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海外調査報告書(平成24年 国際戦略対策特別委員 大沢 幸一)

 国際戦略対策特別委員 大沢 幸一

 群馬県は、平成25年度に、(1)中国展開を目指す企業への支援体制構築、(2)農畜産物の販路拡大、(3)観光誘客を基調として、上海事務所を設置するとしました。
 これに対して、チェック機能を有する議会の任務として、現地調査する必要性を協議し、しかも第三者機関の審査会で承認を得て、平成24年11月6日~8日までの日程で海外調査を実施しました。
 以下、概要について報告いたします。

在上海日本国総領事館(6日:午後)

1.調査内容

(1)特徴的な国情

  1. 富裕層と貧困層が拡大傾向にある。
  2. 社会の不満が高まっている。親のコネがあれば、何でも出来る。
  3. 少子化現象増加。ひと組の夫婦が二つの家族を賄っている。
  4. 農民は農地に縛り付けておく。権利を与えない。
  5. 特権階級は、革命時の特権を放棄していない。
  6. 医療保険・社会保険不備、衣食住に安心感がない。
  7. 旧ソ連邦の二の舞になるかどうか。何がきっかけになって崩壊するかどうかわからない。

(2)上海の特徴的な現状

  1. 4年連続ビザの発行は世界一(中国全体の40%を発行)。
  2. 流通の活発な市である。
  3. 上海市、江蘇省、浙江省、安徽省、広西省の1市4省の在留邦人は約7万5千人。日系企業は2万社超。
  4. 日本人学校在学生は約3千人。家族連れが多い。

(3)日本との関係

  1. 中国は、日本が大切な国であると位置づけている。
  2. 中国人は、日本が好きである。
  3. 中国人は、日本の温泉を知らない。
  4. 観光誘客については、北海道、九州が感度が高く、群馬県はあまり知られていない。

2.課題

  1. 反日デモは、貧困層の不満に起因しているものであり、中国全土で起こったものではない。日本国内の情報のあり方は過剰である。したがって、国民を煽るような情報提供は慎む必要がある。このことは、日中双方に言えることである。
  2. 日中友好関係を確立して、日系企業の事業展開を円滑にすること。
  3. 日系企業活動や観光誘客については、上海事務所を設置している24道府県と連携を図ること。
  4. 大澤知事のトップセールスは、有効であると評価されている事から、さらなるトップセールスが求められている。

群馬県上海事務所設置予定場所(7日:午前)

1.調査内容

  1. 場所は、上海国際貿易中心(中心はセンターの意)の24階。虹橋空港から車で15分程度。
  2. 面積及びレイアウト:約66平方メートルでビル内最小。
  3. 本センターにおける各自治体事務所:15道府県・1市が設置。
  4. 事務所費は、月額約30万円、ネット回線は年額約10万円、その他。
  5. 現地雇用形態は人材派遣。(中国の政策による)
  6. セキュリテイ関係等
    (1)総領事館に近く、反日デモ時は武装警官がビル前で警備。(2)内装費は100万円余。中国の下請け業者に課題があるため、元請で行う。(3)廊下には監視カメラが設置してある。(4)会議内容が漏洩しないよう、間仕切りについては厳重に行う。

2.課題

  1. まだ備品や機器類などが未設置だが、ビル内最小の事務所ということから、狭隘にならないよう配慮が必要である。
  2. 事務所機能を高めるためには、各自治体の連携を図ること。
  3. 待ちの姿勢から攻めの姿勢を保持すること。
  4. 情報管理を徹底すること。
  5. 職員の安全確保と生活環境の整備を図ること。

茨城県上海事務所(7日:午前)

1.調査内容

  1. 場所は、同上記(上海国際貿易中心)17階で、平成8年に設置。
  2. 主たる目的は、(1)企業のビジネス活動の支援、(2)情報提供、(3)茨城県の産業拡大への支援、(4)友好交流活動の4項目。
  3. 職員体制は、日本人2名、中国人2名。所長は県職員、大凡3年交代。
  4. 販売促進支援は、22年度:58件、23年度:69件。調査件数は、22年度:104件、23年度:88件。
  5. 商談会への支援。中国最大規模の食品展に参加。
  6. 観光誘客イベントに出展。県内の観光事業者参加。
  7. 青少年音楽交流事業を支援(日中韓)
  8. 婦人会や県留学生協議会の運営支援:年1回(コネクションづくり。)
  9. 嘱託弁護士の配置(週1回)
  10. 所長は年1回、民間への説明会出席のため帰国。

2.課題

  1. 現地、県出身の各層をいかに掌握し、人脈づくりを構築できるか。
  2. 事務所の存在価値をいかに高め、広めることができるか。
  3. 企業主及び観光業者に主体性を持たせることができるか。
  4. 事務所関係者と本庁との情報交換を円滑に行うこと。
  5. 北関東3県及び5県知事会議を有効に活用すること。

信泰鹿島電子(上海)有限公司(7日:午後)

