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介護給付費支給決定処分に係る審査請求(答申)

更新日:2023年3月28日 印刷ページ表示

件名

 介護給付費支給決定処分に係る審査請求

第1 審査会の結論

 処分庁前橋市福祉事務所長が令和4年3月11日付けで審査請求人に対して行った障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号。以下「法」という。)に基づく障害者介護給付費申請に対する支給決定処分の取消しを求める審査請求(以下「本件審査請求」という。)には、理由があるので、行政不服審査法(平成26年法律第68号)第46条第1項の規定により本件処分を取り消すべきである。

第2 事案の概要

 本件は、審査請求人が令和4年2月18日付けで処分庁に対して行った法第20条第1項に基づく介護給付費の支給申請(以下「本件申請」という。)に対する処分庁の令和4年3月11日付け介護給付費等支給決定処分(以下「本件処分」という。)につき、審査請求人が本件処分を不服として、法第97条に基づき、審査庁に対して審査請求をなしたものである。

第3 審理関係人の主張の要旨

1.審査請求人
 審査請求人の主張は、本件処分は、以下のとおり違法な処分であることから、本件処分を取り消すことを求める、というものである。
(1)令和4年2月18日付けで処分庁に対し、一月当たり823時間分の給付費を求めて申請したところ、処分庁は一月当たり460.5時間分のみを支給決定した。差額である一月当たり362.5時間分につき、申請に対する拒否処分がなされたことは明らかである。
 裁判例でも、神戸地判令和2年10月22日では、一月当たり696時間の申請に対して市長が一月当たり507時間30分を支給決定した事案について、理由の付記が必要であるとの判断を前提に、理由付記について判断の遺漏があった兵庫県知事の裁決が取り消されている(神戸地判令和2年10月22日)。
 なお、処分庁は、前橋市介護給付等支給決定基準に関する要綱(以下「支給決定基準」という。)別紙I2に規定する「重度訪問介護」の上限である430.5時間を支給したことをもって本件申請に対する不支給はないとしている可能性がある。しかしながら、支給決定基準第5条は「市長は、この要綱に定める上限支給量を超えて支給決定を行う場合は、前橋市自立支援給付認定審査会(以下、「審査会」という。)の意見を聴取し、支給量を決定しなければならない。」と規定しており、審査会が行われる前に支給基準内で支給決定を行った運用自体が誤りである。
(2)理由説明・理由付記の不備
 ア 処分庁は、本件処分の理由について一切説明していない。
 イ 本件処分の通知書には、申請を拒否する理由の記載が一切なく、どのような具体的事実(勘案事項)に基づいて本件処分がなされたのか支給決定通知書の記載自体から了知できないため、行政手続法(平成5年法律第88号)第8条第1項に違反する。
 この点、支給決定基準第4条が「支給決定にあたっては、法、政令、省令、介護給付費等に係る支給決定事務等について(事務処理要領)及び本要綱に基づき行うものとする。」とし、同基準第5条が「市長は、この要綱に定める上限支給量を超えて支給決定を行う場合は、審査会の意見を聴取し、支給量を決定しなければならない。」と規定するのみであり、「認可等の要件」も「審査基準」も存在せず、行政手続法第8条第1項ただし書が適用される場合に該当しない。
(3)勘案すべき事項を考慮せず裁量権の逸脱濫用
 処分庁は、法第22条第1項及び同法施行規則(平成18年厚生労働省令第19号)第12条に規定された勘案事項を考慮せずに本件処分を行った。本件処分に係る判断内容は、事実の基礎を欠き、社会通念上妥当性を欠くものであることは明らかであり、裁量権を逸脱濫用した違法がある。
 支給決定は「申請のあった障害者等について障害支援区分のみならず、すべての勘案事項に関する一人ひとりの事情を踏まえて適切に行う」必要があるとされている(令和4年3月障害保健福祉関係主管課長会議資料)。支援区分6とされた審査請求人が支給決定基準に定める上限支給量を超えた申請を行った以上、処分庁は、支給決定基準に則って適切に審査会を開催し、審査会における意見や勘案事項を総合考慮して支給決定を行うべきであったのに、処分庁は審査会を開く前に定型(支給決定基準に定める上限支給量)の支給決定を行い、また、自宅への訪問調査すら行わなかった。
 このような著しく不備のあるプロセスを経て行われた本件支給決定は、勘案事項が考慮されたものと評価することはできない。
 実際、本件処分「後」に処分庁において開催された審査会の審査においては、一月当たり536時間の支給量が相当である旨の結論が示されており、本件処分「前」に審査会を開催して勘案事項を考慮すれば、本件処分よりも支給量が増額したことが明らかである。
2.処分庁
 処分庁の主張は、以下のとおり審査請求人の本件審査請求に理由がないことから、本件審査請求は速やかに棄却されるべきである、とするものである。
(1)本件処分は申請拒否処分ではない
 処分庁は、審査請求人の申請に対し、定型支給量の範囲内(430.5時間+二人介護30時間=460.5時間)で支給決定する旨の本件処分をしており、許認可等を拒否する処分は行っていない。
(2)理由説明・理由付記の不備はない
 ア 処分庁は、令和3年9月2日、審理関係人等が来庁して同日付けで介護給付費の支給申請(後に撤回)を行った際、
 (ア)支給決定基準第5条の規定により、上限支給量を超えて支給決定を行う場合は審査会に諮ることとなっており、審査会の意見聴取前は支給決定基準における上限支給量の範囲内で支給決定する旨、
 (イ)二人介護分についても申請書の記載及び添付書類の内容並びに令和3年9月27日に実施した訪問調査及び同年同月29日に実施したリモートによる聞き取り調査の状況等を勘案する旨、
を説明した。
 イ 行政手続法第8条第1項は、「行政庁は、申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合は、申請者に対し、同時に、当該処分の理由を示さなければならない。」としているが、処分庁は、上記2(1)のとおり、申請により求められた許認可等を拒否する処分をしたものではない。
 ウ 同法同条同項但書は、「ただし、法令に定められた許認可等の要件又は公にされた審査基準が数量的指標その他の客観的指標により明確に定められている場合であって、当該申請がこれらに適合しないことが申請書の記載又は添付書類その他の申請の内容から明らかであるときは、申請者の求めがあったときにこれを示せば足りる。」と規定するところ、(ア)処分庁では、支給決定基準をホームページで公表し、(イ)支給決定基準別紙I2(ウ)において、24時間介護に関する支給要件を規定している。
 また、審査請求人から提出された申請書類等及び法施行規則第12条各項の状況等を勘案して支給量を決定する旨は、審理関係人に対して、令和3年9月2日の来庁時及び令和4年2月18日の支給申請書提出時に説明している。
(3)勘案すべき事項を考慮しており裁量権の逸脱濫用はない
 処分庁は、法第22条及び同法施行規則第12条規定の勘案事項を考慮して本件処分をしたものであり、本件処分に違法はない。

