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【士法】建築士・建築士事務所のためのヒヤリハット対処術を作成しました

更新日:2014年5月27日 印刷ページ表示

 建築士は、常に品位を保持し、業務に関する法令及び実務に精通して、建築物の質の向上に寄与するように、公正かつ誠実にその業務を行わなければならないとされています。

 どんなに忙しくても、建築士や建築士事務所を開設された方には、必ず行っていただかなくてはならない決まり事があります。

 「建築士・建築士事務所のためのヒヤリハット対処術」は、それらをなるべく分かりやすく取りまとめた冊子です。業務の参考として御活用ください。

第1章 建築士制度

1 建築士法の改正

  • 建築士として適正な設計業務をおこなうために、改正建築士法の遵守が大切です!
  • 常に現行法令を理解し、社会の信頼に応える職責を果たしましょう!

 建築物は、私たちが生活したり生産活動を営むための基礎であり、社会基盤を構成する重要な要素です。地震や台風などの自然災害や火災などに備えた防災対策はもちろんのこと、省エネルギーやバリアフリー対策、シックハウス対策、さらには都市計画法の遵守や景観面に対する配慮が求められるなど、安全で快適な文化的生活を保障するための建築物に求められる性能は多岐にわたります。
 これらを確保するためには、高度な知識と技術を駆使して建築設計及び工事監理を行うことが不可欠であることから、その能力を認証する制度が創設されました。建築士の資格がそれであり、建築士法において、建築物の設計、工事監理に関わる一連の業務を独占する権利が与えられています。建築物を設計、工事監理できるのは建築士でなければならないとされ、業として建築物を設計、工事監理するサービスを提供するためには、建築士の資格を持った者が管理する建築士事務所でなければならないとされています。
 建築士には、常に新たな技術を習得して、複雑化・高度化する建築物の技術進歩に対応するための努力義務(自己研鑽)と高い倫理観(品位)が求められています。

2 新しい建築士制度

  • 一定規模以上の建築物の設計には高度な専門能力を有する建築士の関与が必要です!
  • 建築士事務所に属する建築士には定期的な講習の受講が義務づけられました!
  • 委託契約締結前に重要事項を説明する義務があります!
  • 設計又は工事監理業務の再委託は制限されます!

 構造計算書偽装事件の再発防止のため、背景となった従来の建築士制度を調査・分析し、課題を整理したところ、次のことが明らかになりました。

建築士の資質・能力不足

 構造設計や設備設計の業務内容の高度化に伴い、元請建築士がこうした専門別の業務を理解して指示し、チェックできるだけの能力が必要となっているにもかかわらず、能力が不足しているケースがあるなど、建築士の資質・能力の不足が見られること

建築設計の専門分化による責任の不明確化

 建築技術の高度化に伴い、構造や設備など得意分野ごとの分業化が進むなかで、設計業務そのものを再委託しているにもかかわらず、納品される設計図書には元請建築士のみが記名押印するなど、建築士の責任分担が不明確になっていること

建築士事務所の業務実施体制の重層化

 再委託などにより、設計等の業務が重層化しているなかで、業務を再委託している建築士の情報を正確に把握していないなど、業務実施体制が適切に管理されていないケースが見られること

 これら建築士制度が抱えるさまざまな課題を踏まえて、平成18年12月20日に「建築士法等の一部を改正する法律」(改正建築士法)が公布され、建築士の資質・能力の向上、高度な専門能力をもつ建築士による設計、設計・工事監理業務の適正化と消費者への情報開示などを図り、建築物の安全性の確保を図るための新しい建築士制度が実施されました(平成20年11月28日施行)。
 改正建築士法では、建築物の質の向上に寄与し、公正かつ誠実にその業務を行うために、建築士や建築士事務所に関する責務が規定されています。

(1)建築士の資質・能力の向上

定期講習の義務づけ

 設計・工事監理等の業務を「業」として行う建築士は、業務を実施するのに必要な能力を確実に身につけておく必要があります。そのため、建築士事務所に所属している建築士には3年ごとに定期講習を受講することが義務づけられました。建築士事務所における業務内容にかかわらず、所属している建築士は定期講習を受講しなければなりません。
 建築士定期講習の受講期限は、直近の定期講習修了日の翌年度の開始日(4月1日)から3年以内です。したがって、建築士事務所に所属している建築士で、平成23年度以前に開催された定期講習を受講された方は、平成26年度中に開催される定期講習を受講しなければなりません。なお、過去3ケ年度以内に建築士事務所に所属することとなった建築士の方で、定期講習を過去に受講したことのない方は、遅滞なく受講することが義務づけられていますから注意が必要です。
 詳しくは建築士法施行規則第17条の37に規定されています。

