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上海調査レポート

 国際戦略対策特別委員 吉山 勇

 中国への調査については、石原前都知事が尖閣諸島を購入しようとしたことに端を発し、日本政府が尖閣諸島の国有化に猛反対する中国から攻撃を受けていて、この対立が急展開するか、逆に鎮静化するか、当分の間は先が見えない中、『このような現状で、果たして今行く必要があるのか?このような現状だからこそ行くべきではないか?』と意見は当然分かれるところであった。
 私は、群馬県が国際戦略への取り組みのため、上海に事務所を設置することが決まっていて、歳費をかける以上は、今後どのように運営していくかを監視し、効果を上げるための建設的な議論をしていくためには必要なことであり有意義であったと考える。
 調査初日、上海の浦東国際空港から在上海日本国総領事館へ移動し、総領事から中国・上海の様子について話を聞くことが出来た。
 中国では現在、国のトップの間で暴露合戦など権力争いが目立ち、社会が不安定になっている要因の一つである。生活に関わる様々なところで個人の権利が保障されず庶民の不満は膨れているため、その不安や不満が政府に向けられぬよう矛先を外に向けるようにしていて、ここ最近の中国から総領事は、『中国人はいつもピリピリしていて一体どうしてしまったのだろう。』ということを肌で感じると話していた。
 その要因には、国内的な問題として、中国は特権階級に支配されていて、現在3億人(近い将来には倍増する)と言われている中産階級の特権階級批判が多く、庶民の格差に対する不満から、国としての一体感はなくバラバラで、遠心力はますます強く働き続けていると話す。日本からすると理不尽と思うようなところが多々あっても、日本と中国は今後の発展に向け相互に影響しあう非常に大事な関係にあるため、対応には相当の苦労をされている様子が伝わった。
 また、『群馬県からは過去に何人かの首相が出ていて、友好関係構築が進められてきたことが、中国側に評価されているが、そのことが群馬と結びついていないのでは?』と話していたことから、当時に遡って今後の親交に活用できることもあるのではないかと考える。
 今回の調査で、訪問先の在上海日本国総領事館・茨城県上海事務所・県内に本社を持つ信泰鹿島電子・東京海上日動火災保険・JTB(上海)国際旅行社、それぞれの現状と課題から、全国で30を超える自治体が既に中国に進出している中、後発である群馬県としては、より効率的・効果的な戦略を進めていく必要性があり、それは大変困難な仕事であると感じた。
 JTB上海での調査では、一番印象に残る話があった。日本全国の自治体が、そろって『うちは魚がうまい』、『良い温泉がある』など、どこも同じような事を言って中国からの誘客に力を入れているが、『来て下さいだけではダメ』で「2way戦略」が必要と語っていた。旅行会社として、当然の発想ではあるが、ビジネスの基本として的を得ており、売りとしての魅力づくりやアピール方法も大事であるが、他の自治体と同じことをやっても、後発組として遅れを挽回することは難しいのではないかと思う。売りだけでは競争に勝つことは出来ないので、知名度の低い群馬県が競争に参加していくためには、買いから売りにつなげるような独自の発想が必要ではないかと考える。
 『来てくださいだけではダメ!そんなことは全員が言っている。』と、言われてみれば当たり前のことだが、今後の国際戦略のヒントになるのではないかと思う。