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介護給付費支給決定処分に係る審査請求(答申)(令和6年度2件目)

更新日:2025年5月14日 印刷ページ表示

件名

 介護給付費支給決定処分に係る審査請求

第1 審査会の結論

 処分庁高崎市長が令和5年12月19日付けで審査請求人に対して行った障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号。以下「法」という。)に基づく障害者介護給付費申請に対する支給決定処分の取消しを求める審査請求(以下「本件審査請求」という。)には、理由がないので、行政不服審査法(平成26年法律第68号)第45条第2項の規定により本件審査請求を棄却すべきである。

第2 事案の概要

​本件は、審査請求人が処分庁に対して、令和5年10月20日に法第20条第1項に基づく介護給付費の支給申請(以下「本件申請」という。)を行ったところ、処分庁は令和5年12月19日付け介護給付費支給決定処分(以下「本件処分」という。)を行い、審査請求人が本件処分を不服として、法第97条に基づき、審査庁に対して審査請求をなしたものである。

第3 審理関係人の主張の要旨

​1 審査請求人の主張の要旨

本件処分は審査請求人の母が審査請求人の支援ができることを前提としているところ、審査請求人は審査請求人の母が経営する事業所から福祉サービスを提供されているが、審査請求人の母は当該事業所の経営を仕事としているのであり、次の(1)のとおり審査請求人の生活に則った支援ができる状況ではない。特に家事援助については、次の(2)のとおり、サービス支給量を増やす必要がある。支給量の増加を認めない本件処分は、審査請求人が人間らしい生活を送ることへの侵害であるから、本件処分を取り消すことを求める。

(1) 審査請求人の母からの支援(介護)について

ア 審査請求人は、審査請求人の母が経営する居宅介護事業所の居宅介護サービスを利用し、審査請求人の母は同居宅介護事業所において夜間・深夜・早朝に身体介護の支援業務に当たってはいるが、利用者の中で審査請求人の支援のみを行っているわけではない。審査請求人の母は、大半の夜間帯の勤務に従事し、日中は社業に従事している時間帯も多いため、審査請求人の家族として審査請求人の支援を行う時間を取ることは厳しい状況にある。
イ 支給量が不足している家事援助については、家族以外のボランティアに頼らざる得ない状態である。
ウ 審査請求人の母は、処分庁に対し、「審査請求人の母は、週の大半は主に夜間帯勤務を担っている状況の中、日中も社業を行わなければならない状況にある。」ということを伝えてあり、処分庁は状況を認識しているはずである。

(2) 支給量(特に家事援助に係るもの)を増やす必要性について

前回支給申請時に、審査請求人の一人暮らしを想定し、このために必要とされる週間プランを計画し、決定支給量の下で生活してきた。今回の支給申請に当たって週間プランを検証したが、(一人暮らしの生活を想定するには、従来の支給量に加え)1日の内に午前(洗濯機を回し、干す、前日の取込や片付け等)と午後(洗濯物の取込やたたみ、片付け等)にさらに各30分の家事援助が必要である。

2 処分庁の主張の要旨

以下のとおり審査請求人の本件審査請求に理由はなく、本件審査請求は、速やかに棄却されるべきである。

(1) 審査請求人の母からの支援(介護)について

ア 審査請求人の母は、審査請求人と同居してはいない。しかしながら、審査請求人の母は、重度の障害者のみを入居させる重度障害者専用アパートを自ら経営し、審査請求人の他数名の重度の障害者を入居させ、審査請求人の母自らが経営する居宅介護事業所のヘルパーを派遣して居宅介護による支援を行っている。現に審査請求人は母からの日常的な支援を受けているため、審査請求人にとって介護を行う者が不存在であるとは認められない。
イ 審査請求人が居宅介護の従前の支給量(身体介護月210時間、家事援助月25時間)が決定された令和元年10月1日から本件申請(令和5年10月20 日)までの間における審査請求人の心身の状況や介護を行う者の状況の変化について、審査請求人の母からの聴き取り等を行ったが、審査請求人の障害の程度、状況及び介護者の心身の状況や就労状況が特段変化している事情は認められなかった。

(2) 支給量(特に家事援助に係るもの)を増やす必要性について

審査請求人の母による支援を前提とせずに、従前の審査請求人に対する家事援助の支給量が実質的に不足しているかを検討したところ、審査請求人は重度の遷延性意識障害者であって短時間の内に居室が乱雑になることは想定されないことから、午前中の家事援助が入らない日については居室内清掃を午後のみとするなど、午後中の家事援助30分の支援の中において調整を図ることが可能であると考えられた。従前の毎日午前中30分の家事援助の支給量を、さらに増加する必要性は認められない。

