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令和7年度答申第13号
第1 審査会の結論
本件審査請求には、理由がないので、行政不服審査法(平成26年法律第68号)第45条第2項の規定により審査請求を棄却すべきである。
第2 審査関係人の主張の要旨
1 審査請求人
平成○年○月から生活保護になり、処分庁に移送費を請求したが、移送費は出せないと虚偽の説明があった。その後何度も移送費の請求をしたが無視された。ようやく令和○年○月分から令和○年○月分までの移送費が支給された。令和○年○月分からではなく、平成○年○月分からの移送費の支給を求める。
(1) 審査請求書による主張
私はそれまで生活保護者が移送費を貰えることを知らなかった。令和○年○月に初めて知った。それからケースワーカーに何度も言い、結果同月からの支給になった。虚偽の説明があった平成○年○月からの移送費を請求したい。
(2) 反論書による主張
審査請求する前に○○にメールで相談した。○○から返信されたメールには、次のとおり記載されている。
・○○から処分庁に対し、審査請求人からの相談内容を伝えたところ、処分庁から「令和○年○月以前の通院交通費については、請求があったかどうかが分かる明確な記録がないため、遡っての支給を認めない」と回答があった。
・○○としては、「相談者様と○○の見解が相違している状況ですが、○○は、両者の見解の是非や事実関係の判断を行うものではありません」と回答する。
2 審査庁
審理員意見書のとおり、本件審査請求を棄却すべきである。
第3 審理員意見書の要旨
(1) 審査請求人は、処分庁に対して、受診日が令和○年○月以降の「保護変更申請書(傷病届)」を提出し、移送の給付(以下「移送費」という。)の申請を行った(以下「本件申請」という。)。処分庁は本件申請を同年○月○日付けで受理した。その後、処分庁は「生活保護法による医療扶助運営要領について」(昭和36年9月30日社発第727号厚生省社会局長通知。以下「医療扶助運営要領」という。)第3の9(3)イの規定により、審査請求人の通院先である病院へ、令和○年○月○日以降の給付要否意見書(所用経費概算見積書)を送付する手続を取った。これを同年○月○日付けで病院側より受理し、同月○日に嘱託医審査を実施し、本件申請は適当であると認められた。その後、審査請求人からの要望を受けて、処分庁は令和○年○月○日にケース診断会議を行い、その結果、令和○年○月以降の移送費の支給決定を令和7年2月17日付けで行った(以下「本件処分」という。)。
(2) 移送費の支給額について、処分庁は本件申請を受け、医療扶助運営要領第3の9(3)イに基づいて、給付要否意見書(所用経費概算見積書)により確認した令和○年○月から、未支給であった令和○年○月分までの合計○円としたものである。なお、審査請求人は審査請求書において、保護開始となった平成○年○月からその後何度も移送費の請求を行ったと主張しているが、令和○年○月以前に審査請求人が交通機関を利用した際の移送費について請求した事実は、双方から提出された根拠資料からは確認できなかった。
(3) 以上のとおり、本件処分には、違法又は不当な点はなく、本件審査請求には理由がないから、行政不服審査法第45条第2項の規定により棄却されるべきである。
第4 調査審議の経過
当審査会は、本件諮問事件について、次のとおり、調査審議を行った。
令和8年1月19日 審査庁から諮問書及び諮問説明書を収受
令和8年2月18日 調査・審議
令和8年3月16日 調査・審議
第5 審査会の判断の理由
1 審理手続の適正について
本件審査請求について、審理員による適正な審理手続が行われたものと認められる。
2 本件に係る法令等の規定について
(1) 生活保護法(昭和25年法律第144号。以下「法」という。)第7条は、「保護は、要保護者、その扶養義務者又はその他の同居の親族の申請に基いて開始するものとする。(後略)」と規定されている。
(2) 医療扶助運営要領第3の1(2)は、「医療扶助以外の扶助を受けている者が、医療扶助を申請する場合には、保護変更申請書(傷病届)に所要事項を記載したうえ福祉事務所長に提出させること。」と規定されている。
(3) 医療扶助運営要領第3の9(3)アは、移送の給付手続の周知について、「要保護者に対し、移送の給付について、その内容と原則として事前の申請や領収書等の提出が必要であることを周知すること。」と規定されている。
(4) 医療扶助運営要領第3の9(3)イは、移送の給付決定に関する審査について、「被保護者から申請があった場合、給付要否意見書(移送)により主治医の意見を確認するとともに、その内容に関する嘱託医協議及び必要に応じて検診命令を行い、福祉事務所において必要性を判断し、給付の対象となる医療機関、受診日数の程度、経路及び利用する交通機関を適正に決定すること。(中略)また、福祉事務所において給付を決定する以前に交通機関を利用した際の交通費や、福祉事務所において決定した医療機関、受診日数の程度、経路、交通機関と異なることにより生じた交通費については、原則として給付の対象にならないものであること。」と規定されている。
