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植物レッドリスト(2012年改訂版)

更新日:2018年7月6日 印刷ページ表示

群馬県の絶滅のおそれのある野生生物 植物編の改訂について

1 背景・目的

 野生生物を取り巻く環境は、年毎の気候の差異や他の生物の繁殖状況、開発や管理放棄など人による土地利用の変化、急激な過剰採取、外来生物の侵入、保護活動による回復など様々な要因から影響を受けており、野生生物の生息・生育状況は常に変動しています。
 絶滅のおそれのある野生生物を保護するためには、その実態を知ることが不可欠です。常に変動する野生生物の生息・生育状況を常時確認することは難しいとしても、定期的な調査によって状況を確認し傾向を把握しておく必要があります。また、新たな生息地・生育地が発見されたり、新たな知見により学術的な取り扱いが変更されることもあります。このような変化に対応するため、レッドリストやレッドデータブックは適宜見直す必要があります。
 群馬県では、2001年に発刊したレッドデータブックの植物編について、その後の変化への対応や、より現況に即した内容に見直すため、2008年(平成20年度)に改訂準備に着手し、2012年(平成24年度)に初めての改訂を行いました。

2 結果

(1)今回評価対象とした種数とその内訳、前回評価との対比

今回評価対象とした種数とその内訳、前回評価との対比一覧
項目 今回の評価(2012年)注1
絶滅 野生絶滅 絶滅危惧1A類 絶滅危惧1B類 絶滅危惧2類 準絶滅危惧 情報不足 掲載なし
前回の評価(2001年) 絶滅 31 1 16 0 1 0 1 5 55
絶滅危惧1類 3 0 73 41 28 4 5 3 157
絶滅危惧2類 0 0 7 5 8 6 0 0 26
準絶滅危惧 0 0 0 1 7 2 0 1 11
希少 1 0 16 20 39 14 2 12 104
情報不足 2 0 7 4 2 0 12 2 29
掲載なし 16 1 98 63 37 20 39 0 274
53 2 217 134 122 46 59 24 657

 注1:センウズモドキ(今回:絶滅危惧2類)の前回評価は、イヌハコネトリカブト(希少)の評価を用いた。
 このため、イヌハコネトリカブトは今回評価(掲載なし)に計上していない。

 今回の改訂版では633種を評価対象として掲載しました。このうち274種は前回(2001年版群馬県レッドデータブック植物編)は掲載されていませんでしたが、今回新たに掲載された種です。内訳をみると、274種のうち161種は絶滅危惧1A類と1B類で58.8%を占めました。これは、前回も掲載されていた359種のうち今回絶滅危惧1A類と1B類が占めた割合(52.9%)を上回る結果となりました。この中には、環境省のレッドデータブックやレッドリストに掲載されている種が過去10年の間に県内で新たに発見されたものや、全国的に減少傾向が著しく環境省でも2007年版のレッドリストで新たに掲載したものが多数含まれており、絶滅リスクが高いランクに集中する結果となりました。
 今回、絶滅または野生絶滅と評価した55種のうち23種は、前回は絶滅以外の評価とされた種か、絶滅危惧種として認識されず掲載されていなかった種です。なお、前回絶滅と評価した55種のうち17種は、その後現存することが確認されたため今回は他の評価となりました。また、5種が対象外となったのは、雑種や品種、逸出種として評価対象から除外したためです。
 今回の評価対象633種のうち、絶滅危惧1A類が217種と最多となりました。この理由として、本県の植物相がもともと地域間の差異が大きく分布地点の限られる希少種が多いことに加え、従来からの開発行為による生育地消失のほか、近年は農地や里山の管理放棄、動物による食害、外来種との競合など様々な要因によって生育環境が悪化し、深刻な状況に追いやられていることが考えられます。また、前回と今回で評価基準が異なるため単純には比較できませんが、前回絶滅危惧2類に評価された26種のうち12種が今回絶滅危惧1A類または1B類、前回準絶滅危惧に評価された11種のうち8種が絶滅危惧1B類または2類に評価され、前回より絶滅リスクが高い評価になっていること、および前回情報不足種と評価された29種のうち、2種が絶滅、11種が絶滅危惧1A類または1B類に評価されていることから、同様の傾向がうかがわれます。その一方、前回より絶滅リスクが低い評価となった種は、前回評価が絶滅危惧1類または2類だった180種(ただし今回評価対象外となった4種を除く)のうち38種でしたが、これらは新たな産地が発見されたものがほとんどで、必ずしも個体数が減少から増加に転じたとは言えず、引き続き注視する必要があります。
 前回希少と評価された種の多くが今回は比較的絶滅リスクの低い方のランクに評価された理由は、生育基盤が脆弱なだけで、開発行為や管理放棄、自然遷移などによる明確な減少傾向がみられない種が大部分を占めたために、減少率が低めに算出されたことによると考えられます。

