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介護給付費支給決定処分に係る審査請求(答申)(令和5年度1件目)

更新日:2023年8月22日 印刷ページ表示

件名

 介護給付費支給決定処分に係る審査請求

第1 審査会の結論

 処分庁太田市長が令和4年12月5日付けで審査請求人に対して行った障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号。以下「法」という。)に基づく障害者介護給付費申請に対する支給決定処分の取消しを求める審査請求(以下「本件審査請求」という。)には、理由があるので、行政不服審査法(平成26年法律第68号)第46条第1項の規定により本件処分を取り消すべきである。

第2 事案の概要

 本件は、審査請求人が処分庁に対して申請し、処分庁が令和4年5月16日付けで受理した法第20条第1項に基づく介護給付費の支給申請(以下「本件申請」という。)に対する処分庁の令和4年8月22日付け介護給付費等支給決定処分(以下「本件処分」という。)につき、審査請求人が本件処分を不服として、法第97条に基づき、審査庁に対して審査請求をなしたものである。

第3 審理関係人の主張の要旨

1.審査請求人
 審査請求人の主張は、本件処分は、以下のとおり違法な処分であることから、本件処分を取り消すことを求める、というものである。
(1) 法令上の勘案すべき事項の調査、検討における裁量権の逸脱・濫用
 処分庁は、審査請求人の心身の状態は落ち着いているとしているが、家族介護の状況は日々悪化しており、現在の支給量は負担の解消には程遠いものである。父は、勤務先の理解と協力があっての在宅勤務であるが、夜間介護時には、仕事の時間を介護の時間に奪われ睡眠不足により体力を十分に回復できない。また、父は時給制のため、勤務時間が短くなればその分収入も減少する。
 審査請求人は、自費負担でヘルパーを入れていたが、その時間だけ介助が必要ということではない。苦しい経済状況との兼ね合いによるものである。経済的に可能であれば、自費負担分はもっと多かった。自費負担分の補填だけでは、家族介護の負担は解消されない。
 審査請求人は、常時介護が必要な状態である。現在の介護が本人にとって適切なものであったため、現在は自傷他害が頻発するような状態は脱している。
 支給量の不足に対しては、家族介護か自費負担によるヘルパーを入れるしかない。現在は、父が月約200時間分の介護を行うほか、制度外(ボランティア)でのヘルパーの支援も受けている。処分庁は、現在の状況が、家族の犠牲とボランティアによる支援によるものであることを理解していない。このままでは家族が崩壊しかねない。
 また、審査請求人は、家族介護ではなく、家族との交流を求めている。処分庁は、生活介護や施設入所を勧めているが、それは家族とは離れ離れになるものである。処分庁の主張は、審査請求人の意向を歪曲しているだけでなく、審査請求人の自立に向けた視点も欠如したものである。
(2) 市の財政状況の勘案は、裁量権の逸脱・濫用
 本件処分の理由として、重度の強度行動障害者全員を24時間介護とすると市の最終欠損になることを挙げているが、財政状況は法令上の勘案事項には含まれていない。
(3) 将来の市の障害福祉サービス等を見通した検討は、裁量権の逸脱・濫用