第4 審理員意見書の要旨

 本件処分につき、処分庁に明らかな裁量権の逸脱・濫用ありとすべき事情は認められず、本件処分を違法ないし不当な処分として取り消すべき理由はない。したがって、本件審査請求には理由がないから、行政不服審査法第45条第2項の規定により、棄却されるべきである。 

第5 調査審議の経過等

​1 当審査会は、本件諮問事件について、次のとおり、調査審議を行った。

 令和7年2月7日 審査庁から諮問書及び諮問説明書を収受

 令和7年3月21日 調査・審議

2 審理手続の適正について

本件審査請求について、審理員による適正な審理手続が行われたものと認められる。

第6 審査会の判断の理由

​1 審査請求人の母からの支援(介護)について

ア 処分庁は、本件処分に当たり、審査請求人の母を審査請求人の介護者として、「介護者である母」から聞き取りを行い、その聞き取り内容を判断の根拠としているところ、審査請求人の家族である審査請求人の母の状況を勘案して支給決定をなすこと自体に違法はない(法施行規則第12条第2号)。
イ この点、審査請求人の母が審査請求人に対してどの程度の介護を行えるかについては、審査請求人と処分庁との見解に争いがあるので、これを検討する。
ウ 処分庁による障害福祉サービスの支給量の決定については、法施行規則第12条各号が掲げる勘案事項に係る状況等の調査の結果を踏まえた処分庁の合理的な裁量に委ねられるものであるところ、処分庁の判断の内容が事実の基礎を欠くこと又は考慮すべき事項を考慮しないこと等により社会通念上妥当性を欠くものであり、裁量権の範囲を超え又はそれを濫用したものと認められる場合には違法となる。
エ 本件についてみると、(1)支給決定に当たり、処分庁は、介護者たる審査請求人の母から直接、審査請求人の生活及び介護の状況等の聞き取り調査を行い、(2)調査の結果、処分庁は、審査請求人の母が審査請求人と同居こそしていないものの審査請求人が居住する重度障害者専用アパートから直線距離で500メートルの距離に居住していること、同アパートには審査請求人の母が自ら経営する居宅介護事業者のヘルパーとして母自身も主に夜間の支援に入っており同アパートに日常的に所在していること、を把握し、介護者たる審査請求人の母からの介護が期待されることを前提に本件支給量の判断をしたとする。
オ この点、審査請求人は、(1)審査請求人の母が審査請求人が居住する重度障害者専用アパートにおいてヘルパーとして支援する者は審査請求人のみではないこと、(2)審査請求人の母は居宅介護事業の経営者として社業をも担っていること、⑶これらのことは処分庁にも伝えており審査請求人の母が審査請求人の支援を行うことは困難であることを処分庁も認識していたはずである旨主張する。しかしながら、介護者の状況として検討されるべきは事業所スタッフたるヘルパーによってなされる介護の状況ではなく、家族等による介護の状況であること、一般に事業経営者たる家族は介護が困難であると見るべき理由はないこと、したがって、上記(1)ないし(2)の事情があるからといって、審査請求人の居住アパートと程遠くない距離に居住し、かつ、日常的に同アパートに所在する審査請求人の母が、審査請求人の介護者として一定の介護を行うことが可能であると判断することをもって、著しく不合理であるとか不当であるとまではいえない。これに加え、審査請求人が居住する重度障害者専用アパートには介護を提供する従業員があり家族たる審査請求人の母以外の者からの介護も期待できること、審査請求人が求める支給量と本件処分による支給量の乖離は大きいものではないこと、に照らせば、審査請求人に対する介護につき、従前の支給量の範囲内で調整することが可能とする処分庁の判断が著しく不合理ないし不当であるとはいえない。

2 支給量(特に家事援助に係るもの)を増やす必要性について

ア なお、審査請求人は本件処分のうち、特に家事援助に係るものについて支給量を増やすよう求めていることから、この点について検討する。
イ 審査請求人は、審査請求人の一人暮らしを想定する中で、洗濯のため、毎日の午前及び午後さらに各30分の家事援助が必要と主張する。しかしながら、単身世帯である審査請求人に想定される洗濯すべき衣類等の量を考慮すれば、洗濯の家事援助としても現在の支給量の中で調整を図ることも可能と考えられ、処分庁が、審査請求人が重度の遷延性意識障害者であって短時間の内に居室が乱雑になることは想定されないことから午前中の家事援助が入らない日については居室内清掃を午後のみとするなど、午後中の家事援助30分の支援の中において調整を図ることが可能であると判断したことをもって、不合理とはいえない。

