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令和7年度答申第4号

更新日:2025年6月27日 印刷ページ表示

第1 審査会の結論

 本件審査請求には、理由がないので、行政不服審査法(平成26年法律第68号)第45条第2項の規定により審査請求を棄却すべきである。

第2 審査関係人の主張の要旨

1 審査請求人

 処分庁が行った令和6年10月18日付け障害児福祉手当認定請求却下処分(以下「本件処分」という。)の取消し及び再認定の裁決を求めるものであり、その理由は、以下のとおりである。

  • 審査請求人は、発達障害を起因として常時「合理的配慮」を必要としており、障害児福祉手当認定(以下「本件認定」という。)に該当する重度の障害の状態にある。また精神障害者保健福祉手帳○級の認定を受けている。
  • しかし、処分庁は、本件認定の対象に発達障害も含めているにも関わらず、身体障害と老人介護に偏った診断書の様式(回答方式)を用いており、発達障害者にとって正当な審査の妨げとなっている。そのため、認定請求に当たっては、主治医が診断書に付随書類を付け、発達障害の観点から社会生活や学校生活を送る上での困難さを詳細に伝えた。
  • 通常、精神障害者保健福祉手帳や特別児童手当等の審査には最短でも1~2カ月を要し、回答方式では判断できない部分は、主治医が別紙で詳細な生活状況(社会生活上の障壁)を伝えることが認められており、認定には専門家が必ず関与する。
  • ところが本件は、申請からわずか○日で却下されており、診断書の1枚目(回答方式)のみで却下された疑いがある。故意に、全ての提出書類(主治医が必要と判断し作成・提出した診断書一式)を審査しなかった疑い及び認定の審査に専門家が関与していない疑いがあり、正当な審査を受ける権利を侵害されている。

2 審査庁

 審理員意見書のとおり、本件審査請求を棄却すべきである。

第3 審理員意見書の要旨

 障害児福祉手当とは、特別児童扶養手当等の支給に関する法律(昭和39年法律第134号。以下「法」という。)に基づき、精神又は身体に著しく重度の障害を有する者の福祉の増進を図るために支給されるものである。

 法第2条第2項に規定された「政令で定める程度の著しく重度の障害の状態」については、特別児童扶養手当等の支給に関する法律施行令(昭和50年政令第207号。以下「令」という。)第1条第1項に基づく別表第1各号に掲げられており、その具体的な基準は「障害児福祉手当及び特別障害者手当の障害程度認定基準について」(昭和60年12月28日社更第162号厚生省社会局長通知。以下「認定基準」という。)により厚生労働省が定めており、認定基準の詳細については、「改訂 特別障害者手当等支給事務の手引(厚生省大臣官房障害保健福祉部企画課監修)」(以下「手引」という。)で定められている。

 処分庁は、認定基準及び手引に基づいて本件処分を行っており、違法又は不当な点はない。

 以上のとおり、本件審査請求には理由がないから、行政不服審査法第45条第2項の規定により棄却されるべきである。

第4 調査審議の経過

 当審査会は、本件諮問事件について、次のとおり、調査審議を行った。
 令和7年5月15日 審査庁から諮問書及び諮問説明書を収受
 令和7年5月23日 調査・審議
 令和7年6月27日 調査・審議​

第5 審査会の判断の理由

1 審理手続の適正について

 本件審査請求について、審理員による適正な審理手続が行われたものと認められる。

2 本件に係る法令等の規定について

(1) 法令の規定

 法第17条において、都道府県知事、市長(特別区の区長を含む。以下同じ。)及び福祉事務所を管理する町村長は、その管理に属する福祉事務所の所管区域内に住所を有する重度障害児に対し、障害児福祉手当を支給することとされている。

 法第2条第2項において、法における「重度障害児」とは、障害児(20歳未満であって同条第5項の障害等級に該当する程度の障害の状態にある者)のうち、政令で定める程度の重度の障害の状態にあるため、日常生活において常時の介護を必要とする者というとされている。

 令第1条第1項において、法第2条第2項に規定する政令で定める程度の重度の障害の状態は、別表第1に定めるとおりとされており、令別表第1第9号において「精神の障害であつて、前各号と同程度以上と認められる程度のもの」とされている。

 法第19条において、障害児福祉手当の支給要件に該当する者は、当該手当の支給を受けようとするときは、その受給資格について、都道府県知事、市長又は福祉事務所を管理する町村長の認定を受けなければならないこととされている。

(2) 厚生省通知等の規定

 認定基準第1の3において、障害程度の認定は、原則として、診断書によって行うこととされている。

 認定基準第2の6において、精神の障害の認定基準について以下のとおり定められている。

⑴ 精神の障害は、統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害、気分(感情)障害、症状性を含む器質性精神障害、てんかん、知的障害、発達障害に区分し、その障害及び状態像が令別表第1第9号に該当すると思われる症状等には、次のようなものがある。

(略)

キ 発達障害によるものにあっては、社会性やコミュニケーション能力が欠如しており、かつ、著しく不適応な行動が見られるもの

(注1) 発達障害とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものをいう。

(注2) 発達障害については、たとえ知能指数が高くても、社会行動やコミュニケーション能力の障害により対人関係や意思疎通を円滑に行うことができないために日常生活に著しい制限を受けることに着目して行う。

(注3) 日常生活能力等の判定に当たっては、身体的機能及び精神的機能を考慮のうえ、社会的な適応性の程度によって判断するよう努める。

(略)

