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個人情報保護条例に基づく処分に関する審査基準
群馬県個人情報保護条例(平成12年群馬県条例第85号。以下「条例」という。)に基づき実施機関である知事(以下「知事」という。)が行う処分に係る群馬県行政手続条例(平成7年群馬県条例第44号)第5条第1項の規定による審査基準は、次のとおりとする。
平成17年10月19日制定
平成18年 3月 2日改正
平成18年 6月19日改正
平成21年 4月 1日改正
平成28年 4月 1日改正
平成29年 5月30日改正
令和 2 年 4月 1日改正
第1 開示決定等の審査基準
条例第17条の規定に基づく開示又は非開示の決定(以下「開示決定等」という。)は、以下により行う。
1 開示する旨の決定(条例第17条第1項)は、次のいずれかに該当する場合に行う。
- 開示請求に係る個人情報に非開示情報が記録されていない場合
- 開示請求に係る個人情報の一部に非開示情報が記録されている場合であって、当該非開示情報が記録されている部分を容易に区分して除くことができるとき
ただし、この場合には、非開示情報が記録されている部分を除いて開示する。 - 開示情報に係る個人情報に非開示情報が記録されている場合であっても、個人の権利利益を保護するために特に当該個人情報を開示する必要があると認めるとき(条例第14条の2)
2 開示しない旨の決定(条例第17条第2項)は、次のいずれかに該当する場合に行う。
(1)開示請求に係る個人情報に記録されている情報がすべて非開示情報に該当する場合(開示請求に係る個人情報の一部に非開示情報が記録されている場合であって、当該非開示情報が記録されている部分を他の部分と容易に区分して除くことができない場合を含む。)
(2)開示請求に係る個人情報の存在の有無を明らかにするだけで、非開示情報を開示することとなる場合(条例第15条)
(3)開示請求に係る個人情報を知事において保有していない場合
(4)開示請求の対象が、開示請求できる個人情報に該当しない場合
ア 条例第2条第6項に規定する「公文書」に該当しないものに記録されている場合
イ 開示請求の対象が条例第5条の2(統計法第2条第6項に規定する基幹統計調査及び同条第7項に規定する一般統計調査に係る調査票情報に含まれる個人情報等)に該当する場合
ウ 開示請求の対象が条例第29条第1項(県立文書館等において一般の利用に供することを目的として保有されている個人情報等)、第2項(各号刑事事件等に係る個人情報等)又は第3項(他法令の規定により個人情報の開示を受けることができる個人情報)に該当する場合
エ 開示請求の対象が、当該請求者(未成年者若しくは成年被後見人の法定代理人又は本人の委任による代理人が請求者である場合は、当該未成年者、成年被後見人又は本人)の個人情報と認められない場合
オ 開示請求書に条例第16条第1項各号に規定する事項の記載の不備がある場合又は同条第2項に規定する開示請求に係る個人情報の本人(未成年者若しくは成年被後見人の法定代理人又は本人の委任による代理人)であることを示す書類に不備がある場合 ただし、当該不備を補正することができると認められる場合は、原則として、開示請求者に補正を求めるものとする。
(5)開示請求が権利の濫用に当たる場合
この場合において、権利濫用に当たるか否かの判断は、開示請求の態様、開示請求に応じた場合の県の業務への支障等を勘案し、社会通念上妥当と認められる範囲を超えるものであるか否かを個別に判断して行う。県の事務を混乱又は停滞させることを目的とする等開示請求権の本来の目的を著しく逸脱する開示請求は、権利の濫用に当たる。
3 前2項の判断に当たっては、開示請求できる個人情報に該当するかどうかの判断は「第2 開示請求できる個人情報の該当性に関する判断基準」に、開示請求に係る個人情報が非開示情報に該当するかどうかの判断は「第3 非開示情報該当性に関する判断基準」に、部分開示をすべき場合に該当するかどうかの判断は「第4 部分開示に関する判断基準」に、個人情報の存否を明らかにしないで開示請求を拒否すべき場合に該当するかどうかの判断は「第5 個人情報の存否に関する情報に関する判断基準」に、それぞれよる。
4 開示する個人情報に係る個人情報取扱事務の目的(以下「事務の目的」という。)については、事務の目的を本人に明示することにより、本人又は第三者の権利利益を害するおそれ又は県の機関等が行う事務若しくは事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある場合は、通知することを要しない。
第2 開示請求できる個人情報の該当性に関する判断基準
開示請求の対象が、開示請求できる個人情報に該当するかどうかの判断は、以下の基準により行う。
1 「公文書に記録されている自己の個人情報」でなければ開示請求できない。すなわち、開示請求に係る個人情報が文書、図画、電磁的記録等条例第2条第6項で定義される「公文書」に記録されているものでなければならない。
したがって、職員が単に記憶しているに過ぎない場合は、開示請求できる個人情報に該当しない。
2 「公文書」該当性は、次の基準による。
- 「個人に関する情報」とは、個人に関する情報全般を意味する。したがって、個人の属性、人格や私生活に関する情報に限らず、個人の知的創作物に関する情報及び組織体の構成員としての個人の活動に関する情報も含まれる。
- 「職員が職務上作成し、又は取得した」とは、職員が自己の職務の範囲内において作成し、又は取得した場合をいう。