 処分庁は、「近所に日中活動支援型の強度行動障害も受け入れ可能なグループホームが令和4年秋に開所するなど、他の社会資源も検討できる。月末に短期入所ができるとよい」「国の支援方法としては、在宅支援で悪化した場合は施設で一時的に集中支援が有効との調査結果が出ている。また、5人の小規模ユニットで1対1の支援が受けられるユニットホームの創設を検討している」などを本件処分の決定理由として挙げているが、将来の施設入所等を視野に入れた支給量は、現在必要な支給量と異なる。本件請求は、現在必要な重度訪問介護の支給量であり、将来的な施設入所や生活介護を前提としていない。また、審査請求人のような強度行動障害を有する利用者を本人の精神や生活を安定させたままで介護できる体制が現場レベルで構築されているのかも明らかではない。
 また、国の支援方法については、内容の根拠もなければ具体性もなく無関係な事情であり、これが処分理由の一つであるならば、他事考慮も甚だしく処分の違法は明らかである。
2.処分庁
 処分庁の主張は、以下のとおり審査請求人の本件審査請求に理由はなく、本件審査請求は、速やかに棄却されるべきである、とするものである。
(1) 法令上の勘案すべき事項の調査及び検討において、裁量権の逸脱・濫用はない
 審査請求人は、日中活動が充実し夜眠れるようになっている。父は週2日の出勤でその他は在宅での作業が認められており、通勤の負担は軽減されている。
 また、重度訪問介護により、審査請求人の生活は安定している。父が介護することにより、父と過ごす時間がもてている。父と会わないと不安定になることからも、24時間介護は審査請求人の希望する生活ではないと解される。本件処分は、家族との触れ合いも希望しているという行動を踏まえてのものである。
(2) 市の財政状況の勘案に、裁量権の逸脱・濫用はない
 介護給付費の支給量の決定は、法第22条第1項において、その他の厚生労働省令で定める事項を勘案して要否決定するとあり、市町村の合理的裁量に委ねられていると解される。
 また、太田市障がい者(児)の障害福祉サービス等に関する支給基準(以下「市支給基準」という。)では、予算範囲の中で決定することとなっており、非定型の支給に関しても予算範囲の考え方は適用される。
 24時間重度訪問介護では、支給額は年間一人当たり約3,600万円となる。市内の行動スコア20点以上の人は24人だが、平均支給額は一人当たり月約50万円。審査請求人は現状で月約200万円であり、公費負担に偏りが見られる。
 国の通知では、介護給付費等の支給決定は、公平かつ適正に行うため、市町村は予め支給の要否や支給量の決定の基準を定めておくことが適当とされている。また、非定型の支給決定では、個々の障害者の事情に応じて基準と異なる支給決定を行う場合を想定し、非定型の判断基準等を定めておくことが望ましいとされている。
 以上のことは、公平性を保つためと解される。
(3) 将来の市の障害福祉サービス等を見通した勘案に、裁量権の逸脱・濫用はない
 国は、障害者の重度化・高齢化や「親亡き後」を見据えた居住支援のための体制づくりを推奨しており、市でも地域生活支援拠点を整備している。また、障害福祉サービス等報酬においても、障害者の重度化・高齢化への対応として強度行動障害を有する者を組み入れた報酬体系の見直しを行っており、この流れを受け、市内でも日中サービス支援型の居住支援を行う事業所が毎年開設されている。このような制度改正や地域の障害者支援施設の状況も踏まえて、その他のサービスの利用も検討が必要である。
 精神科病院の担当医は、「よく説明をして本人の行動に合わせて支援すれば行動障害は抑えられる」と言っている。ヘルパーの支援によって通常の生活ができるようになっており、更なる社会参加が期待できる状況にある。
 上記状況を勘案して支給決定することは、裁量権の逸脱・濫用にあたらない。

