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介護給付費支給決定処分に係る審査請求(答申)(令和6年度1件目)

更新日:2025年5月14日 印刷ページ表示

件名

 介護給付費支給決定処分に係る審査請求

第1 審査会の結論

 処分庁太田市長が令和5年9月30日付けで審査請求人に対して行った障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号。以下「法」という。)に基づく障害者介護給付費申請に対する支給決定処分の取消しを求める審査請求(以下「本件審査請求」という。)には、理由がないので、行政不服審査法(平成26年法律第68号)第45条第2項の規定により本件審査請求を棄却すべきである。

第2 事案の概要

  1. 審査請求人は処分庁に対して、令和4年5月16日に法第20条第1項に基づく介護給付費の支給申請(以下「本件申請」という。)を行ったところ、処分庁は令和4年8月22日付け介護給付費支給決定処分(以下「前件処分」という。)を行った。
  2. 審査請求人は当該処分を不服として、法第97条に基づき、審査庁に対して審査請求(以下「前件審査請求」という。)をなし、審査庁の裁決により令和5年7月26日付けで当該処分は取り消された(以下、この取消裁決を「前件取消裁決」という。)。
  3. 前件処分の取消しにより、処分庁は改めて本件申請に対し、令和5年9月30日付け介護給付費支給決定処分(以下「本件処分」という。)を行ったところ、審査請求人が本件処分を不服として、法第97条に基づき、審査庁に対して再度審査請求(以下「本件審査請求」という。)をなしたものである。
  4. 本件申請は、審査請求人に係る介護給付につき、重度訪問介護の一月当たりの支給量として744時間を求めるものである。これに対し、前件処分は一月当たりの支給量を464時間とするものであり、前件審査請求及び前件取消裁決を経た後になされた本件処分も一月当たりの支給量を464時間とするものであった。

第3 審理関係人の主張の要旨

1 審査請求人の主張の要旨

 以下のとおり、本件処分は違法・不当なものであるから、本件処分を取り消すことを求める。

(1)勘案事項に係る認定事実の誤りによる本件処分の違法・不当

 本人の状況、家族の介護状況、ヘルパーの介護の有効性に係る処分庁の認定事実には誤りがあり、これに基づく本件処分は違法・不当である。

(2)本件処分の理由の違法・不当

 処分庁が本件処分の理由として掲げる「自費利用(火・木・土の午前3時間)と家族の土日のレスパイト(日曜日の家族介護10時間)」、「直接的に命に係る危険がないこと」、「家族支援も期待できること」は、いずれも本件処分の支給量の根拠となるものではなく、本件処分は違法・不当である。
 すなわち、
ア 「自費利用(中略)と家族の土日のレスパイト(中略)」について
(1) 当該処分理由は結論をもって結論を示しているだけであり、審査請求人の社会生活、日常生活の支援としてどうしてそのような時間が相当といえるのかの説明となっていない。
(2) 実質的に見ても、従来の自費負担部分は、その時間のみ支給量が不足していたから自費負担としたものではなく、審査請求人の経済状況も踏まえて利用できたのがその範囲の時間だけだったに過ぎないのであり、審査請求人に必要な支給量を算定する根拠とすることは誤りである。
イ 「直接的に命に係る危険がないこと」について
重度訪問介護の支給量算定において重要なのは、日常生活・社会生活において必要な支援が何かという点であり、命に係る危険があるかないかという点を安易に過大評価して支給量を算定することは誤りである。
ウ 「家族支援も期待できること」について
家族介護ありきで支給量を算定すること自体が誤りであり、家族介護を前提としないで本人に必要な支給量を算定しなければならない。また、家族介護を前提としたとしても、審査請求人の父が審査請求人以外の家族を支えなければならないことや、審査請求人の母の持病の介護の負担が課題となっていることも明らかである。したがって、審査請求人の父の家族介護を前提として支給量を算定することは誤りである。

(3)誤った公平感等を実質的理由とする本件処分は違法・不当

 処分庁が月505時間という支給量を認定審査会に提出した。しかしながら、認定審査会では、「きりがなくなってしまう」、「やはり380時間というルールの中でサービス利用しないといけない」、「(通所介護サービスについて)1%でも2%でも可能性を模索していくべき」、「公正にサービスはあるものを使っていただくことが大原則」等の議論がなされ、支給量を増やすべきでない旨の結論となり、この結果、処分庁は月505時間ではなく月464時間の支給決定を行うに到ったものである。本件処分の実質的な処分理由は、上記のとおり通所介護の可能性や形式的な制度論、上限論、誤った公平感に基づくものであり、違法・不当である。