 ※「新しい建築士制度について」((一社)新・建築士制度普及協会のホームページ)<外部リンク>に講習予定が掲載されています。

建築士試験の受験資格要件(学歴要件と実務経験要件)の見直し

 建築士試験の受験資格である学歴要件が、「所定の学科卒業」から「国土交通大臣が指定する建築に関する科目を修めて卒業」に変更されました。
 また、実務経験要件は、設計・工事監理に関する実務、建築工事の指導監督に関する実務、建築一式工事の施工の技術上の工事監理に関する実務、建築確認・検査等に関する実務など、「設計・工事監理に資する実務」に限定されています。

(2)高度な専門能力を持つ建築士による設計(構造設計・設備設計)

構造設計一級建築士・設備設計一級建築士制度の創設

 新たに高度な構造設計・設備設計の実務能力や専門能力を身につけた構造設計一級建築士と設備設計一級建築士の資格が創設されました。一級建築士として5年以上、構造設計・設備設計に従事した後、構造設計一級建築士は3日間、設備設計一級建築士の場合は4日間の講習を受け、最終的に修了考査に合格することでこれらの資格を取得することができます。
 構造設計一級建築士・設備設計一級建築士は、一級建築士定期講習とは別に、構造設計一級建築士定期講習・設備設計一級建築士定期講習を3年ごとに受ける必要があります。

一定の建築物に対する法適合チェックの義務づけ

 高度な専門能力を必要とする一定の建築物の構造設計(建築士法第3条第1項に定める建築物のうち建築基準法第20条第1号、第2号に該当する建築物の構造設計)・設備設計(3階建て以上で床面積が5,000平方メートルを超える建築物の設備設計)は、構造設計一級建築士・設備設計一級建築士の関与が義務づけられています。
 関与とは、構造設計一級建築士・設備設計一級建築士が自ら設計すること、または他の一級建築士が行った建築物の構造設計・設備設計が法律で定められた基準を満たしているかどうか確認することをいいます。

(3)設計・工事監理業務の適正化と消費者への情報開示

建築士事務所を管理する管理建築士の要件を強化

 建築士として3年間の実務経験を積んだ後、管理建築士講習を受講・修了しなければ、建築士事務所を管理し、技術的な総括をする管理建築士にはなれなくなりました。
 管理建築士講習では、建築士法などの関係法令、業務の進め方や経営管理、紛争防止などに関する講義ののち、修了考査が実施され、及第点に達しなかった場合は再受講が必要となります。

管理建築士などによる重要事項説明の義務づけ

 建築士事務所の開設者は、管理建築士等に、設計・工事監理契約を締結する前に、あらかじめ委託者に対して重要事項を説明させることが義務づけられています。
 重要事項とは、作成する設計図書の種類、工事と設計図書との照合方法、工事監理の実施状況に関する報告方法、担当する建築士の氏名、報酬の額や支払いの時期、契約の解除に関する事項などです。

再委託の制限

 委託者が許諾しても、建築士事務所以外に設計・工事監理の再委託を行うことは禁止されています。また、3階建て以上で床面積が1,000平方メートル以上の共同住宅では、委託者が許諾しても、他の建築士事務所に設計・工事監理を一括再委託(いわゆる丸投げ)することは禁止されています。

建築士名簿の閲覧、顔写真入りの携帯用免許証の交付

 A4サイズの免許証が顔写真入りのカード型免許証明書(携帯用)に変更できるようになっています。
 また、消費者等へは、情報開示を目的として建築士名簿の閲覧ができるようになっています。
 建築士・建築士事務所などの登録・閲覧業務を行う指定法人制度が創設され、これまで国土交通省が実施していた業務は公益社団法人日本建築士会連合会(中央指定登録機関)が、群馬県が実施していた業務は(一社)群馬建築士会(県指定登録機関)及び(一社)群馬県建築士事務所協会(県指定事務所登録機関)が実施しています。建築士名簿は、これらの指定登録機関で閲覧できます。