第4 審理員意見書の要旨

 本件処分は、他事考慮の違法・不当があることを窺わせるものであり、また、考慮すべきでない事項を併せ考慮して勘案事項を検討したこと自体が、本件支給決定に到る判断過程に裁量権の逸脱・濫用があったものとみざるを得ない。
 したがって、本件審査請求には理由があり、審査請求を認容し、本件処分は取り消されるべきである。

第5 調査審議の経過等

1.当審査会は、本件諮問事件について、次のとおり、調査審議を行った。
 令和5年6月21日 審査庁から諮問書及び諮問説明書を収受
 令和5年7月10日 審査請求人から主張書面を収受
 令和5年7月14日 調査・審議
2.審理手続の適正について
 本件審査請求について、審理員による適正な審理手続が行われたものと認められる。

第6 審査会の判断の理由

1.支給決定に係る法令上の規定
(1) 市町村は、法第20条第1項の規定に基づき交付申請があったときは、
ア 市町村審査会が行う当該申請に係る障害者の障害支援区分に関する審査及び判定の結果に基づき障害支援区分の認定を行い(法第21条第1項)、
イ 支給申請に係る障害者の障害者等の主務省令(厚生労働省令)で定める事項(以下「勘案事項」という。)を勘案して介護給付費の支給要否決定を行う(法第22条第1項)、
ものとされ、法第22条第1項の厚生労働省令で定める事項として、法施行規則第12条第1号から第9号までに次の勘案事項が定められている。
(ア)障害者の障害支援区分又は障害の種類及び程度その他の心身の状況
(イ)当該障害者の介護を行う者の状況
(ウ)当該障害者に関する介護給付費等の受給の状況
(エ)当該障害児が現に障害児通所支援又は指定入所支援を利用している場合には、その利用の状況
(オ)当該障害者が現に介護保険法の規定による保険給付に係る居宅サービスを利用している場合には、その利用の状況
(カ)当該障害者に関する保健医療サービス又は福祉サービス等の利用の状況
(キ)当該障害者の障害福祉サービスの利用に関する意向の具体的内容
(ク)当該障害者の置かれている環境
(ケ)当該申請に係る障害福祉サービスの提供体制の整備の状況
(2) なお、厚生労働省が作成した「介護給付費等に係る支給決定事務等について(事務処理要領)(最終改正令和5年4月)」(以下、「事務処理要領」という。)においては、
ア 市町村は、勘案事項を踏まえつつ、介護給付費等の支給決定を公平かつ適正に行うためには、あらかじめ支給の要否や支給量の決定についての支給決定基準を定めておくことが適当とされているほか(事務処理要領第2の7の3の(1))、
イ 支給決定基準の支給量の範囲内では必要な受託居宅介護サービスの支給量が確保されないと認められる場合には、当該支給決定基準を超える支給決定を行うこととして差し支えなく、この場合、支給決定に当たって市町村審査会の意見を聞いた上で個別に適切な支給量を定めることが望ましい(事務処理要領第2の7の3の(1)のアのウ)、
とされている。
2.本件支給決定に到るまでの経緯
 (1)ア 事務処理要領によると、勘案事項の考慮については、まず申請者本人から市町村の職員が行うことが原則とされているが、本人からだけでは十分な聴取りが困難である場合、本人の状態をよく知っている者(家族のほか、事業所・施設・精神科病院を利用している者については事業所・施設・精神科病院職員を含む。)からも聴取りを行うことが必要な場合があるとされている。
イ 本件処分に係る変更申請以前、処分庁は、令和3年10月15日に、審査請求人からの支給量744時間への変更を求める変更申請を受け、令和3年11月17日の訪問調査時に家族(父、母)、相談支援専門員、代理人弁護士、訪問介護員からの聴取調査、令和3年11月29日に精神科医師(主治医)との面談調査などを行い、審査会における非定型の申請に係る意見聴取を経て、令和3年12月8日に380時間の支給決定を行った。
ウ 令和4年2月15日、審査庁は、障害支援区分更新のための認定調査を審査請求人の自宅で行い、令和4年5月11日、従前同様、障害支援区分6の認定を行った。
エ  処分庁は、令和4年5月16日、審査請求人からの本件処分に係る申請を受け付け、家族ほか関係者への聴取調査を行うとともに、令和4年7月13日に審査会における非定型の申請に係る意見聴取を経た後、さらに令和4年8月9日にサービス利用に関する支援者会議に出席して聴取を行った上で、令和4年9月6日、本件処分(令和4年8月22日付け)をした。
 (2) 以上の経緯に照らせば、処分庁においては、(ア)審査請求人においては家族やヘルパーの献身的な介護のもと現在は落ち着いている状態であること、(イ)家族の経済状況、(ウ)24時間の重度訪問介護を希望していることなどを含めて聴取調査により確認・把握しており、支給決定(支給量基準と乖離する場合)の要否に関する審査会資料、重度訪問介護24時間要求に係る精神担当医への面談記録、重度訪問介護24時間要求に係る訪問調査、サービス利用に関する支援者会議録などの記録を見ても、記録は一定程度に詳細に記載がなされており、調査懈怠自体を窺わせるような矛盾記載は認められない。
3.検討・判断過程に他事考慮の違法・不当ありといわざるを得ない
(1) 本件処分の理由
 令和4年8月22日付け本件処分の支給決定書と共に送付された同日付け「障害福祉サービス支給量の変更申請に係る交付決定について」(以下「交付決定通知書」という。)には、「下記理由により別添のとおり支給決定通知を送付いたします」との記載がなされている。
