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令和8年 報告

更新日:2026年10月6日 印刷ページ表示

第1 職員の給与

1 職員給与の実態

 本委員会の勧告の対象となる職員は、群馬県職員の給与に関する条例(昭和26年群馬県条例第55号)、群馬県公立学校職員の給与に関する条例(昭和31年群馬県条例第41号)、群馬県一般職の任期付研究員の採用等に関する条例(平成13年群馬県条例第8号)及び群馬県一般職の任期付職員の採用等に関する条例(平成14年群馬県条例第62号)の適用を受ける職員であり、これらの職員は、その従事する職務の種類に応じ、行政職、公安職、研究職、医療職、教育職等14の給料表の適用を受けている。
 本委員会は、これらの職員について、本年4月における「令和8年職員給与等実態調査」を実施した。その概要は、参考資料「1 職員給与関係」のとおりである。
 その調査結果によると、民間給与との比較を行っている行政職給料表又は事務職給料表の適用を受ける職員(本年度の新規学卒の採用者を除く。以下「一般行政職員」という。)の人数は4,529人、平均年齢は42.2歳で、平均給与月額は386,790円となっている。

(参考資料第1表~第10表)

2 民間給与の実態

 本委員会は、職員給与と県内の民間給与との精密な比較を行うため、企業規模100人以上で、かつ、事業所規模50人以上である県内の767民間事業所のうちから、層化無作為抽出法によって抽出した154事業所を対象に「令和8年職種別民間給与実態調査」を実施し、133事業所から回答を得た。
 この調査では、一般行政職員と類似すると認められる事務・技術関係22職種の約6,600人及び研究員、教員等の54職種約600人について、個々の従業員に実際に支払われた本年4月分の給与月額等を詳細に調査した。
 本年の調査結果の概要は、参考資料「2民間給与関係」のとおりである。

(参考資料第11表~第23表)​

3 職員給与と民間給与との比較

(1) 月例給

 本委員会は、「令和8年職員給与等実態調査」及び「令和8年職種別民間給与実態調査」の結果に基づき、職員にあっては一般行政職員、民間にあってはこれと類似すると認められる事務・技術関係職種の従業員について、主な給与決定要素である役職段階、学歴及び年齢階層を同じくする者同士の本年4月分の給与額をそれぞれ対比し、精密に比較(ラスパイレス方式)を行った結果、職員給与が民間給与を1人当たり平均11,631円(3.01%)下回っていた。

職員給与と民間給与との較差
民間給与(A) 職員給与(B) 較差(A)-(B)
(((A)-(B))/(B)×100)
398,421円 386,790円 11,631円(3.01%)

(注)民間、職員ともに、本年度の新規学卒の採用者は含まれていない。

(2) 特別給

 本委員会は、これまで民間における賞与等の年間支給割合(月数)を算出し、これを職員の期末手当・勤勉手当の年間支給月数と比較した上で、0.05月単位で改定を勧告してきている。
 前記の「令和8年職種別民間給与実態調査」の結果、昨年8月から本年7月までの1年間において民間事業所で支払われた賞与等は、年間で所定内給与月額の4.71月分に相当しており、職員の期末手当・勤勉手当の年間支給月数(4.65月)が民間における賞与等の年間支給割合(月数)を0.06月分下回っていた。

(参考資料第20表)​

4 物価及び生計費

 総務省の調査による本年4月の前橋市における消費者物価指数は、前年同月比1.1%の上昇となっている。
 また、本委員会が同省の家計調査を基礎として算定した本年4月の前橋市における標準生計費は、参考資料「3 生計費関係」のとおり、2人世帯で165,940円、3人世帯で193,860円、4人世帯で221,590円となっている。

(参考資料第24表)​

5 人事院の給与に関する勧告等

 人事院は、本年8月7日、国会及び内閣に対し、公務員人事管理に関する報告並びに職員の給与に関する報告及び勧告を行うとともに、職員の勤務時間及び休暇の改定に関する勧告を行い、あわせて、国家公務員災害補償法の改正についての意見の申出を行ったが、その概要は、参考資料「4 人事院勧告等の概要」のとおりである。

6 本年の給与改定

 本年の職員給与及び民間給与の実態とその比較、物価及び生計費の状況並びに人事院勧告等の概要は、以上のとおりである。
 本委員会は、これらの内容や本県の職員の実態等を総合的に勘案し、検討した結果、本年の職員の給与改定について、以下のとおり判断した。

