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ひょう害に対する農作物の技術対策
更新日:2024年7月10日
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令和6年7月5日夕、群馬県内で降ひょうがありました。また、令和5年においては、7月中に複数回にわたって降ひょうによる農作物等の被害が発生したところです。このため、今後も降ひょうに注意するとともに、農作物等に被害が発生した地域では、以下を踏まえて生育回復等の対策を図ってください。
1.普通作物
水稲
- 分げつ期で茎葉の切・折損等が認められる場合は、草勢回復を図るため、10アールあたり窒素成分量で2キログラム程度追肥する。なお、葉色が濃いほ場や過繁茂ほ場での施用は見合わせ、間断かん水や飽水管理による水管理を行い、根の活力維持で回復を図る。幼穂形成期以降で茎葉の切・折損等が認められる場合は、葉面からの蒸散作用が激しくなり、穂の形成に影響を与えるため、当面の間は湛水状態を保つ。
- いもち病・白葉枯病の常発地では、本病の発生が心配されるので適用薬剤を散布し、発生の予防に努める。
2.野菜
共通事項
野菜は、種類、生育ステージにより草勢回復力が異なるので、傷害程度を的確に把握し、早期の対応に努める。
- 茎葉の損傷程度の軽いものや、回復が見込まれるものは、登録のある薬剤の散布による病害の予防や追肥などの対策を講じる。ただし、被害が甚だしく回復不可能なものは、まき直し、または植え直し等を実施する。
- 損傷部分は病原菌が侵入し、病害が発生しやすいので、登録薬剤による予防散布を実施する。
- 草勢の回復を図るため、速効性肥料で追肥を行う。ただし、基肥施用量を十分考慮し、軟弱徒長な生育にならないようにする。なお、茎葉の病害が心配ない場合は、液肥の葉面散布剤も有効である。
作物別
露地ナス
- 強風で倒伏した株は起こし、株元をしっかり固定する。
- 葉が損傷した場合は、わき芽かきや下葉の摘葉を遅らせ、葉数を確保することで草勢回復を図る。また、果実を早期に取り除いて着果負担を軽減し、草勢の回復を図る。
- 主枝が損傷した場合は、側枝を伸長させて代替えし、1株当たりの主枝本数を確保する。
- 茎葉の損傷部から病原菌が侵入し、病害が発生しやすいので、登録薬剤による予防散布を実施する。
ネギ
- 茎葉の損傷部から病原菌が侵入するので、登録薬剤による予防散布を実施する。
- 倒伏のあるものは株を起こす。(高温期の追肥は軟腐病の発生を助長するので控
える。)
レタス、キャベツ
- 収穫期に近いものは、被害状況により出荷団体と相談の上、出荷の可否を判断し対応する。
- 茎葉の損傷部から病原菌が侵入し、病害が発生しやすいので、登録薬剤による予防散布を実施する。
- 外葉の被害程度によっては、生育遅延や小玉結球、下位等級となるので、追肥、葉面散布等で生育を促す。
- 定植直後のものは、被害の程度によって予備苗で植え直しを行う。被害が軽い場合は、登録薬剤による予防散布を行う。
- 回復が見込めない畑では、早急に後作の計画を検討する。
3.果樹
共通事項
- 枝葉が損傷した場合は、病原菌の侵入を防ぐため、登録のある殺菌剤を特別散布する。
- これから収穫を控える品目については、農薬使用基準に注意すると共に、葉や新梢の損傷程度に応じて摘果を行い着果量を調節する。
- 収穫が終了している品目も翌年の花芽確保のためには健全葉の維持が欠かせないため、殺菌剤散布を実施する。
- 落葉や葉の欠損が激しい場合には、日焼け防止のため主枝や主幹部に白塗剤の塗布や徒長枝の捻枝などを実施する。
4.花き
(1)共通事項
花き類は、種類、生育ステージにより草勢回復力が異なるので、傷害程度を的確に把握し、早期の対応に努める。
- 茎葉の損傷程度の軽いものや、回復が見込まれるものは、登録のある薬剤の散布による病害の予防や追肥などの対策を講じる。ただし、被害が甚だしく回復不可能なものは、まき直し、または植え直し等を実施する。
- 損傷部分は病原菌が侵入し、病害が発生しやすいので、早急に登録薬剤による予防散布を実施する。
- 草勢の回復を図るため、速効性肥料で追肥を行う。ただし、基肥施用量を十分考慮し、軟弱・徒長な生育にならないようにする。なお、茎葉の病害が心配ない場合は、液肥の葉面散布剤も有効である。
- 被覆資材、遮光カーテン、支柱等栽培施設の点検・修復を行う。キクなどの電照施設においては、速やかに作動状況の点検を行い、電照処理等が確実に行われるよう確認する。
(2)作物別
ア シクラメン
・降雹や強風により鉢の転倒や落下があった場合は、速やかに植え直し等を行う。 また殺菌剤の散布や潅注を行い、病害の予防に努める。
イ 切り花類
・切り花類では、降雹や強風によって折損した茎葉の整理と登録薬剤の散布を的 確に行い、病害の発生を防止する。切り花類では、降雹や強風によって折損した茎葉の整理と適用薬剤の散布を的確に行い、病害の発生を防止する。
5.飼料作物
・長大作物は生育初期に被害を受けた場合、茎葉の損傷がひどくても、生長点が健全であればその後の回復が期待できる。被害が甚だしく回復不可能なものは、まき直し等を行う。
6.桑
- 被害程度にかかわらず、そのままとして回復を待ち、収穫は被害の軽い桑園から順次行う。
- 樹勢回復を促すため、速やかに桑専用肥料を10アール当たり40キログラム施肥する。また、被害桑園は病害虫が発生しやすいので、防除の徹底を図る。
- 桑葉の需給調整については未利用桑園等の活用を組織的に行い、優良繭の生産に努める。