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令和5年度答申第9号

更新日:2023年8月30日 印刷ページ表示

第1 審査会の結論

 処分庁による令和4年9月26日付け生活保護申請却下処分(以下「本件処分」という。)に係る審査請求には理由があるので、行政不服審査法(平成26年法律第68号)第46条第1項の規定により、本件処分は取り消されるべきである。

第2 審査関係人の主張の要旨

1 審査請求人

​  審査請求人は、本件処分の取消しを求める理由として、次のとおり主張している。
(1) 審査請求人は、○○歳の頃、友人に誘われたことをきっかけに大麻に手を出し、その後、危険ドラッグにも手を出し、多くの薬物を乱用した。
(2) 審査請求人は、平成30年頃から○○が住む○○の実家を離れ、その後はホテルやマンガ喫茶などの各所を転々とする生活をしてきた。悪態が続いていたため、○○からは完全に見放されていた。
(3) 審査請求人は、時には実家に戻り、○○に対して大声で暴言を吐いたり、押したり振り払ったり、壁を蹴ったりして、威圧的な態度を取ることがあったため、○○は恐怖心から精神的ストレスを抱え、一緒に生活することは不可能であると判断し、令和○年○月○○日、半ば強制的に審査請求人を○○○○(以下「○○○○」という。)に入寮させた。
(4) 以上のとおり、審査請求人は、4年前までは実家に居住していたが、その後はホテルやマンガ喫茶などの各所を転々とし、少なくとも生活保護申請時(令和○年○月○日)には、実家から完全に離れて、○○○○に入寮し、そこでの生活基盤を構築していたものであり、処分庁の「保護を実施すべき機関が○○市ではない」という判断は事実誤認が甚だしく、本件処分は取り消されるべきである。​

2 処分庁

 処分庁は、本件処分に対する審査請求の棄却を求める理由として、次のとおり主張している。
(1) 「生活保護法による保護の実施要領について」(昭和36年4月1日厚生省発社第123号厚生事務次官通知。以下「次官通知」という。)第2は、「保護の実施責任は、要保護者の居住地又は現在地により定められるが、この場合、居住地とは、要保護者の居住事実がある場所をいうものであること。なお、現にその場所に居住していなくても、他の場所に居住していることが一時的な便宜のためであって、一定期限の到来とともにその場所に復帰して起居を継続していくことが期待される場合等には、世帯の認定をも勘案のうえ、その場所を居住地として認定すること。」と規定している。
(2) ○○○○は、居住地として認定するための法的な位置付けがなく、「特定の便宜のために施設を利用しており、一定の期限の到来とともに従前の場所に復帰していく性格」の施設として捉えることが適当であると考えられる。したがって、○○○○は、居住地ではなく、出身世帯があれば出身世帯の居住地を当該施設利用者の居住地として認定すべきと思慮される。​

3 審査庁

 審理員意見書のとおり、本件処分を取り消すべきである。

第3 審理員意見書の要旨

 生活保護法(昭和25年法律第144号。以下「法」という。)第19条第1項は、福祉事務所の所管区域内に居住地を有する要保護者に対しては、保護を決定し、かつ、実施しなければならないと規定しており、また、「生活保護問答集について」(平成21年3月31日厚生労働省社会・援護局保護課長事務連絡。以下「問答集」という。)「第2実施責任」の「居住地及び現在地の認定と実施責任の所在」(1)居住地の認定において、「生活保護でいう居住地とは、(中略)その者の属する世帯の生計の本拠となっている場所をいい、空間的には、居住事実の継続性・期待性がある住居のある場所をいう。」とされており、○○○○は、審査請求人が生計の本拠としている場所である。
 一方、次官通知第2において、「現にその場所に居住していなくても、他の場所に居住していることが一時的な便宜のためであって、一定期限の到来とともにその場所に復帰して起居を継続していくことが期待される場合等には、世帯の認定をも勘案のうえ、その場所を居住地として認定すること。」とされているが、審査請求人は、約4年前に実家を離れ、生活保護申請時においては、○○○○に生活基盤を構築しており、○○○○を退寮したとしても、その後、○○の実家に戻ることはないと主張している。また、○○については、扶養届書において、審査請求人に対する精神的支援及び金銭的援助ができないとの回答を行っており、審査請求人との関係を断絶するために審査請求人を強制的に○○○○へ連れて行ったと主張していることから、○○に審査請求人と同居する意向がないことは明らかである。よって、○○の暮らす実家は一定期限の到来とともにその場所に復帰して起居を継続していくことが期待される場所ではなく、次官通知第2には当てはまらない。次官通知第2を根拠に生活保護申請を却下した本件処分は誤りであり、法第19条第1項の規定に違反した違法な処分である。
 以上のとおり、本件審査請求には理由があり、行政不服審査法第46条第1項の規定により、本件処分は取り消されるべきである。​