 そして、交付決定通知書では、「1.464時間の算定について」として本件処分で決定された「464時間」の計算式が記載されるとともに、「2.審査会意見に基づいた決定理由」として10項目が掲げられているところ、これら10項目は、「審査会意見に基づいた決定理由」とされていることからも、単に審査会で個々の構成員が述べた意見を列挙したものではなく、処分庁が審査会で顕出された個々の意見を踏まえて処分庁自ら支給決定を行う判断をした理由を掲げられたものとみるべきものである。
(2)本件処分の理由には他事考慮の違法・不当があること
ア 障害福祉サービスの見通しに留まる事項を併せ考慮したことの違法・不当
 ところで、これら10項目のうち、4つ目の「〇」の後段には、「また、5人の小規模ユニットで1対1の支援が受けられるユニットホームの創設を検討している」との理由が掲げられ、また、5つ目の「〇」には、「近所に日中活動支援型の強度行動障害も受入可能なグループホームが令和4年秋に開所するなど、他の社会資源も検討できる」との理由が掲げられている。
 この点、そのサービス支給決定の是非を検討するに当たっては、現在の申請者の介護を要する状況に基づいてその要否が決定されるべきであり、活用すべき社会資源を考慮するにしても、現在時点で存在しない社会資源の利用を前提として考慮することは、申請者が当該資源を利用できるか否かは不確実であるという意味において、許容されることではない。
 したがって、処分庁の本件処分に当たり、処分時点で現実に存在しない上記「1対1の支援が受けられるユニットホーム」(の活用)があり得るからといってこれを理由に申請者の処分時点の支給決定内容を増減させることは、将来の不確実な事項を判断の材料としたという意味において、考慮すべきでないことを考慮した他事考慮の違法・不当があるものと評価せざるを得ない。
イ 支援方法に係る研究成果を審査請求人の状況等に紐付けることなく併せ考慮したことの違法・不当
 さらに、これら10項目のうち、4つ目の「〇」の前段には、「国の支援方法としては、在宅支援で悪化した場合は施設で一時的に集中支援が有効との研究成果が出ている」との理由が掲げられている。
 支援方法の研究成果それ自体やそれを参照することが全面的に否定されるものではないが、サービス支給決定に当たり、当該申請者に必要とされるサービスとの因果関係の吟味を経ることなく単に研究成果を当てはめることは、各申請者にとって真に必要なサービスを具体的に検討すべきことに反することとなる。
 したがって、処分庁の本件処分の理由として、審査請求人の状況等が何ら紐付けられることなく国の支援方法における研究成果が掲げられること自体が、考慮すべきでないことを考慮した他事考慮の違法・不当があることを窺わせるものである。
ウ 上記2点の他事考慮が勘案事項の評価・検討に及ぼす影響
 以上2点の考慮すべきでない事項は、いずれも、審査請求人の心身の状況、介護を行う者の状況その他審査請求人独自の事情とは無関係のものである。適切な調査によって把握された審査請求人の心身の状況自体は正当であったとしても、これに必要な障害福祉サービスがいかなるものかを評価・検討するに当たり、考慮すべきではない将来の社会資源を併せ考慮してしまうことで、現在の心身の状況にとって必要とされる現在の障害福祉サービスが何かについての評価・検討、判断を誤ることとなりかねない。
 したがって、処分庁が、以上2点の考慮すべきでない事項を併せ考慮して勘案事項を検討したこと自体が、勘案事項を把握するための調査がいかに適切に行われていたとしても、その評価に当たって他事考慮により判断の妥当性を失わしめるという意味において、処分庁における個々の勘案事項に関する検討の正当性を揺るがせ、結局、本件支給決定に到る判断過程には裁量権の逸脱・濫用があったものとみざるを得ない。
エ 財政事情の考慮自体は違法とまではいえない
 なお、審査請求人は、これら10項目のうち、3つ目の「〇」に掲げられる「市の歳入欠損」を考慮することは、省令の勘案事項にも掲げられておらず、違法である旨主張する。
 この点、法(及び省令)は勘案事項のみを定め、これを考慮する以外には、目的、基本理念、市町村等及び国民の責務を定めているものであり、実際の支給量の決定については市町村の裁量に委ねられているのであって、そこにおいて支給決定市町村の財政事情を全く考慮に入れないことは不可能であり、処分庁が処分庁の財政状況を考慮要素の一つに掲げたこと自体を違法とすることはできないものと思われる(参照 札幌高等裁判所平成27年4月24日判決・判例地方自治407号65頁)。もっとも、具体的な事情を掲げることなく抽象的に財政事情を理由とするのみでは、いかなる事情が考慮されたのかが不明であり、理由として十分なものとはいえない。
オ 小括
 以上の次第であり、本件処分に当たり、処分庁が、交付決定通知において理由に掲げるとおり、障害福祉サービスの見通しに留まる事項を併せ考慮したこと、及び、審査請求人の状況等に紐付けることなく支援方法に係る研究成果を併せ考慮したことは、考慮すべきでないことを考慮する他事考慮といわざるを得ず、このことは、勘案事項の評価・検討に影響を及ぼすものであることから、本件処分は、処分庁の判断に裁量権の逸脱・濫用があったものとして、違法との評価を免れない。
4.上記以外の審理関係人双方の主張について
 その余の審理関係人の主張に、「第1 審査会の結論」記載の結論を左右する点は認められない。