(4)前件処分の他事考慮分が加算されていない本件処分は違法・不当

 従前、前件取消裁決で他事考慮に当たると指摘された事項を考慮して前件処分の支給量(464時間)を決定していたのであるから、理論上、それらの他事考慮事項によって支給量を減算していた部分があるはずである。それにもかかわらず、本件処分は、当該減算していた部分を加算することもなく、前件処分と同じ支給量(464時間)を決定したものであり、違法・不当である。

2 処分庁の主張の要旨

 以下のとおり、審査請求人の本件審査請求に理由はなく、本件審査請求は、速やかに棄却されるべきである。

(1)勘案事項に係る認定事実について

 認定調査により法施行規則第12条各号の勘案事項に係る事実認定を行った。

(2)本件処分の理由の違法・不当の主張について

ア 464時間の支給量は、令和4年7月に相談支援専門員が作成した継続サービス利用計画【週間計画表】に基づき積算したものである。サービス利用計画等は、市町村が障害福祉サービスの支給決定を行うための根拠となるもので、法第5条第23項により、当該支給決定障害者の障害福祉サービスの利用状況を検証し、その結果及び当該支給決定に係る障害者の心身の状況、その置かれている環境を勘案して作成されるものである。
イ レスパイトの10時間は、令和4年8月9日開催の支援者会議において、支援者等の意向を勘案したものである。

(3)誤った公平感等を実質的理由とする本件処分は違法・不当の主張について

 審査会は、障害者の実情に通じた者の内から、障害保健福祉の学識経験を有する者であって、中立かつ公正な立場で審査が行える者を任命している。審査会委員は多くの障害者の審査を行っており、同じような障害者と比較した審査を行うことができる。

(4)前件処分の他事考慮分が加算されていない本件処分は違法・不当の主張について

 他事考慮に当たる社会資源を勘案して支給量を算出したわけではなく、審査請求人の生活状況や家族の状況を勘案事項としているため、他事考慮分の加算を考慮するものではない。

第4 審理員意見書の要旨

 本件処分につき、処分庁に明らかな裁量権の逸脱・濫用ありとすべき事情は認められず、本件処分を違法ないし不当な処分として取り消すべき理由はない。したがって、本件審査請求には理由がないから、行政不服審査法第45条第2項の規定により、棄却されるべきである。

第5 調査審議の経過等

1 当審査会は、本件諮問事件について、次のとおり、調査審議を行った。

令和7年2月14日 審査庁から諮問書及び諮問説明書を収受

令和7年3月12日 審査請求人から主張書面を収受

令和7年3月21日 調査・審議

2 審理手続の適正について

本件審査請求について、審理員による適正な審理手続が行われたものと認められる。

第6 審査会の判断の理由

​1 勘案事項に係る事実認定の違法・不当について

(1)ア 処分庁は、本件申請に先立つ令和4年2月15日に審査請求人の自宅を訪問して障害支援区分更新のための認定調査を行い、令和4年5月16日に本件申請を受け付けた後、家族ほか関係者への聞き取り調査を行うとともに、令和4年7月13日の(前件処分に係る)認定審査会の意見聴取の後も、令和4年8月9日には代理人弁護士らも同席するサービス利用に関する支援者会議に出席して聞き取りを行った。なお、上記支援者会議においては、処分庁が、支給量に関する見解の相違が平行線となってしまうことを懸念し、審査請求人代理人ら出席者に対し、審査請求人の父のレスパイト時間や審査請求人の生活スケジュールに係るより詳細な資料の提出を求めたことが窺われるが、審査請求人から追加資料が提出された形跡はない。
イ 処分庁は、令和4年8月22日付けの前件処分(前件取消裁決により取消)以降、令和5年7月11日に関係者立会いの下に審査請求人の自宅を訪問して調査を行い、令和5年7月26日に担当医と面談して聞き取り調査を行う等した。
ウ これらの経過に照らせば、処分庁において、申請に対する処分をなすに当たっては、事実の調査・把握を行ってきたことが認められ、処分庁が必要な調査を怠ったとすることはできない。

