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令和7年 報告
第1 職員の給与
1 職員給与の実態
本委員会の勧告の対象となる職員は、群馬県職員の給与に関する条例(昭和26年群馬県条例第55号)、群馬県公立学校職員の給与に関する条例(昭和31年群馬県条例第41号)、群馬県一般職の任期付研究員の採用等に関する条例(平成13年群馬県条例第8号)及び群馬県一般職の任期付職員の採用等に関する条例(平成14年群馬県条例第62号)の適用を受ける職員であり、これらの職員は、その従事する職務の種類に応じ、行政職、公安職、研究職、医療職、教育職等14の給料表の適用を受けている。
本委員会は、これらの職員について、本年4月における「令和7年職員給与等実態調査」を実施した。その概要は、参考資料「1 職員給与関係」のとおりである。
その調査結果によると、民間給与との比較を行っている行政職給料表又は事務職給料表の適用を受ける職員(本年度の新規学卒の採用者を除く。以下「一般行政職員」という。)の人数は4,545人、平均年齢は42.4歳で、平均給与月額は376,650円となっている。
(参考資料第1表~第10 表)
2 民間給与の実態
本委員会は、職員給与と県内の民間給与との精密な比較を行うため、企業規模50人以上で、かつ、事業所規模50人以上である県内の932民間事業所のうちから、層化無作為抽出法によって抽出した187事業所を対象に「令和7年職種別民間給与実態調査」を実施し、156事業所から回答を得た。
この調査では、一般行政職員と類似すると認められる事務・技術関係22職種の約8,400人及び研究員、教員等の54職種約300人について、個々の従業員に実際に支払われた本年4月分の給与月額等を詳細に調査した。
本年の調査結果の概要は、参考資料「2 民間給与関係」のとおりである。
(参考資料第11表~第23表)
3 公民給与の比較方法の見直し
公務と民間給与との比較に当たっては、広く民間企業の状況を反映させる観点とともに、公務の職務・職責に照らして適切な比較対象とする観点が求められている。
人事院は、本年の報告・勧告において、行政課題が複雑化・多様化する中で、業務の重要性・困難性が高まっていること、また、今日の厳しい人材獲得競争等を踏まえ、官民給与比較のための対象企業規模を50人から100人に引き上げたところである。
本県を含む地方自治体においても、行政課題の複雑化・多様化、公務の重要性・困難性の高まりについては同様の状況にあり、また、本県における本年度の1類試験の競争倍率は昨年を0.7ポイント下回る3.3倍で過去最低水準となるなど、人材確保についても厳しい状況が続いている。
本委員会では、これらの状況に加え「令和7年職種別民間給与実態調査」において企業規模100人以上の民間事業所に限っても155事業所のうち約84%の事業所で調査が完了し、役職段階別の調査実人員も十分確保することができたこと、任命権者や職員団体等からの意見、総務省からの技術的助言等も総合的に勘案し、公民給与の比較において、次のとおり比較方法を見直すこととした。
(1) 比較対象企業規模
月例給の公民給与の比較における比較対象企業規模を引き上げる。引上げ後の企業規模については、過去の経緯及び国における官民比較の企業規模等を考慮し、100人以上とする。
(2) 比較における対応関係
一般的に、同一の役職でも企業規模が大きいほど職務・職責も大きくなることを踏まえ、民間と公務の各役職段階の対応関係については企業規模により一定の差を設けている。国における見直し後の官民比較の対応関係を考慮し、比較対象企業規模引上げ後においても、企業規模500人以上の事業所及び企業規模100人以上500人未満の民間従業員と公務の各役職段階の対応関係は維持することとし、見直し後の対応関係は参考資料第14 表に示すとおりである。
(3) 特別給の比較方法
(1)のとおり、月例給の比較対象企業規模を100人以上とすることとの整合性を考慮し、特別給の公民比較においても、現行の枠組みを維持しつつ、企業規模100人以上の民間企業を比較対象とする。
