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令和8年度答申第2号
第1 審査会の結論
本件審査請求には、理由がないので、行政不服審査法(平成26年法律第68号)第45条第2項の規定により審査請求を棄却すべきである。
第2 審査関係人の主張の要旨
1 審査請求人
処分庁が行った令和7年5月22日付け生活保護停止処分、生活保護停止解除処分(2件)及び生活保護変更決定処分(2件)を取り消し、本件処分によって生じた損害額(法定金利や慰謝料)を加えて支給することを求めるものであり、その理由は次のとおりである。
審査請求人自身が保釈金を用意することは現実的でないにもかかわらず、本件処分の理由に「保釈による」と記されており、当該文書は捏造・偽造であるため。
本件処分に記載されている自己負担額は架空のものであるため。
2 審査庁
審理員意見書のとおり、本件審査請求を棄却すべきである。
第3 審理員意見書の要旨(一部の記載は、審査会において補足)
本件審査請求は、処分庁が令和7年5月22日付けで審査請求人に対して行った、〇年〇月〇日に警察官署等から釈放されたことによる生活保護停止解除処分(以下「本件処分1」という。)、同月〇日に勾留されたことによる生活保護停止処分(以下「本件処分2」という。)、同月〇日に釈放されたことによる生活保護停止解除処分(以下「本件処分3」という。)、繰越分割認定及び〇月保護費追給分の認定による生活保護変更処分(以下「本件処分4」という。)並びに繰越分割認定による生活保護変更処分(以下「本件処分5」という。)の5件分の処分の取消しを求めるものである。
本件処分1について、処分庁は、審査請求人が令和〇年〇月〇日に釈放されたことを確認した上で、生活保護停止中であった審査請求人に対して、〇年〇月〇日に同年〇月〇日付けで生活保護停止解除処分の内部決定を行った。生活保護停止解除に伴い、最低生活費〇円と収入充当額〇円の差額である〇円を〇月分保護費として計上し、〇月分保護費として追給する決定を令和7年5月22日付けで行っている。
本件処分2について、処分庁は、審査請求人が令和〇年〇月〇日から勾留されたことを確認した上で、審査請求人に対して、同年〇月〇日に同年〇月〇日付け生活保護停止処分の内部決定を行った。生活保護停止に伴い、支給を決定済みの〇月分保護費〇円と既決定戻入額〇円(基本的な収入である年金等と、減額後の最低生活費との差額)の合計額〇円を〇月分保護費として戻入する(〇月の収入として取り扱う)決定を令和7年5月22日付けで行っている。
本件処分3について、処分庁は、審査請求人が令和〇年〇月〇日に釈放されたことが確認できたことから、生活保護停止中であった審査請求人に対して、同年〇月〇日に同年〇月〇日付けで生活保護停止解除処分の内部決定を行った。生活保護停止解除に伴い、本件処分1及び本件処分2の内容を踏まえた上で〇月分保護費の変更を行い、支給を決定済みの保護費と支給すべき保護費の差額〇円を〇月分保護費として追給する決定を令和7年5月22日付けで行っている(ここでいう追給額〇円は、本件処分1から本件処分3までの決定の全体で〇月分の適切な計算がなされるよう整理して算出した額であり、本件処分3の決定通知上、〇円の追給は示されていない。)。
本件処分4について、処分庁は、本件処分1の追給額〇円、本件処分2の繰越しとする額〇円及び本件処分3の追給額〇円の合計額に当たる〇円を「生活保護法による保護の実施要領について」(昭和38年4月1日社発第246号厚生省社会局長通知。以下「局長通知」という。)第10の2(8)に基づき、〇月分保護費に収入充当し、その結果生じた収入と最低生活費との差額〇円を繰越しとする(〇月の収入として取り扱う)決定を行っている。
本件処分5について、処分庁は、本件処分4の繰越額〇円を収入として計上し、局長通知第10の2(8)に基づき、〇月分保護費に収入充当額〇円を繰越しとする(〇月の収入として取り扱う)決定を行っている。
なお、審査請求人が勾留されている期間の収入額の認定については、日割り計算をしないことをもってして不適当とは言えず、処分庁の裁量の範囲内で適正に計算されたものと言える。
したがって、本件処分1から本件処分5までは法令等の定めるところに従って適法かつ適正になされたものであり、違法又は不当であるとはいえない。
第4 調査審議の経過
当審査会は、本件諮問事件について、次のとおり、調査審議を行った。
令和8年2月10日 審査庁から諮問書及び諮問説明書を収受