(4)団体による自律的な監督体制の確立

 建築士会、建築士会連合会、建築士事務所協会、建築士事務所協会連合会が建築士法に位置づけられ、苦情の解決や研修などによる自律的な監督体制の確立が明文化されています。

第2章 ヒヤリハット

1 建築士のヒヤリハット

(1)建築士の業務で注意すること

建築士の免許証を所持していますか

 既に届け出ている住所地や業務の種別、勤務先の名称等に変更があつたときは、30日以内に(一社)群馬建築士会に届け出なければなりません。
 万一、亡失又は汚損した場合は、遅滞なく再交付を受けてください。なお、亡失による再交付申請後、失ったはずの免許証を発見した場合は、発見した日から10日以内に返納する必要があります。
 ※建築士免許証を原本で確認してもらえるよう、A4判の免許証を携帯型(カード型)免許証明書に変更できます。A4判免許証の原本は、希望により無効印を押印して返却しています(ラミネート加工等で紙面上に無効印を押印できない場合は返却できません)。

定期講習の受講を忘れていませんか

 建築士事務所に所属するすべての建築士は、業務内容にかかわらず3年毎に法定登録講習機関が行う定期講習を受けなければなりません。
 受講年度の翌年度の開始日が起算日ですので、受講期限となる年度の早いうちに受講するよう、登録講習機関の講習開催予定を確認してください。
 建築士定期講習を未受講のまま、建築士が所属している場合、建築士及び建築士事務所は、懲戒処分となることがあります。

非建築士に対する名義貸しは断っていますか

 「絶対に迷惑を掛けないから名前だけ貸してもらえないか?」

 いつも世話になっている取引会社の社長から頼まれても、名義貸しは絶対に断りましょう。資格のない方へ名義を貸したり、工事監理を行う意志が無いのに確認申請書の工事監理者欄に氏名を記入すれば、建築士法違反となります。
 建築士でない方に軽い気持ちで名前を貸すことは、ひいては建築士の職能を汚すこととなり、他の多くの建築士に迷惑を掛けることになりますので絶対にやめましょう。

関係法令の遵守に努めていますか

 「検査が終われば手すりは取りましょう?」

 違反行為を指示することは建築士にあるまじき行為です。例え委託者が希望したとしても、建築関係法令等に違反する行為を指示したり、ただ相談に応じるだけでも、法律で明確に禁止されています。
 法令及び実務に精通し、公正かつ誠実に業務を行う義務を負う建築士として、国民の信頼を無にする行為は絶対にやめましょう。

建築士としての資質向上に努めていますか

 「建築確認がやっと通りました?」

 建築基準法は、国民の生命、健康及び財産を保護して公共福祉を増進させるため、建築物の敷地、構造、設備及び用途の最低基準を定めたものです。生命・財産を守り健康を害さないための最低基準なのです。
 建築に関する専門家として信頼を寄せた委託者に対して、最低基準をクリアすることだけが目的では誠意を尽くしたとは言い難いと思います。法令を遵守するとともに、常に新しい知識や技術を研鑽し、経済的かつ効率的な設計に心がけたいものです。
 計画された場所を末永く専有する建築物は、私有財産であるとともに社会的な財産でもあります。建築主に愛着を持っていつまでも大切にしてもらうとともに、地球環境への配慮や周辺景観と調和した計画などについても、専門家の見地でも助言するよう心がけたいものです。

建築確認等の申請前に図書を精査していますか

 建築確認審査を速やかに行うために、申請手続きの円滑化の運用改善が行われ、図書の簡素化や軽微な変更の対象の明確化が図られています。確認申請に伴う事前審査も充分な移行期間を終了したことから、適宜廃止することにより適確かつ迅速な審査事務に集中すべきとされています。
 建築確認審査において散見される計算間違いや図面相互の齟齬、記載すべき事項の欠如など、充分に確認すれば防げる指摘により、特定行政庁が処理すべき他の審査対象建築物の速やかな審査が阻害される恐れがあります。
 建築士があらかじめ関係法令を照査し、適切な申請書類を作成することで建築行政の迅速化、円滑化が期待されます。申請前には充分に図書を精査しましょう。

工事監理の重要性についての理解を求めていますか

工事監理とは、建築主の立場に立って建築工事を設計図書と照合し、工事が設計図書のとおりに実施されているかどうかを確認することです。建築物の安全性等を確保するためには、工事監理が確実に実施されなければなりません。建築基準法においては、工事監理者を定めなければならないとしています。また、中間検査や完了検査の申請の際には申請書に工事監理の状況の報告を記載しなければならないこととなっています。
 建築士は建築主に対して、工事監理の重要性について充分に説明を行い、業務内容を理解してもらわなくてはなりません。