- 「組織的に利用する」とは、作成又は取得に関与した職員個人段階のものではなく、組織としての共用文書の実質を備えた状態、すなわち、組織において、業務上必要なものとして利用又は保存されている状態をいう。
- 「保有している」とは、作成又は取得に関与した職員個人が所持している段階のものではなく、実施機関が業務上の必要から組織として所持している状態にあるものをいう。この「所持」は物を事実上支配している状態をいい、当該文書を文庫等で保管している場合にも、当該文書を事実上支配(当該文書の作成、保存、閲覧・提供、移管・廃棄等の取扱いを判断する権限を有していること。)していれば、「所持」に該当し、保有しているということができる。なお、一時的に文書を借用している場合など、当該文書を支配していると認められない場合には、保有しているとはいえない。
- 官報、白書、新聞、雑誌、書籍その他不特定多数の者に販売することを目的として発行されるものに記録されているものは、「公文書」に該当しない。
- 群馬県公文書等の管理に関する条例(令和2年群馬県条例第15号)第2条第4項に規定する特定歴史公文書等は、「公文書」に該当しない。
- 群馬県立文書館等において、歴史的若しくは文化的な資料又は学術研究用の資料として特別の管理がされているものは、「公文書」に該当しない。
3 法定代理人(特定個人情報にあっては、法定代理人又は本人の委任による代理人)が開示請求する場合を除き、「自己の個人情報」ではない個人情報は、開示請求できる個人情報に該当しない。
4 他の法令又は条例(群馬県情報公開条例(平成12年群馬県条例第83号)を除く。以下「法令等」という。)の規定により開示を受けることができる個人情報は、開示請求できる個人情報に該当しない。
第3 非開示情報該当性に関する判断基準
開示請求に係る個人情報が非開示情報に該当するかどうかの判断は、以下の基準により行う。
なお、当該判断は、開示決定等を行う時点における状況に基づき行う。
1 開示請求者に関する情報(条例第13条第1号)についての判断基準
条例第13条第1号が適用される場合は、開示することが深刻な問題を引き起こす可能性がある場合であり、その運用に当たっては、具体的ケースに即して慎重に判断するものとする。
2 法令等により開示することができない情報(条例第13条第2号)についての判断基準
法令等の定めるところにより又は法律等に基づき従う義務を有する各大臣その他国の機関の指示により開示することができないとされているときとは、次の場合をいうものとする。
- 明文の規定により、本人への開示が禁止されている場合
- 手続の公開が禁止されている調停等の場合
- 個別法により守秘義務が課されている場合
- その他法令等の趣旨、目的から、明らかに本人へ開示することができないと認められる場合
- 法定受託事務における各大臣からの指示(地方自治法第245条の7)等のように、知事の事務の処理に関し各大臣その他国の機関が行う指示であって、法律又はこれに基づく政令の規定により知事が従う義務を有する場合
3 開示請求者以外の個人に関する情報(条例第13条第3号)についての判断基準
(1)開示請求者以外の個人に関する情報(条例第13条第3号本文)について
ア 「個人に関する情報」には、生存する個人に関する情報のほか、死亡した個人に関する情報も含まれる。ただし、事業を営む個人の当該事業に関する情報は、条例第13条第4号の規定により判断する。
イ 「その他の記述等」とは、氏名及び生年月日以外の記述又は個人別に付された番号その他の符号等をいい、映像や音声も、それによって特定の個人を識別できる限りにおいて含まれる。
ウ 照合の対象となる「他の情報」には、その保有者が県の機関である場合のほか、公知の情報や、図書館等の公共施設で一般に入手可能なものなど一般人が通常入手し得る情報が含まれ、特別の調査をすれば入手し得るかもしれないような情報については、通例は「他の情報」に含まれない。しかし、事案によっては、個人の権利利益を保護する観点からは、個人情報の取扱いに当たって、より慎重は判断が求められる場合があり、当該個人を識別するために実施可能と考えられる手段について、その手段を実施するものと考えられる人物が誰であるか等をも視野に入れつつ、合理的な範囲で判断する。
エ 「開示することにより、なお開示請求者以外の個人の権利利益を害するおそれがある」とは、匿名の作文、無記名の個人の著作物等、個人の人格と密接に関連したり、開示すれば財産権その他の個人の正当な利益を害するおそれがあると認められることをいう。
(2)法令等の規定により開示請求者が知ることができる情報等(条例第13条第3号イ)について
ア 「法令等の規定」には、何人に対しても等しく当該情報を開示すること又は公にすることを定めている規定のほか、特定の範囲の者に限り当該情報を開示することを定めている規定が含まれる。
イ 「慣行として」とは、慣習法としての法規範的な根拠を要するものではなく、事実上の慣習として知ることができ、又は知ることが予定されていることで足りる。ただし、当該個人情報と同種の情報について、本人が知ることができた事例があったとしても、それが個別的な事例にとどまる限り、「慣行として」には当たらない。
ウ 「知ることが予定されている」とは、実際には知らされていないが、将来的に知らされることが予定されている場合をいう。なお、「予定」とは将来知らされることが具体的に決定されていることは要しないが、当該情報の性質、利用目的等に照らして通例知らされるべきものと考えられることをいう。