(2)ところで、審査請求人は、処分庁の「事実認定の誤り」を主張するところ、審査請求人による主張と処分庁の弁明とを比較すると、両者の間に乖離があるのは、処分庁が判断の根拠とした事実そのものについてではなく、本件処分に到った処分庁の「評価」についてである。

(3)この点、具体的な個々の事情に対して具体的にいかなる評価を与えるかを直接に命じる規定はなく、調査により把握した事実に対していかなる評価を与えるかについては、必然的に行政庁の裁量が生じることは避けられない。しかしながら、評価について行政庁に裁量が認められることが必然であったとしても、行政庁による事実に対する評価が明らかに合理性を欠くこと等により、その内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合には、裁量権の範囲を逸脱・濫用したものとして違法となるものと解される。

(4)審査請求人が掲げる本人の状況、家族の介護状況、ヘルパーによる介護の有効性に関する主張は傾聴に値すべきものであり、ひとり審査請求人の主張に留まらず、自宅介護の継続が唯一の選択肢、あるいは、家族介護を減らしてヘルパーによる介護を増加すべきとの医師の意見も顕出されているところである。しかしながら、これら医師の見解や審査請求人の主張とは異なる判断をすることが、直ちに明らかに合理性を欠き社会通念に照らして著しく妥当性を欠くという評価につながるわけではない。そして、処分庁は、審査請求人に対して追加資料を求めたもののこれが提出されなかったことから、直近の令和4年7月に相談支援専門員が作成したサービス利用計画から本人の状況等を把握し、これを勘案した上で月464時間の支給量を判断したというのであり、処分庁の支給量判断が何らの根拠に基づかないものであるということもできない。

(5)以上を踏まえると、本件において調査を尽くしたうえで、これらの結果に基づいて月464時間の支給量を決定すべきとした処分庁の判断に、違法・不当があるとは認められない。

2 本件処分の理由の違法・不当について

処分庁による令和5年9月30日付け「障がい福祉サービス支給量の交付決定について」には、「2支給量の算定について」として月464時間とする本件処分の算定理由が示されているところ、審査請求人は、理由に掲げられた「自費利用と家族の土日のレスパイト」、「直接的に命に係る危険がないこと」及び「家族支援も期待できること」について誤りである旨主張するので、この点を検討する。

(1)事実についていかなる評価を与えるかについては行政庁の裁量が不可避であるところ、その評価が明らかに合理性を欠くこと等により、その内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合には、裁量権の範囲を逸脱・濫用したものとして違法となることは、上記1のとおりである。この点、処分庁は、追加時間の積算根拠を明示しているところ、サービス利用計画案、週間計画表、自費利用の記録その他の資料を基に、必要時間を算定したとして、1週間当たり、自費利用として3時間×3日、(家族の)レスパイトとして10時間を算定し、これを1日当たりに換算した上で31日を乗じて84時間の追加時間を算定したことが認められる。もとより、従前に自費利用があった場合にこれを具体的にどのように算定するのか、あるいは、家族のレスパイト考慮のために具体的に何時間を加算すべきか、といった点について具体的な処分内容を命じる規定はなく、処分庁による算定において、裁量判断は不可避である。そして、処分庁が、(1)自費利用の実績をもとに自費利用分を考慮した加算として1週間当たり3時間×3日を計上したこと、(2)処分庁が聴き取り結果を踏まえてレスパイトの考慮として1週間当たり10時間を算定したことについては、この算定判断が明らかに合理性を欠くものとはいえない。したがって、処分庁の判断を、裁量権の範囲を逸脱・濫用したものとして違法・不当と評価することはできない。

(2)なお、審査請求人は、処分理由中の「家族支援も期待できること」につき、「そもそも、制度上、家族介護ありきで支給量を算定すること自体が誤りである」とし、他事考慮による違法・不当についても主張しているものと思われる。しかしながら、介護給付費等処分に当たっての勘案事項として、法施行規則第12条第2号は「当該申請に係る障害者等の介護を行う者の状況」を掲げているところ、「介護を行う者」から家族を排除すべき理由はなく、「家族介護ありきで支給量を算定すること自体が誤り」とする審査請求人の主張は当たらない。

3 誤った公平感等を実質的理由とする本件処分は違法・不当との主張について

(1)処分庁は、令和5年8月9日開催の認定審査会に本件申請に対する支給量として月505時間を提案したが、同認定審査会の後、本件処分では月464時間の支給量が認められるに留まった。この点につき、審査請求人は、同認定審査会における委員の発言を取り上げ、実体的な必要性、妥当性を無視して、通所介護の可能性や形式的な制度論、誤った公平感を理由に支給量を増やすべきではない旨結論付けたものであり、明らかに誤りであると主張する。