建築士としての信用や品位を失墜させていませんか

 建築関係法令に違反する行為以外であっても、建築士としての信用や品位を害するような行為も禁止されています。故意に関係法令の規程に違反して設計を行った場合は、懲戒処分だけでなく委託者から損害賠償を請求されることもあります。
 一人の建築士が社会に対して行った不誠実な行為は、建築士資格全体の信用を傷つけることになることを肝に銘じて、職責を全うしましょう。

(2)善管注意義務

 設計者は専門の資格者であり、高度の専門的知識によって独占業務として設計、工事監理業務を行っているので、一般的に要求される以上の高度な注意義務が課されます。
善良な管理者としての注意義務のことを善管注意義務といいます。
 建築士として業務を行う場合は、契約に基づく建築関係法令に適合した設計、監理業務を実施することはもちろんのこと、専門的見地から予測可能な注意事項についても説明義務を負うことになります。建築主等からの希望や要求に対し、専門的な知識を駆使してその実現に努めるとともに、不合理な点があれば適切に指摘し、内容説明を行う義務があることに注意しましょう。
 建築物の設計等の業務委託契約においては、契約上の義務のみならず、対象外とした事項であっても、善管注意義務に故意又は過失により違反した場合は、発注者に対して債務不履行責任(賠償責任)を負わなければならないとされています。

2 建築士事務所のヒヤリハット

(1)建築士事務所登録(更新)について注意すること

登録更新は忘れずに行っていますか

 建築士事務所の登録有効期間は5年間です。
 建築物の設計図や工事監理により報酬を得る場合は、建築士事務所の登録が必要です。有効期間の満了後も引き続き業務をおこなう場合は、更新の登録を忘れずに行ってください。建築士事務所の更新の登録を受けようとする場合は、有効期間満了日の30日前までに手続きをしなければなりません。
 有効期間満了前までに更新の手続きがなされない場合は、登録は抹消となります。無登録により業務をおこなった場合は、建築士法違反となります。

管理建築士は専任となっていますか

 管理建築士は、登録講習機関が行う管理建築士講習の課程を修了していなければなりません。
 管理建築士は建築士事務所に専任でなければなりません。建築士事務所が業務を行っている間は、原則として事務所に常勤し、専ら事務所を管理する必要があります。
 したがって、次のような場合、登録の取り消し等の監督処分の対象となるので注意してください。

  • 複数の事務所の管理建築士を兼ねている
  • 管理建築士が他の事務所の所属建築士となっている
  • 管理建築士が他の職業を兼ねている
  • 専任の管理建築士がいない など

(2)建築士事務所の業務を実施する際に注意すること

標識を掲示していますか

 開設者は、公衆の見やすい場所に建築士事務所の名称、登録番号、開設者氏名、管理建築士氏名・番号、登録有効期限を示す標識を掲示しなければなりません(改正法により、登録の有効期間に関する事項を記載することが追加されています)。
 未掲示の場合には、業務停止など監督処分の対象となるので必ず掲示してください。

帳簿を作成し保存していますか

 開設者は、建築士事務所の業務に関する事項で、契約相手方、契約の種類及び概要、報酬額等を記載した帳簿を備えて保存しなければなりません。保存期間は、各事業年度末の翌日から起算して15年間です。
 帳簿の不作成、未保存の場合、業務停止など監督処分の対象となるので注意してください。

設計図書を保存していますか

 開設者は、所属建築士が建築士事務所の業務として作成した設計図書のうち、配置図、各階平面図、二面以上の立面図及び二面以上の断面図等並びに工事監理報告書を保存しなければなりません。保存期間は、作成日から起算して15年間です。
 設計図書は、委託者に納品した設計図書との同一性を担保する観点から、建築士の記名及び押印がなされたものである必要があります。書類の保管場所などの都合上、建築士の記名及び押印がなされた設計図書をマイクロフィルム化して保存することは容認されていました。建築士の記名及び押印がなされた設計図書をスキャナーで読み込み、書き込みや修正ができないように処理したうえで保存することも容認されると考えられます。
 図書未保存の場合、業務停止など監督処分の対象となるので注意してください。

