ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
現在地 トップページ > 組織からさがす > 生活こども部 > 県民活動支援・広聴課 > 公文書開示審査会答申第118号

本文

公文書開示審査会答申第118号

更新日:2011年3月1日 印刷ページ表示

 「平成17年度、平成18年度、平成19年度、平成20年度コンビニ収納委託契約書(○○○○)」の開示決定に対する異議申立て(第三者からの異議申立て)に係る答申書

群馬県公文書開示審査会
第二部会

第1 審査会の結論

 群馬県知事が、「平成17年度、平成18年度、平成19年度、平成20年度コンビニ収納委託契約書(○○○○)」について、その全部を開示するとした決定は、妥当である。

第2 諮問事案の概要

1 公文書開示請求

 開示請求者は、群馬県情報公開条例(以下「条例」という。)第11条の規定に基づき、群馬県知事(以下「実施機関」という。)に対し、平成20年12月8日付けで、「コンビニ収納委託契約17年度、18年度、19年度、20年度」の開示請求(以下「本件請求」という。)を行った。

2 実施機関の決定

  1. 実施機関は、本件請求に対して「平成17年度、平成18年度、平成19年度、平成20年度コンビニ収納委託契約書(○○○○)」(以下「本件公文書」という。)を特定した。本件公文書には、条例第21条第1項に定める第三者に関する情報が記載されており、当該第三者に意見書提出の機会を付与し、意見書を提出する期間を設けるため、実施機関は平成20年12月19日付けで決定期間の延長を行い、平成20年12月25日付けで公文書の開示に係る意見照会書を通知した。
  2. 実施機関から意見照会書の通知を受けた第三者から、開示に反対の意思を表示した意見書が提出されたが、実施機関は、意見書の記載内容からは条例第14条に規定する非開示情報に該当するとは認められないと判断し、平成21年2月5日、本件公文書について開示決定(以下「本件処分」という。)を行った。また、同日付けで、開示に反対の意思を表示した第三者に対し、公文書を開示決定した旨を通知した。

3 第三者からの異議申立て

 異議申立人(以下「申立人」という。)は、開示に反対の意思を表示した第三者であるところ、行政不服審査法(以下「法」という。)第6条の規定に基づき、平成21年2月18日付けで、本件処分を不服として、実施機関に対し異議申立てを行った。実施機関は、平成21年2月20日、法第48条で準用する第34条第2項の規定により、職権で開示を停止するとともに、その旨を開示請求者及び申立人に通知した。

4 諮問

 実施機関は条例第26条の規定に基づき、群馬県公文書開示審査会(以下「審査会」という。)に対して、平成21年3月16日、本件異議申立て事案(以下「本件事案」という。)の諮問を行った。

第3 申立人の主張の要旨

 申立人の主張する異議申立ての趣旨及び理由は、異議申立書及び意見書の記載によると、おおむね次のとおりである。

1 異議申立ての趣旨

 平成21年2月5日付け税第3000-11号により実施機関が行った本件処分について、これを取り消し、全部非開示とすることを求めるものである。

2 異議申立ての理由

  1. 条例第14条第3号に定める法人等事業情報に該当すること
     ア 条例第14条第3号イ該当性
     条例第14条第3号イは、「公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの」を非開示情報としている。そして、「群馬県情報公開条例の解釈及び運用の基準」(以下「基準」という。)によると、ここにいう「権利」には「財産権等法的保護に値する権利一切」とあり、「その他正当な利益」とは「ノウハウ、信用等、法人等又は事業を営む個人の運営上の地位を広く含む」とある。
     本件契約書は、群馬県独自のものであり、事業ノウハウが含まれる本件契約書を開示しないことは、法的保護に値する権利であり正当な利益である。また、同業他社に知られることで「競争上の地位」を害されるおそれがある。
     イ 条例第14条第3号ロ該当性
     条例第14条第3号ロは、「実施機関の要請を受けて、公にしないとの条件で任意に提供されたもの」が非開示情報となると定める。本件公文書は契約書であり、直ちにこの条項に該当するものではないであろう。しかし、契約書第8条に秘密保持条項を付して漏洩しないという前提で提供している情報であるという本質は共通しており、この条項の趣旨は本件にもあてはまる。現に基準は「実施機関の要請を受けずに法人等又は事業を営む個人から提供の申出があった情報であっても、提供に先立ち、法人等又は事業を営む個人の側から非公開の条件が提示され、実施機関がこれを受諾した上で提供を受けた場合には、含まれ得る。」としている。契約書とはまさにそういうものである。この観点からも、開示は条例の趣旨精神に反し、不適切不当である。
  2. 群馬県税収納事務委託契約書(以下「委託契約書」という。)第8条に抵触すること
     委託契約書第8条では、秘密の保持について、本契約の当事者は本契約に関して知った秘密情報を第三者に漏洩してはならないとしている。もちろん、本契約書の内容自体、重要な営業秘密であり秘密情報にあたる。従って、実施機関は契約上の義務として、開示をしてはならないのである。特に本件は、単発の終了した過去の契約の契約書ではなく、現在も有効な継続的契約関係の契約書である。継続的契約関係において契約当事者は信頼関係を維持する義務が特に大きいことから、実施機関が開示を拒否すべき義務も大きい。
  3. 開示決定の理由が欠けていること
     実施機関から申立人に対して交付された「公文書を開示決定した旨の通知書」には、「開示を決定した理由」が、「契約書記載事項については、条例第14条各号のいずれにも該当しないので開示を行う」との形式的な記載しかされておらず、実施機関がどのような事実認定・法的評価・思考・検討・判断を経て決定されたかの理由が不明である。
     本件処分は、理由の記載が実質的に欠けている点で条例第21条第3項後段に違反すると考え、本件公文書が非開示情報に該当するかどうかを検討する以前の問題として、そもそもこの開示決定は条例違反であり、開示は認められない。