第4 調査審議の経過

 当審査会は、本件諮問事件について、次のとおり、調査審議を行った。
 令和5年7月6日 審査庁から諮問書及び諮問説明書を収受
 令和5年7月21日 調査・審議
 令和5年8月25日 調査・審議​

第5 審査会の判断の理由

1 審理手続の適正について

 本件審査請求について、審理員による適正な審理手続が行われたものと認められる。

2 本件に係る法令等の規定について

​(1) 法第19条第1項は、「都道府県知事、市長及び社会福祉法(昭和26年法律第45号)に規定する福祉に関する事務所(以下「福祉事務所」という。)を管理する町村長は、次に掲げる者に対して、この法律の定めるところにより、保護を決定し、かつ、実施しなければならない。一 その管理に属する福祉事務所の所管区域内に居住地を有する要保護者 二 居住地がないか、又は明らかでない要保護者であつて、その管理に属する福祉事務所の所管区域内に現在地を有するもの」と規定している。
(2) 問答集「第2実施責任」の「居住地及び現在地の認定と実施責任の所在」(1)居住地の認定において、「居住地保護の実施責任は、要保護者の居住地によって定められるが、生活保護でいう居住地とは、生活保護が最低生活の保障を目的としていること及び保護の実施上世帯単位の原則によっていることから、その者の属する世帯の生計の本拠となっている場所をいい、空間的には、居住事実の継続性・期待性がある住居のある場所をいう。」と規定している。
(3) 次官通知第2において、「保護の実施責任は、要保護者の居住地又は現在地により定められるが、この場合、居住地とは、要保護者の居住事実がある場所をいうものであること。なお、現にその場所に居住していなくても、他の場所に居住していることが一時的な便宜のためであって、一定期限の到来とともにその場所に復帰して起居を継続していくことが期待される場合等には、世帯の認定をも勘案のうえ、その場所を居住地として認定すること。」と規定している。​

3 本件処分の違法性について

(1) 法第19条第1項において、福祉事務所の所管区域内に居住地を有する要保護者に対しては、保護を決定し、かつ、実施しなければならないと規定されており、また、問答集「第2実施責任」の「居住地及び現在地の認定と実施責任の所在」(1)居住地の認定においては、「生活保護でいう居住地とは、(中略)その者の属する世帯の生計の本拠となっている場所をいい、空間的には、居住事実の継続性・期待性がある住居のある場所をいう。」と規定されており、○○○○は、審査請求人が生計の本拠としている場所である。
(2) 一方、次官通知第2において、「現にその場所に居住していなくても、他の場所に居住していることが一時的な便宜のためであって、一定期限の到来とともにその場所に復帰して起居を継続していくことが期待される場合等には、世帯の認定をも勘案のうえ、その場所を居住地として認定すること。」と規定されているが、審査請求人は約4年前に実家を離れている。生活保護申請時においては、○○○○に生活基盤を構築しており、○○○○を退寮したとしても、その後、○○の実家に戻ることはないと審査請求人は主張している。
 また、○○については、扶養届書において、審査請求人に対する精神的支援及び金銭的援助ができないとの回答を行っており、かつ、○○は審査請求人との関係を断絶するために審査請求人を強制的に○○○○へ連れて行ったものであると主張していることから、○○に審査請求人と同居する意向がないことは明らかである。
 よって、○○の暮らす実家は、一定期限の到来とともにその場所に復帰して起居を継続していくことが期待される場所ではなく、次官通知第2には当てはまらない。
(3) 以上のことから、次官通知第2を根拠に生活保護申請を却下した本件処分については誤りであり、法第19条第1項の規定に違反した違法な処分である。​

第6 結論

 以上のとおり、本件審査請求には理由があるから、「第1 審査会の結論」のとおり、答申する。

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