第4 審理員意見書の要旨

 本件処分は、行政手続法第8条第1項にいう「申請により求められた許認可等を拒否する処分」に該当するところ、同法同条同項及び第2項が求める理由付記を欠くものである。したがって、本件審査請求には理由があり、審査請求を認容し、本件処分は取り消されるべきである。なお、審理員意見書の「処分庁前橋市長」との記載については、「処分庁前橋福祉事務所長」の誤記である。​

第5 調査審議の経過等

1 当審査会は、本件諮問事件について、次のとおり、調査審議を行った。
 令和5年1月20日 審査庁から諮問書及び諮問説明書を収受
 令和5年1月31日 調査・審議
2 審理手続の適正について
 本件審査請求について、審理員による適正な審理手続が行われたものと認められる。

第6 審査会の判断の理由

1.本件処分は行政手続法第8条第1項にいう「申請により求められた許認可等を拒否する処分」に該当すること
(1)本件処分は、審査請求人が月823時間の重度訪問介護給付を求めた申請に対し、処分庁は月460.5時間の支給決定を行ったものであり、処分庁が審査請求人の申請した支給量の一部を減じて処分を行ったことは明らかである。
(2)なお、処分庁は、(ア)令和3年9月2日、審査請求人等に対し、いわゆる非定型の支給申請は審査会に諮る必要があり、審査会の意見聴取前は支給決定基準における上限支給量の範囲内で支給決定する旨を説明した旨主張し、また、(イ)令和3年9月27日及び同年同月29日に実施した現地調査及びリモートによる聞き取り調査の状況等を勘案し、定型支給量上限の支給を決定していることから許認可等を拒否する処分は行っていない旨主張するが、申請者が支給申請に当たって申請する支給量の上限に関する定めはなく、これらの主張は、本件処分が審査請求人の申請の一部を拒否する処分であるとの帰結を左右するものではない。
2.理由の付記を欠いた処分であること
(1)行政手続法第8条第1項及び第2項は、行政庁は許認可等を拒否する処分を書面でする際には、当該処分の理由を書面にて示さなければならない旨、規定する。
 申請拒否処分に理由を付すべきものとする趣旨は、行政庁の判断の慎重と公正妥当を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の理由を申請者に知らせることによって、不服の申し立てに便宜を与えることにあり、理由付記制度の趣旨からして、付記すべき理由は、いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用して申請が拒否されたかを、申請者においてその記載自体から了知しうるものでなければならず、単に申請拒否の根拠規定を示すだけでは、それによって当該規定の適用の基礎となった事実関係をも当然知りうるような場合を別として、法律の要求する理由付記として十分でないと言わざるを得ない(なお、旅券発給拒否に関する最判昭和60年1月22日参照)。
(2)本件処分の通知書には、重度訪問介護の支給量を一月当たり460.5時間とする旨は記載されているものの、当該記載からは、審査請求人がいかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用した結果、その申請に係る支給量を減じる内容の本件処分がなされたかを知ることは困難であり、かつ、この記載のみで拒否処分に至る事実関係を当然知りうるという事情もない。
 なお、同通知書には、「法第22条及び第29条の規定に基づき」との記載がなされているが、法第22条は支給要否決定の根拠規定であり、第29条は介護給付費の支給決定の根拠規定であるに過ぎない。
 したがって、申請に対する一部拒否処分たる本件処分が、上記通知書なる書面によってなされているにもかかわらず、結論が記載されるのみで理由の付記が一切なされていないことは、処分を書面でするときは理由を書面によって示すことを求める行政手続法第8条第2項に違反する。
(3)この点、処分庁は、ホームページ上で支給決定基準を公表し、これに記載されることにより24時間介護に関する要件が公表されていること、審理関係人に対して令和3年9月2日の来庁時及び令和4年2月18日の本件申請時に支給量決定の勘案事項を説明したこと、をもって、行政手続法第8条第1項但書に該当し、本件処分に違法はないとの趣旨の主張をする。
 しかしながら、審査会の意見聴取を経た上での非定型の支給決定が支給決定基準上も予定されていることに鑑みれば、支給決定基準別紙I2において定められる上限支給量はあくまで定型の支給申請に関する基準でしかなく、非定型の支給申請があった場合について「審査基準が数量的指標その他の客観的指標により明確に定められている」とはいえない。
