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中国・上海調査報告書

国際戦略対策特別委員 安孫子 哲

 下記の目的と内容で、中国在上海日本国総領事館、群馬県上海事務所設置予定場所及び県内進出企業との意見交換や調査内容等について報告いたします。

目的

  1. 外国人観光客の誘客促進に関すること。
  2. 農畜産物等の海外販路拡大に関すること。
  3. 県内企業の海外ビジネス展開の支援に関すること。

日程1 平成24年11月6日午後<在上海日本国総領事館>

調査内容

  • 反日デモ当時の状況と対応説明
  • 中国進出企業のデモ当時と現在の状況説明
  • 今後、中国と日本の関係についての説明
  • 尖閣諸島問題解決に向けての考えや日本の対応についての説明
  • 質疑応答

報告

 上海浦東国際空港に到着後、視察予定である在上海日本国総領事館において予定通り調査することができました。
 当日は、総領事から直接上海事情(尖閣諸島問題による反日デモを含めて)の説明を受ました。群馬県が目的とする、三本柱の1「観光誘客」については、中国人が日本を好んでいることや、温泉や医療に興味があることなど、提案を含めて意見交換をさせていただきました。2「農畜産物の販路拡大」については、食に対する現在の事情を伺い、その可能性を強く感じました。3「県内企業の進出」については、反日デモや日中間における関係をリスクにいれても進出するメリットはあるとのことでありました。しかし、中国で成功を遂げるには、それなりの企業努力が必要であること。増え続けている中間層をターゲットにしたビジネスが有効であることの説明を受けました。

私感

 反日デモ後の中国・上海において、日本から見た中国と現地とでは大きな違いがありました。中国経済の行方や、まだまだ中国に対する可能性があることを実感いたしました。

日程2 平成24年11月7日午前<群馬県上海事務所予定地及び茨城県上海事務所>

調査内容

  • 群馬県上海事務所予定地の見学
  • 地元業者による事務所の建築等の説明
  • 執行職員による事務所の立地状況とビジョンについての説明
  • 茨城県事務所の取り組み説明
  • 今後の考え等について
  • 質疑応答

報告

 現地出向予定の職員の方より、事務所完成図を基にあり方や方向性も含めて説明をいただきました。現地日本人サポーターや企業と連携し、目的である県内企業の海外ビジネス展開の支援と発展にどの様な取り組みをされるのか、事務所の機能についても具体的に説明を受けました。

私感

 上海国際貿易センター内にある群馬県上海事務所設置予定の場所は、上海市の中心部にあり、世界的にも有名なヒルトンホテルやショッピングモールなど交通アクセスや治安の心配はなく、立地条件は良であり、また、その役割も十分に果たせるものと考えます。印象に残ったのは、ビルのセキュリィーと周辺道路の交通渋滞です。課題としては、事務所の規模が少し狭いように感じました。

報告2

 平成8年に設置された茨城県上海事務所調査では、所長より事務所の活動報告や取り組みについて説明を受けました。また、今日までの実績や今後の取り組みと課題についても伺いました。

私感2

 茨城空港の開設により、茨城県上海事務所によるPRの効果が大きく期待されると同時に、群馬県との連携についても約束をいただき、本県にとっても茨城県上海事務所が同じビル内に在るということは心強く、連携によってはその効果は大きいものと考えます。

日程3 平成24年11月7日午後<信泰鹿島電子(上海)有限公司>

調査内容

  • 尖閣諸島問題による影響についての説明
  • 会社概要と今後の方針についての説明
  • 工場内見学
  • 質疑応答

報告

 信泰鹿島電子は、上海の郊外に工場を構え、環境としては工業団地のような場所であります。鹿島会長他、役員、スタッフに出迎えていただき、業務内容等について説明を受けた後に、工場内見学を行いました。

私感

 工場は大規模なものであり、EMS電子機器受託生産を中心とした業務で、主に日本受注、中国生産とのことでありました。社員は、現地採用350名で平均年齢25歳と若く、現地の若者が働く 姿が印象に強く残っております。工場の隣接地には社員宿舎が在り、福利厚生の完備からみて日本企業らしさが伺えました。

日程4 平成24年11月7日午後<東京海上日動火災保険(中国)有限公司>

調査内容

  • 反日デモによる日本企業の保険保障について
  • 資料による会社概要の説明
  • 質疑応答

報告

 社長及び担当者の方より、主に反日デモによる影響について説明と報告を受けました。
 日本国内での過剰報道や、進出企業の影響について、製造業は大きな影響は見えないが自動車メーカーの影響、損失は大きいとのことであります。将来性があると考えるなか、中国でのビジネスの見直しも迫られるといった不安な一面も述べておりました。

私感

 反日デモによる企業の損害補償の問題や、日本とは違い保険に対する中国の考え方や扱いに高いリスクを感じました。また、十分な情報の確保と対応が必要であることと、リスクマネジメントを中心に取り組まなければなら
ない難しさを痛感いたしました。

日程5 平成24年11月8日午前<JTB(上海)国際旅行社有限公司>

調査内容

  • 日本から中国への観光、中国から日本への観光の状況説明
  • 群馬県の観光誘客について
  • 資料説明と会社内見学
  • 質疑応答

報告

 群馬県の目的の三本柱にある外国人観光誘客を中心に説明を受け、意見交換を行い、また特徴ある社内を見ていただきたいとのことで社内見学も行いました。上海への旅行客は、1位・韓国、2位・日本となっており、日本からの旅行客は年間約350万人に及ぶと伺いました。現在の中国からの旅行客は、旅行先が偏っており、日本のなかでも東京、富士山、北海道といった日本国内でも人気のある観光地が圧倒的に多く、九州は観光誘客に10年かかったと述べられており、様々な質問等に対し丁寧に説明・提案を頂きました。

私感

 中国からの旅行客に対し、どのように群馬県にその足を向けさせるかが課題でありますが、今回の調査にて大きな成果につながる情報や提案をいただけたと感じております。
 温泉は日本に多くあり、群馬だけではないということの現実や、温泉だけでの誘客では弱く、ゴルフの好きな中国の状況など、群馬県独自のプラン作成や、売り込みが非常に大切であり必要と考えます。

総括

 過密なスケジュールではありましたが、報告書に述べていない様々な情報や、目で見てきた事、実際の中国事情と日本が捉えている違いなど、この上海調査によって群馬県が掲げる国際戦略が実現に向かって第一歩を踏み出せたと思っております。将来、中産階級層が6億人にも達すると予想される、その経済シェアをどう捉えて群馬県経済に寄与させるか。
 私たち国際戦略対策特別委員会の委員をはじめ、群馬県当局の力の見せどころだと考えます。
 全ては、現地に情報があるということを再認識した調査でありました。