書類を閲覧できるようにしていますか

 開設者は、事務所の概要や業務実績など所定の書式により書類作成し、設計等を委託しようとする方の求めに応じて閲覧できるようにしなくてはなりません。書式は、改正法施行規則で定められ、各事業年度経過ごと3ヶ月以内に作成し、3年間備え置く必要があります。
 書類の虚偽記入や閲覧の不備がある場合、業務停止など監督処分の対象となるので注意してください。

業務報告書を遅滞なく提出していますか

 開設者は、事業年度毎に、所定の書式により設計等の業務に関する報告書を作成し、各事業年度末から3ヶ月以内に(一社)群馬県建築士事務所協会(県指定事務所登録機関)に提出しなければなりません。過年度分については、平成19年6月20日以降に開始された事業年度に係る報告書から適用されています。
 設計等の業務に関する報告義務に違反した場合、業務停止など監督処分の対象となります。業務実績が無い場合でも、年1回必ず報告を行う義務がありますので注意してください。

無登録業務や無登録の建築士に設計等の業務を依頼していませんか

 設計等を業務として行う場合は建築士事務所の登録が必要です。他人の求めに応じて設計等の業務を行うことは、直接報酬の授受が無くても社会通念として業と見なせるものですから認められません。無登録で建築士を使用して設計等を業として行うことも禁止されています。
 また、再委託の制限として、委託者の許諾を得ていても、建築士事務所の登録をしていない者に再委託することは禁止されています。
 無登録業務、再委託の制限に違反した場合、懲戒処分及び監督処分の対象となるので注意してください。

【追記】 設計業務の委託者とエンドユーザーが異なる共同住宅について
 分譲マンションのように委託者とエンドユーザーが異なり、エンドユーザーが多数に及ぶ共同住宅(階数3以上かつ床面積の合計1千平方メートル以上)では、委託者の許諾の有無を問わず設計・工事監理の業務の一括再委託が禁止されています。エンドユーザーは再委託の事実を知ることが困難で、かつ欠陥等があった場合に直接不利益を被ることになるので明確に禁止することが規定されています。

事務所の名義を他者に貸していませんか

 建築士事務所の名義を貸して、他人に建築士事務所の業務を営ませてはいけません。設計、工事監理業務を営む意志が無く他者に業務を行ってもらうことなど、名義貸しは委託者を裏切る禁止行為です。
 業務を行わないこととした場合や継続し得ない状況になった場合などは、30日以内に廃業等の届出をしなければなりません。設計や工事監理等を委託する者の保護等を図るため、早期に登録を抹消しましょう。

(3)業務委託契約で忘れてはならないこと

重要事項の説明を行っていますか

 建築士事務所に設計・工事監理の業務を委託する場合は、委託者が業務の具体的内容を十分に理解し、確認した上で契約をすることが、のちの紛争の防止等を図るうえでとても重要です。
 そのため、建築士の独占業務か否かや、建築確認申請の対象が否か、主として調査・企画業務であるかどうかなどにかかわらず、設計又は工事監理を含んで受託することとなる場合には、開設者は、契約前に管理建築士等から書面を交付して、必ず重要事項を説明させなければなりません。
 説明は、委託者が業務内容等を理解し、契約を締結するかどうか判断材料とすることが目的ですから、説明時点で必ずしも契約内容と同一になるとは限りませんが、できるだけ締結する内容に沿ったものとなるよう努めることが適切です。
 管理建築士等とは、管理建築士又は総括的責任を負って業務を担当することとなる当該建築士事務所の所属建築士のこととされています。説明時には、管理建築士等の免許証の原本又は免許証明書を提示しなければなりません。
 重要事項の説明義務に違反した場合、業務停止など監督処分の対象となるので注意してください。
 重要事項の説明に関しては、新建築士制度普及協会のリーフレットなどがありますので参考としてください。

書面を交付していますか

 開設者は、委託者等と業務の委託契約を締結したときは、遅延なく所定の事項を記載した書面を交付しなければなりません(所定の事項が全て記載された契約書があれば別途交付する必要はありません)。設計や工事監理業務の契約にあたっては、建設大臣の定めた報酬の基準を用いたり、建築士事務所協会等の関係団体が標準契約約款を整備しているので活用することができます。
 交付義務に違反した場合、業務停止など監督処分の対象となるので注意してください。

