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環境農林常任委員会(農政部関係)(平成28年1月29日)

1.開催日時

平成28年1月29日(金曜日)9時59分開始 11時37分終了

2.開催場所

403委員会室

3.出席委員

委員長:井田 泉、副委員長:原 和隆
委員:関根圀男、委員:久保田順一郎、委員:橋爪洋介、委員:あべともよ、委員:中島 篤、委員:金井秀樹、委員:伊藤 清、委員:山崎俊之

4.欠席委員

なし

5.意見陳述(TPP協定発効後を見据えた農業の展望・懸念事項等)

大澤参考人
 10月5日に大筋合意された内容では、農業者にとって非常に厳しい内容となっており、農業者の意欲を大きく減退させ、新たな若い世代の農業参入の希望も失わせかねない状況である。今後、2月4日に署名、国会審議と手続が進むと報道されているが、JAグループは次の事項を強く求めていきたい。まずは、TPP交渉と国会決議との整合性について、農業者はもとより消費者など国民が納得できる説明を行い、協定内容の確定や国会審議等の各段階において十分な情報開示を行うとともに、農業者や国民から国会決議を遵守したと理解される結果となるよう対応してほしい。次に、生産現場の声をくみ取った上で経営安定対策など将来に渡って再生産可能とする施策を確立し、将来を見通せる万全な対策を講じてほしい。また、国民の理解と支援の下に、収益力向上と競争力強化対策、新たな分野に挑戦する付加価値創出対策、国産農畜産物の需要拡大対策を講じてほしい。さらに、長期間に渡って関税撤廃及び段階的引き下げなどが行われることや、TPP参加国が拡大した場合、影響は長期に及び、現時点では想定できない事項も多いことから総合的かつ中長期的な対応方針を確立してほしい。県においても、TPPの大筋合意内容と国会決議との整合性や本県農業に与える影響、また、TPP対策について生産者の視点で検討いただき、今後も生産者、県、市町村、JAグループが連携して群馬の農業の振興に取り組んでいきたい。

前原参考人
 昨年は県育成の「ぐんま名月」がテレビで放映され、「幻のりんご」という扱いをされ、品不足の状況となった。果樹の新種は戦略商品となり、国内外に向けて群馬県を売り込むチャンスになるので、群馬のオリジナル品種の育成のため、農業技術センターや技術指導を行う普及員の派遣をお願いして、戦略的な品目を県として育成、普及をしてほしい。また、中山間地は一つの区画が小さいので、もう一段の基盤整備事業を行えば、団地化や集約化ができるのではないか。

吉岡参考人
 切り花栽培農家は、以前から関税なしで国際競争にさらされて経営しており、国産品はコスト高で輸入品との競争では不利な条件である。そのような中、カーネーションは産地がなくなり、バラやキクについても後継者が育たない又は産地縮小という動きもある。国策としてハウスの設置、資材の購入の計画化、農業用電気料金の低価格化などの施策をお願いしたい。

佐藤参考人
 いちごについては、TPPの影響はほとんどないと思われる。群馬県産の「やよいひめ」は全国的にも知名度が上がってきており、おいしくて日持ちがするので、福岡県産の「あまおう」に匹敵する、あるいはそれ以上の品種でないかと思う。「やよいひめ」は簡単に栽培できる品種ではない。なので、ぜひ「やよいひめ」の輸出を考えていただきたい。

寶船参考人
 トマトとキュウリの関税率3%、これがTPP協定発効で関税ゼロになると海外から輸入される農産物は増えてくると思われる。そうした中で、私は常々オランダを参考にしたらよいのではないかと考えている。オランダの規模は九州と同じくらいだが、農産物の輸出量ではアメリカに次ぐ2番目である。日本は世界で47番目、約30億ドルでオランダの30分の1しかない。なぜこのような差が生じるかというと、オランダは産官学が連携して農業のために力を注いでいる。最近のオランダの農業経営では、環境制御、植物工場に力が注がれているので、この点を群馬県にも取り入れて、農業の発展に尽力してほしい。

小川参考人
 今回のTPPで一番影響を受けるのが畜産だと思う。牛肉の関税率が38.5%から9%に落ちるので、最大の影響を受けるのが牛肉ではないかと思う。そうした中で経営安定化事業である牛マルキン、豚マルキンを法制化することが必要である。また、子牛安定基金についても制度創設からかなりの時間が経過しており、現状の子牛の生産費に見合ったような保証価格になっていないため、今の生産費に合った価格水準に上げてもらうことが必要かと思う。また、畜産だけでなく新規事業米、特に飼料米WCS等の生産が行われており、これは自給率の向上と水田のフル活用という観点から今後も維持してほしい。本県の場合、肉牛系は、子牛価格の高騰と飼料価格が高止まりの影響で生産費がかなり上がっている。出荷頭数が減っている関係で材肉相場が高いので、肥育農家もやっていけるが、相場が下がると経営が厳しくなると思う。県でもEU諸国に牛肉の輸出に力を入れてもらっているので、生産の現場からすれば大変ありがたいことである。上州和牛のより一層のブランド化に努めてほしい。また、すき焼きの日の制定で、認知度が低かった上州和牛を県民に対してマスコミ等を使ってPRできたので、今後もしっかりやってほしい。