(1) 月例給

ア 給料表

 本年4月における職員給与と民間給与とを比較した結果、職員給与は民間給与を11,631円(3.01%)下回っていることから、民間給与との較差、人事院勧告等を踏まえ、月例給の引上げ改定を行う必要がある。
 月例給の改定に当たっては、基本的な給与である給料を引き上げることが適当であり、行政職給料表は、国及び他の都道府県との均衡を考慮し、人事院勧告に準じて、全世代に対して引上げ改定を行う必要がある。具体的には、民間の動向や人材確保の重要性を踏まえ初任給を引き上げるとともに、業務遂行において重要な役割を担っている中堅層以上の職員について、昨年を上回る改定を行うことが適当である。
 その他の給料表も、行政職給料表との均衡を基本としつつ、本県の実情を踏まえて改定する必要がある。
 また、定年前再任用短時間勤務職員及び暫定再任用職員(以下「再任用職員」という。)の月例給についても、民間における再雇用者の月例給の状況や人事院勧告の内容等を踏まえ、所要の引上げ改定を行う必要がある。

イ 初任給調整手当

 医師に対する第一種初任給調整手当については、公務に必要な医師を確保するため、人事院勧告に準じて支給上限額を改定する必要がある。

ウ 宿日直手当

 宿日直手当については、人事院勧告の内容等を踏まえ、本県職員の勤務等の状況を考慮し、所要の検討を行う必要がある。

エ 転居に関する手当及び単身赴任手当

 人事院が報告・勧告の中で示した転居に関する手当の新設及びそれに伴う単身赴任手当の見直しについては、本県職員の転居を伴う転勤の実情等を踏まえ、所要の検討を行う必要がある。

オ 特地勤務手当に準ずる手当

 人事院が報告の中で言及した特地勤務手当に準ずる手当の支給対象となる官署の拡大については、本県における公署の状況や職員の転居を伴う勤務の実態等を踏まえ、令和9年度に見直しに係る検討を行うこととする。

(2) 特別給

 職員の期末手当・勤勉手当の年間支給月数が民間における賞与等の年間支給割合(月数)を0.06月分下回っていることから、民間における賞与等の年間支給割合(月数)に見合うよう、職員の期末手当及び勤勉手当の年間支給月数の引上げ改定を行う必要がある。
 年間支給月数の引上げ分は、民間の賞与等の支給状況、人事院勧告等を踏まえ、期末手当及び勤勉手当に均等に配分することが適当である。
 また、定年前再任用短時間勤務職員及び特定任期付職員の期末手当及び勤勉手当並びに任期付研究員の期末手当も、同様に年間支給月数を引き上げる必要がある。

7 寒冷地手当の級地区分の見直し

 寒冷地手当は、寒冷地に在勤する職員について、寒冷積雪のため暖房用燃料費等の冬季の生計費が、温暖地に在勤する職員に比べて著しく増加する実情に鑑み、その負担を軽減するために支給される手当である。
 本委員会では、この寒冷地手当の支給地域について、県内の寒冷度に応じて設定している支給地域の級地区分の在り方を、関係者の意見を聴取しつつ調査検討した。その結果、現行の級地区分について、次のとおり見直すことが適当であると判断した。

(1) 支給地域の冬季生計費の増加の実態と見直しの内容

 これまで本県においては、寒冷度やそれに伴う冬季の生計費の増加に地域差があると考えられたことから、寒冷度の程度に応じて支給地域を1級地、2級地及び3級地の3つに区分し、手当額に差を設けてきた。
 本委員会では、寒冷地手当の支給地域又は指定公署に勤務する職員を対象として、当該地域又は公署に勤務することによる冬季の生計費への影響を把握するため、寒冷地手当に関するアンケート調査を実施し、現行の級地の違いにより冬季の生計費の増加にどの程度の差異が生じているかを検証した。その概要は、参考資料「5 寒冷地手当に関するアンケート調査の集計結果」のとおりである。
 この調査結果によると、級地ごとの寒冷度の差が、職員の冬季生計費増加額の差として、現行の級地区分に対応して明確に表れているとは認められなかった。このため、現行の級地区分を維持する合理的な根拠は乏しいものと考えられることから、級地区分を廃止し、すべての支給地域について現行の1級地に係る手当額を適用することとする。