 以上のとおり、本件審査請求には理由があるから、「第1 審査会の結論」のとおり答申する。

関係法令の規定

1.障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)
(目的)
第1条 この法律は、障害者基本法(昭和45年法律第84号)の基本的な理念にのっとり、身体障害者福祉法(昭和24年法律第283号)、知的障害者福祉法(昭和35年法律第37号)、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和25年法律第123号)、児童福祉法(昭和22年法律第164号)その他障害者及び障害児の福祉に関する法律と相まって、障害者及び障害児が基本的人権を享有する個人としての尊厳にふさわしい日常生活又は社会生活を営むことができるよう、必要な障害福祉サービスに係る給付、地域生活支援事業その他の支援を総合的に行い、もって障害者及び障害児の福祉の増進を図るとともに、障害の有無にかかわらず国民が相互に人格と個性を尊重し安心して暮らすことのできる地域社会の実現に寄与することを目的とする。
(基本理念)
第1条の2 障害者及び障害児が日常生活又は社会生活を営むための支援は、全ての国民が、障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものであるとの理念にのっとり、全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現するため、全ての障害者及び障害児が可能な限りその身近な場所において必要な日常生活又は社会生活を営むための支援を受けられることにより社会参加の機会が確保されること及びどこで誰と生活するかについての選択の機会が確保され、地域社会において他の人々と共生することを妨げられないこと並びに障害者及び障害児にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものの除去に資することを旨として、総合的かつ計画的に行わなければならない。
(市町村等の責務)
第2条 市町村(特別区を含む。以下同じ。)は、この法律の実施に関し、次に掲げる責務を有する。
一 障害者が自ら選択した場所に居住し、又は障害者若しくは障害児(以下「障害者等」という。)が自立した日常生活又は社会生活を営むことができるよう、当該市町村の区域における障害者等の生活の実態を把握した上で、公共職業安定所その他の職業リハビリテーション(障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和35年法律第123号)第二条第七号に規定する職業リハビリテーションをいう。以下同じ。)の措置を実施する機関、教育機関その他の関係機関との緊密な連携を図りつつ、必要な自立支援給付及び地域生活支援事業を総合的かつ計画的に行うこと。
二 障害者等の福祉に関し、必要な情報の提供を行い、並びに相談に応じ、必要な調査及び指導を行い、並びにこれらに付随する業務を行うこと。三 意思疎通について支援が必要な障害者等が障害福祉サービスを円滑に利用することができるよう必要な便宜を供与すること、障害者等に対する虐待の防止及びその早期発見のために関係機関と連絡調整を行うことその他障害者等の権利の擁護のために必要な援助を行うこと。
(国民の責務)
第3条 すべての国民は、その障害の有無にかかわらず、障害者等が自立した日常生活又は社会生活を営めるような地域社会の実現に協力するよう努めなければならない。
(市町村審査会)
第15条 第26条第2項に規定する審査判定業務を行わせるため、市町村に第19条第1項に規定する介護給付費等の支給に関する審査会(以下「市町村審査会」という。)を置く。
(委員)
第16条 市町村審査会の委員の定数は、政令で定める基準に従い条例で定める数とする。
2 委員は、障害者等の保健又は福祉に関する学識経験を有する者のうちから、市町村長(特別区の区長を含む。以下同じ。)が任命する。
(介護給付費等の支給決定)
第19条 介護給付費、特例介護給付費、訓練等給付費又は特例訓練等給付費(以下「介護給付費等」という。)の支給を受けようとする障害者又は障害児の保護者は、市町村の介護給付費等を支給する旨の決定(以下「支給決定」という。)を受けなければならない。
(申請)
第20条 支給決定を受けようとする障害者又は障害児の保護者は、主務省令で定めるところにより、市町村に申請をしなければならない。
