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令和5年度答申第12号
第1 審査会の結論
処分庁による令和5年3月10日付け生活保護申請却下処分(エアコンの取付け費用に係るもの。以下「本件処分1」という。)及び同日付生活保護申請却下処分(冷蔵庫の修理費用に係るもの。以下「本件処分2」という。)に係る審査請求には理由があるので、行政不服審査法(平成26年法律第68号)第46条第1項の規定により、本件処分1及び本件処分2は取り消されるべきである。
第2 審査関係人の主張の要旨
1 審査請求人
本件処分1及び本件処分2を取り消し、これらの処分によって生じた損害額を加えて支給することを求めるものであり、その理由は次のとおりである。
民法703条違反・業務妨害であるため。また、却下の理由に引用されている次官・局長通知に具体的な記述がなく、最高裁判例違反であり、原処分は取り消されるべきであるため。
2 審査庁
審理員意見書のとおり、本件処分1及び本件処分2を取り消すべきである。
第3 審理員意見書の要旨
本件処分1について、処分庁は「生活保護法による保護の実施要領について」(昭和38年4月1日厚生省社会局長通知。以下「局長通知」という。)第7の2(6)ウ及びエに基づき、処分を行っている。また、本件処分2について、処分庁は局長通知第7の2(6)アに基づき、処分を行っている。
処分庁は本件処分1について、令和5年3月10日付け保護申請却下通知書において「冷房器具の購入に要する費用については、局長通知第7の2(6)ウのとおり、被保護世帯が局長通知第7の2(6)ア(ア)から(オ)までのいずれかに該当し、当該被保護世帯に属する被保護者に熱中症予防が特に必要とされる者がいる場合であって、それ以降、初めて到来する熱中症予防が必要となる時期を迎えるに当たり、最低生活に直接必要な冷房器具の持ち合わせがなく、真にやむを得ないと実施機関が認めた時に認定されることとされている。よって、申請人は保護開始時よりエアコンを保有しており、局長通知第7の2(6)ウの支給要件に該当せず」と記載しているが、局長通知の具体的内容について記載していない。審査請求人において当該文書の記載から局長通知に該当しない理由を了知することは困難である。本件処分1がなされた時点において、審査請求人に対し、局長通知の内容について具体的に提示すべきであった。
また、処分庁は、本件処分2について、令和5年3月10日付け保護申請却下通知書において「申請人は保護開始時より冷蔵庫を保有しており、局長通知第7の2(6)ア(ア)から(オ)までのいずれにも該当せず」と記載しているが、局長通知の具体的内容について記載していない。審査請求人において当該文書の記載から局長通知に該当しない理由を了知することは困難である。本件処分2がなされた時点において、審査請求人に対し、局長通知の内容について具体的に提示すべきであった。
以上のとおり、本件審査請求には理由があるから、行政不服審査法第46条第1項の規定により、本件処分1及び本件処分2は取り消されるべきである。
第4 調査審議の経過
当審査会は、本件諮問事件について、次のとおり、調査審議を行った。
令和5年11月6日 審査庁から諮問書及び諮問説明書を収受
令和5年11月17日 調査・審議
令和5年12月15日 調査・審議
第5 審査会の判断の理由
1 審理手続の適正について
本件審査請求について、審理員による適正な審理手続が行われたものと認められる。
2 本件に係る法令等の規定について
(1) 「生活保護法による保護の実施要領について」(昭和36年4月1日厚生事務次官通知。以下「次官通知」という。)第7の1に基づけば、経常的最低生活費とは「要保護者の衣食等月々の経常的な最低生活需要のすべてを満たすための費用として認定するものであり、したがって、被保護者は、経常的最低生活費の範囲内において通常予測される生活需要はすべてまかなうべきものであること。」とされている。
(2) 局長通知第7の2(6)アにおいて、「被保護者が次の(ア)から(オ)までのいずれかの場合に該当し、次官通知第7に定めるところによって判断した結果、炊事用具、食器等の家具什器を必要とする状態にあると認められるときは、3万600円の範囲内において特別基準の設定があったものとして家具什器(イ及びウを除く。)を支給して差し支えないこと。なお、真にやむを得ない事情により、この額により難いと認められるときは、4万8800円の範囲内において、特別基準の設定があったものとして家具什器(イ及びウを除く。)を支給して差し支えないこと。(ア)保護開始時において、最低生活に直接必要な家具什器の持合せがないとき。(イ)単身の被保護世帯であり、当該単身者が長期入院・入所後に退院・退所し、新たに単身で居住を始める場合において、最低生活に直接必要な家具什器の持合せがないとき。