本文
令和5年度第1回社会福祉審議会議事概要
1 開催日時
令和5年7月5日(水曜日)午前10時30分から正午
2 場所
県庁29階 第1特別会議室
3 出席者
(1)委員
江村恵子委員、大谷良成委員、片野彩香委員、川原武男委員、佐藤明子委員、田尻洋子委員、永井勇一郎委員、永田理香委員、星野久子委員、峰岸嘉尚委員(五十音順)
(2)事務局
健康福祉部長ほか6名
4 議事
「孤独・孤立対策」に関する意見交換等について
令和5年6月に公布された「孤独・孤立対策推進法」(令和五年法律第四十五号)の概要及びポイント等について事務局から説明し、各委員による意見交換を行った。
主な発言内容
●委員
この「孤独・孤立」問題は幅が広く、各分野でご活躍されている皆様が取り組む課題の裏には、ほとんど孤独・孤立が関係していると思う。
振り返ってみると、孤独・孤立と言いながら、今までその2つを一緒くたに考えてきたのかなという反省もあるが、先ほどの事務局の説明に、「孤独」が主観的なもの、「孤立」が客観的なもの、というのがあった。今後施策や取組を進めていく上では、ある程度この定義をしっかり意識しながら取り組んでいかなければと思う。
また、「孤独・孤立対策推進法」は、それほど細かい内容が盛り込まれていないので理念法の位置づけだと思うが、1年前に担当大臣が設置され、今回、法律が制定されたことそのものに大きな意義があると感じている。孤独・独立の問題は、コロナ禍前からの大きな課題でもあり、生活困窮でも自殺問題でも、必ずその背景には、孤独・孤立が大きく影響している。災害支援の観点からも、長期化する避難所生活、あるいは仮設住宅生活の中で、孤独死というものが問題になっている。
様々な分野に孤独・孤立が関わっているが、今までは孤独・孤立に対して直接的に解決する施策というものは無かった。実際に今回の法律が制定されたことで、色々な施策がそれぞれ孤独・独立対策に絡むようになり、この法律により一体的に取り組むことになったという意味で、非常に意義がある。
●委員
今回、孤独・孤立という多分野横断的な視点をもってキーワードが提示をされたところだが、要支援者を支援に繋ぐアプローチとしてはソーシャルワークが有用かなということを、国の重点計画から強く感じた。というのも、孤独・孤立については「人間関係の貧困である」というような表現がされているが、そういった社会環境へのアプローチというものは、ソーシャルワークに特有の専門性であるため、そこが非常に求められているテーマなのかと考えた。
ソーシャルワークのプロセスに、「支援対象者の困りごとがどこにあるのか」ということを見つけていく「アセスメント」という段階があるが、これに取り組むに当たってどのような視点を持てばいいかといったチェックシートのようなものが、県レベルであるといいのかと考える。自分自身、群馬県のスクールソーシャルワーカーとして活動してた時期があったが、その際にアセスメントのためのシートが無かったことから、他県のものの参考にしてチェックリストを自作した経験がある。これから具体的な計画等を立てていかれることと思うが、やはり現場レベルだと、そういった様式を通じて視点を提示していただくと、ソーシャルワークが推進されやすくなるのかと思う。
また、重点計画の中では、学校教育において地域福祉を学ぶ機会を設けると良いのではないかといったような記述、多様な人や地域と関わってまた多様な生き方を認め合うことを理解する体験が必要だというような記述があった。今、群馬県社会福祉協議会と一緒に、小学生向けに福祉の仕事の魅力を伝えるイベントを企画している。介護と保育は何となく形になるが、それとは別にソーシャルワークも入れようという話になった。ソーシャルワークにも触れる機会を、学校の福祉教育でもどんどん取り入れていって、これを契機に新しい福祉教育の形みたいなものを提示できると良いと思った。
話は変わるが、群馬県は、行政の福祉職採用数が少なめなので、横浜市や東京などの県外に優秀な人材が流出をしているという現状がある。今回こういった孤独・孤立政策というものが打ち出されたので、社会福祉士や精神保健福祉士等のソーシャルワーカーの配置をもっと増やしていただき、養成校で一生懸命頑張って国家資格を取ってる学生たちが、群馬県で活躍できるような場所を提供していただけると養成校としても非常に嬉しい。
●委員
アセスメントシートにより、見える化して評価、チェックすることは、非常に大事だと思う。国の実態調査でも、大まかに5つの基準に分けて点数化している。福祉分野では色々な課題に対して色々な取組をしているが、一番の課題は、評価ができてないところだと思う。それが落とし穴になってしまい、なかなか次に繋がっていかない。