(2)しかしながら、同認定審査会においては、(家族以外の)サービスの増加によって審査請求人の状況が安定につながると思われ時間を増やすことは悪いことではない等、本件における審査請求人や審査請求人の家族の状況に関する議論がなされていないわけではない。また、たしかに、同認定審査会における委員の発言には、「基準を前提に考えて一般的なことしか言えない」など非定型すなわち基準外の支給量を認めること自体に必ずしも積極的とはいえないとも見える趣旨のものも見られ、非定型すなわち基準外の支給量の是非を検討する場における議論としてはいささか適切さに欠けるやり取りもなされるところではある。しかしながら、「審査会としては、基準を前提に考えて、一般的な事しか言えない」、「審査会としてはあまりこの時間を延ばすには賛成できない」等の意見も顕出される中、処分庁は認定審査会の意見を聴いた上で、当初提案した月505時間は見直したものの月464時間という非定型の支給量を決定しているのである。審査請求人は認定審査会の議論が「実体的な必要性、妥当性を無視して、通所介護の可能性や形式的な制度論、誤った公平感」に基づくものであったと主張するが、処分庁における判断を、認定審査会の議論に引きずられたものと即断することはできない。

(3)なお、処分庁は、審査請求人の母の病状などの具体的な状況に応じて超過支給量を認めるなど、決定された支給量を前提としつつもこれを金科玉条とすることなく、実体的な必要性や妥当性に応じた随時の判断を行っている。

4 前件処分の他事考慮分が加算されていない本件処分は違法・不当との主張について

審査請求人は、(前件処分において)「(前件取消裁決により)他事考慮に当たるとされた事項があることを前提として月464時間と決定していたのであるから、理論上、それらの他事考慮事項によって減算していた時間があるはずである」と主張するので、この点について検討する。

(1)前件処分の処分理由につき、前件取消裁決が、法施行規則第12条各号の規定に照らして考慮すべきでない事項が掲げられていることについて他事考慮との指摘をなしていることは事実である。しかしながら、前件取消裁決は、他事考慮が前件処分の内容に影響を及ぼす可能性を指摘し、他事考慮事項を考慮せずに申請に対する処分内容の検討をなすべきことを命ずるものに過ぎず、他事考慮として掲げられた事項によって減算がなされていたとか、その減算がどれほどであったかについて言及するものではない。

(1)審査請求人は、「理論上」、それらの他事考慮事項によって減算していた時間がある「はず」とするが、支給量の算定は、必ずしも処分理由と一対一で決まるものではない。前件処分の処分理由に、掲げるべきでない他事考慮事項が掲げられていた以上、本件処分で当該他事考慮事項が掲げられなくなったその分だけ一対一で増減しなければ理論的におかしいということにはならない。本件では、あくまで、本件処分内容が本件処分の処分理由に掲げられる勘案事項に照らして合理的か否か(明らかに不合理であって、内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められるか否か)である。

(3)なお、審査請求人から、前件処分において他事考慮事項によって減算されていた支給量がどれほどであったかについての主張はない。

5 審理員意見書に対する審査請求人の主張について

審査請求人は審理員意見書に対する主張書面において、処分庁の判断についての検討が不十分であると主張していることから、本審査会としてこの点について検討する。審査請求人は、「本来最も重視すべき諸要素、諸価値を不当、安易に軽視し、その結果当然尽くすべき考慮を尽くさず、または本来考慮に入れるべきでない事項を考慮に容れもしくは本来過大に評価すべきでない事項を過重に評価し、これらのことにより処分の判断が左右されたものと認められる場合には違法」(東京高判昭和48年7月13日日光太郎杉事件)となるものであり、考慮事項の軽重について十分に検討した様子が見られない審理員意見書は誤りであると主張する。この点、審査請求人と処分庁との間で、評価こそ違えど調査に基づいて把握した審査請求人の環境に係る事実自体に明らかな差異が生じているものとはみられない。そして、事実の評価については、処分庁が本件処分にあたっていわゆる定型の支給量の範囲内ではなく、定型の支給量を大幅に超えるいわゆる非定型の支給となる事案として認定審査会に提案していることからも、処分庁が、審査請求人の個別の事情を考慮していることは明らかである。さらに、処分庁としては、「ある事情が生じると何時間の支給量となる」ということを命じる明確な基準がない中で、認定審査会において「基準を前提」「時間を延ばすには賛成できない」といった意見がなされてもなお、審査請求人が求める支給量には満たないものの、定型の支給量を大幅に超えた支給量を決定している。こうした経緯に鑑みれば、処分庁に一定の裁量が認められる中で、本件処分が、行政庁による事実に対する評価が明らかに合理性を欠くこと等により、その内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものとは認められないし、また、審査請求人が主張するような他事考慮や不当な評価によって処分の判断が左右されたものと認めるには到らない。したがって、審理員意見書の内容が誤りと断ずることまではできない。以上のとおり、本件審査請求には理由がないから、「第1審査会の結論」のとおり答申する。 