4 職員給与と民間給与との比較
前記3の見直し後の令和7年の公民給与比較結果は以下のとおりである。
(1) 月例給
「令和7年職員給与等実態調査」及び「令和7年職種別民間給与実態調査」の結果に基づき、職員にあっては一般行政職員、民間にあってはこれと類似すると認められる事務・技術関係職種の従業員について、主な給与決定要素である役職段階、学歴及び年齢階層を同じくする者同士の本年4月分の給与額をそれぞれ対比し、精密に比較(ラスパイレス方式)を行った結果、職員給与が民間給与を1人当たり平均11,251円(2.99%)下回っていた。
民間給与(A) | 職員給与(B) | 較差(A)-(B) (((A)-(B))/(B)×100) |
|
---|---|---|---|
387,901円 | 376,650円 | 11,251円(2.99%) |
(注)民間、職員ともに、本年度の新規学卒の採用者は含まれていない。
(2) 特別給
本委員会は、これまで民間における賞与等の年間支給割合(月数)を算出し、これを職員の期末手当・勤勉手当の年間支給月数と比較した上で、0.05月単位で改定を勧告してきている。
前記の「令和7年職種別民間給与実態調査」の結果、昨年8月から本年7月までの1年間において民間事業所で支払われた賞与等は、年間で所定内給与月額の4.65月分に相当しており、職員の期末手当・勤勉手当の年間支給月数(4.60月)が民間における賞与等の年間支給割合(月数)を0.05月分下回っていた。
(参考資料第20 表)
5 物価及び生計費
総務省の調査による本年4月の前橋市における消費者物価指数は、前年同月比3.2%の上昇となっている。
また、本委員会が同省の家計調査を基礎として算定した本年4月の前橋市における標準生計費は、参考資料「3 生計費関係」のとおり、2人世帯で166,870円、3人世帯で193,310円、4人世帯で219,660円となっている。
(参考資料第24 表)
6 人事院の給与に関する勧告等
人事院は、本年8月7日、国会及び内閣に対し、公務員人事管理に関する報告を行うとともに、職員の給与に関する報告及び勧告を行ったが、その概要は、参考資料「4 人事院勧告等の概要」のとおりである。
7 本年の給与改定
本年の職員給与及び民間給与の実態とその比較、物価及び生計費の状況並びに人事院勧告等の概要は、以上のとおりである。
本委員会は、これらの内容や本県の職員の実態等を総合的に勘案し、検討した結果、本年の職員の給与改定について、以下のとおり判断した。
(1) 月例給
ア 給料表
本年4月における職員給与と民間給与とを比較した結果、職員給与は民間給与を11,251円(2.99%)下回っていることから、民間給与との較差、人事院勧告等を踏まえ、月例給の引上げ改定を行う必要がある。
月例給の改定に当たっては、基本的な給与である給料を引き上げることが適当であり、行政職給料表は、国及び他の都道府県との均衡を考慮し、人事院勧告に準じて初任給を始めとした若年層に重点を置きつつ中堅層以上も含めた全世代に対して引上げ改定を行う必要がある。
その他の給料表も、行政職給料表との均衡を基本としつつ、本県の実情を踏まえて改定する必要がある。
イ 初任給調整手当
医師に対する初任給調整手当については、公務に必要な医師を確保するため、人事院勧告に準じて支給上限額を改定する必要がある。
ウ 特地勤務手当等
特地勤務手当及び特地勤務手当に準ずる手当については、異動の円滑化及び制度の簡素化等の観点から、国と同様の改正を行う必要がある。
具体的には、特地勤務手当と地域手当との減額調整を廃止するとともに、特地勤務手当及び特地勤務手当に準ずる手当の算定基礎について「現に受ける給料等」のみを用いる方法に改める。
なお、人事院は給与に関する報告の中で、令和8年4月に特地官署等の指定の見直しを行うことについても言及している。本県の特地勤務手当等に係る指定公署については、これまで国に準じて見直しを行ってきたことから、令和8年度に見直しに係る検討を行うこととする。
エ 通勤手当