学校現場に関しては、群馬県の場合、スクールソーシャルワーカーが少ないので、その点が大きな課題になってると思う。
●委員
今、お話があった自治体での福祉職採用に関して、私自身も現場に長くいたこともあり、専門職の必要性は十分理解している。今年度、当自治体でも社会福祉士が1名採用になったところ。今、虐待対応等の場面で、活躍していただいている。現場に出る職員には、どうしても専門性の高いスキルが求められるが、自治体職員は3、4年で異動してしまうことも多く、ノウハウが蓄積しにくい。そのため、先ほどの提言は正にその通りだなと、私も感じている。
孤独・孤立の問題に関しては、自治体においても長年のテーマというか、中々解消が難しい問題。さらに、このコロナ禍で追い打ちが掛かってるという状況の中で、高齢者の方にとってはそれがまた、いわゆる介護予防の観点から見ても、フレイルになってしまったり認知症が進んでしまったりという状況もある。
先ほど、孤独と孤立の定義に関する話があったが、やはり難しいのは、他から見て「孤立だな、1人でどうしてるんだろうな」と思っても、実は本人はその生活を楽しんでたり、逆に支援をうっとうしがられてしまったりというような状況も、実際にあること。一方、周りから見て、「ちょっと心配だな」「手が必要じゃないかな」というときに、民生委員や自治会、あるいはボランティアの方の声かけにより打ち解け、繋がりの輪に入ってくるというような事例もあるため、やはり本人が意識できるかどうかの問題ではないだろうか。生活貧困やいじめのケースなどでは本人がSOSを出すケースが多いが、孤独・孤立の問題では本人がSOSを出さないケースが圧倒的に多いため、そのような時に、周りがいかに気づいてあげられるか、本人を気づかせてあげられるか、ということが非常に重要ではないかと思う。
当自治体では、社会福祉協議会にキッチンカーを配備し、民生委員さんとかボランティアさんに協力してもらいながら、高齢者のサロンで支援の輪を作っていく活動を始めたところ。サロン活動に、地域の新しい高齢者の方を呼び込んでもらっている。主に高齢者が対象だが、そのような形で社会的な孤独・孤立の問題の解消に少しでも繋けることが出来ればと日々活動しているような状況。
●委員
市町村には地域包括ケア推進協議会や地域共生社会に向けたプラットフォームなど、様々な協議体を担っていただいている中で、今回、国を挙げて進められる孤独・孤立対策においても、地方自治体に協議体の設置が求められている。「またか」といった部分もあると思うがどうか。
●委員
実は、似たような協議体が結構ある。構成員も似通ってしまうこともあり、「何が違うんだ」といった話にはなると思う。必要性について整理した上で、本当に必要な組織であれば、やはり設立するべきだが、既にある組織をうまく活用する方法もあるかと思う。
●委員
女性としての意見として聞いていただければと思うが、今まで誰もが住み慣れた場所で安心して暮らせる社会を目指して、地域包括というシステムができたかと思う。それによって、孤立については、発見しやすい状態になっているとは思うが、孤独については、本人が声を上げにくく発見しにくいという状況にあると思う。
まず、「私は寂しい」とか、「こうであったらいいのに」ということを言う環境がない。言う相手がいない。孤立を防いていろんな人たちが関わってくれるが、それはあくまで仕事としての対応であり、相性の問題もあるので、困っている方が相談先に選ばないこともある。このため、孤独に関しては、第三者から分かりにくいのかと思う。
そういった時に、それを察知できるのは、やはり一番は地域ではないか。ただ、地域活動というのも、これがまたすごい男性社会だと思うのだが、確かにボランティアだとか、そういったところに女性はいるのだが、自治会の組長はほとんど男性。そうすると何かの行事をするにしても、行事を遂行することが目的になっている。一方、集まってくる人たちは、比較的、そこまで目的を遂行する意識は強くないため、かえってその中で繋がりを作りやすかったりすることがあると思う。地域活動を活発にして、そういう状態を作りやすくしたり、あるいはそれに対してのアンテナを高くするには、組長に女性を入れることがとても必要ではないかと思う。
●委員