(3)人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、開示することが必要であると認められる情報(条例第13条第3号ロ)について
開示請求者以外の個人に関する個人情報について、非開示にすることにより保護される開示請求者以外の個人の権利利益よりも、開示請求者を含む人の生命、健康等の利益を保護することの必要性が上回ると認められる場合には、当該情報は開示する。現実に、人の生命、健康等に被害が発生している場合に限らず、将来これらが侵害される蓋然性が高い場合も含まれる。
この比較衡量に当たっては、個人の権利利益には様々なものであり、また、人の生命、健康、生活又は財産の保護にも、保護すべき権利利益の程度に差があることから、個別の事案に応じた慎重な検討を行うものとする。
(4)公務員等の職務の遂行に関する情報(条例第13条第3号ハ)について
ア 「公務員等」とは、広く公務遂行を担任する者を含むものであり、一般職か特別職か、常勤か非常勤かを問わず、国及び地方公共団体の職員のほか、国務大臣、国会議員、裁判官、防衛庁職員、地方議会議員、委員会(審議会等を含む。)の構成員の職で臨時又は非常勤の者等も含む。
イ 「職務の遂行に係る情報」とは、公務員等が行政機関その他の国の機関、独立行政法人等、地方公共団体の機関又は地方独立行政法人の一員として、その担任する職務を遂行する場合における当該活動についての情報を意味する。例えば、行政処分その他の公権力の行使に係る情報、職務としての会議への出席、発言、その他の事実行為に関する情報がこれに含まれる。
ウ この情報は、具体的な職務の遂行と直接の関連を有する情報に限られ、例えば、公務員等の情報であっても、職員の人事管理上保有する健康情報、休暇情報等は管理される職員の個人情報として保護される必要がある。
エ 「そのおそれがあると認めて実施機関が定める職にある公務員の氏名」は、職務の性質上、個人の権利利益を害するおそれが強いと実施機関が判断した職にある公務員を保護するために設けたものである。
4 法人等に関する情報又は開示請求者以外の事業を営む個人の当該事業に関する情報(条例第13条第4号)についての判断基準
(1)法人等に関する情報又は開示請求者以外の事業を営む個人の当該事業に関する情報(条例第13条第4号本文)について
ア 「法人等」には、株式会社等の商法上の会社、一般財団(社団)法人、一般財団(社団)法人、学校法人、宗教法人等の民間の法人のほか、政治団体、外国法人や権利能力なき社団等も含まれる。ただし、国、地方公共団体、独立行政法人等及び地方独立行政法人は、条例第13条第4号の対象から除かれており、その事務又は事業に係る情報は、同条第7号の規定に基づき判断する。
イ 「法人等に関する情報」とは、法人等の組織及び事業に関する情報のほか、法人等の権利利益に関する情報等法人等と関連性を有する情報を意味する。なお、法人等の構成員に関する情報は、法人等に関する情報であると同時に、構成員各個人に関する情報でもあり、条例第13条第3号の非開示情報に当たるかどうかも検討する必要がある。
ウ 「事業を営む個人の当該事業に関する情報」は、事業に関する情報であるので、法人等に関する情報と同様の要件により、事業を営む上での正当な利益等について非開示情報該当性を判断する。
(2)人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、開示することが必要であると認められる情報(条例第13条第4号ただし書)について
当該情報を開示することにより保護される人の生命、健康等の利益と、これを開示しないことにより保護される法人等又は事業を営む個人の権利利益とを比較衡量し、前者の利益を保護することの必要性が上回ると認められる場合は、当該情報は条例第13条第4号の非開示情報に該当しない。現実に人の生命、健康等に被害が発生している場合に限らず、将来これらが侵害される蓋然性が高い場合も含まれる。
なお、法人等又は事業を営む個人の事業活動と人の生命、健康等に対する危害などとの明確な因果関係が確認されなくても、現実に人の生命、健康等に対する被害等の発生が予想される場合もあり得る。
(3)当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれ(条例第13条第4号イ)について
ア 「権利」とは、信教の自由、集会・結社の自由、学問の自由、財産権等法的保護に値する権利一切をいい、「競争上の地位」とは、法人等又は事業を営む個人の公正な競争関係における地位をいう。また、「その他正当な利益」には、ノウハウ、信用等法人等又は事業を営む個人の運営上の地位が広く含まれる。
イ 「害するおそれ」があるかどうかの具体的な判断に当たっては、開示請求者と当該法人等又は当該事業を営む個人との関係、事業活動における当該個人情報の位置付け、事業の性格、規模等及び開示した場合の影響等にも十分留意し、個別に判断するものとする。
なお、この「おそれ」の判断に当たっては、単なる確率的な可能性ではなく、法的保護に値する蓋然性が求められる。
(4)任意に提供された情報(条例第13条第4号ロ)について
ア 法人等又は事業を営む個人から開示しないとの条件の下に任意に提供された情報については、当該条件が合理的なものと認められる限り、非開示情報とする。