(2) 実施時期について

 この見直しは、令和9年度から実施する。なお、群馬県職員の給与に関する条例等の一部を改正する条例(令和7年群馬県条例第68号)附則第9条及び群馬県公立学校職員の給与に関する条例等の一部を改正する条例(令和7年群馬県条例第74号)附則第5条の規定に基づく寒冷地手当に関する経過措置については、今回の見直しの影響を及ぼさないものとする。​​

見直し後の支給区分及び手当額

世帯主である職員

(支給地域内に居住している者に限る。)

その他の職員

扶養親族のある職員

その他の世帯主である職員

19,800円

11,400円

8,200円

8 その他の見直し

(1) 特地勤務手当等に係る指定公署の見直し

 国の特地官署及び準特地官署並びに級別区分については、本年4月1日に見直しが行われたところである。
 本県の特地勤務手当等に係る指定公署については、これまでも国に準じて見直しを行ってきたことから、同様に見直しを行う。
 なお、この見直しに伴い、指定公署から除外される公署に改定日の前日から引き続き勤務している職員に対しては、所要の経過措置を講ずる必要がある。

(2) 特定任期付職員の勤勉手当の見直し

 人事院は、特定任期付職員の勤勉手当について、人事院の承認を得た場合には、現行の支給総額を超えて支給することができることとした。
 本県においても、特定任期付職員の勤務等の状況を踏まえ、所要の検討を行う必要がある。

(3)会計年度任用職員の給与の見直し

 人事院は、非常勤職員の給与に関する通知を改正し、任期が相当長期にわたる非常勤職員に対し、扶養手当及び住居手当に相当する給与を支給するよう努めることとした。
 その後、総務省から、地方公務員についても、任期が相当長期にわたる会計年度任用職員には、扶養手当及び住居手当を支給する必要があるとの見解が示されたところである。本県においても、これを踏まえ、対象となる職員の範囲及び具体的な支給方法について検討し、適切に対応する必要がある。

(4) 60 歳前後の給与水準(給与カーブ)に係る調査・検討

 定年の段階的引上げに伴い、高齢層職員が担う役割は今後ますます重要になるものと考えられる。行政課題が複雑化・多様化する中、豊富な経験や知見を有する職員が、その能力を十分に発揮し活躍できる環境の整備が求められている。
 高齢層職員の処遇については、職務上の役割や能力、実績を適切に評価するとともに、その意欲の維持・向上につながるものとすることが重要である。
 国においては、60歳前後の給与水準等に関する検討が進められているところであり、本委員会としても、その動向を注視しつつ、調査研究を行っていく。

(5) 職務・職責を重視した給与体系の在り方

 管理職員は、組織運営や政策立案、関係者との調整、人材育成などにおいて中核的な役割を担っており、その能力を十分に発揮して職責を果たすとともに、期待される成果を挙げることが強く求められている。
 国においては、本府省幹部職員等について、職務・職責をより重視した給与体系の在り方に関する議論が行われているところである。管理職員が担う役割の重要性や責任の重さに鑑みれば、能力と意欲のある職員が管理職員として活躍できる環境を整備するとともに、その職務・職責に見合った処遇を確保することは本県においても重要な課題である。
 こうした点を踏まえ、管理職員の処遇の在り方については、国における新たな給与体系の議論や他の都道府県の動向等を注視し、本委員会としても調査研究を行っていく。

