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植物レッドリスト(2025年部分改訂版)
1 背景・目的
群馬県では2022(令和4)年に絶滅のおそれのある野生動植物種の一覧(以下、「2022年レッドリスト」とする。)を改訂し、解説を加えた報告書(以下、「レッドデータブック2022年度版」とする。)を作成しました。
その後の調査や最新の分類学的知見の蓄積により、県内初記録分類群の出現や種の細分化といった事例も少なくなく、また、災害、開発、不法な採取・捕獲などの突発的な事象による状況悪化も想定されます。このため、迅速かつ機動的な種の保全対策を行うためには、部分的であっても短い周期でレッドリストを見直していくことが必要だと考えられます。
群馬県では2022年レッドリストを短い周期で見直し、より現状に即した種の保全対策のための基礎資料を作成するため、2022(令和4)年度からレッドリストの部分改訂作業を始めました。
2 結果
(1)改定の概要(維管束植物)
植物レッドリスト(維管束植物)について評価の見直しを行ったところ、新規評価1種、ランク変更2種となりました。詳細については、以下のとおりです。
<新規評価>
クロヤツシロラン 指定なし(2022)→絶滅危惧1A類(2025)
<ランク変更>
ヒトツバハギ 野生絶滅(2022)→絶滅危惧1A類(2025)
カワラボウフウ 情報不足(2022)→絶滅危惧1A類(2025)
この結果、群馬県全体での植物版レッドリスト(維管束植物)掲載種類数は669種類となりました。その内訳は表1の通りです。
注:ランクの正式名称は「絶滅危惧(ローマ数字の)1、2類」ですが、ウェブページの閲覧環境によってはローマ数字の表示ができないため、ここでは便宜上1及び2を使用します。以下同様。
ランク | 種類数 |
---|---|
絶滅 | 53 |
野生絶滅 | 1 |
絶滅危惧1A類 |
267 |
絶滅危惧1B類 | 134 |
絶滅危惧2類 | 133 |
準絶滅危惧 | 48 |
情報不足 | 33 |
計 |
669 |
(2)改定の概要(コケ植物)
2024(令和6)年度に作成した植物レッドリスト(コケ植物)について評価の見直しを行ったところ、以下4種を新たに追加しました。
ササオカゴケ、シナノミズゴケ 指定なし(2024)→絶滅危惧1類(2025)
オオヒモゴケ、コガネハイゴケ 指定なし(2024)→絶滅危惧2類(2025)
この結果、群馬県全体での植物版レッドリスト(コケ植物)掲載種類数は57種類となりました。その内訳は表2の通りです。
なお、今後の調査の進行により、湿地生および水生の種以外も含み、随時改訂する予定です。
ランク | 種類数 |
---|---|
絶滅 | 0 |
野生絶滅 | 0 |
絶滅危惧1類 | 15 |
絶滅危惧2類 | 17 |
準絶滅危惧 | 21 |
情報不足 | 4 |
計 | 57 |
(3)新規掲載・ランク変更種解説資料及び植物レッドリスト
解説資料は2025年部分改訂版植物レッドリスト(維管束植物)の新規掲載種とランク変更した種の現状と絶滅のおそれの要因について解説したものです。解説資料の科名、及び上位の分類群の取り扱いは『群馬県の絶滅のおそれのある野生生物植物編 2022年版』に準拠しています。また、解説資料の各項目についても、記述要領は『群馬県の絶滅のおそれのある野生生物植物編 2022年版』に準拠しています。各項目の詳細については同書の調査方法を参照してください。
なお、コケ植物の評価については、同定にあたって顕微鏡観察が必要な種が多く野外での同定や再確認が難しいこと、過去の生育状況について信頼できる記録が少なく減少率などについての定量的解析が難しいことなどにより、定性評価としています。
01_新規種リスト(維管束植物) (PDF:102KB)
02_新規種解説資料(維管束植物) (PDF:93KB)
03_ランク変更種リスト(維管束植物) (PDF:94KB)
04_ランク変更種解説資料(維管束植物) (PDF:134KB)
05_全種リスト(維管束植物) (PDF:1.44MB)
06_全種リスト(コケ植物) (PDF:217KB)
3 評価区分および基本概念
今回の部分改訂における評価については、「群馬県の絶滅のおそれのある野生生物(レッドデータブック)植物編 2022年改訂版」と同様、次の区分を用いました。
なお、これは環境省のレッドデータブック及びレッドリストで用いられている「レッドリストカテゴリー(環境省,2020)」を準用したものです。
絶滅 Extinct(Ex)
我が国ではすでに絶滅したと考えられる種
野生絶滅 Extinct in the Wild(Ew)
飼育・栽培下、あるいは自然分布域の明らかに外側で野生化した状態でのみ存続している種
絶滅危惧 Threatened
絶滅危惧1類(Cr+En)
絶滅に瀕している種:現在の状態をもたらした圧迫要因が引き続き作用する場合、野生での存続が困難なもの。
絶滅危惧1A類 Critically Endangered(Cr)
ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの。
絶滅危惧1B類 Endangered(En)
1A類ほどではないが、近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの
絶滅危惧2類 Vulnerable(Vu)
絶滅の危険が増大している種:現在の状態をもたらした圧迫要因が引き続き作用する場合、近い将来「絶滅危惧1類」のランクに移行することが確実と考えられるもの。
準絶滅危惧 Near Threatened(Nt)
存続基盤が脆弱な種:現時点での絶滅危険度は小さいが、生育条件の変化によっては「絶滅危惧」として上位ランクに移行する要素を有するもの。
情報不足 Data Deficient(Dd)
評価するだけの情報が不足している種