イ 「実施機関の要請を受けて、開示しないとの条件で任意に提供されたもの」には、知事の要請を受けずに、法人等又は事業を営む個人から提供された情報は含まれない。ただし、知事の要請を受けずに法人等又は事業を営む個人から提供の申出があった情報であっても、提供に先立ち、法人等又は事業を営む個人の側から非開示の条件が提示され知事がこれを受諾した上で提供を受けた場合には、含まれる。
ウ 「要請」には、法令等に基づく報告又は提出の命令は含まれないが、知事が報告徴収権限を有する場合でも、当該権限を行使することなく、任意に提出を求めた場合は含まれる。
エ 「開示しない」とは、本条例や情報公開条例に基づく開示請求に対して開示しないことはもちろんであるが、第三者に対して当該情報を提供しないことを意味する。また、特定の行政目的以外の目的には使用しないとの条件で情報の提供を受ける場合も通常含まれる。
オ 「条件」については、知事の側から開示しないとの条件で情報を提供して欲しいと申し入れる場合も、法人等又は事業を営む個人の側から知事の要請があったので情報は提供するが開示しないで欲しいと申し出る場合も含まれるが、いずれの場合も双方の合意により成立するものである。また、条件を設ける方法としては、黙示的なものも含まれる。
カ 「法人等又は個人における通例」とは、当該法人等又は個人の個別具体的な事情ではなく、それらが属する業界における通常の取扱いを意味し、当該法人等又は個人において開示していないことだけでは足りない。
キ 開示しないとの条件を付すことの合理性の判断は、情報の性質に応じ、当該情報の提供当時の諸般の事情を考慮して行うものであるが、必要に応じ、その後の変化も考慮する。開示しないとの条件が付されていても、現に当該情報が公になっていたり、同種の情報が既に開示されているなどの事情がある場合には、条例第13条第4号ロには該当しない。
5 公共の安全等に関する情報(条例第13条第5号)についての判断基準
(1)「犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行」は、「公共の安全と秩序の維持」の例示である。
(2)「犯罪の予防」とは、犯罪の発生を現に防いだり、犯罪の温床を除去する作用をいい、1.警ら活動や特定人の警護又は特定施設や地域の警備によって、犯罪の具体的発生を未然に防ぐという直接的な予防措置のほか、2.犯罪防止についての研究、研修、啓発活動及び地域・職域での民間防犯活動への協力等を通じて将来の犯罪発生を一般的に予防するという間接的な広い範囲の防犯活動がある。
(3)「犯罪の鎮圧」とは、犯罪が正に発生しようとするのを未然に防止したり、犯罪が発生した後において、その拡大を防止し、又は終息させることをいう。
(4)「犯罪の捜査」とは、捜査機関が犯罪があると思料するときに、公訴の提起などのために犯人及び証拠を発見・収集・保全することをいう。犯罪捜査の権限を有する者は、刑事訴訟法によれば、検察官、検察事務官及び司法警察職員であり、司法警察職員には、一般司法警察職員(警察官)と特別司法警察職員(麻薬取締員、漁業監督吏員等)とがある。
(5)「公訴の維持」とは、検察官が裁判所に対し、特定の刑事事件について審判を求める意思表示をすることを内容とする訴訟行為を公訴の提起というが、この提起された公訴の目的を達成するため、終局判決を得るまでに検察官が行う公判廷における主張・立証、公判準備などの活動を指す。
(6)「刑の執行」とは、犯罪に対して科される制裁を刑といい、刑法第1編第2章に規定された死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留、科料、没収、追徴及び労役場留置の刑又は処分を具体的に実施することをいう。保護観察、勾留の執行、保護処分の執行、観護措置の執行、補導処分の執行、監置の執行、過料、訴訟費用、費用賠償及び仮納付金の各裁判の執行、恩赦についても、刑の執行に密接に関連するものでもあることから、開示することによりこれら保護観察等に支障を及ぼし、公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがある情報は、条例第13条第5号に該当する。
(7)「その他の公共の安全と秩序の維持」とは、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持及び刑の執行に代表される刑事法の執行を中心としたものを意味する。刑事訴訟法以外の特別法により、臨検・捜索・差押え、告発等が規定され、犯罪の予防・捜査とも関連し、刑事司法手続に準ずるものと考えられる犯則事件の調査や、犯罪の予防・捜査に密接に関連する破壊的団体(無差別大量殺人行為を行った団体を含む。)の規制、暴力団員による不当な行為の防止、つきまとい等の規制、強制退去手続に関する情報であって、開示することにより、公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあるものは、条例第13条第5号に該当する。
また、開示することにより、テロ等の人の生命、身体、財産等への不法な侵害や、特定の建造物又はシステムへの不法な侵入・破壊を招くおそれがあるなど、犯罪を誘発し、又は犯罪の実行を容易にするおそれがある情報や被疑者・被告人の留置・勾留に関する施設保安に支障を生ずるおそれのある情報も、条例第13条第5号に該当する。
一方、風俗営業等の許可、伝染病予防、食品、環境、薬事等の衛生監視、建築規制、災害警備等の、一般に公にしても犯罪の予防、鎮圧等に支障が生ずるおそれのない行政警察活動に関する情報については、本号ではなく、条例第13条第7号の事務又は事業に関する非開示情報の規定により判断する。