1.調査内容

  1. 業務内容はEMS(電子機器受託生産)で、工場は151メートル×131メートルという大規模工場である。
  2. 会社役員は、鹿島会長、張副総経理(女性)、石野経理長、ほか3人の日本人スタッフ。
    ※3者とも高崎経済大学出身。張氏の父が群馬大学医学部に赴任していた。
  3. 社員は現地採用で350人。監視カメラ設置。品質管理と個々の社員の責任を徹底している。
  4. 幹部宿舎5階建て。社員宿舎6階建て。社員宿舎にはコンビニやゲーム場を設置して、福利厚生を完備している。
  5. 合弁会社から独立した。経済動向のスピードが早い。

2.課題

  1. 中国への企業進出は、国内に窓口を持っていることが重要である。
  2. 役員スタッフの配置は、日本国内での人脈掘り起こしと人脈を駆使した対応が不可欠である。
  3. 県内企業の進出は、県内での本社、工場の経営を維持しつつ、中国への進出を図れるだけの基盤が問われる。
  4. 社員管理が徹底できるかどうかが最大の課題である。
  5. 会社役員は、中国の内情について冷静に判断し、かつ友好的な姿勢で臨む必要がある。

東京海上日動火災保険(中国)有限公司(7日:午後)

1.調査内容

  1. 中国損害保険マーケットと当該有限公司の概要
  2. 9月16日~18日の反日デモの日本における報道は過剰であった。
    ※部品製造業は大きな影響はない。自動車メーカーの打撃は大きい。
  3. 11月14日の国家主席交代に対する国民の不安感は大である。
    今後の中国戦略は、見直しも迫られるのではないか。しかし、将来性はある。諦めないこと。
  4. 2011年の収入保険料国際比較(生損保計)では、1位アメリカ(12,047億ドル)、2位日本(6,554億ドル)、(以下略)6位中国(2,219億ドル)と、世界最速の成長を誇っている。世界ランキングは2002年以来、年々増加している。
  5. 2011年の元受ベースの損保シェア4,779億元(約6兆円)のうち、外資系は僅か1.1%である。
  6. 最も、驚異に感じたのは、中国の損保会社では、交通事故発生から30分以内に保険金が支払われるものもあるとのこと。
  7. 労働争議の支払業務も多い。

2.課題

  1. 中国進出の企業は、生損保に対しても熟知しておかなくてはならないことと合わせて、企業側の保険料積立の必要性を認識しておくことが求められる。
  2. 中国進出する企業は、情勢変化の速さに対応できる企業体力を具備しておかなくてはならない。
  3. 企業進出に伴う、充分なリスクマネジメントが不可欠である。

JTB(上海)国際旅行社有限公司(8日:午前)

1.調査内容

  1. 上海の旅行客は、1位:韓国、2位:日本。日本から年間、約370万人が行っている。
  2. 政治の影響力が大きい。互恵関係を確立しておくこと。
  3. 群馬県は、海なし県。隣県・市と連携すること。九州は10年かかってやっと芽が出てきた。
  4. 13億人を対象に考えても無理がある。ターゲットを絞り込むこと。
  5. プロモーションが単発で終っている。業者と一体となって市場に臨んでいかないと厳しい。変化のスピードが早い。当たれば口コミで伝わっていく。
  6. 各道府県とも、温泉、買い物、食べ物など、ほぼ同一な宣伝に終始している。もっと、特徴的な内容をPRすることが必要である。
  7. ゴルフコンペの協賛も考えられる。
  8. 東京都の魅力は大きい。2次交通の整備が必要。
  9. 自治体が取り組んだ失敗事例もある。
  10. 調査時間を延長して、JTB上海の道反対側にあるビルの地下を調査。たい焼き、寿司、ケーキ、衣類など、地下は日本店街一色。9月の反日デモでは、全く影響なかったとのことであり、日本の過剰報道が疑問視された。

2.課題

  1. JTB上海から指摘されたことが、すべて課題である。
  2. これらの指摘、助言を頂いて、群馬県がどのような方針を確立しなければならないのか。机上の論理だけでは、空振りに終る公算が大きく、現地主義の徹底及び国内外の情報収集に汗かくことができるかどうかが最大の課題である。

総括

  1. 厳しい予算の制約に伴い、過密スケジュールではあったが、今回の国際戦略対策特別委員会の海外調査では、多くの成果を得ることができた。
  2. 群馬県の国際戦略を実効あらしめるためには、平素より、友好かつ良好な国際関係を確立しておくことが必要である。県議会においても、殊更に緊張関係を煽るような議会運営は回避しなければならない。
  3. 3つの基調の具体的な推進策は、当該国の日本に対する意識を無視しては実現不可能である。よって、時々の情報収集と変化について、能動的に対応しなければならない。
  4. 先進的な他県との連携は不可欠である。
  5. 在上海日本国総領事館をはじめとした関係機関、及び今回調査活動の対象になった事業者との連携を継続しておくことが肝要である。
  6. 群馬県上海事務所の設置にあたっては、現地との付き合せを十分に行うこと。更に派遣職員の生活環境と安全面を整備強化すること。
  7. 県内企業、JA、温泉業者との意見交換と周知宣伝を継続しつつ、群馬県の特色を前面に押し出した「差異化戦略」を確立すること。
  8. 守勢から攻勢への情報発信力を強化すること。

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