人事院が報告・勧告の中で言及した、1か月あたり5,000円を上限とする外部駐車場等の利用に対する通勤手当及び月の途中で採用された職員に対する手当の支給については、本県においても所要の検討を行う必要がある。
オ 宿日直手当
宿日直手当については、人事院勧告の内容を踏まえ、本県職員の勤務の状況等を考慮し、所要の検討を行う必要がある。
カ 職員の月例給与水準を適切に確保するための措置
人事院が勧告した月例給与水準が地域別最低賃金に相当する額を下回る場合に、その差額を補填するための手当の新設については、本県においても人事院勧告に準じて措置する必要がある。
キ 級別資格基準表の見直し
級別資格基準表については、国における在級期間表廃止の趣旨も踏まえ、本県の実情も勘案して所要の検討を行う必要がある。
(2) 特別給
職員の期末手当・勤勉手当の年間支給月数が民間における賞与等の年間支給割合(月数)を0.05月分下回っていることから、民間における賞与等の年間支給割合(月数)に見合うよう、職員の期末手当及び勤勉手当の年間支給月数の引上げ改定を行う必要がある。
年間支給月数の引上げ分は、民間の賞与等の支給状況、人事院勧告等を踏まえ、期末手当及び勤勉手当に均等に配分することが適当である。
また、定年前再任用短時間勤務職員及び特定任期付職員の期末手当及び勤勉手当並びに任期付研究員の期末手当も、同様に年間支給月数を引き上げる必要がある。
なお、人事院が示した交流採用及び研究休職に係る在職期間等の見直しの趣旨を踏まえ、本県においても所要の検討を行うことが適当である。
8 その他の見直し
(1) 給料表の見直し
ア 行政職給料表
国においては、令和7年4月に実施した「社会と公務の変化に応じた給与制度の整備(給与制度のアップデート)」の一環として、行政職俸給表(一)の8級以上の各級を俸給月額の刻みの大きい簡素な号俸構成とし、より職務・職責及び能力等に応じた給与処遇を可能とする仕組みとしており、他の都道府県においても同様の見直しが進んでいる。
本県においても、職務・職責及び能力に応じた適切な給与処遇については、実現していく必要があることから、行政職給料表8級及び9級について、国同様に給料月額の刻みの大きい簡素な号給構成に見直すとともに、併せて、新たな号給構成に適した昇給制度となるよう所要の見直しを行う必要がある。
イ その他の給料表
行政職給料表との均衡を考慮し、他の給料表のうち行政職給料表8級及び9級に相当する級についても同様の改正を行う必要がある。
(2) 寒冷地手当の支給地域の見直し
昨年人事院が勧告した寒冷地手当の支給地域の見直しについては、新たな気象データに基づき、所要の検討を行ってきたところである。
本委員会としては、今回の支給地域の見直しを本県の寒冷地手当制度に適用することについて制度上支障はないと認められるため、寒冷地手当の支給地域を国と同様に改定し、令和8年4月1日から実施することが適当であると判断した。
なお、支給地域の改定に伴い、改定日の前日から支給地域から除外される地域に引き続き勤務している職員等に対しては、所要の経過措置を講ずる必要がある。
また、県内の寒冷度に応じて設定している支給区分については、引き続き検討を行っていくこととする。
(3) 教職員の処遇改善について
公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法等の一部を改正する法律(令和7年法律第68号。以下「給特法等改正法」という)が令和7年6月に公布され、教職調整額の段階的な引上げや職務や勤務の状況に応じた義務教育等教員特別手当等の見直しが措置されることとなった。
教職員の処遇改善については、学校教育の質の向上に向け、法改正の趣旨に沿って適切に対応していく必要がある。
第2 職員の勤務条件等
1 多様で有為な人材の確保・定着・育成・活躍推進
(1) 人材の確保
人口減少の加速化や災害リスクの増大など地方自治体を取り巻く環境が大きく変化する中で、多様化・複雑化する行政課題に的確に対応し、県民の幸福度向上に向けた取組を進めるためには、有為な人材を安定的、継続的に確保していく必要がある。