第2 職員の勤務条件等

1 多様で有為な人材の確保・定着・育成・活躍推進

(1) 人材の確保

 多様化・複雑化する行政課題に的確に対応し、県民の幸福度向上に向けた取組を進めるためには、有為な人材を安定的、継続的に確保していく必要がある。
 しかし、若年人口が減少する中、民間企業における賃上げ、採用の早期化が進み、地方自治体における人材確保を取り巻く環境は、より厳しさを増している状況である。本県においても、各種採用試験・選考考査において、競争倍率が低水準となる職種があるなど、厳しい状況となっている。
 本委員会では、採用説明会の開催や合同企業説明会への出展拡大、動画配信、SNS、就職・転職サイトを活用した情報発信などのほか、早期に県職員の仕事や魅力を知ってもらうために高等学校での説明機会の拡充に取り組んでいるところである。さらに、行政事務職では、任命権者が実施し、効果的に機能しているインターンシップに加え、短期間で気軽に参加でき、県職員の仕事や魅力をより深く知ることができる機会として職員との交流会・庁内見学会を実施している。令和8年度では、「1DAY 県庁ライフ in GUNMA」として、定員の増加や任命権者実施のワークショップの追加により内容を拡充して実施した。また、技術系職種についても、オンラインで実施した社会人経験者向け座談会において、新たに電気、機械、建築を追加して実施したところである。
 引き続き、各任命権者においても、県職員の仕事や魅力を知ることができる機会の更なる拡充を進め、高い意欲と適性を有する新規学卒者や民間人材等を採用するための具体的な採用活動について、多角的な観点から議論していくことが重要である。
 また、本委員会においては、民間企業の採用試験で広く活用されている総合適性検査「SPI3」を活用した試験の実施や受験資格の緩和のほか、社会人経験者試験における受験上限年齢の引上げや実施職種の拡大など、これまでも採用試験制度の見直しを行ってきたところである。新規学卒者等の人材確保が厳しさを増している状況を受け、特に採用困難な職種については、各任命権者においても、いわゆるアルムナイ採用制度など、即戦力となる人材の確保に向けた見直しを包括的に検討していく必要がある。

(2) 人材の定着

 人材の確保が厳しい状況となる中で、人材の定着はより重要度を増している。人材の定着には、職員の仕事や組織への意欲や満足度を表すエンゲージメントを向上していくことが必要不可欠である。職員エンゲージメントが高い職場を実現することは、人材の定着に加え、職業としての県職員の魅力を高め、多様で有為な人材の確保にも資するものとなる。
 エンゲージメント向上には、職員の能力・実績の的確な把握による公正な人事評価が行われるとともに、職員がやりがいをもって働き続けることができる環境の整備が重要である。主に知事部局職員を対象に実施された令和7年度職員エンゲージメント調査では、令和6年度調査結果よりもポジティブな回答が増え、任命権者による取組の効果が表れてきた結果となった。傾向としては大きな変化はなく、職場のコミュニケーションや上司のマネジメントについて評価している職員の割合が高い一方で、業務量に応じた人員配置、職員自身の将来イメージの構築、適性・能力開発を考慮した異動について課題を感じている職員の割合が他の項目に比べて高い結果になっている。
 この点を踏まえ、特に知事部局においては、引き続きデジタル技術・AIを活用した業務の効率化、社会環境の変化や効果の検証による事業の改廃を図った上での適切な人員配置を行うとともに、職員の自律的・主体的なキャリア形成や能力開発に向けた支援を強化していく必要がある。
 また、他の任命権者においても、各職場・職員の状況を把握し、職員のエンゲージメント向上に向けた取組を進めることが求められている。

(3) 組織力向上に資する人材育成

 組織のパフォーマンスを向上させるためには、職員個人の成長を組織力の向上につなげていく必要がある。
 職員の成長には、職員自身が将来イメージを構築し、自身の強みやこれから伸ばすべき能力を把握することが効果的である。そのため、管理監督職からの適切なフィードバックにより、職員自身の考えと組織として期待することの整合を図ることが重要である。その上で、業務における効果的な指導・助言や担当業務の調整等の管理監督職のマネジメントによる支援と、多様な業務経験の機会の提供やデジタル技術・AIの進展も踏まえた各種研修等の制度による支援を両輪で推進することが求められている。
 各任命権者においては、管理監督職に対するマネジメントの質の向上に向けた研修の実施のほか、各種支援制度の強化や活用推進の取組が求められる。

(4) 多様な人材の活躍推進

 多様な人材の活躍推進は、県政へ多様な視点や価値観がもたらされ、県政を変革する力となるとともに、有為な人材の確保にもつながる重要な取組である。
 すべての職員が属性にとらわれず、その意欲と能力を発揮し、活躍するには、誰もが働きやすい勤務環境を整備していくことが前提である。
 各任命権者においては、それぞれの職務の特性や職場の実情を踏まえながら、多様な人材がその能力を十分に発揮できる勤務環境の整備に取り組む必要がある。