(8)「支障を及ぼすおそれ」とは、公共の安全と秩序を維持する活動の遂行を阻害し、又は効率的に行うことができなくなるおそれをいう。
6 審議、検討等に関する情報(条例第13条第6号)についての判断基準
- 「県の機関」とは、県のすべての機関をいい、執行機関、議会及びこれらの補助機関(職員)のほか、執行機関が設置する附属機関も含むものである。
なお、「国」及び「他の地方公共団体」においても同様の趣旨である。 - 開示請求の対象となる公文書は、決裁、供覧等の手続を終了したものに限られないことから、県の機関、国、独立行政法人等、他の地方公共団体及び地方独立行政法人の内部又は相互間における意思決定前の審議、検討又は協議の段階において作成又は取得された文書であっても、組織的に用いるものとして現に保有していれば対象となる。
開示請求の対象となる公文書の中には、当該機関としての最終的な決定前の事項に関する情報が少なからず含まれていることになるが、このような情報を意思決定前であるということで一律にすべて非開示とすることは、県がその諸活動を説明する責務を全うするという観点からは適当でないので、これらの当該機関の意思決定等への支障が看過し得ない程度である場合に限り、非開示となるものである。 - 「審議、検討又は協議に関する個人情報」には、行政内部における意思決定に至るまでの過程で行われる、審議、検討又は協議に関して作成し、又は取得した個人情報だけでなく、意見調整、打ち合わせ、相談などに関して作成し、又は取得した個人情報も含まれる。
- 「開示することにより、率直な意見の交換又は意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ」とは、開示することで、外部からの圧力や干渉などの影響を受けることにより、率直な意見の交換や意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがある場合を想定したもので、適正な意思決定手続の確保を保護するものである。
- 「不当に県民の間に混乱を生じさせるおそれ」とは、未成熟な情報や事実関係の確認が不十分な情報などを開示することにより、誤解や憶測を招き、不当に県民の間に混乱を生じさせるおそれをいう。適正な意思決定を行うことそのものを保護するのではなく、情報が開示されることによる県民への不当な影響が生じないようにするという趣旨である。
- 「特定の者に不当に利益を与え若しくは不利益を及ぼすおそれ」とは、尚早な時期に、あるいは事実関係の確認が不十分なままで情報を開示することにより、不正な投機を助長するなどして、特定の者に不当に利益を与え又は不利益を及ぼすおそれをいい、事務又は事業の公正な遂行を図るとともに、県民への不当な影響が生じないようにするという趣旨である。
- 「不当に」とは、審議、検討等途中の段階の情報を開示することの公益性を考慮してもなお、適正な意思決定の確保等への支障が看過し得ない程度のものであることを意味する。予想される支障が「不当」なものかどうかの判断は、当該情報の性質に照らし、開示することによる利益と非開示にすることの利益とを比較衡量した上で行われる。
- 審議、検討等に関する情報については、県としての意思決定が行われた後は、一般的には当該意思決定そのものに影響が及ぶことはなくなることから、条例第13条第6号の非開示情報に該当する場合は通常少なくなるものと考えられる。
ただし、当該意思決定が政策決定の一部の構成要素であったり、当該意思決定を前提として次の意思決定が行われるなど、審議、検討等の過程が重層的、連続的な場合には、当該意思決定後であっても、政策全体の意思決定又は他の意思決定に関して条例第13条第6号に該当するかどうか判断する必要である。
また、当該審議、検討等に関する情報が開示されると、審議、検討等が終了し意思決定が行われた後であっても、県民の間に混乱を生じさせたり、将来予定されている同種の審議、検討等に係る意思決定に不当な影響を与えるおそれがある場合は、条例第13条第6号に該当する。
7 事務又は事業に関する情報(条例第13条第7号)についての判断基準
(1)「次に掲げるおそれその他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるとき」(条例第13条第7号本文)
ア 「その他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるとき」とは、当該事務又は事業の目的や内容等に照らし、開示することにより、条例第13条第7号イからヘまでに例示した支障以外に、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある場合をいい、具体的には、次のような場合が該当する。
(ア)開示することにより、当該事務又は事業を実施する意味を喪失する場合
(イ)開示することにより、経費が著しく増大し、又は実施の時期が大幅に遅れるなど、行政が著しく混乱する場合
(ウ)その他、開示することにより、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある場合
イ 「適正な遂行に支障を及ぼすおそれ」とは、実施機関の恣意的判断を許容する趣旨ではなく、各規定の要件の該当性は客観的に判断される必要があり、また、事務又は事業の根拠となる規定・趣旨に照らし、個人の権利利益を保護する観点からの開示の必要性等の種々の利益を衡量した上で「適正な遂行」といえるものであることが求められる。