しかし、少子化により若年者数が減少する中、特に近年、民間企業による賃上げ、採用の早期化が加速度的に進み、地方自治体における人材確保を取り巻く環境は、より厳しさを増している状況である。本県においても、技術系・専門職種の採用困難に加え、本年度の1類試験において過去最低水準の競争倍率になるなど、さらに深刻な状況となっている。
本委員会では、採用説明会や動画配信、SNSによる情報発信などのほか、早期に県職員の仕事や魅力を知ってもらうために高等学校での説明機会の拡充に取り組んでいるところである。
さらに、行政事務職については、任命権者が実施するインターンシップ以外でも県職員の仕事や魅力をより深く知ることできる機会として、参加者が希望する部署の職員との交流会・見学会も新たに実施したところである。
今後も任命権者と一体となり、より幅広く採用活動を展開していくとともに、直接職員と交流し、県職員の仕事や魅力を知ることができる機会の更なる拡充など、優秀な新規学卒者や民間人材等を採用するための具体的な採用活動について、多角的な観点から議論していく必要がある。
また、通常試験よりも早期に実施する試験区分の創設、民間企業の採用試験で広く活用されている総合適性検査「SPI3」を活用した試験の実施や受験資格の緩和・拡大など、これまでも採用試験制度の見直しを行っているが、受験者数の減少傾向や新規学卒者の人材確保が厳しさを増している状況を受け、特に採用困難な技術系・専門職種については、新規学卒者に加え、いわゆるアルムナイ採用制度など、即戦力となる人材の確保に向けた見直しを検討していく必要がある。
(2) 人材の定着
人材の確保が厳しい状況となる中で、確保した人材の定着はより重要度を増している。人材の定着には、職員一人ひとりがやりがいを持って働き続けることができる環境を整備し、職員の仕事や組織への意欲や満足度を表すエンゲージメントを向上していくことが必要不可欠である。職員エンゲージメントが高い職場を実現することは、人材の定着に加え、職業としての県職員の魅力を高め、多様で有為な人材の確保にも資するものとなる。
主に知事部局職員を対象に実施された職員エンゲージメント調査の結果によると、職場のコミュニケーションや上司のマネジメントについて評価している職員の割合が高い一方で、業務量に応じた人員配置、職員自身の将来イメージの構築、適性・能力開発を考慮した異動について課題を感じている職員の割合が他の項目に比べて高いことが明らかになっている。
この点を踏まえ、特に知事部局においては、更なる業務の効率化等を図った上での適切な人員配置、職員の自律的・主体的なキャリア形成や能力開発に向けた支援を強化していく必要がある。
また、他の任命権者においても、各職場・職員の状況を把握し、職員のエンゲージメント向上に向けた取組を進めることが必要である。
(3) 組織力向上に資する人材育成
組織のパフォーマンスを向上させるためには、職員個人の成長を組織力の向上につなげていく必要がある。
職員個人の成長には、職務を通じて幅広い業務経験の機会を提供するとともに、自律的・主体的なキャリア形成への支援も重要であり、職員の将来イメージの構築と能力開発を支援することで、職員の意欲と能力の向上が期待できる。
また、能力・実績に基づく人事管理は、職員の士気を高め、その能力を最大限に発揮させるなど、職員個人の成長と組織力を向上させるためにも重要である。
こうした取組では、職員の能力・実績の的確な把握による公正な人事評価を実施し、職員の納得感を向上させることが重要である。また、職員の将来イメージと能力に応じたきめ細かな指導・助言を行えるよう管理職のマネジメントの質を向上させることも重要である。
任命権者においては、引き続き制度の適切な運用と管理職に対する効果的な研修の実施など、公平性・透明性の確保等の取組が求められる。
(4) 多様な人材の活躍推進
多様な人材の活躍推進は、県政へ多様な視点や価値観がもたらされ、県政を変革する力となるとともに、受験者にとって魅力的な要素となり、多様で有為な人材の確保にもつながる重要な取組である。