第4 実施機関の説明の要旨

 実施機関の主張する本件処分の理由を要約すると、次のとおりである。

1 本件公文書の特定について

 実施機関では、コンビニエンスストアでの県税収納を実施するにあたり、収納事務を委託するため、各コンビニエンスストア本部、収納代行業者及び金融機関との間で、コンビニエンスストアでの県税収納を開始した平成17年度以降、毎年、収納事務委託契約を結んでいる。

 本件公文書は、そのうち、○○○○と、平成17年度から平成20年度までに締結した委託契約書である。

2 公文書を開示する理由

  1. 条例第14条第3号に定める法人等事業情報に該当しないこと
     本件処分に先立ち、申立人から提出された「公文書の開示に係る意見書」に記載された反対意見は、本件公文書が、条例第14条第3号イに該当する旨を主張するものと思料される。
     基準では、「「競争上の地位」とは、法人等又は事業を営む個人の公正な競争関係における地位を指す。」とし、「「その他正当な利益」とは、ノウハウ、信用等、法人等又は事業を営む個人の運営上の地位を広く含むものである。」としている。また、「「おそれ」の判断に当たっては、単なる確率的な可能性ではなく、法的保護に値する蓋然性が求められる。」としているとともに、「本号イに該当する可能性のある情報の会社における具体例としては、製造工程、製造方法など生産・管理のプロセスに関する情報であって、公にすることにより当該情報が競争相手に知られる蓋然性が高いなど正当な利益を害するおそれがある情報、資金調達状況など通常一般に入手できない財務に関する情報、販売計画など販売上の戦略が明らかにされ又は具体的に推測される情報で通常一般に入手できないもの、雇用方針など経営方針が明らかにされ又は具体的に推測される情報で通常一般に入手できないもの等が挙げられる。」としている。
     申立人から提出された「公文書の開示に係る意見書」に記載された反対意見の内容からは、申立人の競争上の地位や利益がどのようなものか具体性を欠き、条例第14条第3号イには該当しないため、開示と判断した。
  2. 委託契約書第8条の解釈について
     委託契約書第8条は、「本契約に関して知り、又は知り得た他の当事者の秘密情報を第三者に漏洩してはならない」としており、契約書そのものが他の当事者の秘密情報であると解釈することは困難であることから、開示と判断した。

第5 審査会の判断

 当審査会は、本件事案について審査した結果、次のとおり判断する。

1 条例第14条第3号イ該当性について

 申立人は、本件公文書である委託契約書について、会社独自のものであり、事業ノウハウが含まれる本件契約書を開示しないことは、法的保護に値する権利であり正当な利益であること、また、同業他社に知られることで競争上の地位を害されるおそれがあることから、条例第14条第3号イに該当すると主張している。

 条例第14条第3号イに規定する「害するおそれ」があるかどうかの判断に当たっては、単なる確率的な可能性ではなく、法的保護に値する蓋然性が求められる。「害するおそれ」があると判断しうる具体例としては、基準に示すとおり、「製造工程、製造方法など生産・管理のプロセスに関する情報であって、公にすることにより当該情報が競争相手に知られる蓋然性が高いなど正当な利益を害するおそれがある情報、資金調達状況など通常一般に入手できない財務に関する情報、販売計画など販売上の戦略が明らかにされ又は具体的に推測される情報で通常一般に入手できないもの、雇用方針など経営方針が明らかにされ又は具体的に推測される情報で通常一般に入手できないもの等」が挙げられる。

