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令和5年度答申第11号

更新日:2023年12月20日 印刷ページ表示

第1 審査会の結論

 本件審査請求には、理由がないので、行政不服審査法(平成26年法律第68号)第45条第2項の規定により審査請求を棄却すべきである。

第2 審査関係人の主張の要旨

1 審査請求人

 処分庁が行った令和5年3月3日付け生活保護申請却下処分(以下「本件処分」という。)を取り消し、本件処分により生じた損害額を加えて支給することを求めるものであり、その理由は次のとおりである。
 民法703条違反・業務妨害であるため。また、審査請求人の側には新たな事実・証拠はあっても、処分庁側にはない。したがって、最高裁判例でいう既判力によって、本件処分は取り消されるべきであるため。​

2 審査庁

 審理員意見書のとおり、本件審査請求を棄却すべきである。

第3 審理員意見書の要旨

 審査請求人は、令和4年7月25日に電気給湯器の修理費用を処分庁に申請したところ同月29日に申請却下処分(以下「原処分」という。)をされたので、同年8月5日に審査請求を提起した。審査庁は、令和5年2月16日に原処分の理由附記が不十分として原処分を取り消す裁決を行った。本件処分は、令和4年7月25日の申請と、裁決後、改めて、令和5年2月22日に給湯器の修理費用を求めた申請に対して、処分庁がいずれも却下処分を行ったものである。
 家屋の修理又は補修その他維持に要する費用については、「生活保護法による保護の実施要領について」(昭和38年4月1日厚生省社会局長通知。以下「局長通知」という。)第7の4(2)イにおいて、「保護の基準別表第3の1によりがたい場合であってやむを得ない事情があると認められるときは、基準額に1月5日を乗じて得た額の範囲内において、特別基準の設定があったものとして、必要な額を認定して差し支えないこと」とされている。
 生活保護法(昭和25年法律第144号)第24条第4項において、保護の要否、種類、程度及び方法を決定した書面には、決定の理由を付さなければならないと規定されている。また、行政手続法(平成5年法律第88号)第8条第1項及び第2項において、行政庁が申請拒否処分を行う場合は、同時に、当該処分の理由を示さなければならないと規定されている。理由の提示については、最高裁判所の判例において、いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用して当該処分がされたかを、申請者においてその記載自体から了知しうるものでなければならないとされている。
 処分庁は、保護申請却下通知書のなかで、処分の理由として「令和5年2月22日付にて住宅維持費として申請を行った額(○○○○円)については、すでに令和4年6月17日付にて認定された住宅維持費の額(○○○○円)と合算し、年間の補修等住宅維持費の額(124,000円)を超えているため」としている。また、局長通知第7の4(2)イにある特別基準の設定については、「湯を沸かす機能が完全に使えなくなったわけではなく、社会通念上最低限の入浴は可能であり、やむを得ない状況とは認められない。」としている。
 処分庁が処分の理由として記載した理由については、いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用して当該処分がされたかを、申請者においてその記載自体から了知することが可能であると考えられる。
 やむを得ない事情の判断については、法令等に具体的な基準が示されていないため、処分庁の裁量に委ねられるが、保護申請却下通知書に記載された理由が著しく裁量の範囲を逸脱しているとも認められないことから、本件処分を取り消すべき違法又は不当な点があるとまではいえない。
 以上のとおり、本件審査請求には理由がないから、行政不服審査法第45条第2項の規定により、棄却されるべきである。

第4 調査審議の経過

 当審査会は、本件諮問事件について、次のとおり、調査審議を行った。
 令和5年11月6日 審査庁から諮問書及び諮問説明書を収受
 令和5年11月17日 調査・審議
 令和5年12月15日 調査・審議​