ウ 「支障」の程度は、名目的なものでは足りず実質的なものが要求され、「おそれ」の程度も単なる確率的な可能性ではなく、法的保護に値する蓋然性があると認められるかどうかにより判断する。
(2)監査、検査、取締り、試験又は租税の賦課若しくは徴収に係る事務に関し、正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為を容易にし、若しくはその発見を困難にするおそれ(条例第13条第7号イ)
ア 「監査」(主として監察的見地から、事務又は事業の執行及び財産の状況の正否を調べること。)、「検査」(法令の執行確保、会計経理の適正確保、物資の規格、等級の証明等のために帳簿書類その他の物件等を調べること。)、「取締り」(行政上の目的による一定の行為の禁止、又は制限について適法、適正な状態を確保すること。)、「試験」(人の知識、能力等又は物の性能等を試すこと。)及び「租税の賦課若しくは徴収」(国又は地方公共団体が、公租公課を特定の人に割り当てて負担させること又は租税その他の収入金を取ること。)に係る事務は、いずれも事実を正確に把握し、その事実に基づいて評価又は判断を加えて、一定の決定を伴うことがあるものである。
イ 「正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為を容易にし、若しくはその発見を困難にするおそれ」とは、一般に公表されていない、監査等の計画やその内容など、いわゆる「手の内」に関する個人情報を開示することにより、正確な事実の把握を困難にしたり、違法又は不当な行為を容易にしたり、その発見を困難にするおそれがある場合をいい、具体的には、次のような場合は非開示とする。また、事後であっても、例えば、監察内容等の詳細についてこれを開示すると今後の法規制を免れる方法を示唆することになるようなものは条例第13条第7号イに該当する。
(ア)事前に開示することにより、適正かつ公正な評価や判断の前提となる事実の把握が困難となるおそれのある場合
(イ)「監査、検査、取締り、試験又は租税の賦課若しくは徴収」の対象となる者の法令違反行為や法令違反に至らないまでも妥当性を欠く行為を助長するおそれがある場合
(ウ)「監査、検査、取締り、試験又は租税の賦課若しくは徴収」の対象となる行為を巧妙に行うことにより正確な事実を隠蔽などするおそれのある場合
(3)「契約、交渉又は争訟に係る事務に関し、県、国、独立行政法人等、他の地方公共団体又は地方独立行政法人の財産上の利益又は当事者としての地位を不当に害するおそれ」(条例第13条第7号ロ)
ア 「契約、交渉又は争訟に係る事務」
(ア)「契約」とは、相手方との意思表示の合致により法律行為を成立させることをいう。
(イ)「交渉」とは、当事者が、対等の立場において相互の利害関係事項に関し一定の結論を得るために協議、調整などの折衝を行うことをいう。
(ウ)「争訟」とは、訴えを起こして争うことをいう。訴訟、行政不服審査法に基づく審査請求等その他の法令に基づく不服申立てがある。
イ 「財産上の利益又は当事者としての地位を不当に害するおそれ」とは、一般に公表されていない、契約等の方針やその内容など、いわゆる「手の内」に関する個人情報を開示することにより、当事者としての財産上の利益や地位を不当に害するおそれがある場合をいい、具体的には、次のような場合が該当する。
(ア)開示することにより、相手方と対等の立場で遂行する当事者としての財産上の利益を不当に侵害するおそれがある場合
(イ)交渉や争訟等の対処方針等に係る個人情報を開示することにより、当事者として認められる地位を不当に害するおそれがある場合
(4)「個人の指導、選考、判定、診断その他の個人に対する評価又は判断を伴う事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれ」(条例第13条第7号ハ)
ア 「個人の指導、選考、判定、診断その他の個人に対する評価又は判断を伴う事務又は事業に関する個人情報」とは、具体的に列挙した指導、選考、判定、診断等に関する個人情報のほか、これらに類する個人に対する評価又は判断を伴う一切の事務又は事業に関する個人情報を含む。
また、県の機関及び国等の機関が行う指導、選考、判定、診断等のほか、民間の法人等が行ったものも含む。
具体的には、次のようなものが該当する。
(ア)個人の学力、資質、能力等の向上又は改善を目的として教育的その他の専門的見地から行う指導上の方針、内容、所見等を記録したもの
(イ)特定の職業、地位等に就く適任者を選考するに当たって、個人の能力、資質、資格等を調査し、その結果に基づき選考した内容を記録したもの
(ウ)個人の資質、適格性等について調査、観察等を行い、その結果に基づき判定した内容を記録したもの
(エ)個人の疾病、健康状態等について専門的な見地から行う診察、検査、評価、判断等の内容を記録したもの
(オ)個人の知識、能力、性格、功績等について専門的な見地から、あるいは一定の基準等により審査、調査等を行い、その結果に基づき判断した内容を記録したもの
イ 「適正な遂行に支障を及ぼすおそれ」とは、開示することにより、個人に対する評価又は判断を伴う事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼす可能性が客観的に認められる場合をいい、これらに該当する可能性がある場合としては、次のようなものがある。
