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令和5年度答申第2号
第1 審査会の結論
本件審査請求には、理由がないので、行政不服審査法(平成26年法律第68号)第45条第2項の規定により審査請求を棄却すべきである。
第2 審査関係人の主張の要旨
1 審査請求人
審査請求人は、令和4年10月21付け生活保護法(昭和25年法律第144号。以下「法」という。)第78条の規定に基づく費用徴収決定処分(以下「本件処分」という。)の取消しを求める理由として、次のとおり主張している。
(1) 処分庁に提出する収入申告書には、「障害年金」という項目はなく、障害年金を受給していることを申告しなければいけない旨の説明も、処分庁の職員から受けていないため。
(2) 処分庁の職員から暴言を受ける等、不当な扱いを受けていたため。
(3) 処分庁の職員が審査請求人の個人情報を、関係の無い他人に漏らしているため。
2 審査庁
審理員意見書のとおり、本件審査請求を棄却すべきである。
第3 審理員意見書の要旨
処分庁は審査請求人に対し、法第61条に基づき、世帯に生じた収入は申告する義務があることを説明しており、審査請求人も説明を受け理解した旨、確認書類に署名押印をしている。このことから、審査請求人の主張には正当性がない。
また、処分庁は本件処分を決定するまでに、審査請求人が障害年金を受給しているにもかかわらず申告を行わないことについて、法第27条第1項に基づく口頭指導及び文書指導を行い、審査請求人に対し申告をするよう求めている。かつ、審査請求人に対して、上記の指導に従わないことについて法62条第4項に基づき弁明の機会を与えている。それにもかかわらず審査請求人が指導に従わず申告をしなかったことは、「生活保護費の費用返還及び費用徴収決定の取扱いについて」(平成24年7月23日付社援保発0723第1号厚生労働省社会・援護局保護課長通知。以下「課長通知」という。)における「(1)保護の実施機関が被保護者に対し、届出又は申告について口頭又は文書による指示をしたにもかかわらず被保護者がこれに応じなかったとき」及び「(3)(前略)保護の実施機関又はその職員が届出又は申告の内容等の不審について説明等を求めたにもかかわらずこれに応じず、(後略)」に該当し、審査請求人に対し法第78条第1項を適用する十分な理由が存在すると認められる。
以上のことから、処分庁は法令等の定めるところに従って適法かつ適正に処分を行っており、このことについて違法又は不当な点は認められない。
なお、審査請求人は収入申告書に「障害年金」という項目がないことを理由に、保護費を不正に受給したとは思っていないとも主張している。この点、収入申告書において「2 恩給、年金等による収入」欄には、確かに「障害年金」という項目は無いが、「国民年金」「厚生年金」の項目があり、通常障害年金については加入者の状況により、この2種類のいずれかに分類されるものである。仮に、列挙された項目に該当しないと判断した場合でも、法第61条に基づく申告義務の観点から、「4 その他の収入」欄等により申告するべきことは十分理解できると考えられる。
第4 調査審議の経過
当審査会は、本件諮問事件について、次のとおり、調査審議を行った。
令和5年4月18日 審査庁から諮問書及び諮問説明書を収受
令和5年4月28日 調査・審議
令和5年5月26日 調査・審議
第5 審査会の判断の理由
1 審理手続の適正について
本件審査請求について、審理員による適正な審理手続が行われたものと認められる。
2 本件処分に係る法令等の規定について
被保護者の届出義務に関しては、法第61条において、「被保護者は、収入、支出その他生計の状況について変動があつたとき、又は居住地若しくは世帯の構成に異動があつたときは、すみやかに、保護の実施機関又は福祉事務所長にその旨を届け出なければならない。」とされている。
また、保護費の費用徴収に関しては、法第78条第1項において、「不実の申請その他不正な手段により保護を受け、又は他人をして受けさせた者があるときは、保護費を支弁した都道府県又は市町村の長は、その費用の額の全部又は一部を、その者から徴収するほか、その徴収する額に100分の40を乗じて得た額以下の金額を徴収することができる。」とされている。
さらに、法第78条の条項を適用する際の基準については、課長通知において、「(1)保護の実施機関が被保護者に対し、届出又は申告について口頭又は文書による指示をしたにもかかわらず被保護者がこれに応じなかったとき、(略)、(3)届出又は申告に当たり特段の作為を加えない場合でも、保護の実施機関又はその職員が届出又は申告の内容等の不審について説明等を求めたにもかかわらずこれに応じず、又は虚偽の説明を行ったようなとき、(4)課税調査等により、当該被保護者が提出した収入申告書が虚偽であることが判明したとき」と掲げられており、「当該基準に該当すると判断される場合は、法第78条に基づく費用徴収決定をすみやかに行うこと。」とされている。
3 本件処分の妥当性について
審査請求人は、障害年金を受給していることを申告しなければいけない旨の説明を、処分庁の職員から受けていないと主張している。この点、処分庁は審査請求人に対し、法第61条に基づき、世帯に生じた収入は申告する義務があることを説明しており、審査請求人も説明を受け理解した旨、確認書類に署名押印をしている。このことから、審査請求人の主張には正当性がない。
また、処分庁は本件処分を決定するまでに、審査請求人が障害年金を受給しているにもかかわらず申告を行わないことについて、法第27条第1項に基づく口頭指導及び文書指導を行い、審査請求人に対し申告をするよう求めている。かつ審査請求人に対して、上記の指導に従わないことについて法62条第4項に基づき弁明の機会を与えている。それにもかかわらず審査請求人が指導に従わず申告をしなかったことは、課長通知における「(1)保護の実施機関が被保護者に対し、届出又は申告について口頭又は文書による指示をしたにもかかわらず被保護者がこれに応じなかったとき」及び「(3)(前略)保護の実施機関又はその職員が届出又は申告の内容等の不審について説明等を求めたにもかかわらずこれに応じず、又は虚偽の説明を行ったようなとき」に該当し、審査請求人に対し法第78条第1項を適用する十分な理由が存在すると認められる。
以上のことから、処分庁は法令等の定めるところに従って適法かつ適正に処分を行っており、このことについて違法又は不当な点は認められない。
なお、審査請求人は、収入申告書に「障害年金」という項目がないこと並びに「障害年金」は国民年金及び厚生年金とは全く別のものだと理解していたことを理由に、保護費を不正に受給したとは思っていないとも主張している。この点、収入申告書において「2 恩給、年金等による収入」欄には、確かに「障害年金」という項目は無いが、「国民年金」「厚生年金」の項目があり、通常障害年金については加入者の状況により、この2種類のいずれかに分類されるものである。仮に、列挙された項目に該当しないと判断した場合でも、法第61条に基づく申告義務の観点から、「4 その他の収入」欄等により申告するべきことは十分理解できると考えられる。
また、審査請求人が主張している、上記第2の1の(2)及び(3)については、本件処分と関係がない。
4 上記以外の違法性又は不当性についての検討
他に本件処分に違法又は不当な点は認められない。
第6 結論
以上のとおり、本件審査請求には理由がないから、「第1 審査会の結論」のとおり、答申する。