第5 審査会の判断の理由

1 審理手続の適正について

 本件審査請求について、審理員による適正な審理手続が行われたものと認められる。

2 本件に係る法令等の規定について

​(1) 局長通知第7の4(2)イにおいて、「家屋の修理又は補修その他維持に要する費用が保護の基準別表第3の1によりがたい場合であってやむを得ない事情があると認められるときは、基準額に1月5日を乗じて得た額の範囲内において、特別基準の設定があったものとして、必要な額を認定して差し支えないこと」とされている。
(2) 生活保護法第24条第4項において、保護の要否、種類、程度及び方法を決定した書面には、決定の理由を付さなければならないと規定されている。また、行政手続法第8条第1項及び第2項において、行政庁が申請拒否処分を行う場合は、同時に、当該処分の理由を示さなければならないこと、申請拒否処分を書面でするときは、同時に、書面により当該処分の理由を示さなければならないと規定されている。これらの理由提示の意義について、最高裁判所昭和38年5月31日第二小法廷判決、最高裁判所昭和49年4月25日第一小法廷判決、最高裁判所昭和60年1月22日第三小法廷判決などにおいて、行政庁の判断の慎重と公正妥当を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の理由を申請者に知らせて不服申立てに便宜を与える趣旨であるものと解されており、このような趣旨に鑑み、いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用して当該処分がされたかを、申請者においてその記載自体から了知しうるものでなければならないとされている。
(3) 行政不服審査法第52条第1項において、裁決は、関係行政庁を拘束すると規定され、同条第2項において、申請を却下した処分が裁決で取り消された場合には、処分庁は、裁決の趣旨に従い、改めて申請に対する処分をしなければならないと規定されている。​

3 本件処分の妥当性について

 処分庁は、局長通知に基づき本件処分を行った上で、保護申請却下通知書のなかで、処分の理由として「令和5年2月22日付にて住宅維持費として申請を行った額(○○○○円)については、すでに令和4年6月17日付にて認定された住宅維持費の額(○○○○円)と合算し、年間の補修等住宅維持費の額(124,000円)を超えているため」としている。また、局長通知第7の4(2)イにある特別基準の設定については、「湯を沸かす機能が完全に使えなくなったわけではなく、社会通念上最低限の入浴は可能であり、やむを得ない状況とは認められない。」としている。
 処分庁が処分の理由として記載した理由については、いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用して当該処分がされたかを、申請者においてその記載自体から了知することが可能であると考えられる。
 やむを得ない事情の判断については、法令等に具体的な基準が示されていないため、処分庁の裁量に委ねられるが、保護申請却下通知書に記載された理由が著しく裁量の範囲を逸脱しているとも認められないことから、本件処分を取り消すべき違法又は不当な点があるとまではいえない。
 なお、審査請求人は、審査請求の理由及び反論書のなかで、既判力について述べているが、既判力は、民事訴訟法(平成8年法律第109号)第114条第1項の規定により、「確定判決」において適用されるものであり、「裁決」においては、行政不服審査法第52条第1項及び第2項が適用され、裁決は、関係行政庁を拘束し、申請を却下した処分が裁決で取り消された場合は、処分庁は、当該裁決の趣旨に従い、改めて申請に対する処分をしなければならないとされている。ただし、裁決の拘束力は、「裁決の主文とその理由となる判断について生じるものであり、例えば、申請拒否処分が取り消された場合には、処分庁は、必ず申請を認容すべき拘束を受けるものではなく、裁決の趣旨に反しない限りにおいて、別の理由により、再び拒否処分をすることが妨げられるものではない。」(平成28年4月総務省行政管理局・逐条解説行政不服審査法)と解されている。
 令和5年2月16日付け裁決は、裁決の主文とその理由となる判断において、処分の理由の提示が不十分であるとして、原処分を取り消したものであり、前述のとおり理由が提示された以上、本件処分は、法令等に定めるところに従って適法かつ適正になされたものであり、違法又は不当であるとはいえない。
 また、審査請求人は、審査請求の理由及び反論書のなかで、新たな証拠となる物件を処分庁に提出した旨述べているため、審理員において、処分庁に当該物件の提出を求めたところ、当該物件は存在しない旨の回答があった。処分庁の判断を覆す新たな証拠が提出されない以上、処分庁の裁量の範囲内と認めざるを得ず、本件処分が違法又は不当であるとはいえない。​

第6 結論

 以上のとおり、本件審査請求には理由がないから、「第1 審査会の結論」のとおり、答申する。

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