関係法令の規定

〇 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)

(目的)

第1条 この法律は、障害者基本法(昭和45年法律第84号)の基本的な理念にのっとり、身体障害者福祉法(昭和24年法律第283号)、知的障害者福祉法(昭和35年法律第37号)、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和25年法律第123号)、児童福祉法(昭和22年法律第164号)その他障害者及び障害児の福祉に関する法律と相まって、障害者及び障害児が基本的人権を享有する個人としての尊厳にふさわしい日常生活又は社会生活を営むことができるよう、必要な障害福祉サービスに係る給付、地域生活支援事業その他の支援を総合的に行い、もって障害者及び障害児の福祉の増進を図るとともに、障害の有無にかかわらず国民が相互に人格と個性を尊重し安心して暮らすことのできる地域社会の実現に寄与することを目的とする。

(基本理念)

第1条の2 障害者及び障害児が日常生活又は社会生活を営むための支援は、全ての国民が、障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものであるとの理念にのっとり、全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現するため、全ての障害者及び障害児が可能な限りその身近な場所において必要な日常生活又は社会生活を営むための支援を受けられることにより社会参加の機会が確保されること及びどこで誰と生活するかについての選択の機会が確保され、地域社会において他の人々と共生することを妨げられないこと並びに障害者及び障害児にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものの除去に資することを旨として、総合的かつ計画的に行わなければならない。

(市町村等の責務)

第2条 市町村(特別区を含む。以下同じ。)は、この法律の実施に関し、次に掲げる責務を有する。

一 障害者が自ら選択した場所に居住し、又は障害者若しくは障害児(以下「障害者等」という。)が自立した日常生活又は社会生活を営むことができるよう、当該市町村の区域における障害者等の生活の実態を把握した上で、公共職業安定所、障害者職業センター(障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和35年法律第123号)第19条第1項に規定する障害者職業センターをいう。以下同じ。)、障害者就業・生活支援センター(同法第27条第2項に規定する障害者就業・生活支援センターをいう。以下同じ。)その他の職業リハビリテーション(同法第2条第7号に規定する職業リハビリテーションをいう。以下同じ。)の措置を実施する機関、教育機関その他の関係機関との緊密な連携を図りつつ、必要な自立支援給付及び地域生活支援事業を総合的かつ計画的に行うこと。

二 障害者等の福祉に関し、必要な情報の提供を行い、並びに相談に応じ、必要な調査及び指導を行い、並びにこれらに付随する業務を行うこと。

三 意思疎通について支援が必要な障害者等が障害福祉サービスを円滑に利用することができるよう必要な便宜を供与すること、障害者等に対する虐待の防止及びその早期発見のために関係機関と連絡調整を行うことその他障害者等の権利の擁護のために必要な援助を行うこと。

(国民の責務)

第3条 すべての国民は、その障害の有無にかかわらず、障害者等が自立した日常生活又は社会生活を営めるような地域社会の実現に協力するよう努めなければならない。

(市町村審査会)

第15条 第26条第2項に規定する審査判定業務を行わせるため、市町村に第19条第1項に規定する介護給付費等の支給に関する審査会(以下市町村審査会」という。)を置く。

(委員)

第16条 市町村審査会の委員の定数は、政令で定める基準に従い条例で定める数とする。

2 委員は、障害者等の保健又は福祉に関する学識経験を有する者のうちから、市町村長(特別区の区長を含む。以下同じ。)が任命する。

(介護給付費等の支給決定)