岡部参考人
 養豚対策の提言として、豚マルキンの法制化等5つを国に提言させていただいたが、国が一定の答えを出してくれたことに対して生産者は非常にありがたいと感じている。TPP協定発効に伴う生産額の影響が発表され、豚肉に関しては121億円から237億円の目減りがするだろうという見込みであるが、その考え方のシナリオを精査すると、生産額への影響はこの倍くらいに増えるのではないかという見方をしている。政府では、最終的には8千万人くらいの外国人が日本に訪れてもらうための政策を取っており、今は大都市に行く人が集中しているが、これからは地方にも外国人が来て消費をしてくれると思う。その中で、群馬県は全国的に豚肉と牛肉の消費が少ないので、外国人に群馬県に来てもらって消費してもらうという政策を要望したい。

薊参考人
 採卵養鶏については、過当競争の時代が何十年も前から続いており、今回のTPP協定発効後は、さらにこれが加速して、経営の過疎化が進むのではないかと思う。TPP対策として、畜産農家に畜産クラスターのコーディネーターを育成する事業があるが、その人材はどこで確保するのか、その部分がはっきりしないと中小の畜産農家は、なかなか畜産クラスターに参加しづらいと思う。採卵養鶏は、主要5品目ではないため、養豚、養牛のようなTPP対策として国の補助率を上げる基金がない。国の説明では、畜産物の生産は減らないという試算をしたが、養鶏の場合は加工品を含めて13年後には関税が全部撤廃するのに生産量が減らないという説明は納得できないので、国で再度試算をし直してほしいと考えている。

品川参考人
 国から出されたTPP影響試算では、本県酪農の主要用途の飲用乳は含まれていないが、加工乳製品は乳製品に関わる関税率が引き下げられることにより、海外との格差が市場を失い、乳価低下となる試算である。国では、体質強化と経営安定対策の実施で今までの生産量を維持できると理解しているようだが、不安定な状態である。また、牛肉の関税削減が行われる結果、輸入牛肉と競合すると言われる乳子牛や廃用牛価格が大きな影響を受けると懸念されている。酪農経営は、ある試算によれば乳子牛で17パーセント、廃用牛で8パーセント程度の影響を受けるとの懸念もあり、何らかの対策等が必要である。

6.主な質疑

関根委員
 我々は群馬県の農業を守らなくてはならない、お手伝いをしなければならないので、国に要望させていただいたり、国の施策で足らないところを県で補完をしていかなければならない。とりあえず国の基本施策が説明されたこの段階で、その策で農業を守れるという認識か。

大澤参考人
 TPPに対する支援策を講じると、影響は1300億円から2100億円の範囲であろうと農水省は発表しているが、過小な数字の積み上げではないか。なにより先が見えないということが現場では大変困惑しており、中長期的な見通せるような政策を期待している。TPPの全容が早く知りたいし、分かった時点で対策を考えていけばいいと思っている。

関根委員
 守る農業もしながら攻める農業も行い、大規模化して輸出増加をするということも政府の方は考えているが、それは可能なのか。

大澤参考人
 群馬県の食肉卸売市場では一昨年、EUへの輸出認可工場の資格を得たので、EUへの輸出を行っている。こんにゃくも輸出している。いちごの「やよいひめ」も台湾への輸出が解禁になれば、かなりの輸出量が望めると思う。そのほかにもたくさんの野菜があるので、群馬県の特産の輸出ができるのではないかと思っている。

関根委員
 花きもカーネーションや外国から安いものが輸入されて、国内産は高価格になり大変ということで、即効性のある対策が必要とのことだが、具体的にはどのようなものか。

吉岡参考人
 花のあるくらしをもっと消費者にもっと提案してほしい。今の若い人は、花に関心がないわけではないが、購買意欲が低下している。そうした方に、ぜひ花を購入していただきたい。

伊藤委員
 花きの価格低下に対する所見を伺いたい。

吉岡参考人
 量販店での販売は、量にはつながるが、価格低下も引き起こしている。また、消費税増税の影響も受け、家計の支出の中での仕分けの結果、花は除外されてしまっている。

伊藤委員
 輸入の花は、国産と違い、鮮度を維持する薬等が使われているのか。

吉岡参考人
 そのことに問題はないと思われる。花きに限らず、どんなものでも日本向けに作ってくるので、国内の業者も決して安閑としていられる状態ではない。

山崎委員
 TPPは、秘密交渉なので情報が我々にも断片的にしか入ってこない。しかも日本語の正文はない。一刻も早く日本語に翻訳してもらって、正確な情報を我々も知り、国の対策で足りないところはできるだけ応援したい。