3 上記以外の違法性又は不当性についての検討

その余の審理関係人の主張に、本件処分を取り消すべき理由なしとする結論を左右する点は認められない。

4 小括

以上の次第であり、本件処分につき、処分庁に明らかな裁量権の逸脱・濫用ありとすべき事情は認められず、本件処分を違法ないし不当な処分として取り消すべき理由はない。以上のとおり、本件審査請求には理由がないから、「第1審査会の結論」のとおり答申する。

関係法令の規定

〇 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)

(目的)

第1条 この法律は、障害者基本法(昭和45年法律第84号)の基本的な理念にのっとり、身体障害者福祉法(昭和24年法律第283号)、知的障害者福祉法(昭和35年法律第37号)、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和25年法律第123号)、児童福祉法(昭和22年法律第164号)その他障害者及び障害児の福祉に関する法律と相まって、障害者及び障害児が基本的人権を享有する個人としての尊厳にふさわしい日常生活又は社会生活を営むことができるよう、必要な障害福祉サービスに係る給付、地域生活支援事業その他の支援を総合的に行い、もって障害者及び障害児の福祉の増進を図るとともに、障害の有無にかかわらず国民が相互に人格と個性を尊重し安心して暮らすことのできる地域社会の実現に寄与することを目的とする。

(基本理念)

第1条の2 障害者及び障害児が日常生活又は社会生活を営むための支援は、全ての国民が、障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものであるとの理念にのっとり、全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現するため、全ての障害者及び障害児が可能な限りその身近な場所において必要な日常生活又は社会生活を営むための支援を受けられることにより社会参加の機会が確保されること及びどこで誰と生活するかについての選択の機会が確保され、地域社会において他の人々と共生することを妨げられないこと並びに障害者及び障害児にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものの除去に資することを旨として、総合的かつ計画的に行わなければならない。

(市町村等の責務)

第2条 市町村(特別区を含む。以下同じ。)は、この法律の実施に関し、次に掲げる責務を有する。

一 障害者が自ら選択した場所に居住し、又は障害者若しくは障害児(以下「障害者等」という。)が自立した日常生活又は社会生活を営むことができるよう、当該市町村の区域における障害者等の生活の実態を把握した上で、公共職業安定所、障害者職業センター(障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和35年法律第123号)第19条第1項に規定する障害者職業センターをいう。以下同じ。)、障害者就業・生活支援センター(同法第27条第2項に規定する障害者就業・生活支援センターをいう。以下同じ。)その他の職業リハビリテーション(同法第2条第7号に規定する職業リハビリテーションをいう。以下同じ。)の措置を実施する機関、教育機関その他の関係機関との緊密な連携を図りつつ、必要な自立支援給付及び地域生活支援事業を総合的かつ計画的に行うこと。

二 障害者等の福祉に関し、必要な情報の提供を行い、並びに相談に応じ、必要な調査及び指導を行い、並びにこれらに付随する業務を行うこと。

三 意思疎通について支援が必要な障害者等が障害福祉サービスを円滑に利用することができるよう必要な便宜を供与すること、障害者等に対する虐待の防止及びその早期発見のために関係機関と連絡調整を行うことその他障害者等の権利の擁護のために必要な援助を行うこと。

(国民の責務)

第3条 すべての国民は、その障害の有無にかかわらず、障害者等が自立した日常生活又は社会生活を営めるような地域社会の実現に協力するよう努めなければならない。

(市町村審査会)

第15条 第26条第2項に規定する審査判定業務を行わせるため、市町村に第19条第1項に規定する介護給付費等の支給に関する審査会(以下市町村審査会」という。)を置く。

(委員)

第16条 市町村審査会の委員の定数は、政令で定める基準に従い条例で定める数とする。

2 委員は、障害者等の保健又は福祉に関する学識経験を有する者のうちから、市町村長(特別区の区長を含む。以下同じ。)が任命する。

(介護給付費等の支給決定)