第19条 介護給付費、特例介護給付費、訓練等給付費又は特例訓練等給付費(以下「介護給付費等」という。)の支給を受けようとする障害者又は障害児の保護者は、市町村の介護給付費等を支給する旨の決定(以下「支給決定」という。)を受けなければならない。

(申請)

第20条 支給決定を受けようとする障害者又は障害児の保護者は、主務省令で定めるところにより、市町村に申請をしなければならない。

(障害支援区分の認定)

第21条 市町村は、前条第一項の申請があったときは、政令で定めるところにより、市町村審査会が行う当該申請に係る障害者等の障害支援区分に関する審査及び判定の結果に基づき、障害支援区分の認定を行うものとする。

2 市町村審査会は、前項の審査及び判定を行うに当たって必要があると認めるときは、当該審査及び判定に係る障害者等、その家族、医師その他の関係者の意見を聴くことができる。

(支給要否決定等)

第22条 市町村は、第20条第1項の申請に係る障害者等の障害支援区分、当該障害者等の介護を行う者の状況、当該障害者等の置かれている環境、当該申請に係る障害者等又は障害児の保護者の障害福祉サービスの利用に関する意向その他の主務省令で定める事項を勘案して介護給付費等の支給の要否の決定(以下この条及び第27条において「支給要否決定」という。)を行うものとする。

2 市町村は、支給要否決定を行うに当たって必要があると認めるときは、主務省令で定めるところにより、市町村審査会又は身体障害者福祉法第9条第7項に規定する身体障害者更生相談所(第74条及び第76条第3項において「身体障害者更生相談所」という。)、知的障害者福祉法第9条第6項に規定する知的障害者更生相談所、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第6条第1項に規定する精神保健福祉センター若しくは児童相談所(以下「身体障害者更生相談所等」と総称する。)その他主務省令で定める機関の意見を聴くことができる。

3 市町村審査会、身体障害者更生相談所等又は前項の主務省令で定める機関は、同項の意見を述べるに当たって必要があると認めるときは、当該支給要否決定に係る障害者等、その家族、医師その他の関係者の意見を聴くことができる。

4 市町村は、支給要否決定を行うに当たって必要と認められる場合として主務省令で定める場合には、主務省令で定めるところにより、第20条第1項の申請に係る障害者又は障害児の保護者に対し、第51条の17第1項第1号に規定する指定特定相談支援事業者が作成するサービス等利用計画案の提出を求めるものとする。

5 前項の規定によりサービス等利用計画案の提出を求められた障害者又は障害児の保護者は、主務省令で定める場合には、同項のサービス等利用計画案に代えて主務省令で定めるサービス等利用計画案を提出することができる。

6 市町村は、前2項のサービス等利用計画案の提出があった場合には、第1項の主務省令で定める事項及び当該サービス等利用計画案を勘案して支給要否決定を行うものとする。

7 市町村は、支給決定を行う場合には、障害福祉サービスの種類ごとに月を単位として主務省令で定める期間において介護給付費等を支給する障害福祉サービスの量(以下「支給量」という。)を定めなければならない。

8 市町村は、支給決定を行ったときは、当該支給決定障害者等に対し、主務省令で定めるところにより、支給量その他の主務省令で定める事項を記載した障害福祉サービス受給者証(以下「受給者証」という。)を交付しなければならない。

〇 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律施行規則(平成18年厚生労働省令第19号)

(法第22条第1項に規定する主務省令で定める事項)

第12条 法第22条第1項に規定する主務省令で定める事項は、次の各号に掲げる事項とする。

一 法第20条第1項の申請に係る障害者等の障害支援区分又は障害の種類及び程度その他の心身の状況

二 当該申請に係る障害者等の介護を行う者の状況

三 当該申請に係る障害者等に関する介護給付費等の受給の状況

四 当該申請に係る障害児が現に児童福祉法第6条の2の2第1項に規定する障害児通所支援又は同法第24条の2第1項に規定する指定入所支援を利用している場合には、その利用の状況

五 当該申請に係る障害者が現に介護保険法の規定による保険給付に係る居宅サービスを利用している場合には、その利用の状況

六 当該申請に係る障害者等に関する保健医療サービス又は福祉サービス等(第3号から前号までに掲げるものに係るものを除く。)の利用の状況

七 当該申請に係る障害者等又は障害児の保護者の障害福祉サービスの利用に関する意向の具体的内容

八 当該申請に係る障害者等の置かれている環境

九 当該申請に係る障害福祉サービスの提供体制の整備の状況

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