工事監理報告を行っていますか

 建築士は、工事監理を終了したときは、直ちに所定の書式により委託者に報告しなければなりません。
 報告義務に違反した場合、業務停止など監督処分の対象となるので注意してください。

(4)業務管理で大切なこと

著作権に留意していますか

 著作権は登録を必要とせず、設計図書や建築物が創作活動により作成されれば、その個人や法人が著作者としての権利を取得します。法人等の業務に従事する者が職務上作成する著作物は、作成時における契約や勤務規則その他に別段の定めが無い限り、著作者は法人等とされています。
 著作者には、未公表の著作物を公表する権利、氏名を表示する権利、意に反する著作物の変更等を受けない同一性の保持の権利を人格権として有し、その他複製権、展示権、頒布権、譲渡権、貸与権などが著作権に含まれているとされます。
 同一性の保持の権利に関しては、建築物について特に例外が規定され、増改築、修繕又は模様替えによる改変は適用されないこととされています(著作権法第20条第2項)。しかし、建築士法において、他の建築士が設計した図書の修正には原則として原作者の承諾が必要(建築士法第19条)としており、無断変更の場合は著作権に照らし注意する必要があります。
 設計業務では、既往の資料を用いる場合も多いので、様々な著作権への配慮が求められます。また、自らの著作物の扱いや外注先との取り決めなどに配慮することが大切です。

個人情報の漏えいに注意していますか

 建築士事務所の業務では、個人や企業の内部情報を知り得る立場となる場合が多く、個人情報の第三者への流出を禁じる個人情報保護法や企業秘密の不正取得・開示等を禁じた不正競争防止法、インサイダー取引等を禁じた金融商品取引等等に照らして、不正行為が生じないよう業務管理を行う必要があります。
 個人情報保護法の義務規定は多くの場合、建築士事務所には及びませんが、民法上の債務不履行責任や不法行為を負うことがあります。法人の設備投資に関する企業秘密などが漏えいすればインサイダー取引に発展する可能性もあります。設計の打合せやコミュニケーションで得られる家族構成や建築主の職業・年収などの個人の情報や企業の情報は、すべて秘匿され保護されなければならない情報であり、守秘義務が生じていると認識しましょう。
 個人情報の漏えい対策としては、所員のみならず下請会社からの漏えいにも注意する必要があります。個人情報保護法に即した情報管理教育を行うことが大切です。
 また、現場見学会などで、来訪者に住所や氏名の記載を求めるような場合は、「個人情報の取得」に該当するので利用目的を明示する必要があります。これらのやり取りには、原則として各個人の同意が必要となるので、常に注意と適正な対応が必要となることを認識する必要があります。

(5)建築士事務所の立入検査への協力

立入指導の実施

 依頼主が安心して建築士事務所に業務委託を行えるよう、建築士法の規定(第26条の2)に基づき、建築士事務所の開設者若しくは管理建築士に必要な報告を求めたり、県の職員が建築士事務所に立ち入って、図書の保存状況等の検査を行っています。

立入検査の内容

 立入検査では、次の内容を始めとする建築士事務所の状況を検査していますのでご協力願います。
 なお、検査の結果、指導の必要があると認められる建築士事務所には、是正指導を行う場合もあります。重大な違反等は懲戒処分の対象となる可能性がありますのでご注意ください。

  • 設計図書への記名押印等の状況(建築士法第20条第1項)
  • 建築士事務所登録事項変更届の届出状況(建築士法第23条の5)
  • 設計等の業務に関する報告書の提出状況(建築士法第23条の6)
  • 帳簿の備付及び図書の保存状況(建築士法第24条の4)など

【注意】
 建築士事務所の状況をたえず的確に把握することで、適切な建築士行政を行うことを目的として規定されたものですから、正当な理由がなくて拒む等の行為をすると罰せられることがあります。

第3章 登録等の手続き

1 建築士登録等の手続き

(1)手続きを行う機関

一級建築士又は構造設計一級建築士、設備設計一級建築士の方

 国土交通大臣は、建築士法の規定に基づき、中央指定登録機関として(公社)日本建築士会連合会をを指定しています(登録申請等の受付窓口は都道府県の建築士会)。群馬県にお住まいの一級又は構造設計、設備設計一級建築士の方は、登録事項等に諸手続が必要となった場合、該当する書類を(一社)群馬建築士会に提出してください。
 様式等については(一社)群馬建築士会に問い合わせるか、同会のホームページにリンクされている「一級建築士登録および閲覧について」((公社)日本建築士連合会のホームページ)<外部リンク>からダウンロードしてください。