 したがって、処分庁の主張は、一部拒否の理由が書面をもって示されないことを正当化するものではない。
(4)また、処分庁は、令和3年9月2日、審査請求人等に対し、いわゆる非定型の支給申請は審査会に諮る必要があり、審査会の意見聴取前は支給決定基準における上限支給量の範囲内で支給決定する旨を説明した旨主張する。
 この点、理論上は、非定型の支給申請のうち上限支給量までの支給に係る申請部分のみに対して先行して応答をすることが想定し得るが、本件においては、本件処分通知書に、上限支給量を超える支給量を求める一個の申請のうち上限支給量に到るまでの支給を先行して審査した上で当該部分について満額支給決定したものであることを窺わせるような記載もなく、後日、上限支給量を超える支給申請に係る部分について別個に応答をした形跡も認められない。
 したがって、本件処分は書面による処分と同時に申請者に示すべきものとされている理由の提示がないままなされた処分であることから、行政手続法第8条第1項及び第2項の規定に反する違法な処分として取り消すべきものである。
3.上記以外の審理関係人双方の主張について
​​ その余の審理関係人の主張に、「第1 審査会の結論」記載の結論を左右する点は認められない。

 以上のとおり、本件審査請求には理由があるから、「第1 審査会の結論」のとおり答申する。

関係法令の規定

1.介護給付支給決定に係る規定
〇 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)
(申請)
第20条 支給決定を受けようとする障害者又は障害児の保護者は、厚生労働省令で定めるところにより、市町村に申請をしなければならない。
2~6 (略)
(支給要否決定等)
第22条 市町村は、第20条第1項の申請に係る障害者等の障害支援区分、当該障害者等の介護を行う者の状況、当該障害者等の置かれている環境、当該申請に係る障害者等又は障害児の保護者の障害福祉サービスの利用に関する意向その他の厚生労働省令で定める事項を勘案して介護給付費等の支給の要否の決定(以下この条及び第27条において「支給要否決定」という。)を行うものとする。
2~8 (略)
〇 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律施行規則(平成18年厚生労働省令第19号)
(法第22条第1項に規定する厚生労働省令で定める事項)
第12条 法第22条第1項に規定する厚生労働省令で定める事項は、次の各号に掲げる事項とする。
 一 法第20条第1項の申請に係る障害者等の障害支援区分又は障害の種類及び程度その他の心身の状況
 二 当該申請に係る障害者等の介護を行う者の状況
 三 当該申請に係る障害者等に関する介護給付費等の受給の状況
 四 当該申請に係る障害児が現に児童福祉法第6条の2の2第1項に規定する障害児通所支援又は同法第24条の2第1項に規定する指定入所支援を利用している場合には、その利用の状況
 五 当該申請に係る障害者が現に介護保険法の規定による保険給付に係る居宅サービスを利用している場合には、その利用の状況
 六 当該申請に係る障害者等に関する保健医療サービス又は福祉サービス等(第3号から前号までに掲げるものに係るものを除く。)の利用の状況
 七 当該申請に係る障害者等又は障害児の保護者の障害福祉サービスの利用に関する意向の具体的内容
 八 当該申請に係る障害者等の置かれている環境
 九 当該申請に係る障害福祉サービスの提供体制の整備の状況
2.行政手続法の規定
〇 行政手続法(平成5年法律第88号)
(理由の提示)
第8条 行政庁は、申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合は、申請者に対し、同時に、当該処分の理由を示さなければならない。ただし、法令に定められた許認可等の要件又は公にされた審査基準が数量的指標その他の客観的指標により明確に定められている場合であって、当該申請がこれらに適合しないことが申請書の記載又は添付書類その他の申請の内容から明らかであるときは、申請者の求めがあったときにこれを示せば足りる。
2 前項本文に規定する処分を書面でするときは、同項の理由は、書面により示さなければならない。

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