2 時間外勤務の縮減

 時間外勤務の縮減は、仕事と生活の両立や公務能率の向上に資するとともに、人材の確保・定着につながる魅力ある職場環境を整備するための重要な課題である。
 さらに、教職員のなり手不足が、本県も含めた全国的な課題となる中で、教職員の長時間労働についても、更なる削減が求められている。
 本委員会としても、特に職員の健康確保の観点から強くその実現を求めている。
 任命権者においては、これまでも機動的な人員配置、既存業務の見直しや、デジタル技術の活用等により、時間外勤務の縮減に取り組んできている。
 教育委員会においても、「教職員の多忙化解消に向けた協議会」からの提言及び令和7年度に策定した「群馬県立学校の教育職員の業務量管理・健康確保措置実施計画」に基づき、働き方改革を推進している。
 これらの継続的な取組により、知事部局における令和7年度の職員一人当たりの時間外勤務時間数は前年に比べて減少している。一方で、時間外勤務命令の限度時間(月100時間未満や複数月平均80時間以下)を超過する場合に係る本委員会への許可申請件数は、令和5年度から令和7年度までの直近3年度において増加傾向にある。さらに、学校現場における教職員の長時間労働も依然として見られるところである。
 限度時間を超える時間外勤務については、脳・心臓疾患の発症との関連性が強いと指摘されており、原則として大規模災害等に緊急的に対処する場合などに限定的に許可されるものである。
 管理監督職は、長時間労働が引き起こす健康リスクと制度の趣旨について理解を深め、職員の日々の勤務状況を把握して時間外勤務命令を必要最小限のものとするよう努めるとともに、自らが先頭に立って業務の削減、仕事の進め方の見直し、所属内の業務の平準化等の取組を継続的に推進していくことが重要である。
 また、任命権者は、公務においては長時間の時間外勤務もやむを得ないという意識が組織及び職員の間に生じやすいことに留意し、事務の必要性や実効性を継続的に検証して事業全体の最適化を図るとともに、管理監督職が職員の時間外勤務の状況をより把握しやすくなるよう取り組むことが求められる。
 さらに、様々な取組を進めてもなお恒常的な長時間の時間外勤務が見込まれる所属に対しては、早い段階で、柔軟な人員配置や必要な人員の確保等の措置を講ずるとともに、これまで職員が行うことを前提としていた業務についても、AI等を活用した省力化・自動化を検討するなど、従来の発想にとらわれない業務の見直しを推進することにより、長時間の時間外勤務の解消を図る必要がある。
​ 加えて、本委員会としては、任命権者に対し、これまでの取組の成果を適切に把握するとともに、時間外勤務の縮減が進まない所属に必要に応じて指導を行うなど、更なる取組の強化を求める。
 また、教育委員会においては、教職員の処遇改善や学校における働き方改革の推進を目的とする、公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法等の一部を改正する法律(令和7年法律第68号)の趣旨も踏まえ、引き続き教職員の勤務時間等の適切な把握・管理に努めるとともに、子どもたちに豊かな学びを届けることを目的として、必要に応じて関係者等と連携し、教職員の長時間労働の縮減を始めとした学校における働き方改革の更なる強化を求める。

3 勤務環境の整備

(1) 心と体の健康づくりの推進

 公務において、長期の病気休暇を取得し、又は休職している職員(以下「長期病休等職員」という。)の増加は全国的な課題となっており、(一財)地方公務員安全衛生推進協会が公表した「地方公務員健康状況等の現況の概要」によれば、令和6年度の精神及び行動の障害に起因する長期病休等職員は、10年前の約1.9倍に増加したとされている。
 本県においても、長期病休等職員数は依然として多く、また、定年引上げや職員の多様化により様々な事情を有する職員が今後も増えていくことが見込まれる。
 また、職員の心身の健康の保持・増進を図る上では、メンタルヘルス対策に加え、職員が不調や困り事を抱え込むことなく、安心して相談や意見表明を行い、相互に支え合うことができる心理的安全性の高い職場づくりを進めることも重要である。
 管理監督職においては、日頃から、職員との意思疎通を積極的に図り、職員が相談しやすい職場環境づくりに努めるとともに、職員の心身の状況等を適切に把握し、不調の兆候が見られる場合には、速やかに相談窓口の利用や、医師等との面談を勧奨することが求められる。
​ 任命権者においては、これまでも「群馬県職員の心の健康づくり計画」に基づき、ストレスチェックや巡回健康相談、医師等との面談などの各種取組を総合的・体系的に推進しているところであるが、今後は、メンタル不調の未然防止を重視した職場づくりを進めるとともに、早期発見・対処、円滑な職場復帰及び再発防止の各段階に応じた切れ目のない支援を一層充実させ、職員が心身ともに健康で生き生きと働くことができる勤務環境の整備に取り組んでいく必要がある。
 また、知事部局等においては、職員の健康確保等の観点から、勤務間インターバルの確保が所属長の努力義務とされているが、今後は、その確保状況を把握し、より実効性のある取組へとつなげていく必要がある。

