益と開示による公益を比較衡量して、慎重に判断する必要がある。

5 本条により県以外の第三者に関する情報を開示しようとする場合は、条例第21条第2項(第三者に対する意見書提出の機会の付与等)の手続が必要となる。

第6 公文書の存否に関する情報に関する判断基準

開示請求に対し、公文書の存否を明らかにしないで当該開示請求を拒否すべき場合(条例第17条)に該当するかどうかの判断は、以下の基準により行う。

1 「開示請求に係る公文書が存在しているか否かを答えるだけで、非開示情報を開示することとなるとき」とは、開示請求に係る公文書が具体的にあるかないかにかかわらず、開示請求された公文書の存否について回答すれば非開示情報を開示することとなる場合をいう。また、開示請求に含まれる情報と非開示情報該当性とが結合することにより、当該公文書の存否を回答できない場合もある。例えば、特定の個人の名を挙げて、その病歴情報が記録された文書の開示請求があった場合、当該公文書に記録されている情報は非開示情報に該当するが、非開示であると答えるだけで、当該個人の病歴の存在が明らかになってしまう。このような特定の者又は特定の事項を名指しした探索的請求には、次のような例が考えられる。

(1)県立病院における診療録等、特定個人の病歴に関する情報(条例第14条第2号)

(2)先端技術を開発する特定企業の設備投資計画に関する情報(条例第14条第3号)

(3)犯罪の内偵捜査に関する情報(条例第14条第4号)

(4)特定分野に限定しての試験問題の出題予定に関する情報(条例第14条第6号)

 なお、特定の個人を名指しした開示請求に係る情報は、条例第14条第2号に該当し、かつ、個人情報の提供の制限を定めた群馬県個人情報保護条例第8条との整合性から、上記のようなプライバシー性が高いとはいえない情報でも本条が適用されることとなる。ただし、条例第14条第2号イからハに該当するものについては適用されない。

2 存否を明らかにしないで拒否することが必要な類型の情報については、常に存否を明らかにしないで拒否することが必要である。公文書が存在しない場合に不存在と答えて、公文書が存在する場合にのみ存否を明らかにしないで拒否したのでは、開示請求者に当該公文書の存在を類推させることとなるためである。