大澤参考人
 確かに正文の日本語版は無い。早く翻訳してもらって、1日でも早く分かるようになるとよい。それが我々の先々の不安の原因である。これからは国会審議で情報が流れてくるはずである。我々に判断できる材料をお願いし、先の見通しが立つような情報が来ることを願っている。

山崎委員
 アメリカの輸出補助金やヨーロッパの所得補助について、どう考えているのか。

大澤参考人
 補助金の関係は詳しくないが、聞くところによると生産に対する補助金、輸出補助金、国から国民ための食糧生産の補助金があるということは聞いている。良い悪いは別として、それらに対抗するための規模拡大は難しい状況である。短期のものではなく、中長期的な将来に渡って持続できる政策をお願いしたい。

あべ委員
 2年前の大雪がきっかけで離農した農家の中には、将来的にTPPのこともありあまり明るい要素が見通せない中で、この先続けていくことに自信を失った農家もいるのではないか。

大澤参考人
 無いとは言えないかもしれない。

あべ委員
 後継者不足の農家から、これから先も続けていく農家に引継ぎができれば、栽培面積や全体の生産量の減少抑制、大規模化にもつながると思うが、そのためにはどうすればよいか。

大澤参考人
 JAグループとしても、空いたところには近くで同様の農業を行っている農家に引き継いでほしいということをお願いしている。それをスムーズにできるような施策を考えていただけるとありがたい。

あべ委員
 いちごの生産については、安定して続けていけるような状態になっていて、戸数や生産量は減らずに増えていくような状況になっているのか。

佐藤参考人
 農家の高齢化に伴い、いちご農家が増えていく方向ではないが、農業全体では後継者が多い方である。「やよいひめ」ほどのいちごは、全国的に簡単には出てくる品種ではない。もう少しPRして増やしていきたいと考えている。

久保田委員
 農水省で始めた農地の中央管理機構、大規模化は、TPPを想定しての国内対策だと思うが、これについてどう考えているか。また、政策的に、海外の補助金を相手に対応できるのか。さらに、年明けに原油価格が下がってきたが、原価低減を図るポイントがあるのか。

大澤参考人
 農地が非常に狭いので、米作は集落営農の法人に頼っている部分が非常に大きい。一件当たりの面積は小さいが、一つの集団として少ない人数で経営すれば大規模化となると思う。農地の中間管理機構を活用して、機能していけば非常によい方向に向いていくと思う。コストの削減では、流通に関しても少しでも下げていこうと努力しているところである。もともと外国から入ってくるものなので、値段をはっきりと決められない部分はあるが、輸送、保管場所等すべてを少しでもコスト削減に向けて今年は取り組むことになっている。

橋爪委員
 皆さんのお話をいろいろな場面で伺ってきた。守る部分についてはマルキンをはじめ経営安定化事業が法制化前提での予算化を確実にするよう継続して政府に要望していきたい。攻める部分については、いちごやオランダの事情の話もあった。また、畜産については、訪日外国人に対しての観光との連携の意見も出た。昨年の夏頃から、農水省と観光庁から「食と農の景勝地」という事業を進めているが、この事業に対する展望はあるか。

大澤参考人
 農協観光が受皿になって地方との取組を進めているところである。一つの目玉として、日本に来た外国人が食べておいしいと感じ、帰国してからも需要につながるような取組をしていきたいと考えている。例えば、イタリアのスパゲティも日本でも日常食べられるように、和食の素材も日本に来たことがある人たちにも帰国してから使ってもらえるような取組を計画している。

橋爪委員
 昨年は、ヨーロッパで上州牛、こんにゃくのセールスを行い、和食そして上州の食材を適正に評価してもらえた。出展したことも評価だし、県の職員と我々にとっても経験値であるので、今後にも役に立つと思っている。これからも守りの部分、攻めの部分しっかりと皆様に指導いただきながら、頑張っていきたい。

大澤参考人
 昨年10月に知事と一緒にパリのカッティングセミナーで上州和牛をPRし、ミラノも含めてこんにゃくなどの販売促進を行った。群馬県の食材は好評だったので、これからも輸出を行っていきたい。これからも、農家と一緒に農業を守り、食糧自給率を少しでも上げていきたい。

井田委員長
 最後に、宮崎農政部長から感想などをお願いしたい。

宮崎農政部長
 ただいま参考人の方々から出た意見は、地域の貴重な意見として受け止めたい。県としては国に対して、その部分についてしっかり説明し、将来の展望が見えるような予算確保の要望を行っているところである。県の平成28年度当初予算の中でTPP対策については、当面のものを検討している。今後も継続して皆さんの意見を伺いながら、国の対策も今後詳細が明らかになってくると思われるので、講じる対策について引き続き検討していきたい。


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