県では、この審議会などでもだいぶ女性委員を入れていただいたものと思うが、色々な集いの場や団体見ると、女性の参画が多いように思われ、男性はなかなか入ってこない。地域の様々な集いの場に、いかに男性に参加してもらうかという課題もある。
先に実施された国の実態調査では、女性より男性の方が若干、孤独感が高いという結果が出ていた。自殺予防の議論でも同様だが、男性の中でも中高年の孤独感が高い。一方、今回の調査では、女性は、割と若年層が高い結果であった。また、全国で有名なNPO「あなたのいばしょ」では、7,8割が女性からの相談であるという。孤独・孤立に関しては、男性と女性で違いがあるのだろうか。
●委員
男性の方がやはりプライドが高い等色々あるのだと思う。だから男性の方が孤立しやすい。
自治会の役員などは、男性がほとんどになっているので、そういったところを感知しにくいというのがあるのではないかと思う。男性も女性も孤独感の高い世代の分布はあるかと思うが、例えば自殺であれば心のケアのような電話相談があったり、DVはDVで相談したり、それぞれに相談窓口がある。
ただ、様々な相談窓口を本人が見つけにくいので、そういった時にちょっと手助けしてもらえるような人が、すぐそばにいるといいなと思う。
●委員
精神障害者を対象としたボランティアを行っており、月に1回、地域の公民館で料理教室を開いている。その際に、1箇月どんな風に過ごしたか、薬は飲めているか、お金の使い方は大丈夫かなどを聞き取ったり、困っていることは無いか、などの話をしたりしている。また、活動を通じ、支援対象者の親御さんの一番の心配ごととして、「自分が亡くなった後、子が1人で暮らしていけるのだろうか」といったことも聞かれている。
そういった場に出て来られる方は良いが、病院から出て地域で暮らしている障害者の方が全員来てくれているか、というとそうでもないので、そういう人たちを取り込んで、これからも活動を続けていきたい。
●委員
コロナ禍においては、孤独・孤立が深刻化していた部分もあったかと思う。活動するのも厳しい状況だったと思うが、そういった中でも各ボランティア団体の皆様に継続した繋がりを作っていただいており、敬意を表するところ。
例えば、こども食堂などでは、コロナ禍により食事のために集まることはできないが、お弁当作って届けるあるいは取りに来てもらう活動を行い、そこで色々お話を聞いたりすることで繋がり続けることができ、孤立感を感じずに済んだという話もある。集まりやすい人に集まっていただくというのも非常に大事なのかなと思う。
●委員
知的障害者の権利擁護を目的とする団体で活動しているが、やはり孤独・孤立は非常に深刻な問題であると捉えている。
おそらく、ひきこもりもこれ含まれると思うのだが、ひきこもりの中には障害児が多く含まれているという話も聞いている。社会に出て就職を試みるもののうまくいかず、結果的にひきこもってしまい抜け出せないケースが多いようである。そのような中、今年度、発達障害者の当事者団体に手をつなぐ育成会の下部組織として加入いただいた。会として、これから、そういった方々を支援して、少しでもそういった方々の力になれればということで、活動を始めているところ。
しかし、一番大切なことは、地域が変わらなければ声が上げられないということかと思う。昭和時代と比べて充実した社会生活になってているとは思うが、人々の心の繋がりや地域で見守るという体制が、全く変わってきていることを実感している。受け入れ体制が構築されていないというのが原因の1つであって、そういった社会であると、やはり声が上げにくい。国の重点計画の中にも、「声を上げやすい社会」という言葉もあるが、重点的に取り組んで欲しい。また、団体単位で障害に対する理解促進の取り組みを今後も続けていきたい。
個人的な話になるが、操作ミスによる自動車事故を契機に近所の高齢者が免許を返納したケースがあった。移動手段がないということで、孤立に近い状況に陥っているが、そういった一例をきっかけに、地域が変わる必要、理解する必要が必要ではないかと感じている。
●委員
地域が変わらないと、という部分が、今回の法律の肝ではないだろうか。どなたかの講演で、「昭和の時代に戻すこと」が孤独・孤立対策の一番わかりやすいイメージだと聞いたが、まさにその通りかと思う。そういった中で、様々な当事者団体が孤独・孤立を防ぐ大変大きな役割を果たしてきているが、障害分野にかかわらずどの当事者団体も会員が減少・高齢化しており、運営・存続がままならなくなっているという状況がある。これも今後大きな課題になってくる。
●委員