(障害支援区分の認定)
第21条 市町村は、前条第一項の申請があったときは、政令で定めるところにより、市町村審査会が行う当該申請に係る障害者等の障害支援区分に関する審査及び判定の結果に基づき、障害支援区分の認定を行うものとする。
2 市町村審査会は、前項の審査及び判定を行うに当たって必要があると認めるときは、当該審査及び判定に係る障害者等、その家族、医師その他の関係者の意見を聴くことができる。
(支給要否決定等)
第22条 市町村は、第20条第1項の申請に係る障害者等の障害支援区分、当該障害者等の介護を行う者の状況、当該障害者等の置かれている環境、当該申請に係る障害者等又は障害児の保護者の障害福祉サービスの利用に関する意向その他の主務省令で定める事項を勘案して介護給付費等の支給の要否の決定(以下この条及び第27条において「支給要否決定」という。)を行うものとする。
2 市町村は、支給要否決定を行うに当たって必要があると認めるときは、主務省令で定めるところにより、市町村審査会又は身体障害者福祉法第9条第7項に規定する身体障害者更生相談所(第74条及び第76条第3項において「身体障害者更生相談所」という。)、知的障害者福祉法第9条第6項に規定する知的障害者更生相談所、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第6条第1項に規定する精神保健福祉センター若しくは児童相談所(以下「身体障害者更生相談所等」と総称する。)その他主務省令で定める機関の意見を聴くことができる。
3 市町村審査会、身体障害者更生相談所等又は前項の主務省令で定める機関は、同項の意見を述べるに当たって必要があると認めるときは、当該支給要否決定に係る障害者等、その家族、医師その他の関係者の意見を聴くことができる。
4 市町村は、支給要否決定を行うに当たって必要と認められる場合として主務省令で定める場合には、主務省令で定めるところにより、第20条第1項の申請に係る障害者又は障害児の保護者に対し、第51条の17第1項第1号に規定する指定特定相談支援事業者が作成するサービス等利用計画案の提出を求めるものとする。
5 前項の規定によりサービス等利用計画案の提出を求められた障害者又は障害児の保護者は、主務省令で定める場合には、同項のサービス等利用計画案に代えて主務省令で定めるサービス等利用計画案を提出することができる。
6 市町村は、前2項のサービス等利用計画案の提出があった場合には、第1項の主務省令で定める事項及び当該サービス等利用計画案を勘案して支給要否決定を行うものとする。
7 市町村は、支給決定を行う場合には、障害福祉サービスの種類ごとに月を単位として主務省令で定める期間において介護給付費等を支給する障害福祉サービスの量(以下「支給量」という。)を定めなければならない。
8 市町村は、支給決定を行ったときは、当該支給決定障害者等に対し、主務省令で定めるところにより、支給量その他の主務省令で定める事項を記載した障害福祉サービス受給者証(以下「受給者証」という。)を交付しなければならない。
2.障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律施行規則(平成18年厚生労働省令第19号)
(法第22条第1項に規定する厚生労働省令で定める事項)
第12条 法第22条第1項に規定する厚生労働省令で定める事項は、次の各号に掲げる事項とする。
一 法第20条第1項の申請に係る障害者等の障害支援区分又は障害の種類及び程度その他の心身の状況
二 当該申請に係る障害者等の介護を行う者の状況
三 当該申請に係る障害者等に関する介護給付費等の受給の状況
四 当該申請に係る障害児が現に児童福祉法第6条の2の2第1項に規定する障害児通所支援又は同法第24条の2第1項に規定する指定入所支援を利用している場合には、その利用の状況
五 当該申請に係る障害者が現に介護保険法の規定による保険給付に係る居宅サービスを利用している場合には、その利用の状況
六 当該申請に係る障害者等に関する保健医療サービス又は福祉サービス等(第3号から前号までに掲げるものに係るものを除く。)の利用の状況七 当該申請に係る障害者等又は障害児の保護者の障害福祉サービスの利用に関する意向の具体的内容
八 当該申請に係る障害者等の置かれている環境
九 当該申請に係る障害福祉サービスの提供体制の整備の状況

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