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尾瀬の自然保護
尾瀬は、高山地帯に位置し、独特の地形や気象により900種以上の植物やトンボやチョウなどの昆虫、鳥類や哺乳類などの多種多様な動物が生息しています。尾瀬特有のものも多く見られ、学術的価値も非常に高いことから、国立公園特別保護地区、文化財特別天然記念物、ラムサール条約湿地として厳重に保護されています。
しかし、尾瀬を訪れる人々が増加するにしたがい、踏み付けによる湿原や登山道周辺の裸地化、汚水等による水質や水生生物、植生の改変、移入植物の進入等、生態系に及ぼす影響が懸念されています。近年では、ニホンジカによる湿原や林内の食害や踏み荒らしも問題となってきました。
そこで、県では昭和41年から、これら貴重な自然の保護を図るため、湿原保護の調査研究や在来植物の移植・播種等による湿原回復を実施しています。
至仏山で発見「オゼソウ」
池塘に咲く「オゼコウホネ」
尾瀬保護専門委員
昭和41年度、群馬県教育委員会は荒廃した湿原の回復を行うためアヤメ平および研究見本園で実験的に植物の種子の播種を行いました。この事業をすすめるにあたり、植物生態学、動物学、地質学、入山指導のそれぞれの専門家合計6名を「尾瀬文化財専門指導委員」に委嘱しました。現在は、「尾瀬保護専門委員」と名称を変えましたが、尾瀬の貴重な自然を後世に残すため定期的な調査研究等を行っています。
尾瀬保護専門委員は、現在10名で、専門分野は、動物学・植物学・植物生態学・森林生態学・地質学など多岐にわたります。群馬県尾瀬保全対策事業(平成26年度から特殊植物等保全事業が名称変更)における指導助言及び調査研究を行っています。
水質調査のようす
調査報告書「尾瀬の自然保護」
「尾瀬の自然保護」は、昭和50年度から昭和52年度までの3ヵ年における尾瀬地区での湿原回復作業の調査研究結果を、尾瀬保護専門委員会が中心にまとめ、第1号として発刊したのが始まりです。調査項目は現在まで継続しているもの、単年度のものなど調査期間に差がありますが、50項目以上にも及び、尾瀬の保護を図る上で一つの指針とすることを目的として現地調査が続けられています。平成25年度まで特殊植物等保全事業として実施していましたが、平成26年度から尾瀬保全対策事業と名称変更しています。
「尾瀬の自然保護」掲載項目一覧
調査報告は「植生回復」「生活排水」「動物」「植物」「地質」「気象」などに大別し、翌年度を目処に発行しています。
尾瀬の自然保護掲載項目一覧(1~46号) (PDF:93KB)
報告書「尾瀬の自然保護」
報告書の閲覧について
過去の調査報告書(昭和52年~)は群馬県立自然史博物館ホームページにて公開しております。
尾瀬の自然保護 群馬県尾瀬保全対策事業調査報告書<外部リンク>
尾瀬の自然保護・30年間の取り組み
尾瀬国立公園誕生にともない、これまで30年にわたって発行されてきた「尾瀬の自然保護」を、植生復元・水質・動物・植物等の各調査分野について体系的・時系列的に再編集しました。今までに積み重ねられてきた報告の成果を時間を追って把握することができ、今後の調査において長年の蓄積データと比較が可能になるなど、尾瀬の自然環境保全のために有効活用されることが期待されています。
尾瀬の自然保護 30年間の取り組み目次(PDFファイル:142KB)
尾瀬の自然保護 30年間の取り組み(PDF:45MB)<外部リンク>