第19条 介護給付費、特例介護給付費、訓練等給付費又は特例訓練等給付費(以下「介護給付費等」という。)の支給を受けようとする障害者又は障害児の保護者は、市町村の介護給付費等を支給する旨の決定(以下「支給決定」という。)を受けなければならない。

(申請)

第20条 支給決定を受けようとする障害者又は障害児の保護者は、主務省令で定めるところにより、市町村に申請をしなければならない。

(障害支援区分の認定)

第21条 市町村は、前条第一項の申請があったときは、政令で定めるところにより、市町村審査会が行う当該申請に係る障害者等の障害支援区分に関する審査及び判定の結果に基づき、障害支援区分の認定を行うものとする。

2 市町村審査会は、前項の審査及び判定を行うに当たって必要があると認めるときは、当該審査及び判定に係る障害者等、その家族、医師その他の関係者の意見を聴くことができる。

(支給要否決定等)

第22条 市町村は、第20条第1項の申請に係る障害者等の障害支援区分、当該障害者等の介護を行う者の状況、当該障害者等の置かれている環境、当該申請に係る障害者等又は障害児の保護者の障害福祉サービスの利用に関する意向その他の主務省令で定める事項を勘案して介護給付費等の支給の要否の決定(以下この条及び第27条において「支給要否決定」という。)を行うものとする。

2 市町村は、支給要否決定を行うに当たって必要があると認めるときは、主務省令で定めるところにより、市町村審査会又は身体障害者福祉法第9条第7項に規定する身体障害者更生相談所(第74条及び第76条第3項において「身体障害者更生相談所」という。)、知的障害者福祉法第9条第6項に規定する知的障害者更生相談所、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第6条第1項に規定する精神保健福祉センター若しくは児童相談所(以下「身体障害者更生相談所等」と総称する。)その他主務省令で定める機関の意見を聴くことができる。

3 市町村審査会、身体障害者更生相談所等又は前項の主務省令で定める機関は、同項の意見を述べるに当たって必要があると認めるときは、当該支給要否決定に係る障害者等、その家族、医師その他の関係者の意見を聴くことができる。

4 市町村は、支給要否決定を行うに当たって必要と認められる場合として主務省令で定める場合には、主務省令で定めるところにより、第20条第1項の申請に係る障害者又は障害児の保護者に対し、第51条の17第1項第1号に規定する指定特定相談支援事業者が作成するサービス等利用計画案の提出を求めるものとする。

5 前項の規定によりサービス等利用計画案の提出を求められた障害者又は障害児の保護者は、主務省令で定める場合には、同項のサービス等利用計画案に代えて主務省令で定めるサービス等利用計画案を提出することができる。

6 市町村は、前2項のサービス等利用計画案の提出があった場合には、第1項の主務省令で定める事項及び当該サービス等利用計画案を勘案して支給要否決定を行うものとする。

7 市町村は、支給決定を行う場合には、障害福祉サービスの種類ごとに月を単位として主務省令で定める期間において介護給付費等を支給する障害福祉サービスの量(以下「支給量」という。)を定めなければならない。

8 市町村は、支給決定を行ったときは、当該支給決定障害者等に対し、主務省令で定めるところにより、支給量その他の主務省令で定める事項を記載した障害福祉サービス受給者証(以下「受給者証」という。)を交付しなければならない。

〇 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律施行規則(平成18年厚生労働省令第19号)

(法第22条第1項に規定する主務省令で定める事項)

第12条 法第22条第1項に規定する主務省令で定める事項は、次の各号に掲げる事項とする。

一 法第20条第1項の申請に係る障害者等の障害支援区分又は障害の種類及び程度その他の心身の状況

二 当該申請に係る障害者等の介護を行う者の状況

三 当該申請に係る障害者等に関する介護給付費等の受給の状況

四 当該申請に係る障害児が現に児童福祉法第6条の2の2第1項に規定する障害児通所支援又は同法第24条の2第1項に規定する指定入所支援を利用している場合には、その利用の状況

五 当該申請に係る障害者が現に介護保険法の規定による保険給付に係る居宅サービスを利用している場合には、その利用の状況

六 当該申請に係る障害者等に関する保健医療サービス又は福祉サービス等(第3号から前号までに掲げるものに係るものを除く。)の利用の状況

七 当該申請に係る障害者等又は障害児の保護者の障害福祉サービスの利用に関する意向の具体的内容

八 当該申請に係る障害者等の置かれている環境

九 当該申請に係る障害福祉サービスの提供体制の整備の状況

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