孤独・孤立と分けて論じられているが、実際に私たち民生委員児童委員が活動する中では、特に意識して使い分けてはいないように思う。
民生委員児童委員協議会は、県内28市町村で70歳以上の独居高齢者への訪問を行っている。訪問して、話を聞いて、様子を窺うと、孤独・孤立のどちらかになるかは分からないが、少なくとも支援が必要そうだと言うことを察知することがある。そういった情報を月1回の定例会議で共有し、地域で対応しているところ。私が民生委員児童委員となっている高崎市では、市内29か所に「高齢者あんしんセンター」があり、その機関も彼らの情報持っているため、協力して色々対応している。
先ほど話が出た高齢者のサロンについて、最初の目的は引っ込み思案な高齢者を連れ出すことを目的としていたが、今は元気な人が集まって、元気な人だけでやっており、なかなか本来の趣旨と違ってきている。また、時々、男性にも地区のサロンに参加してもらえるが、体操やお絵描きなど活動内容がやや女性向けな面もあり、だんだん来なくなってしまうケースがある。なるべく男女の差なく、サロンで対応できる体制があると良いと思う。 このほか、私の担当地区だけではないと思うが、週1回、地区の人を集めてラジオ体操を行っている。高齢者中心となってしまうが、体操した後に男女関係なく集まって話をしたり、地区の情報交換をしたりしている。そういった場での情報も拾い、またそれを民生委員の活動に活かしているというところが現状。
民生委員の訪問活動は、安否確認と友愛訪問が主旨なのだが、中には訪問しても会ってくれない人もいる。そういう人に会うのはなかなか大変。また、男性独居者の家に女性が行くとなると、やっぱり怖がるという状況もある。そういう場合、私の地区では誰か誘って2人で行くような形で訪問している。
法律で進めていく形が良いのかどうかは分からないが、先ほども話があったように隣近所の付き合いというのが昔と変わってきているので、孤独・孤立対策というのはなかなか難しいのではないか。まさに、昭和に戻れば、一遍に解決するようなものなのではと思う。
●委員
民生委員さんには、ひきこもり、ヤングケアラーなど、地域共生社会に向けて様々な課題に対する役割を担っていただいている。特に、大谷委員がいる高崎市では、ヤングケアラーに積極的に取り組んでいただいているところ。今後、孤独・孤立の問題についても、これらと同様に担っていただく役割になってくるのかなと思う。
群馬県の民生委員さんは、ご存知のとおり全国と比べて従事期間が短い。改正の時期には、全国では3割程度のところ、ほぼ半分の方が代わってしまい、一期で終わってしまう方も多い。できるだけ若いうちに民生委員になっていただき、継続して従事いただくことが必要かと思う。
●委員
困っている人が相談する先として、行政の窓口はハードルが高い。そんな時には市民が活躍して、相談しやすい地域を少しずつ作っていくことが大事だと思っている。私自身は社会福祉士会から委員として選出されているが、私が従事する群馬県共同募金が、そのような仕組みを作る事業に対して助成しているので、4つほど紹介させていただきたい。
1つ目はグリーフケアに取り組むNPO。大切な人を亡くして気持ちが沈んでしまい社会復帰が難しくなってしまった方々を支援するためのファシリテーターの養成と、地域展開を実施している。
2つ目は、居住支援法人ととして住まいに困った方々の住宅を確保するだけでなく、伴走支援により自立支援を実施する団体。
3つ目が、外国人労働者のリーダーの養成をするNPO。言葉の問題で仕事を辞めてしまい孤立してしまう外国人を作らないよう、外国人労働者のリーダーを育成するの研修実施と、その取り組みに協力してくれる企業を募集している。
4つめが、当事者同士のピア支援を支援する団体。多くのピア支援は、支援者の熱意で動いており、燃え尽き症候群みたいなことが起きてしまう。そのようなことを鑑み、支援者の支援が必要だということで、ファシリテーターや支援者のほか、支援者の支援者を養成している。
これらのような人を育てる仕組みというものがないと、おそらく市民活動も活発にならないし、声を上げる人もなかなか出てこないのではないか。色々な「居場所」は数多くなってきたが、提供されるものを消費するだけのような場になってしまっては、参加者も行きづらくなってしまうような気がするため、お互いそれぞれ役割を持ちながら、自立した場を作っていくことが大事かと思う。また、そのような場を作るためのファシリテーターや、それを支援するSV(スーパーバイズ)の仕組みが必要だと思い、共同募金会として支援を行っている。動き出しを民間で支援しつつ、仕組みとして形になれば、例えば行政の方でその仕組みを支えていく等、県域の段階では個々の支援というよりは、仕組み作りに注力する方が良いのではないかと思う。