(ウ)災害にあい、災害救助法第4条の救助が行われない場合において、当該地方公共団体等の救護をもってしては、災害により失った最低生活に直接必要な家具什器をまかなうことができないとき。(エ)転居の場合であって、新旧住居の設備の相異により、現に所有している最低生活に直接必要な家具什器を使用することができず、最低生活に直接必要な家具什器を補填しなければならない事情が認められるとき。(オ)犯罪等により被害を受け、又は同一世帯に属する者から暴力を受け、生命及び身体の安全の確保を図るために新たに借家等に転居する場合において、最低生活に直接必要な家具什器の持合せがないとき。」とされている。
(3) 局長通知第7の2(6)ウにおいて、「被保護世帯がアの(ア)から(オ)までのいずれかに該当し、当該被保護世帯に属する被保護者に熱中症予防が特に必要とされる者がいる場合であって、それ以降、初めて到来する熱中症予防が必要となる時期を迎えるに当たり、最低生活に直接必要な冷房器具の持ち合わせがなく、真にやむを得ないと実施機関が認めたときは、冷房器具の購入に要する費用について、5万8000円の範囲内において、特別基準の設定があったものとして必要な額を認定して差し支えないこと。」とされている。
(4) 局長通知第7の2(6)エなお書き以降において、「これらの家具什器の購入に際して設置費用が別途必要な場合であって、真にやむを得ないと実施機関が認めたときは、アからウまでとは別に特別基準の設定があったものとして、当該家具什器の設置に必要な最小限度の額を設定して差し支えないこと。」とされている。
(5) 生活保護法(昭和25年法律第144号)第24条第4項において、保護の要否、種類、程度及び方法を決定した書面には、決定の理由を付さなければならないと規定されている。また、行政手続法(平成5年法律第88号)第8条第1項及び第2項において、行政庁が申請拒否処分を行う場合は、同時に、当該処分の理由を示さなければならないこと、申請拒否処分を書面でするときは、同時に、書面により当該処分の理由を示さなければならないと規定されている。これらの理由提示の意義について、最高裁判所昭和38年5月31日第二小法廷判決、最高裁判所昭和49年4月25日第一小法廷判決、最高裁判所昭和60年1月22日第三小法廷判決などにおいて、行政庁の判断の慎重と公正妥当を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の理由を申請者に知らせて不服申立てに便宜を与える趣旨であるものと解されており、このような趣旨に鑑み、いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用して当該処分がされたかを、申請者においてその記載自体から了知しうるものでなければならないとされている。
3 本件処分1及び本件処分2の妥当性について
処分庁は、本件処分1について局長通知第7の2(6)ウ及びエに基づき処分を行い、また、本件処分2について局長通知第7の2(6)アに基づき処分を行っており、妥当であると認められる。
4 本件処分1及び本件処分2の処分決定理由について
処分庁は本件処分1について、令和5年3月10日付け保護申請却下通知書において「冷房器具の購入に要する費用については、局長通知第7の2(6)ウのとおり、被保護世帯が局長通知第7の2(6)ア(ア)から(オ)までのいずれかに該当し、当該被保護世帯に属する被保護者に熱中症予防が特に必要とされる者がいる場合であって、それ以降、初めて到来する熱中症予防が必要となる時期を迎えるに当たり、最低生活に直接必要な冷房器具の持ち合わせがなく、真にやむを得ないと実施機関が認めた時に認定されることとされている。よって、申請人は保護開始時よりエアコンを保有しており、局長通知第7の2(6)ウの支給要件に該当せず」と記載しているが、局長通知の具体的内容について記載していない。審査請求人において当該文書の記載から局長通知に該当しない理由を了知することは困難である。本件処分1がなされた時点において、審査請求人に対し、局長通知の内容について具体的に提示すべきであった。
また、処分庁は、本件処分2について、令和5年3月10日付け保護申請却下通知書において「申請人は保護開始時より冷蔵庫を保有しており、局長通知第7の2(6)ア(ア)から(オ)までのいずれにも該当せず」と記載しているが、局長通知の具体的内容について記載していない。審査請求人において当該文書の記載から局長通知に該当しない理由を了知することは困難である。本件処分2がなされた時点において、審査請求人に対し、局長通知の内容について具体的に提示すべきであった。
第6 結論
以上のとおり、本件審査請求には理由があるから、「第1 審査会の結論」のとおり、答申する。