 当審査会において本件公文書を見分したところ、委託契約書には、一般的な契約書の条項と同視できる条項や、収納事務委託契約であれば当然こうした条項があるであろうと容易に推測できる条項があるほか、実務の詳細については別に定める規定を置くなど、必ずしも、実務の詳細を網羅した高い具体性、専門性を持つ内容とは認められない。また、実施機関によれば、本件公文書のうち、各年度ごとの委託契約書の記載内容を比較しても、本件公文書と、他のコンビニエンスストア本部と実施機関との間で締結された契約書とを比較しても、相違はほとんどないというのである。

 したがって、本件公文書を公にすることにより、申立人の権利利益や競争上の地位を害するほどに、重要な事業ノウハウが含まれているとまでは認められず、本件公文書は、条例第14条第3号イに定める非開示情報に該当するとは認められない。

2 委託契約書第8条の解釈及び条例第14条第3号ロ該当性について

 申立人は、委託契約書第8条に、「本契約に関して知り、又は知り得た他の当事者の秘密情報を第三者に漏洩してはならない」と定めていることから、実施機関は契約上の義務として、本件公文書の開示をしてはならず、また、条例第14条第3号ロの趣旨からも、開示は不適切不当であると主張している。

 しかし、ここで、「本契約に関して知り、又は知り得た他の当事者の秘密情報」とは、契約に定める委託業務を遂行する上で知り得た秘密情報を意味すると考えられ、本件公文書は契約書そのものであるから、この条項をもって、実施機関の本件処分を違法又は不当とすることはできない。

 さらに、本件公文書は、当事者間の合意により締結された契約書であり、その情報は「実施機関の要請を受けて、公にしないとの条件で任意に提供されたもの」ではなく、また、先に示した委託契約書第8条の解釈から、「実施機関の要請を受けずに法人等又は事業を営む個人から提供の申出があった情報であっても、提供に先立ち、法人等又は事業を営む個人の側から非公開の条件が提示され、実施機関がこれを受諾した上で提供を受けた場合」にもあたらないから、本件公文書は、条例第14条第3号ロに定める非開示情報に該当するとは認められない。

3 「公文書を開示決定した旨の通知書」(以下「本件通知書」という。)の理由付記について

 実施機関は、本件処分と同日付けで、申立人に対して本件通知書を送付しているが、この通知書には、第三者照会を受けた申立人が、開示することについて支障があると主張したにもかかわらず、実施機関が開示を決定した旨が記載されている。

 申立人は、本件通知書の「開示を決定した理由」に、「契約書記載事項については、条例第14条各号のいずれにも該当しないので開示を行う」としか記載されておらず、実施機関がどのような事実認定・法的評価・思考・検討・判断を経て決定したかの理由が不明であり、理由の記載が実質的に欠けている点で条例第21条第3項後段に違反するため、本件処分は条例違反であり、開示は認められないと主張している。

 条例第21条第3項後段に定める本件通知書の趣旨について、基準によれば、「・・・反対意見書を提出した第三者が争訟を提起しようとする場合に必要な情報を提供するということである。この通知は、第三者が争訟の提起のために必要な準備作業に要する時間を確保できるよう、開示決定をしたときは直ちに行う必要がある。」とし、また、開示決定をする理由の記載については、「第三者に係る情報が非開示情報に該当しないことと判断した理由又は公益上の理由による開示が必要と判断した理由であり、開示することとした部分すべてについての理由を記載する必要はなく、当該第三者に係る情報を開示することとした理由のみを記載すれば足りる。なお、反対意見書に記載されている項目について、逐一理由を加える必要はない。」としている。

 本件通知書の理由付記を見分すると、少なくとも、申立人が主張する非開示情報該当性について、実施機関が否定していることは明らかであり、また、条例第13条に定める「公文書の開示の原則」を考え合わせると、この理由付記は違法又は不当なものではなく、これをもって、本件処分を条例違反ということはできない。

4 結論

 以上のことから、「第1 審査会の結論」のとおり判断する。

第6 審査の経過

 当審査会の処理経過は、以下のとおりである。

審査会の処理経過

年月日 内容
平成21年3月16日 諮問

平成21年4月20日

実施機関からの理由説明書を受領

平成21年5月22日

異議申立人からの意見書を受領

平成21年6月15日
(第25回第二部会)

審議(本件事案の概要説明)

平成21年7月22日
(第26回第二部会)

審議(実施機関の口頭説明)

平成21年8月5日

条例第30条第4項による調査を実施

平成21年8月21日

異議申立人から資料を受領

平成21年8月24日
(第27回第二部会)

審議

平成21年11月9日
(第28回第二部会)

審議

平成21年11月10日

答申