先ほど、ソーシャルワークの話があったが、その中でも、ソーシャルアクション(社会福祉制度やサービスの改善・創設を促すための活動)の部分が非常に弱いと思っている。先ほど挙げたNPOには社会福祉士のようなソーシャルワーカーがいないのだが、皆さん自分たちで考えて仕組みを作って人を巻き込んで動こうとしている。
一方で、社会福祉を学んできた社会福祉士たちが、そういった社会資源を作るということにまだ弱く、そこに関われてないというのが現実。そのようなこともあり、社会福祉士会としては、自発的に社会を変えようとする社会福祉士を育てる必要があるかと思っている。
●委員
冒頭に、県内のNPOが様々な取組を行っていることを紹介いただいたが、こういった団体と連携を図るということも大きな課題かと思っている。社会福祉士は、役所や施設に所属したり、個人で起業したりと、それぞれがそれぞれの立場で活躍している。そういった総合力の部分では非常に力になるというものがあるかと思う。ヤングケアラーについても、県内社会福祉士の有志が自発的にNPOを立ち上げて活動を始めているが、今後は、孤独・孤立についても社会福祉士会としての取り組みに期待している。
●委員
全国で何度か実施された相談支援ダイヤルに参画したり、個々の会員がどのように相談支援に入っていくか、と動き始めていたりしている。まずは、社会福祉士のメンバー間で、そういったことの必要性を認識していけるように、という段階。ゆくゆくはそういった取組を先陣切ってやっていくべき立場だと思っている。
●委員
児童養護施設に入ってくる児童を見ると、子どもの孤立というよりは、出身世帯、家庭が地域から孤立しているように見える。
今日のテーマの孤独・孤立対策に関しては、孤独・孤立の状態にある人を見つけるという点が、非常に難しいと思っている。孤立している状態であっても本人が深刻に困っていなければ、おそらく誰に相談することもないだろうし、客観的に見て周りが心配になるような状況であっても、本人が大丈夫であると言うなら、そこから先はちょっと手が出せないという話になる場合が多いのではないだろうか。そういう人たちを見つける、という話になると、やはり御近所の方や民生委員さん、あるいは子どもの関係であれば、学校や保育園の先生などに、孤独・孤立の視点をもって接してもらうのが一番かなと思う。
ただ、子どもの場合はそれで良いのだが、大人なってから孤独だ孤立だと言っても、誰も相手にしてくれない。特に親御さんが元気で、ちゃんと収入があったりすると、別に本人が働かなくても生活をしていける状況もあり、もしかしたらそれは孤独・孤立ではないのかもしれないが、そうなると結構厳しいのではないか。ただ、やはりそういう若者は、きちんと働きに行って社会に出た方が良いのではないかと思う。
それから、高齢者の孤立死の問題もあるが、亡くなってから何か月も気づかれずにいるというのは、非常に可哀そうだと思う。独りで亡くなること自体は仕方ないとは思うが、それをすぐに発見してあげる体制を用意しておくことは必要。また、ひとり暮らしの高齢者の中には認知症の方もいるが、そういう状況になったら、ご近所が頻繁に見守りを行うしかないと思う。
以前に、とんでもない状況の家に独り暮らしをしている高齢者を取り上げたテレビ番組を見た。病気もあるとのことだったが、福祉の手を借りずに1人で生活しており、その人はその人なりに頑張ってる様子であった。そういった方などは、行政に対しても「大きなおせっかいだ」という意識もあり、支援していくことが難しいなと思う。
孤独・孤立対策に取り組むに当たり、市町村単位で協議会を作る必要が出てくるとなると、これもまた大変なのでは。作ったとしても議題やメンバーが他の協議体と重複してしまうのではないか。
●委員
孤独・孤立の問題では、これまでは独居高齢者と中心に、という風潮があった。今は、若年層が孤独感を強く感じているといった課題が生じてきている。これは、学校や職場では友人がいる、あるいはSNSで繋がってはいるが、孤独感が強いというもの。
色々な原因、要素が絡み合っていて特効薬が無い、というのは、自殺対策でも孤独・孤立対策でも重なっている部分。自殺の理由として「孤独」というものは上位に上がってはいないが、おそらくその裏には強い孤独感が関係しているのかなと感じている。