(5) 医療扶助運営要領第3の9(3)ウは、事後申請の取扱いについて、「緊急の場合等であって、事前の申請が困難なやむを得ない事由があると認められる場合であって、当該事由が消失した後速やかに申請があったときは、事後の申請であっても内容確認の上、給付を行って差し支えないこと。」と規定されている。
(6) 「生活保護問答集について」(平成21年3月31日厚生労働省社会・援護局保護課長事務連絡。以下「問答集」という。)問7-17は、「加算の認定に限らず、最低生活費の認定は、一般に本人の申告、届出が中心となって行われるべきものである。しかし、実施機関の側においても対象者の需要発見について積極的に確認の努力をすべきであることはいうまでもない。」と示されている。
(7) 問答集問13-2は、扶助費の遡及支給の限度等について、「(前略)最低生活費の遡及変更は3か月程度(発見月からその前々月まで)と考えるべきであろう。(中略)これは、行政処分について不服申立期間が一般に3か月とされているところからも支持される考えであるが、3か月を超えて遡及する期間の最低生活費を追加支給することは、生活保護の扶助費を生活困窮に直接的に対処する給付として考える限り、妥当でないということも理由のひとつである。(中略)ただし、最低生活費の認定変更が適切に行われなかったことについて、受給者に何らの過失がないなどの受給者に帰責する事由がなく、かつ保護の実施機関において認定を誤ったことが明らかな場合は、発見月から前5年間を限度として追加支給して差しつかえない。(後略)」と示されている。
3 本件処分の妥当性について
(1) 審査請求人は、処分庁に対して、医療扶助運営要領第3の1(2)により、審査請求人が通院している病院の受診日が令和○年○月以降の「保護変更申請書(傷病届)」を提出し、本件申請を行った。処分庁は、本件申請を同年○月○日付けで受け付け、医療扶助運営要領第3の9(3)イにより、審査請求人の通院先である病院へ同年○月○日以降の給付要否意見書(所用経費概算見積書)を送付した。病院は、これを受け付け、同年○月○日付けで審査請求人の治療に必要な通院頻度を1か月に○回として移送費を要すると認めた給付要否意見書(所用経費概算見積書)を処分庁に送付した。処分庁は、これを同年○月○日に受け付け、同月○日に嘱託医による審査を実施し、審査請求人からの申請は適当であると認められた。その後、処分庁は、審査請求人からの要望を受けて令和○年○月○日付けでケース診断会議を行い、本件処分により、令和○年○月から未支給であった令和○年○月分までの移送費の支給決定を行った。
(2) 処分庁は、病院から送付された給付要否意見書(所用経費概算見積書)及び通院証明書に基づき、令和○年○月分から令和○年○月分までの移送費の支給額について、審査請求人の自宅から病院までの最寄りの公共交通機関の往復運賃○円の○日分として合計○円とした。
(3) なお、本件処分による支給額が○円であるのは、令和○年○月分の移送費○円及び○円の計○円も含まれているためである。
(4) 審査請求人は、審査請求書において、移送費をもらえることを知らなかったと主張するが、審査請求人のケース記録票によると、処分庁は、審査請求人の生活保護の開始時に、保護のしおりをもとにして、生活保護制度や権利義務について説明していることが確認でき、保護のしおりには、「次のようなときは、事前に相談してください」、「特別に交通費が必要なとき」と記載がある。
(5) 移送費の支給は、法第7条及び医療扶助運営要領第3の1(2)により、被保護者の申請に基づくと、移送費の申請は、医療扶助運営要領第3の9(3)ア及びウにより、緊急の場合等を除き、原則として事前の申請や領収書等の提出が必要であると規定されている。審査請求人は審査請求書において、生活保護が開始された平成○年○月から何度も移送費の請求を行ったと主張しているが、令和○年○月以前に審査請求人が交通機関を利用した際の移送費について支給を求めた事実は、双方から提出された根拠資料からは確認できなかった。
(6) 本件処分は、法令等の定めるところに従って、適法かつ適正に行われたものであり、違法又は不当であるとはいえない。
4 付言
本件申請は、令和○年○月○日付けで行われたが、処分庁が本件処分を行ったのは、令和7年2月17日であり、本件申請から本件処分まで約○年経過している。このことについて処分庁は、審理手続において、本件申請から本件処分までに時間を要したのは、移送費の支給には、審査請求人からの領収書等の証拠書類の提出が必要であり、それを待っていたためであると主張する。本来、支給決定は速やかに行うべきところ、今回のように処分庁が審査請求人に証拠書類の提出を求めていたような場合には、その後必要な支給ができるよう処分庁が審査請求人に確認を行うことが必要であった(問答集問7-17及び13-2)。
また、本件申請に係る審査請求人と処分庁のやり取りについて、ケース記録票に記載がなかった。このことについて、ケース記録票は、適切な支援の実施や支援内容の確認に不可欠であることから、今回においても、必要な内容を漏れなく聴取し、正確に記載する必要があった。今後、同様のことがないよう留意されたい。
被保護者が移送費の申請を行うときには、原則として事前の申請を行うこと及び証拠書類として領収書等の提出をすることが必要である。今後、審査請求人が移送費を申請する際は留意されたい。
第6 結論
以上のとおり、本件審査請求には理由がないから、「第1 審査会の結論」のとおり、答申する。








