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令和6年度 病害虫発生予察特殊報 第2号(チュウゴクアミガサハゴロモ)
更新日:2025年3月1日
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令和6年度病害虫特殊報 第2号 チュウゴクアミガサハゴロモ(PDF:203KB)
群馬県において、チュウゴクアミガサハゴロモの発生がほ場で初めて確認されました。
特殊報とは、新たな病害虫を発見した場合及び重要な病害虫の発生消長に特異な現象が認められた場合に発表する情報です。
1 特殊報の内容
- 対象病害虫名 : チュウゴクアミガサハゴロモ
- 学名 : Ricania shantungensis(Chou & Lu, 1977)
- 発生植物 : ナシ
- 誘殺地域 : 群馬県中部地域
2 発生概況
(1)発生確認の経過
令和6年12月、県中部地域のナシほ場に設置した他害虫のトラップ(写真1)の粘着板に、チュウゴクアミガサハゴロモと疑われる成虫を確認しました。農林水産省横浜植物防疫所に同定を依頼したところ、令和7年1月にチュウゴクアミガサハゴロモであることが判明しました。
(2)国内の確認状況
本種は中国原産であり、国内では平成29年に大阪府で初確認されて以降、本州、四国及び九州の各地で発生が報告されています。
作物における発生は、令和6年に神奈川県、埼玉県、福岡県、山梨県から、令和7年に東京都から特殊報が発表されており、群馬県は6例目となります。
(3)県内の発生状況
チュウゴクアミガサハゴロモと判明した後、県中部地域でナシの他に、ウメ、カキ、ブルーベリーに本種によるものと疑われる産卵痕が確認されています。
3 形態および生態等
- 成虫の体長は14~15ミリメートル。成虫が静止した時の翅の色は、茶褐色~鉄さび色、翅の外側の縁の中央に半円形、または三角形の白斑があります(写真2)。
- 幼虫は白色で、腹部から背中にかけて白い糸状の蝋物質の毛束を広げています。背中には小さい黒点が見られます(写真3)。
4 被害の特徴
- 広食性で、農作物ではナシ、ウメ、モモ、スモモ、オウトウ、ブドウ、カンキツ、カキ、イチジク、ブルーベリー、オリーブ、キウイフルーツ、宿根アスターを加害する報告があります。また加害は報告されていませんが、これまでに加害の報告があった作物種を考慮すると、バラ科(リンゴ、ハナモモ)、ブナ科(クリ)、クワ科(桑)への加害も考えられます。
- 成虫が枝の樹皮を剥いで産卵するため、樹が損傷し、樹勢の衰弱や細枝の枯死が発生することがあります。産卵痕は白い糸状の蝋物質で被覆されます(写真4)。
- 成虫および幼虫が枝を吸汁します。発生量が多く集団で吸汁すると排泄物によりすす病が発生します。
5 防除対策
- 令和7年2月1日現在、PAP乳剤が桑のハゴロモ類、ブプロフェジン水和剤が桑のハゴロモ類幼虫に適用がある他は、本種に使用できる薬剤はありません。
- 産卵痕のある枝を除去し、ほ場外に持ち出して埋却するなど適正に処分してください。
写真1 トラップ
写真2 成虫
※赤丸内が翅の外側の縁の中央にある半円形または三角形の白斑
写真3 幼虫
(写真の出典:神奈川県農業技術センター)
写真4 枝の産卵痕
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