二級建築士又は木造建築士の方

 群馬県では、建築士法の規定に基づき、群馬県指定登録機関として(一社)群馬建築士会を指定しています。群馬県で二級又は木造建築士の免許を取得された方は、登録事項等に諸手続が必要となった場合、該当する書類を(一社)群馬建築士会に提出してください。
 様式等については、(一社)群馬建築士会のホームページ<外部リンク>からダウンロードしてください。

(2)登録事項の変更

 建築士の氏名、性別に変更があった場合、30日以内に登録事項変更届を提出してください(手数料要)。

【携帯カード型免許証への変更希望】
 賞状型から顔写真入り携帯カード型への変更を希望する場合は、登録事項変更届を提出してください。その際、変更理由欄の「2.カード型希望」に○印を付けて下さい。

(3)免許証明書の再交付

 建築士免許証又は免許証明書を汚損又は亡失した場合は、遅滞なく免許証明書再交付申請書を提出してください(手数料要)。

【亡失(紛失)した免許証明書等を発見した場合】
 再交付申請後、失った免許証明書等を発見した場合は、発見した日から10日以内に必ず免許証明書等を返納して下さい。

(4)住所等の届出

 下記の事項に変更があった場合、30日以内に住所等の届出を提出してください。

  1. 住所
  2. 建築に関する業務に従事する者にあっては、その業務の種別並びに勤務先の名称(建築士事務所に勤務する方は、その名称及び開設者の氏名)及び所在地

(5)免許の取消し

 建築士が一身上の都合により免許の取消を申請する場合は、免許取消申請書を提出して下さい。

(6)死亡等の届出

  1. 建築士が死亡した場合、相続人は、死亡の事実を知った日から30日以内に死亡届を提出して下さい。
  2. 建築士が失踪(そう)宣告を受けた場合、戸籍法による失踪(そう)の届出義務者は、失踪(そう)宣告の日から30日以内に以下の失踪(そう)宣告届を提出して下さい。
  3. 建築士が後見開始又は保佐開始の審判を受けた場合、それぞれ成年後見人又は保佐人は、その審判の日から30日以内に後見開始(保佐開始)審判届を提出して下さい。

(7)その他必要に応じて行う申請又は届出

  • 建築士法第7条第3号又は第4号に該当するに至った旨の届出
  • 建築士免許登録証明申請(手数料要)

2 建築士事務所登録等の手続き

(1)手続きを行う機関

 群馬県では、建築士法の規定に基づき、群馬県指定事務所登録機関として(一社)群馬県建築士事務所協会を指定しています。群馬県に登録をしている建築士事務所は、登録事項等に諸手続が必要となった場合、該当する書類を(一社)群馬県建築士事務所協会に提出してください。
 様式等については、(一社)群馬県建築士事務所協会のホームページ<外部リンク>からダウンロードしてください。

(2)登録の更新

 建築士事務所登録の有効期間は5年間です。
 登録を更新する場合は、有効期間満了の30日前までに建築士事務所登録申請書を提出してください(手数料要)。
 (一社)群馬県建築士事務所協会では満了の2ヶ月前から受付可能です。

(3)登録事項の変更

 下記の事項に変更があった場合、2週間以内に登録事項変更届を提出してください。

  1. 建築士事務所の名称、所在地
  2. 登録申請者の氏名(個人登録の場合)
  3. 法人名称、役員名称(法人登録の場合)
  4. 管理建築士
新規登録が必要となる変更

 次の変更を行う場合には、新規登録が必要となるので、廃業届と建築士事務所登録申請書を提出することになります。

  • 事務所の級区分の変更
  • 「個人登録から法人登録」又は「法人登録から個人登録」の変更

(4)廃業の届出

 建築士事務所の開設者が次のいずれかに該当することとなった場合、30日以内に廃業届を提出してください。

  1. 開設者が業務を廃止(届出者:開設者であった者)
  2. 個人登録の開設者が死亡(同:相続人)
  3. 開設者に破産手続開始の決定(同;破産管財人)
  4. 法人が合併により解散(同;役員であった者)
  5. 法人が破産手続開始の決定又は合併以外の事由で解散(同:清算人)

(5)その他必要に応じて行う申請又は届出

  • 建築士事務所登録証明申請(手数料要)

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