(ア)開示することにより、今後継続して行う本人に対する評価又は判断を伴う事務又は事業を適正に行うことに支障を生ずるおそれがある場合
(イ)開示することにより、今後反復継続して行う本人以外の者に対する評価又は判断を伴う事務又は事業を適正に行うことに支障を生ずるおそれがある場合
(ウ)開示することにより、今後の個人に対する評価又は判断が抽象化、形骸化し、当該事務又は事業を実施する目的及び意義が損なわれるおそれがある場合
(エ)開示することにより、関係者間の信頼関係を損なうおそれがある場合
(5)「調査研究に係る事務に関し、その公正かつ能率的な遂行を不当に阻害するおそれ」(条例第13条第7号ニ)
ア 「調査研究に係る事務」とは、県の機関等において行われる調査、研究をいう。
イ 「公正かつ能率的な遂行を不当に阻害するおそれ」とは、完了した時期などに公表することがあらかじめ予定されている「調査研究に係る事務」のように、適切でない時期に開示すると、公正かつ能率的な事務の遂行を阻害するおそれがある場合をいい、具体的には、次のような場合は非開示となる。
(ア)調査研究の途中段階の個人情報等で、一定の期日以前に開示することにより、特定の者に不当な利益や不利益を及ぼすおそれがある場合
(イ)試行錯誤の段階の個人情報で、開示することにより、自由な発想、創意工夫や研究意欲が不当に妨げられ、減退するなど、能率的な遂行を不当に侵害するおそれがある場合
(6)「人事管理に係る事務に関し、公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれ」(条例第13条第7号ホ)
県又は国若しくは他の地方公共団体の機関等が行う人事管理(職員の任免、懲戒、給与、福利厚生その他職員の身分や能力等の管理に関するものをいう。)の事務は、組織としての維持の観点から行われ、一定の範囲内で当該機関の自律性を有するものである。
これらの事務に関する情報には、勤務評価、人事異動等の人事構想等のように、開示することにより、公正かつ円滑な人事の確保が困難になるおそれがあり、このような情報は非開示となる。
(7)「県、国若しくは他の地方公共団体が経営する企業、独立行政法人等又は地方独立行政法人に係る事業に関し、その企業経営上の正当な利益を害するおそれ」(条例第13条第7号ヘ)
「県又は国若しくは他の地方公共団体が経営する企業」とは、地方公営企業法第2条の適用を受ける企業をいい、法令等又は社会通念に照らし、企業を経営するに当たって有すると考えられる正当な利益が害されるおそれがあるものは非開示とする。具体的な判断に当たっては、事業の性格、内容等を勘案して個別的に判断する必要があり、県又は国等が経営していることに照らし、非開示とする範囲は、第4号で規定している法人等よりも狭くなることがあり得る。
8 代理人による開示請求における本人の不利益情報(条例第13条第8号)についての判断基準
ア 「未成年者等の法定代理人」とは、年齢が成年に達しない者又は成年被後見人の法定代理人をいい、親権者若しくは未成年後見人又は成年後見人がこれに該当する。
イ 特定個人情報については、「本人の委任による代理人による開示請求」が認められる。
ウ 「未成年者等の法定代理人又は本人の委任による代理人による開示請求がなされた場合」とは、代理人が本人のためにすることを示して当該本人の自己情報を開示請求した場合をいう。
エ 代理人と本人が同一の法律関係において、利害が相反する当事者となっている場合や社会通念上本人の利益に反する開示がなされる場合等は非開示となる。
第4 部分開示に関する判断基準
開示請求に係る個人情報について、条例第14条に基づき部分開示すべき場合に該当するかどうかの判断は、以下の基準により行う。
1 「開示請求に係る個人情報に非開示情報とそれ以外の個人情報とがある場合」とは、開示請求について審査した結果、開示請求に係る公文書に記録された個人情報に、非開示情報に該当する情報が含まれている場合を意味する。
条例第13条では、全く非開示情報が含まれていない場合の開示義務を定めているが、本項の規定により、実施機関は、開示請求に係る個人情報に非開示情報が含まれている場合に、部分的に開示できるか否かの判断を行わなければならない。
2 「容易に区分して除くことができるとき」
(1)当該個人情報のどの部分が非開示情報に該当するかという区分けが困難な場合だけでなく、区分けは容易であるがその部分の分離が技術的に困難な場合も部分開示の義務がないことを明らかにしたものである。
「区分」とは、非開示情報に該当する部分とそれ以外の部分とを概念上区分けすることを意味し、「除く」とは、非開示情報に該当する部分を、当該部分の内容が分からないように黒塗り、被覆等を行うなど、加工することにより、情報の内容を消滅させることをいう。
(2)公文書に記録された個人情報に含まれる非開示情報を除くことは、コピー機で作成したその複写物を黒く塗り再複写するなどして行うことができ、一般には容易であると考えられる。なお、部分開示の作業に多くの時間・労力を要することは、直ちに、区分し、分離することが困難であるということにはならない。
一方、録音、録画、磁気ディスクに記録された個人情報については、区分して除くことの容易性が問題となる。例えば、複数の人の発言が同時に録音されているが、そのうちの一人から開示請求があった場合や、録画されている映像中に開示請求者以外の者が映っている場合などがあり得る。このような場合には、非開示情報を容易に区分して除くことができる範囲で、開示すべき部分を決定する。