(2) 時代に即した働き方の推進

 価値観が多様化する中、職員の事情に応じた多様で柔軟な働き方の推進は、職員の能力を最大化し、公務能率の向上に資するとともに、人材確保・定着に向けた公務の魅力向上にもつながるものである。

ア 柔軟な働き方に係る制度の適切な運用

 本県では、これまでも時差出勤やフレックスタイム制、テレワーク等の各種制度の充実に努めてきたところである。任命権者においては、引き続き、行政サービスの提供に支障を生じさせないことを前提として、制度の適正な運用を図るとともに、管理職による適切な勤務時間管理とその負担軽減の両立にも配慮しつつ、職員が各種制度を利用しやすい環境づくりに努めていく必要がある。
 また、多様で柔軟な働き方の推進に当たっては、制度の整備にとどまらず、デジタル技術の活用や業務の見直しを併せて進めることにより、公務能率の向上を図るとともに、職員の働きがいの向上や健康の保持・増進及び多様な人材の活躍推進につなげていくという視点が重要である。

イ 兼業の適切な運用

 総務省は、昨年6月に「営利企業への従事等に係る任命権者の許可等に関する留意事項について(通知)」を発出し、地方公務員の兼業に関する許可基準の設定、運用の透明性の確保、職員の健康管理等に関する留意点を示した。兼業は、職員の自律的なキャリア形成や自己実現に資するのみならず、民間企業での業務や地域活動等を通じて得られた知見や経験を行政サービスの向上に生かす効果も期待されるなど、職務にも好影響をもたらし得るものである。
 これらを踏まえ、任命権者においては、職務の遂行に支障を生じさせず、その公正な執行及び県民の公務に対する信用を確保することを前提として、兼業による職員の心身の疲労や職務への影響にも配慮しながら、制度を適切に運用する必要がある。
 その上で、職員が有する知識・技能を生かした活動や社会貢献につながる兼業について、許可基準や手続の周知を図るとともに、希望する職員が適切に制度を活用できる環境の整備に努めていくことが望まれる。

ウ AI技術の適切な活用等

 生成AIをはじめとするAI技術は、業務の効率化や行政サービスの向上に大きな可能性を有している。一方で、その活用に当たっては、情報セキュリティーや個人情報の保護に十分留意するとともに、出力内容を職員が適切に確認し、判断することが重要である。
 国においては、AI時代に求められる国家公務員の人材像やスキル、人材育成方法等の検討が進められている。任命権者においては、こうした国の動向も踏まえ、AI技術を安全かつ適切に活用するためのルールを整備するとともに、職員のデジタルリテラシーの向上や学び直しの機会の充実を図り、AI技術を適切かつ効果的に活用できる人材の確保及び育成に取り組むことが重要である。

(3) 仕事と生活の両立支援

 近年、職員の価値観やライフスタイルが多様化し、仕事と生活の両立に関する課題やニーズも多岐にわたっている。育児や介護を始め、様々な事情を抱える職員が安心して働き続けることができるよう、仕事と生活の両立を支援し、誰もがその能力を十分に発揮できる勤務環境を実現することは、優秀な人材の確保や職員のキャリア形成支援の観点からも重要である。
 本県においては、育児・介護等の事情を抱える職員が柔軟に働くことができるよう、関係する条例・規則を改正し、休暇・休業等の各種制度を利用しやすくするとともに、両立支援制度の周知や利用に係る意向確認等の措置を任命権者に義務付けたところである。
 任命権者においては、引き続き、必要な制度の整備・見直しについて検討するとともに、人員配置や業務分担の見直しなどにより、職員が両立支援制度を円滑に利用できる環境を整備し、多様な人材がその能力を十分に発揮して活躍できる職場づくりに努め、併せて、年次有給休暇を取得しやすい職場環境づくりに一層取り組み、その着実な取得促進を図ることが求められる。
 その上で、人事院が報告の中で言及した無給休暇の新設、代休日の指定等の見直し及びフレックスタイム制の更なる見直しについても、仕事と生活の両立を支援する勤務環境の整備に資するものと考えられることから、本県の実情を踏まえ、これらの制度について所要の検討を行う必要がある。

