本文
令和6年度答申第4号
第1 審査会の結論
本件審査請求には、理由がないので、行政不服審査法(平成26年法律第68号)第45条第2項の規定により審査請求を棄却すべきである。
第2 審査関係人の主張の要旨
1 審査請求人
審査請求人は、令和6年1月15日付け法人の県民税の決定処分(以下「本件処分」という。)の取消しを求める理由として、次のとおり主張している。
(1) 当社は、○○○○年に本業である○○業を廃業し、本社事務所、工場等を売却した。現在は、代表者に対する貸付金と遊休土地がありその精算を模索している状態である。
(2) 法人住民税が課税されるためには「事務所又は事業所を有する法人」と定められている。事務所又は事業所とは「事業を行うための人的及び物的設備であって、そこで継続して事業が行われる場所」をいう。
(3) 当社は物的な設備はない。休業中ですが郵便物があるため自宅を郵便物転送先としているだけである。
(4) 人的要因については、役員報酬の支給が月5万円あるが、会社役員としての責任を負う最低の対価としてであり、事業活動はまったく行っていない。
2 審査庁
審理員意見書のとおり、本件審査請求を棄却すべきである。
第3 審理員意見書の要旨
処分庁が実施した○○税務署での法人税申告調査の結果、審査請求人は、対象事業年度である○○○○年○○月○○日から○○○○年○○月○○日までの1事業年度(以下「○○○○年○○月期」という。)について、法人税の確定申告を行っている(所得金額は欠損であり、法人税の発生はない。)。
また、損益計算書等によれば、代表者に対して年60万円の役員報酬が支払われていること及び代表者への貸付金に係る受取利息が計上されている。
審査請求人は、○○○○年○○月期において、本来の事業である○○業を営んではいないが、役員報酬の計上及び貸付金に係る受取利息の収入金額の計上があることから、本来の事業に関連して行われる附随的事業を行っているものと考えられる。
また、役員報酬は経営に対する責任を負う者に支払われるものであり、毎月5万円の支払であることから、人的設備を有し、継続的に事業を行っていると判断できる。
さらに、物的設備については、登記上の本店所在地の事務所はすでに売却しており、同所では活動していないが、審査請求人は法人の清算に向けた事務処理を行っており、郵便物の転送先を代表者の自宅にしていることから、自宅で事業を行っているとみなすことができる。
以上のことから、審査請求人は○○○○年○○月期について、人的・物的設備であって、そこで継続して事業を行うものを有しており、法人の県民税均等割課税客体の要件である事務所等を有していることが明らかであることから、処分庁は審査請求人に対して確定申告書を提出するようしょうようを行ったが、その期限までに確定申告書が提出されなかったため、地方税法(昭和25年法律第226号。以下「法」という。)第55条第2項により本件処分に至ったものである。
このことから、本件処分は、法令等に則った適正な処分であり、違法又は不当な点はない。本件審査請求には理由がないから、行政不服審査法第45条第2項の規定により棄却されるべきである。
第4 調査審議の経過
当審査会は、本件諮問事件について、次のとおり、調査審議を行った。
令和6年6月13日 審査庁から諮問書及び諮問説明書を収受
令和6年6月21日 調査・審議
令和6年7月19日 調査・審議
第5 審査会の判断の理由
1 審理手続の適正について
本件審査請求について、審理員による適正な審理手続が行われたものと認められる。
2 本件に係る法令等の規定について
国税である法人税は、法人の所得の金額に応じて算定されるが、○○○○年○○月期において、欠損金額が生じているため、発生しない。県税である法人の県民税のうち法人税割及び法人の事業税についても、法人税と同様に発生しないが、法人の県民税のうち均等割については、欠損金額が生じていても、算定期間中に事務所等を有していることで発生するものであり、本件処分により審査請求人に課税されたところである。
(1) 法人の県民税均等割の納税義務者は、法第24条第1項第3号及び群馬県県税条例(昭和25年群馬県条例第32号)第32条第1項第3号に、「県内に事務所又は事業所を有する法人」と定められている。
(2) 法第53条第1項において、法人の県民税の納税義務者は、法人税法(昭和40年法律第34号)第74条第1項の規定により法人税に係る申告書を提出する義務がある法人とされており、それらの法人は、法人税に係る申告書の提出期限までに、算定期間中に有する事務所又は事業所の所在する道府県知事に申告書を提出し、申告した道府県民税額を納付しなければならないとされている。
(3) 法人の県民税均等割の額は、法第52条第3項により、「(前略)当該均等割の額に前項第1号の法人税額の課税標準の算定期間(中略)の期間中において事務所、事業所又は寮等を有していた月数を乗じて得た額を12で除して算定するものとする。(後略)」と定められている。
(4) この事務所又は事業所については、「地方税法の施行に関する取扱いについて(道府県税関係)」(平成22年4月1日総税都第16号。以下「取扱通知」という。)第1章第1節6(1)において、「事務所又は事業所(以下「事務所等」という。)とは、それが自己の所有に属するものであるか否かにかかわらず、事業の必要から設けられた人的及び物的設備であって、そこで継続して事業が行われる場所をいうものであること。この場合において事務所等において行われる事業は、当該個人又は法人の本来の事業の取引に関するものであることを必要とせず、本来の事業に直接、間接に関連して行われる附随的事業であっても社会通念上そこで事業が行われていると考えられるものについては、事務所等として取り扱って差し支えないものである(後略)」とされている。併せて、取扱通知第1章第1節6(2)において「事務所等と認められるためには、その場所において行われる事業がある程度の継続性をもったものであることを要する(後略)」とされている。
(5) 法人の県民税の納税義務者が、申告書を提出しなかった場合、道府県知事は、法第55条第2項により、その調査によって申告すべき額を決定すると定められている。この調査については、法第20条の11及び第63条第1項により、税務署等に資料の閲覧等を求めることができると定められている。
3 本件処分の妥当性について
(1) 2(5)に記載した規定に基づき、処分庁が実施した○○税務署での法人税申告調査の結果、審査請求人は、○○○○年○○月期について、法人税の確定申告を行っている。損益計算書等によれば、代表者に対して年60万円の役員報酬が支払われていること、雑収入として代表者への貸付金に係る受取利息90万3724円を受け入れていることが確認できるほか、法定福利費、新聞図書費、修繕費、保険料等も計上されている。
(2) 審査請求人は、○○○○年○○月期において、本来の事業である○○業を営んではいないが、(1)に記載のとおり、役員報酬、貸付金に係る受取利息等の計上があることから、本来の事業に関連して行われる附随的事業を行っているものと考えられる。
また、役員報酬は経営に対する責任を負う者に支払われるものであり、毎月5万円の支払であることから、人的設備を有し、継続的に事業を行っていると判断できる。
さらに、物的設備については、登記上の本店所在地の事務所はすでに売却しており、同所では活動していないが、審査請求人は法人の清算に向けた事務処理を行っており、郵便物の転送先を代表者の自宅にしていることから、自宅で事業を行っているとみなすことができる。
(3) 以上のことから、審査請求人は○○○○年○○月期について、人的・物的設備であって、そこで継続して事業を行うものを有しており、法人の県民税均等割課税客体の要件である事務所等を有していることが明らかであることから、処分庁は審査請求人に対して確定申告書を提出するようしょうようを行ったが、その期限までに確定申告書が提出されなかったため、法第55条第2項により本件処分に至ったものである。
(4) このことから、本件処分は、法令等に則った適正な処分であり、違法又は不当な点は認められない。
第6 結論
以上のとおり、本件審査請求には理由がないから、「第1 審査会の結論」のとおり、答申する。