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令和7年度答申第5号

更新日:2025年9月4日 印刷ページ表示

第1 審査会の結論

 本件審査請求には、理由がないので、行政不服審査法(平成26年法律第68号)第45条第2項の規定により審査請求を棄却すべきである。

第2 審査関係人の主張の要旨

1 審査請求人

 処分庁が行った令和7年2月27日付け審査請求人に対する精神障害者保健福祉手帳に係る申請の不承認処分(以下「本件処分」という。)の取消しを求める理由として、次のとおり主張している。

 昨年は更新できたのになぜダメなのか。症状は、変化がなく、むしろ悪化している。

2 審査庁

 審理員意見書のとおり、本件審査請求を棄却すべきである。

第3 審理員意見書の要旨

 審査請求人の精神疾患の存在についてみると、診断書の病名として、主たる精神障害が「解離性障害」であることから、「精神障害者保健福祉手帳の障害等級の判定基準について(平成7年9月12日健医発第1133号厚生省保健医療局長通知)」(以下「判定基準」という。)別添1「精神障害者保健福祉手帳等級判定基準の説明」(1)(8)「その他の精神疾患」に該当するものであり、精神疾患が存在することが認められる。

 次に、審査請求人の精神疾患(機能障害)の状態についてみると、診断書の「(4) 現在の病状及び状態像等」において、「抑うつ状態」「精神運動興奮及び昏迷の状態」「不安及び不穏」「知能・記憶・学習・注意の障害」の項目に該当し、「(5) (4)の病状及び状態像等の具体的程度、症状、検査所見等」から、「軽度の遂行機能障害を背景に、職場での適応に困難を伴い、サポートを要したり時に強度の不安・解離・情動不安定を呈する。」ことが確認できる。また、「(6) 現在の障害福祉サービスの利用状況」は、「利用なし」と記載されており、障害福祉等のサービスを利用していないことが確認できる。

 次に、審査請求人の能力障害(活動制限)の状態についてみると、診断書の「(3) 日常生活能力の程度」では、「精神障害を認めるが、日常生活及び社会生活は普通にできる。」とされており、「精神障害者保健福祉手帳の障害等級の判定基準の運用に当たって留意すべき事項について(平成7年9月12日付け健医精発第46号厚生省保健医療局精神保健課長通知)」(以下「留意事項」という。)別紙3(6)の表では非該当の区分となる。また、「(2) 日常生活能力の判定」では、8項目のうち5項目が判定基準において非該当とされる「自発的にできる」又は「適切にできる」に該当し、他3項目が判定基準において3級相当とされる「おおむねできるが援助が必要」に該当している。また、「上記の具体的程度、状態等」の欄には「就労などの社会生活に、助言、指導がありながら、こなせている。」と記載されている。

 なお、審査請求人は、上記第2の1のとおり主張しているが、障害等級の判定については、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和25年法律第123号。以下「法」という。)第45条第2項及び精神保健及び精神障害者福祉に関する法律施行規則(昭和25年厚生省令第31号。以下「施行規則」という。)第23条第2項に、精神障害者保健福祉手帳の交付の申請(医師の診断書等添付)に基づいて審査する旨規定されており、あくまで申請時に提出された診断書に基づく書面審査を行うものであるところ、診断書によれば、審査請求人の状態は、障害等級非該当であると認められることから、提出された診断書に基づく書面審査を行った処分庁の本件処分について、違法又は不当な点があるとは認められない。

第4 調査審議の経過

   当審査会は、本件諮問事件について、次のとおり、調査審議を行った。
   令和7年7月17日 審査庁から諮問書及び諮問説明書を収受
   令和7年7月25日 調査・審議
   令和7年8月22日 調査・審議

第5 審査会の判断の理由

1 審理手続の適正について

 本件審査請求について、審理員による適正な審理手続が行われたものと認められる。

2 本件に係る法令等の規定について

 (1) 都道府県知事は、精神障害者保健福祉手帳の交付の申請(医師の診断書等を添付)があった場合において、当該申請に基づいて審査し、申請者が精神保健及び精神障害者福祉に関する法律施行令(昭和25年政令第155号。以下「施行令」という。)第6条に規定する精神障害の状態にあると認めたときは、申請者に精神障害者保健福祉手帳を交付しなければならず(法第45条第1項及び第2項並びに施行規則第23条第2項)、また、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けた者は、2年ごとに、施行令第6条に規定する精神障害の状態にあることについて、都道府県知事の認定(申請に当たっては、医師の診断書等を添付)を受けなければならないとされている(法第45条第4項及び施行規則第28条第1項)。

 (2) 施行令第6条に規定する精神障害の状態とは、障害の程度に応じて重度のものから1級、2級及び3級とし、障害等級1級の障害の状態として「日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの」、障害等級2級の障害の状態として「日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」、障害等級3級の障害の状態として「日常生活若しくは社会生活が制限を受けるか、又は日常生活若しくは社会生活に制限を加えることを必要とする程度のもの」とされている(同条第3項)。