(4) ハラスメント防止対策

 近年、社会全体でハラスメントへの対応に関心が高まっている。特に、職場におけるハラスメントは、職員の尊厳を傷つけ、その能力の発揮を妨げるとともに、職場の活力や機能の低下をもたらす要因となるものである。
 また、ハラスメントは、職位、立場、性別等にかかわらず、誰もが加害者にも被害者にもなり得ることに十分留意する必要がある。
 職員を加害者にさせないことはもちろん、正当な理由がない過度な要求を始めとしたカスタマーハラスメントも含むあらゆるハラスメントから職員を守り、職員が安心して働くことができる勤務環境を確保することは、組織の重要な責務である。
 昨年4月に施行された群馬県カスタマーハラスメント防止条例では、県、事業者、就業者及び顧客等のそれぞれの責務を明らかにするとともに、社会全体でカスタマーハラスメントの防止に取り組む姿勢を明確に示したところである。県においては、社会全体の機運醸成等に取り組むとともに、事業者として、県職員に対する迷惑行為等に組織として毅然と対応し、職員を守る姿勢を明確に示すことが求められる。
 さらに、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(昭和41年法律第132号)の改正により、本年10月から事業主にカスタマーハラスメントを防止するために必要な措置を講ずることが義務付けられた。このため、組織として適切に対応できるよう、対応方針の明確化及び周知、相談体制や事案発生時の対応体制の整備、職員に対する研修等の取組を着実に進める必要がある。
 任命権者においては、新たに外部カウンセラー事業を活用した相談窓口を開設するなどの取組を進めているところであるが、引き続き、ハラスメント防止セミナーや研修等を通じて、全ての職員が相互の人格を尊重し、適切な言動を心掛ける意識の醸成を図るとともに、相談体制の充実等、各種のハラスメント防止対策を充実・強化していくことが求められる。
 また、ハラスメントの防止に当たっては、相談対応や事案発生後の対応のみならず、職員相互の円滑な意思疎通を促す風通しの良い職場づくりや、管理監督職のマネジメント能力の向上など、未然防止に重点を置いた取組を推進することが重要である。管理監督職においては、日頃から職員との円滑な意思疎通を図り、誰もが安心して相談や意見表明を行うことができる環境を整えることにより、ハラスメントの兆候を早期に把握し、その発生や深刻化の防止に努める必要がある。

4 公務員倫理の確保

 県政は県民の信頼の上に成り立つものであり、職員には、公私を問わず法令を遵守することはもとより、高い使命感と倫理観を持って行動することが求められる。
 任命権者においては、これまで、「群馬県職員倫理規程」や「群馬県内部統制基本方針」等を策定し、職員が遵守すべき具体的な行為規範を示すとともに、研修の実施や機会を捉えた注意喚起等により、綱紀の保持に取り組んできたところである。
 しかしながら、こうした取組にもかかわらず、依然として職員による不祥事が後を絶たない状況にあり、本委員会としても強い危機感を抱いている。
​ 任命権者においては、不祥事の原因や背景を的確に把握した上で、実効性のある再発防止策を継続的に講ずるとともに、管理監督職が職員の執務状況や職場環境等に十分に目を配り、定期的な面接の有効活用や日頃の対話等を通じて職員とのコミュニケーションを深め、置かれている状況や抱える課題を捉えることにより、不祥事の兆候を早期に把握し、組織として適切に対応する体制を一層強化する必要がある。
 また、職員一人ひとりにおいては、自らの行動が県政全体に対する県民の信頼に直結し、不祥事を起こした場合には、自らの将来のみならず、大きな影響が周囲にも及び得ることを十分に認識した上で、公務の内外を問わず、自覚と責任を持って行動することが求められる。

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