すべての職員が属性にとらわれず、その能力を十分に発揮するには、誰もが働きやすい勤務環境を整備していくことが前提である。
本県では、職員のライフスタイルやライフステージに合わせた柔軟な働き方を選択できるよう時差出勤、テレワーク、フレックスタイム制や各種休暇・休業制度を整備してきたところである。
これらの制度が各所属・職員にさらに浸透し、活用されるよう、職員の意識醸成と必要に応じて業務の仕方の見直しを進め、更なる多様な人材の活躍を推進していく必要がある。
2 時間外勤務の縮減
時間外勤務の縮減は、仕事と生活の両立や公務能率の向上に資するとともに、公務が職場として選ばれるための魅力の向上にもつながる重要な課題であり、本委員会としても特に職員の健康確保の観点から強くその実現を求めている。
任命権者においては、これまでも機動的な人員配置、既存業務の見直しや、デジタル技術の活用等により、時間外勤務の縮減に取り組んできたところである。
しかし、行政課題が多様化・複雑化する中、知事部局における令和6年度の職員一人当たりの時間外勤務時間数は前年度に比べて増加しているほか、本委員会への事前申請対象である時間外勤務命令の限度時間(月100 時間未満や複数月平均80 時間以下)を超えて勤務する事例も依然として見られるところである。
限度時間を超える時間外勤務については、脳・心臓疾患の発症との関連性が指摘されており、原則として大規模災害等に緊急的に対処する場合などに限定的に許可されるものである。
管理監督職は、長時間労働が引き起こす健康リスクと制度の趣旨について理解を深め、職員の日々の勤務状況の把握に努めるとともに、自らが先頭に立って業務の削減、仕事の進め方の見直し、所属内の業務の平準化等の取組を継続的に推進していくことが重要である。
任命権者は、公務においては長時間の時間外勤務もやむを得ないという意識が組織及び職員の間に生じやすいことに留意しつつ、様々な取組を進めてもなお恒常的な長時間の時間外勤務が見込まれる所属に対しては、柔軟な人員配置や必要な人員の確保などの措置を早い段階で講ずる必要がある。
加えて、これまでの取組の成果を把握し、時間外勤務の縮減が進まない所属には必要に応じて指導を行うなど、取組の更なる強化を求める。
3 勤務環境の整備
(1) 心と体の健康づくりの推進
公務における長期の病気休暇の取得や休職をしている職員(以下「長期病休等職員」という。)の増加については全国的な課題となっており、(一財)地方公務員安全衛生推進協会が公表した「地方公務員健康状況等の現況の概要」によれば、令和5年度の精神及び行動の障害に起因する長期病休等職員は、10年前の1.9倍に増加したとされている。
本県においても、長期病休等職員数は依然として多く、また、定年引上げや職員の多様化により様々な事情を有する職員が今後も増えていくことが見込まれる。
こうした状況を踏まえれば、職員誰もが心身ともに健康を保持し、生き生きと働くことができる勤務環境づくりを推進していく必要がある。
管理監督職においては、日頃から、職員との意思疎通を積極的に図り、職員の心身の状況等を適切に把握し、不調の兆候が見られる場合には、速やかに医師等との面談や相談窓口の利用を勧奨することが求められる。
任命権者においては、これまでもストレスチェックや巡回健康相談、医師等との面談などの各種取組を総合的・体系的に推進しているところであるが、今後も、メンタル不調の未然防止、早期発見・対処、職場復帰支援に一層努めていく必要がある。
また、知事部局等においては、職員の健康確保等の観点から、本年4月に勤務間インターバルの確保を所属長の努力義務としたところであるが、今後は、その確保状況を把握し、より実効性のある取組へとつなげていく必要がある。
(2) 時代に即した働き方の推進
価値観が多様化する中、職員の事情に応じ、時間や場所に縛られない多様で柔軟な働き方の推進は、職員の能力を最大化し、組織における公務能率の向上に資するとともに、人材確保のための公務の魅力向上にもつながるものである。
ア 多様で柔軟な働き方の推進