令和8年2月18日 調査・審議
令和8年3月16日 調査・審議
第5 審査会の判断の理由
1 審理手続の適正について
本件審査請求について、審理員による適正な審理手続が行われたものと認められる。
2 本件に係る法令等の規定について
(1)生活保護法(昭和25年5月4日号外法律第144号。以下「法」という。)第4条において、「保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。」と規定されている。
(2)法第26条において、「保護の実施機関は、被保護者が保護を必要としなくなつたときは、速やかに、保護の停止又は廃止を決定し、書面をもつて、これを被保護者に通知しなければならない。」と規定されている。
(3)生活保護問答集について(平成21年3月31日付け厚生労働省社会・援護局保護課長事務連絡。以下「別冊問答集」という。)問7-15(答)において、「被保護者が被疑者として警察署に留置、拘束された場合は、刑事行政の一環として措置されるべきものであることから、最低生活費の計上は必要ない」とされている。
(4)局長通知第10の2(8)において、「最低生活費又は収入充当額の認定を変更すべき事由が事後において明らかとなった場合は、法第80条を適用すべき場合及び(7)のエによるべき場合を除き、当該事由に基づき扶助費支給額の変更決定を行えば生ずることとなる返納額(確認月からその前々月までの分に限る。)を、次回支給月以後の収入充当額として計上して差し支えないこと。(この場合、最低生活費又は収入充当額の認定変更に基づく扶助費支給額の遡及変更決定処分を行うことなく、前記取扱いの趣意を明示した通知を発して、次回支給月以後の扶助費支給額決定処分を行えば足りるものであること。)」とされている。
3 本件処分の妥当性について
本件処分1から本件処分5までの処分の内容は、「第3 審理員意見書の要旨」に記したとおりであり、やむを得ない事情から短期間のうちに保護の停止と開始が繰り返されている。本件処分1から本件処分3までの処分が意味するところは、審査請求人の〇月の年金等の収入と日数調整後の最低生活費とを比較し、その差額(以下「収入超過額」という。)を翌月以降に繰り越すというものである。ここで、収入超過額は、実際に処分庁が支給した金額の過支給分ではなく、局長通知第10の2(8)でいう「返納額」には必ずしも当たらないが、法第4条において、「保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。」とされていることからすれば、〇月の収入超過額を〇月以降の自己負担額に充当するものとして繰り越すことに、特段不合理な点はない。続く本件処分4及び本件処分5においても、本件処分1から本件処分3までの決定内容を踏まえた適切な計算がなされており、処分庁は、これらの処分を関係法令等の規定に基づき適正に行っていることが確認できる。
また、審査請求人は、本件処分1及び本件処分3に係る通知書に「保釈」という語句が用いられていることを指摘し、当該文書は捏造・偽造であるとしている。処分庁は、保護の決定又は実施のため、生活保護法第29条に基づく調査を警察官署等に行い、審査請求人が警察官署等に収容されていた期間を文書で確認した上で、本件処分1から本件処分3までの処分を行っている。本件処分1及び本件処分3に係る通知書に記載された「保釈」は、刑事訴訟法(昭和23年法律第131号)が規定する「保釈」とは意味が異なるものであり、処分庁は、誤解を招かぬよう「釈放」等の表現を用いるべきであったものの、当該記載は、本件処分の内容に影響を及ぼすものではなく、この記載をもって、当該通知書を「捏造・偽造」とする指摘は、当たらない。
以上のとおり、本件処分は、法令等の定めるところに従って、適法かつ適正に行われたものであり、違法又は不当であるとはいえない。
4 付言
本件は、保護の停止及び開始が短期間に繰り返され、同日付けで複数の処分通知が発出されていることから、処分の全体像及び各処分の内容を理解することが容易でない事案である。ケース記録票の記載によれば、処分庁は、処分通知の内容について説明するため審査請求人宅を訪問しているものの、不在であったため、直接の説明には至っていない。処分庁においては、処分内容の説明に向けた努力がなされたところであり、引き続き、処分通知の記載内容の充実及び説明機会の確保に取り組まれることを期待する。
第6 結論
以上のとおり、本件審査請求には理由がないから、「第1 審査会の結論」のとおり、答申する。