注:ランクの正式名称は「絶滅危惧(ローマ数字の)1A、1B、2類」ですが、ウェブページの閲覧環境によってはローマ数字の表示ができないため、ここでは便宜上1及び2を使用します。

(2)今回の改訂版で評価対象とした633種の一覧(植物レッドリスト2012年改訂版)

 群馬県の絶滅のおそれのある野生生物 植物編(2012年改訂版)植物レッドリスト(2012年改訂版)(Excelファイル:176KB)

 群馬県の絶滅のおそれのある野生生物 植物編(2012年改訂版)植物レッドリスト(2012年改訂版)(PDFファイル:137KB)

3 評価区分及び基本概念

 「群馬県の絶滅のおそれのある野生生物 植物編(2012年改訂版)」における評価については、次の区分を用いました。
 なお、これは環境省のレッドデータブック及びレッドリストで用いられている「レッドリストカテゴリー(環境省,2007)」を準用したものです。

絶滅 Extinct(EX)

 我が国ではすでに絶滅したと考えられる種

野生絶滅 Extinct in the Wild(EW)

 飼育・栽培下でのみ存続している種

絶滅危惧 THREATENED

絶滅危惧1類 (CR+EN)

 絶滅に瀕している種:現在の状態をもたらした圧迫要因が引き続き作用する場合、野生での存続が困難なもの。

絶滅危惧1A類 Critically Endangered(CR)

 ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの。

絶滅危惧1B類Endangered(EN)

 1A類ほどではないが、近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの

絶滅危惧2類 Vulnerable(VU)

 絶滅の危険が増大している種:現在の状態をもたらした圧迫要因が引き続き作用する場合、近い将来「絶滅危惧1類」のランクに移行することが確実と考えられるもの。

注:ランクの正式名称は「絶滅危惧(ローマ数字の)1A、1B、2類」ですが、ウェブページの閲覧環境によってはローマ数字の表示ができないため、ここでは便宜上1及び2を使用します。

準絶滅危惧 Near Threatened(NT)

 存続基盤が脆弱な種: 現時点での絶滅危険度は小さいが、生育条件の変化によっては「絶滅危惧」として上位ランクに移行する要素を有するもの。

情報不足 Data Deficient(DD)

 評価するだけの情報が不足している種

 群馬県の絶滅のおそれのある野生生物 植物編(2012年改訂版)」評価区分及び基本概念(PDFファイル:11KB)

4 調査

 「群馬県の絶滅のおそれのある野生生物」(レッドデータブック)植物編の改訂のための調査及び評価検討については、群馬県自然環境調査研究会に委託して実施しました。
 群馬県自然環境調査研究会では、植物部門の会員が次のスケジュールで業務を行いました。また、大森 威宏、片野 光一、須藤 志成幸、吉井 広始の4名が編集を担当しました。

植物部門会員名簿

 青木 雅夫、安類 智仁、石川 真一、大森 威宏、片野 光一、剱持 雅信、小暮 市郎、小林 敏夫、里見 哲夫、鈴木 伸一、須藤 志成幸、津久井 芳雄、増田 和明、松澤 篤郎、吉井 広始

作業スケジュール

 2008(平成20)年度:改訂に要する作業行程、調査対象種、スケジュール等の検討
 2009(平成21)~2010(平成22)年度:文献や標本による調査に加え、現地調査により情報を補足・確認
 2011(平成23)年度:調査結果のとりまとめ及び種毎の評価及び原稿執筆、補足調査を実施

参考:群馬県自然環境調査研究会について

 県内の大学教授や高等学校教諭等を中心に1974(昭和49)年に設立された団体で、植物・動物・地形地質の各分野の学識経験者で構成されています。これまでに、環境省から「自然環境保全基礎調査」を、群馬県から「絶滅のおそれのある野生生物(植物編・動物編)」の発行及び今回の改訂のための調査や評価のほか、「良好な自然環境を有する地域学術調査」や「奥利根地域学術調査」、「外来生物調査」といった各種自然環境調査業務を受託実施し、大きな研究成果をおさめています。

 会長:斎藤 晋 群馬県立女子大学名誉教授 ※注2
 会員数:61名(植物部門15名、動物部門35名、地形・地質部門11名)※注2
 ※注2:2012(平成24)年3月現在

5 レッドデータブックの入手方法

 「群馬県の絶滅のおそれのある野生生物 植物編(2012年改訂版)」の冊子は、県庁2階県民センターまたは県内各行政県税事務所で購入していただくことができます。「いま買える県の資料一覧」
 また、報告書のファイルが、群馬県立自然史博物館ホームページからPDF形式でダウンロードできます。群馬県立自然史博物館(レッドデータブック)<外部リンク>