本県では、これまでも時差出勤やフレックスタイム制、テレワーク等の各種制度の充実に努めてきたところである。任命権者においては、引き続き行政サービスの提供に支障を与えないことを前提に、適正な制度運用と管理職による勤務時間管理の負担軽減も含めた利用しやすい環境づくりに努めていく必要がある。
イ 兼業・副業の適切な運用
総務省は、本年6月に「営利企業への従事等に係る任命権者の許可等に関する留意事項について(通知)」を発出し、地方公務員の兼業に関する許可基準の設定や運用の透明性確保、職員の健康管理等に関する留意点を示した。兼業は職員の自律的なキャリア形成や自己実現につながるものであり、職務にも好影響を与え得るものである。
これらを踏まえ、職務専念義務、職務の公正な執行や県民の公務への信用を確保するとの制度趣旨を前提としながら、兼業による心身の疲労や職務への影響にも配慮しつつ、職員が有する知識・技能を生かした活動や社会貢献につながる自営兼業について、制度の適切な運用と理解促進に努めることが望まれる。
(3) 仕事と生活の両立支援
育児・介護を始めとした様々な事情に関わりなく、職員の仕事と生活の両立を支援し、誰もが能力を十分発揮できる勤務環境を実現することは、優秀な人材の確保や職員のキャリア形成支援の観点からも重要である。
本県においては、育児・介護等の事情を抱える職員が柔軟に働けるよう、関係する条例・規則を改正し、休暇や各種制度を利用しやすくするとともに、職員に対する両立支援制度の周知・意向確認等の措置を任命権者に義務づけたところである。
任命権者においては、引き続き必要な制度の見直しを検討するとともに、人員配置や業務分担の見直しなど職員が円滑に両立支援制度を利用しやすい環境づくりに努めていく必要がある。
(4) ハラスメント防止対策
近年、社会全体でハラスメントに対する対応に関心が高まっている。特に職場におけるハラスメントは、職員の尊厳を傷つけ、その能力の発揮を妨げるとともに、職場の活力と機能の低下をもたらす要因となるものである。
職員を加害者にさせないことはもちろん、カスタマーハラスメントも含め、職員をあらゆるハラスメントから守り、職員が安心して働くことができる勤務環境を確保することは、組織の重要な責務である。
本年4月に施行された群馬県カスタマーハラスメント防止条例では、県、事業者、就業者及び顧客等のそれぞれの責務を明らかにするとともに、社会全体でカスタマーハラスメントの防止に取り組む姿勢を明確に示したところである。
県として社会全体の機運醸成等に取り組むとともに、事業者として県職員に対する迷惑行為等について組織として毅然と対応し、職員を守る姿勢を示すことが求められる。
任命権者においては、新たに外部カウンセラー事業を活用した外部相談窓口を開設するなどの取組を進めているところであるが、引き続き、ハラスメント防止セミナーや研修等の実施による意識啓発、ハラスメントに係る相談体制の充実等、各種のハラスメント防止対策を充実・強化していく必要がある。
4 学校における働き方改革の一層の推進
教育委員会では、これまでも「教職員の多忙化解消に向けた協議会」からの提言を受け、関係者の理解と協力を得ながら、学校における業務の廃止・縮小・ICT化等の具体例を示すなど改善に取り組んできたところである。
本委員会としても、教職員が自身の健康と児童生徒に向き合う時間を確保し、質の高い授業やきめ細かな指導に注力できる環境を整えることは、次代を担う子どもたちの成長にとって重要な課題であると認識している。
教職員のなり手不足は本県も含めた全国的な課題であり、長時間労働はその大きな要因の一つであると考えられている。給特法等改正法においては、教職員の処遇改善と併せて、学校における働き方改革の一層の推進のための措置や、政府の目標として令和11年度までに1か月の時間外在校等時間を平均30時間程度に削減することなどが定められた。
教育委員会においては、給特法等改正法の趣旨も踏まえ、引き続き教職員の勤務時間等の適切な把握・管理に努めるとともに、必要に応じて関係者等と協力し、教職員の長時間労働の縮減を始めとした学校における働き方改革に取り組んでいく必要がある。