 (3) 障害等級の判定の具体的な基準については、国から「精神障害者保健福祉手帳制度実施要領について」(平成7年9月12日付け健医発第1132号厚生省保健医療局長通知。以下「実施要領」という。)が発出されており、「障害等級の判定に当たっては、精神疾患(機能障害)の状態とそれに伴う生活能力障害の状態の両面から総合的に判定を行うものとし、その基準については、別に通知するところによる。」とされている(実施要領第2の2(2))。

 (4) この実施要領を受けて、判定基準が発出され、また、この判定基準の運用について留意事項が発出されている。

 (5) 判定基準によれば、障害等級の判定は、精神疾患の存在の確認、精神疾患(機能障害)の状態の確認、能力障害(活動制限)の状態の確認、精神障害の程度の総合判定という順を追って行われることとされ、判定に際しては、診断書に記載された精神疾患(機能障害)の状態及び能力障害(活動制限)の状態について十分な審査を行い、対応することとされている。

 また、留意事項によれば、精神疾患の種類によって、また、精神疾患(機能障害)の状態によって、精神疾患(機能障害)の状態と能力障害(活動制限)の状態の関係は必ずしも同じではないため、一律に論じることはできないが、精神疾患の存在と精神疾患(機能障害)の状態の確認、能力障害(活動制限)の状態の確認の上で、精神障害の程度を総合的に判定することとされている。

 解離性障害の精神疾患(機能障害)の状態については、判定基準において、1級から3級のいずれの場合においても、「その他の精神疾患によるものにあっては、上記の1~7に準ずるもの」とされている(判定基準別紙の表)。

 能力障害(活動制限)の状態については、「適切な食事摂取」、「身辺の清潔保持、規則正しい生活」、「金銭管理と買物」、「通院と服薬」、「他人との意思伝達・対人関係」、「身辺の安全保持・危機対応」、「社会的手続や公共施設の利用」及び「趣味・娯楽への関心、文化的社会的活動への参加」の各項目について、「できない」等にいくつか該当するものは1級と、「援助なしにはできない」にいくつか該当するものは2級と、「行うことができるがなお援助を必要とする」等にいくつか該当するものは3級とされている(判定基準別紙の表)。障害の程度の総合判定に、これらの項目にどの程度のレベルがいくつ示されていれば何級であるという基準は示しがたいが、疾患の特性等を考慮して、総合的に判断する必要があるとされている(留意事項別紙3(5))。

 また、診断書の「精神障害者保健福祉手帳用記載欄」の「(3) 日常生活能力の程度」については、「精神障害を認めるが、日常生活及び社会生活は普通にできる」である場合は障害等級非該当と、「精神障害を認め、日常生活又は社会生活に一定の制限を受ける」である場合はおおむね3級程度と、「精神障害を認め、日常生活に著しい制限を受けており、時に応じて援助を必要とする」である場合はおおむね2級程度と、「精神障害を認め、日常生活に著しい制限を受けており、常時援助を必要とする」又は「精神障害を認め、身の回りのことはほとんどできない」である場合はおおむね1級程度とされている(留意事項別紙3(6)の表)が、精神障害の程度の判定については、「診断書のその他の内容も参考にして、総合的に判定するものである」とされている(留意事項別紙3(6)本文)。

 そして、障害等級の基本的なとらえ方として、「精神障害が日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの。この日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度とは、他人の援助を受けなければ、ほとんど自分の用を弁ずることができない程度のもの」である場合は1級と、「精神障害の状態が、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものである。この日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度とは、必ずしも他人の助けを借りる必要はないが、日常生活は困難な程度のもの」である場合は2級と、「精神障害の状態が、日常生活又は社会生活に制限を受けるか、日常生活又は社会生活に制限を加えることを必要とする程度のもの」である場合は3級とされている(判定基準別添2)。

 (6) なお、申請者が施行令第6条に規定する精神障害の状態にあるかどうかの判定は、都道府県に設置されている法第6条第1項に規定する精神保健福祉センターに行わせるものとされ、当該判定を行う者については、原則として、法第18条第1項の精神保健指定医(以下「指定医」という。)を含めるものとされ、群馬県においては、処分庁が精神保健福祉センターの事業を行っている(実施要領第2の3(2))

3 本件処分の妥当性について

(1)審査請求人の障害等級について
  判定基準及び留意事項に従って、以下検討する。

 ア 精神疾患の存在の確認
   診断書の病名から、主たる精神障害として「解離性障害」が確認できる。
 イ 精神疾患(機能障害)の状態の確認

   診断書の「(3) 発病から現在までの病歴並びに治療の経過及び内容」では、「(推定発病時期 〇〇〇〇年頃)〇〇卒業後、職場での適応・対人関係が難しく、不安・解離・情動不安定を呈して、〇〇.〇〇頃、〇〇〇〇。〇〇.〇〇.〇〇当院初診。以後、就労の状況に反応して、しばしば症状を呈して、当院外来加療を行っている。」と記載がある。

   診断書の「(4) 現在の病状及び状態像等」には「抑うつ状態」、「精神運動興奮及び昏迷の状態」、「不安及び不穏」及び「知能・記憶・学習・注意の障害」の項目に該当有りとなっており、その内容として、「易刺激性、興奮」「憂うつ気分」 「興奮」「強度の不安・恐怖感」「解離・転換症状」「遂行機能障害」に該当すると記載がある。

