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議第3号議案(令和6年)

再審手続に関する十分な議論を求める意見書

 えん罪は、国家による最大の人権侵害の一つである。えん罪被害者の人権救済は、人権国家を標榜する我が国にとってはもちろん、地域住民の人権を守る義務を有する地方自治体にとっても重要な課題と言える。
 ところで、えん罪被害者を救済するための制度としては「再審」がある。しかし、その手続を定めた法律(刑事訴訟法第四編「再審」)には、再審請求手続の審理のあり方に関する規定がほとんどなく、裁判所の広範な裁量に委ねられている。このように、再審手続には厳格なルールが定められていないため、再審請求手続の審理の進め方は、事件を担当する裁判官によって区々となっており、再審請求手続の審理の適正さや公平性が損なわれかねない状態となっている。
 その中でも、とりわけ再審における証拠開示の問題は重要である。過去の多くのえん罪事件では、警察や検察庁といった捜査機関の手元にある証拠が再審段階で明らかになって、それがえん罪被害者を救済するための大きな原動力になっている。したがって、えん罪被害者を救済するためには、捜査機関の手元にある証拠を利用できるよう、これを開示させる仕組みが必要であるが、現行法にはそのことを定めた明文の規定が存在せず、再審請求手続において証拠開示がなされる制度的保障はない。そのため、裁判官や検察官の対応いかんで、証拠開示の範囲に大きな差が生じているのが実情であって、このような格差を是正するためには、証拠開示のルールを定めた法律の制定が不可欠である。
 しかも、再審開始決定がなされても、検察官がその決定に対する不服申し立てをすることにより、速やかに再審公判手続に移行できず、再審手続が長期化してしまう実情がある。
 そこで、国においては、上記のような課題を踏まえ、えん罪被害者の早期救済を図るべく、再審手続のあり方について十分に議論することを求める。

 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

 令和6年3月18日

群馬県議会議長 安孫子 哲 

 衆議院議長
 参議院議長
 内閣総理大臣
 法務大臣 あて​