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令和5年度 病害虫発生予察特殊報 第1号(ミナミアオカメムシ)
本県において、ミナミアオカメムシの発生がほ場で初めて確認されました。
特殊報とは、新たな病害虫を発見した場合及び重要な病害虫の発生消長に特異な現象が認められた場合に発表する情報です。
1 特殊報の内容
- 対象病害虫名 : ミナミアオカメムシ
- 学名 : Nezara viridula (Linnaeus)
- 発生植物 : コムギ
- 発生地域 : 県東部地域
2 発生概況
1 発生確認の経過
令和5年5月、県東部地域のコムギほ場において、本虫と疑われるカメムシ成虫が確認されました。群馬県農業技術センターにおいて、形態的特徴からミナミアオカメムシと同定しました。
2 国内の発生状況
本種は、熱帯から温帯地方南部に広く分布し、国内では本州、四国、九州、南西諸島、小笠原諸島に分布し、西日本を中心に分布が拡大しています。
関東地方では、平成22年に千葉県で初めて確認され、以降、平成27年に神奈川県、平成28年に東京都、令和2年に茨城県、埼玉県、令和3年に栃木県で発生が確認されています。
県内では県東部の予察灯への誘殺は確認されていましたが、ほ場での発生の確認は初めてです。
3 形態および生態等
- 成虫の体長は12~16ミリメートル、体色はツヤのない緑色で、アオクサカメムシによく似ています(写真1)。両種ともに小楯板上端に3つの白い斑点があることは共通していますが(写真2)、本種は腹部背面(翅の下)の色が緑色(写真3)(アオクサカメムシは黒色(写真4))であることで識別できます。また、触角第3~5節の先半分が褐色(写真5)(アオクサカメムシは黒色)であることでも識別できます。他に類似カメムシとしてツヤアオカメムシがいますが、ツヤアオカメムシはツヤのある緑色で小楯板上端に3つの白い斑点がなく、腹部背面(翅の下)の色が紅色~褐色であることで識別できます(写真6)。
- 年3~4回発生すると言われています。スギなどの常緑樹で越冬した成虫は、春先にオオムギ、コムギ、ナタネの上で増殖し、その後の世代が水稲やダイズ、野菜類に飛来します。
- 成虫で越冬しますが、最寒月の平均気温が5度以下の地域では越冬できないとされています。
4 被害の特徴
- 成虫、幼虫ともに広食性で、水稲、ダイズ、野菜類、果樹類等32科145種以上の植物を吸汁することが知られています。
| 地域 | 穀類 | 豆類 | 野菜類 | その他 | 
|---|---|---|---|---|
| 茨城県 | 水稲 | |||
| 栃木県 | ダイズ | |||
| 埼玉県 | ジャガイモ,トウモロコシ等 | |||
| 千葉県 | オクラ | |||
| 東京都 | 水稲 | インゲンマメ | ナス,ブロッコリー,キャベツ エダマメ,スィートコーン,オクラ | ゴマ | 
| 神奈川県 | ササゲ | ナス,オクラ | ゴマ | 
- 
水稲では穂を吸汁し斑点米を生じさせます。班点米カメムシ類の中では大型で吸汁量が多いため、低密度でも斑点米の被害が大きくなるとされています。 
5 防除対策
- 水稲、ダイズ等の穀類・豆類の他、ナスなどの果菜類、ナシなどの果樹類等で被害が懸念されます。薬剤防除にあたっては、各作物のカメムシ類に登録のある薬剤を使用してください。

写真1 ミナミアオカメムシ成虫

写真2 ミナミアオカメムシ 小楯板の斑点
 
写真3 ミナミアオカメムシ 腹部背面が一面緑色

写真4 アオクサカメムシ 腹部背面が黒色

写真5 ミナミアオカメムシの触角

写真6 ツヤアオカメムシ 腹部背面の一部が紅色
*農薬を使用する際には、ラベル等を確認し使用基準に従って適切に使用してください。