また、見つけるのが難しいという話は先ほどから出ているが、日本人は人に迷惑をかけないようにと言われて育っていることも多く、「孤独は自分の責任」という思いがあり、なかなか人に相談することができないのでは。私の世代だと特に感じる部分。
●委員
里親の会では、里親や里子、特別養子縁組をした子の孤独や孤立に関した取り組みとして、里親サロンや研修、おしゃべりの会などを実施している。また、「里親ピアサポート」という取り組みも実施しており、近隣地域の里親5,6組を1グループとして悩みを共有できる場を設けている。今は、県内で11グループが活動。今後、特別養子縁組成立後の支援、自立に向けての支援、ユース活動等にも力を入れていけたら「孤独・孤立対策」へと繋がるのではないかと考えている。来年度には里親支援センターができる予定と伺っているので、そういった関係機関とも繋がりをもって活動していきたい。
里子を「かわいそうな子」という目線で見る里親も中にはいる。たしかに里子はつらい過去を持っているかもしれないが、今は安心安全な状況で暮らすことができているので、その子を「かわいそうな子」にしないようにしていきたい。また、地域の皆様にもそういった視点を持ってもらいたいし、もっと里親が地域に深く根付いていければ良い。里子と接していると、実親が社会から孤立してしまっている家庭が多い印象。実親に放置されてしまいヤングケアラーとして幼いきょうだいの世話をする中で、近所に食べ物を貰った話など、実親が誰かに頼ることができていない状況が窺えたケースも聞く。
今、里親の中でも受援力——自分から「助けてください」という力や、自分を大切にするこが大切だと思っている。里親さんは「自分が頑張らなきゃ」と力入ってる方が多いと思うのだが、自分がいっぱいいっぱいになってしまうと、余裕がなくなり孤立していってしまうので、まずは自分を大事にして、余裕ある状態で周りの方に接していけるような形にしていくのが良いと考える。また、支援を求めたのに話を聞いてもらえなかったとか、話は聞いてもらえたが責められたように感じたといった経験があると、支援を求めることから遠ざかってしまうのかと思う。
児童相談所と関係機関の連携にも気になる部分がある。ただ、児童相談所も今の人数では手一杯の様子なので、もっと実親に対するケアを手厚くするため、職員の拡充も必要なのではないか。
●委員
児童相談所の話が出たが、福祉人材が全般的に手薄になっている。永田委員にも色々取り組んでいただいているが、これから危機的状況にならざるを得ない。現場ではIT活用等による生産性の向上を図っているが、やはり福祉は最終的には人と人というところがあり、全部をITに委ねることが難しい。いのちの電話などでも相談員が不足している話を聞くが、同様のことが今後の世の中で起きていくのかと思う。
○地域福祉推進室長(事務局)
孤独・孤立は様々な分野に関わる問題であるため、庁内関係課による連絡会議の立ち上げ等により各部局と連携しながら、まずは庁内での取り組みを進めていきたいと考えているところ。
本日も御意見いただいたが、地方自治体の努力義務となっている孤独・孤立対策地域協議会については、既に様々な地域協議会が存在していることもあり、今後どのような形としたらよいか本日いただいた御意見を踏まえながら検討していきたい。また、孤独・孤立については福祉のみならず、労働、教育等の他分野にも関わる問題である。そういった多くの方に関わっていただき、孤独・孤立の観点を意識してもらうということが本当に重要と考えている。
本日は貴重な御意見、ありがとうございました。
●委員
孤独・孤立問題における様々な課題が見えているところだが、また逆に、孤独・孤立対策にしっかり取り組んでいる色々な方の姿が見えてきたと思う。今後も皆様から意見をいただきながら進めていただければと思う。
他県では、官民連携プラットフォームや地域協議会が組織されている例も見られる。群馬県はこれからだと思うが、本日話題にもなったように色々な地域協議会が重層的に設置されている部分もあるので、一度整理をしていただければ。
ただこの取り組みは、地域共生社会に向けた取り組みとほぼ方向性は一致してると思う。例えば、今取り組まれている重層的支援体制整備事業がまさに孤独・孤立に向けた取り組みであるということを感じているところ。
先ほど室長からも話があったように、孤独・孤立対策については、「孤独・孤立対策のために新たな取り組みを始める」というより、生活困窮対策、自殺対策、引きこもり対策と色々実施する中、それぞれの取り組みで孤独・孤立の視点を取り込んでいただければと思う。