⑵ 精神の障害の程度については、日常生活において常時の介護又は援助を必要とする程度以上のものとする。

 認定基準第2の6⑵における「日常生活において常時の介護又は援助を必要とする程度」とは、手引において、次のとおりとされている。

「改訂 特別障害者手当等支給事務の手引」(p.267)

[常時介護を必要とする程度]

(問) 「日常生活において常時介護を必要とする程度以上」とは、診断書にどのような記載がある場合か。

(答) 日常生活において常時介護を必要とする程度とは、手当認定診断書上で、おおむね次のいずれかに該当する記載がある場合である。

⑴ (16)欄の1から5の動作について、全て半介助以上に該当する場合

⑵ (11)欄から(15)欄に掲げる障害等により(17)欄(要注意度)の1に該当する場合

⑶ (11)欄から(15)欄に掲げる障害等により(17)欄(要注意度)の2に該当する場合であって、かつ、(16)欄の各動作の半数以上について半介助以上に該当する場合

3 精神の障害の確認

 本件認定請求において提出された障害児福祉手当(福祉手当)認定診断書(精神の障害用)(診断書様式に添付された書類を含む。以下「本件診断書」という。)上の障害の原因となった傷病名から、「○○○○」が確認できる。これは、本件認定における発達障害の区分に該当する。

4 本件処分の妥当性について

 発達障害における障害児福祉手当の認定要件については、認定基準第2の6⑴及び⑵の双方を満たす必要がある。

(1) 認定基準第2の6⑴への該当

 本件診断書では、発達障害に起因するトラブル等による社会生活における困難さが記載されており、認定基準第2の6⑴に該当すると判断できる。

(2) 認定基準第2の6⑵への該当

 本件診断書において、以下のとおりとなっている。

  • (11)欄から(15)欄のうち(11)欄の「発達障害関連症状」のみ該当しており、具体的な症状については、「1 相互的な社会関係の質的障害」、「2 言語コミュニケーションの障害」、「3 限定した常同的で反復的な関心と行動」となっている。
  • (16)欄「日常生活能力の程度」については、「1 食事」が半介助、「2 洗面」が半介助、「3 排泄」が自立、「4 衣服」が自立、「5 入浴」が自立、「6 危険物」が特定の物、場所はわかる、「7 睡眠」は問題なしとなっている。
  • (17)欄「要注意度」については、「2 随時一応の注意を必要とする」となっている。

 審査請求人の状態が認定基準第2の6⑵に該当するどうかについて、本件診断書における上記の記載を手引と照合すると、以下のとおりとなる。

(1) 「⑴ (16)欄の1から5の動作について、全て半介助以上に該当する場合」との照合

 本件診断書では、全5項目中3項目(「3 排泄」、「4 衣服」及び「5 入浴」)が半介助未満(自立)であり、要件を満たしていない。

(2) 「⑵ (11)欄から(15)欄に掲げる障害等により(17)欄(要注意度)の1に該当する場合」との照合

 本件診断書では、(17)欄(要注意度)の2に該当しており、要件を満たしていない。

(3) 「⑶ (11)欄から(15)欄に掲げる障害等により(17)欄(要注意度)の2に該当する場合であって、かつ、(16)欄の各動作の半数以上について半介助以上に該当する場合」との照合

 本件診断書では、(17)欄(要注意度)の2に該当している一方で、(16)欄の各動作については、全7項目中4項目(「3 排泄」、「4 衣服」、「5 入浴」及び「7 睡眠」)は半介助未満(自立又は問題なし)であり、要件を満たしていない。

 したがって、審査請求人の状態は、認定基準第2の6⑴の要件を満たしているが、認定基準第2の6⑵の要件を満たしておらず、認定基準で定める「日常生活において常時の介護又は援助を必要とする程度以上」ではないと判断できる。

(3) その他

 審査請求人は、本件診断書の様式について、身体障害と老人介護に偏った様式となっていると主張している。しかし、本件診断書の様式は、認定基準において定める診断書の様式(様式第8号)に準じたものとなっており、審査請求人が主張するような事実はない。

 また、審査請求人は、認定には専門家が必ず関与するはずであるが、本件については申請からわずか○日で却下されており、「主治医が必要と判断し作成・提出した診断書一式」を審査しなかった疑いがあると主張している。審査方法については、本件診断書の内容を認定基準や手引と照らし合わせた上で行っていることから、審査請求人が主張するような事実はない。

 更に、審査請求人は、反論書において、現行の法令等における「障害」及び「重度障害児」の定義について不服を述べているが、行政機関である処分庁は、現行の法令等を前提として処分を行うものである。処分庁が現行の法令等を前提として本件処分を行ったと認められることは、上記に述べたとおりであり、審査請求人の主張は認められない。

 その上、審査請求人は、令和○年○月○日付け主張書面において、制度そのものに対する不服や制度改正等の要望を述べているが、前述のとおり、処分庁は現行の法令等を前提として処分を行うものである。審査請求人によるこれらの主張は、本件処分が適法か否かの判断に影響を及ぼすものではないと解されるため、いずれも採用することはできない。

 審査請求人の他の主張についても、本件審査請求の結論に影響を及ぼすものではない。

(4) 小括

 以上のことから、処分庁は、認定基準及び手引に基づいて、審査請求人が障害児福祉手当の認定基準を満たしていないものとしており、本件処分に違法又は不当な点は認められない。

第6 結論

 以上のとおり、本件審査請求には理由がないから、「第1 審査会の結論」のとおり、答申する。

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