   診断書の「(5) (4)の病状及び状態像等の具体的程度、症状、検査所見等」に「軽度の遂行機能障害を背景に、職場での適応に困難を伴い、サポートを要したり時に強度の不安・解離・情動不安定を呈する。」と記載がある。

   診断書の「(6) 現在の障害福祉等のサービスの利用状況」に「利用なし」と記載がある。 
 ウ 能力障害(活動制限)の状態の確認

   診断書の「精神障害者保健福祉手帳用記載欄」の「(1) 現在の生活環境」では、「在宅(家族等と同居)」に該当すると記載がある。

   診断書の「(2) 日常生活能力の判定」では、「適切な食事摂取」、「身辺の清潔保持、規則正しい生活」、「金銭管理と買い物」、「身辺の安全保持・危機対応」、「趣味・娯楽への関心、文化的社会的活動への参加」の各項目について、「自発的にできる」又は「適切にできる」に該当すると記載がある。「通院と服薬」、「他人との意思伝達・対人関係」及び「社会的手続や公共施設の利用」の各項目について、「おおむねできるが援助が必要」に該当すると記載がある。

   診断書の「(3) 日常生活能力の程度」は、「精神障害を認めるが、日常生活及び社会生活は普通にできる。」に該当すると、「上記の具体的程度、状態等」の欄には「就労などの社会生活に、助言、指導がありながら、こなせている。」と記載がある。

 エ 精神障害の程度の総合判定

  上記ア、イ及びウを基に、判定基準及び留意事項に照らし、審査請求人の精神疾患の程度が施行令第6条第3項に規定する障害等級に該当するか判断する。 上記アを基に精神疾患の存在についてみると、診断書の病名として、主たる精神障害が「解離性障害」であることから、判定基準別添1「精神障害者保健福祉手帳等級判定基準の説明」(1)(8)「その他の精神疾患」に該当するものであり、精神疾患が存在することが認められる。

  次に、上記イを基に精神疾患(機能障害)の状態についてみると、診断書の「(4) 現在の病状及び状態像等」において「抑うつ状態」「精神運動興奮及び昏迷の状態」「不安及び不穏」「知能・記憶・学習・注意の障害」の項目に該当があり、「(5) (4)の病状及び状態像等の具体的程度、症状、検査所見等」では「軽度の遂行機能障害を背景に、職場での適応に困難を伴い、サポートを要したり時に強度の不安・解離・情動不安定を呈する。」と記載されており、「(6) 現在の障害福祉等のサービスの利用状況」の欄では、審査請求人は、障害福祉等のサービスを利用していないことが確認できる。

  次に、上記ウを基に審査請求人の能力障害(活動制限)の状態についてみると、診断書の、「(3) 日常生活能力の程度」では、「精神障害を認めるが、日常生活及び社会生活は普通にできる。」に該当するとされており、留意事項別紙3(6)の表では非該当の区分となる。また、「(2) 日常生活能力の判定」では、8項目のうち3項目が判定基準の表において3級相当とされる「おおむねできるが援助が必要」に該当するとされている一方で、過半数に当たる5項目において、障害等級非該当とされる「自発的にできる」又は「適切にできる」に該当するとされている。加えて、診断書の「上記の具体的程度、状況等」の欄には「就労などの社会生活に、助言、指導がありながら、こなせている。」と記載がある。

  こうした診断書の内容から、審査請求人には主たる精神障害として「解離性障害」が認められ、日常生活においては「おおむねできるが援助が必要」とされる場面があることが確認できる一方、福祉サービスを利用することなく、助言や指導を受けながら就労を継続し、社会参加を果たしている様子もうかがえる。
  処分庁は、これらの内容をもとに、精神疾患(機能障害)の状態及び能力障害(活動制限)の程度を総合的に勘案した上で、審査請求人が障害等級3級の要件を満たしておらず、障害等級非該当であると判断している。この判断は、判定基準及び留意事項に示された基準等を踏まえたものであり、それらの内容を逸脱するものではない。
  したがって、処分庁による当該判定は、法、施行令、施行規則、判定基準及び留意事項に基づいてなされたものであり、不合理な点は認められない。

(2) 判定の手続について

 審査請求人は、上記第2の1のとおり主張しているが、障害等級の判定については、法第45条第2項及び施行規則第23条第2項に、精神障害者保健福祉手帳の交付の申請(医師の診断書等添付)に基づいて審査する旨規定されているところであり、これらの規定に規定するとおり、申請時に提出された診断書に基づく書面審査を行った処分庁の本件処分について、違法又は不当な点があるとは認められない。

(3) 結論

 施行規則第23条第2項の規定に基づき提出された診断書を、法第45条第2項の規定に基づき処分庁が審査し、障害等級を判定した本件処分については、適法かつ適正に行われたものであり、これを取り消すべき違法又は不当な点はないものと認められる。

第6 結論

 以上のとおり、本件審査請求には理由がないから、「第1 審査会の結論」のとおり、答申する。

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