なお、電磁的記録に記録された個人情報については、紙に出力した上で、非開示情報を区分して除いて開示することも考えられる。電磁的記録をそのまま開示することを求められた場合は、非開示情報の部分のみを削除することの技術的可能性等を総合的に判断する必要がある。既存のプログラムでは行えない場合は、「容易に区分して除くことができるとき」に該当しない。
3 「当該部分を除いた部分につき開示しなければならない」とは、義務的に開示すべき範囲を定める趣旨である。なお、部分開示の実施に当たり、具体的な記述をどのように削除するかについては、本条例の目的に沿った合目的的な裁量に委ねられている。すなわち、非開示情報の記録部分の全体を完全に黒く塗るか、文字が判読できない程度に被覆するか、当該記録中の主要な部分だけ塗りつぶすかなどの方法の選択は、非開示情報を開示する結果とならない範囲内において、当該方法を講ずることの容易さ等を考慮して判断することになる。その結果、観念的には一まとまりの非開示情報を構成する一部が開示されることになるとしても、実質的に非開示情報が開示されたと認められないのであれば、非開示義務に反するものではない。
4 開示請求者以外の特定の個人を識別することができる情報が記録されている場合について(条例第14条第2項)
(1)個人識別情報は、通常、氏名など個人を識別させる部分とその他の記述(当該個人の行動記録など)とからなる「一まとまり」の情報の集合物であるため、氏名等の部分だけを削除して残りの部分を開示しても個人の権利利益保護の観点から支障が生じないときには、他の非開示情報に該当しない限り、部分開示することとなる。
(2)「特定の個人を識別することはできないが、開示することにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるもの」(条例第13条第3号本文の後半部分)については、特定の個人を識別することとなる記述等の部分を除くことにはならないため、「開示請求者以外の特定の個人を識別することができるものに限る」こととしている。
(3)個人を識別させる要素を除去し誰の情報であるかが分からなくなっても、開示することが不適当であると認められる場合もある。例えば、カルテ、作文などの個人の人格と密接に関連する情報や、個人の未発表の論文等開示すると個人の正当な権利利益を害するおそれがあるものも想定される。
このため、個人を識別させる部分を除いた部分について、開示しても個人の権利利益を害するおそれがないものに限り、部分開示の規定を適用することとする。
(4)条例第14条第1項の規定を適用するに当たっては、容易に区分して除くことができるかどうかが要件となるので、個人を識別させる要素とそれ以外の部分とを容易に区分して除くことができない場合は、当該個人に関する情報は全体として非開示となる。
第5 個人情報の存否に関する情報に関する判断基準
開示請求に対し、個人情報の存否を明らかにしないで当該開示請求を拒否すべき場合(条例第15条)に該当するかどうかの判断は、以下の基準により行う。
1 「当該開示請求に係る個人情報が存在しているか否かを答えるだけで、非開示情報を開示することとなるとき」とは、開示請求の対象となった個人情報は存在するが非開示とすると答えるだけで、又は当該個人情報は存在しないと答えるだけで、非開示情報を開示した場合と同様の結果をもたらし、非開示情報の規定により保護される利益が害されるときをいう。
2 存否を明確にしないで開示請求を拒む必要がある個人情報については、開示請求に係る個人情報が実際には存在しない場合であっても、不存在を理由に開示請求を拒むのではなく、「存否応答拒否」することになる。これは、例えば個人情報が存在しない場合に不存在と答え、個人情報が存在する場合のみ存否を明らかにしないで開示請求を拒んだときには、開示請求者に当該個人情報の存在を類推させることになるからである。
したがって、存否を明らかにしないで拒否することが必要な類型の情報については、常に存否を明らかにしないで拒否しなければならない。
3 個人情報の存否を明らかにしないで、開示請求を拒否する決定も、申請に対する拒否処分であることから、行政手続条例第8条に基づき、処分の理由を提示する必要がある。
提示すべき理由については、開示請求者が拒否する理由を明確に認識できる程度のものが必要であり、請求のあった個人情報の存否を答えることにより、どのような非開示情報を開示することになるのかを具体的に提示する。
第6 訂正決定等の審査基準
条例第25条の規定に基づく訂正をする旨又は訂正をしない旨の決定(以下「訂正決定等」という。)は、以下により行う。
1 訂正請求の対象は、「事実」とし、個人に対する評価、判断等のように客観的な正誤の判定になじまない事項については、訂正請求の対象とはならない。ただし、評価した行為の有無、評価に用いられたデータ等は事実に該当する。
2 訂正をする旨の決定(条例第25条第1項)は、調査等の結果、訂正請求に係る個人情報が事実でないことが判明し、当該請求に理由があると認める場合に行う。
この場合の訂正は、当該訂正請求に係る個人情報の利用目的の達成に必要な範囲内で行う(条例第23条)。
なお、請求内容に理由があるかどうかを判断するために行う調査は、事務の目的の達成に必要な範囲で行えば足り、訂正することが事務の目的の達成に必要でないことが明らかな場合は、特段の調査を行う必要はない。適切な調査等を行ったにもかかわらず、事実関係が明らかにならなかった場合には、当該請求に理由があると確認できないこととなるため、訂正をする旨の決定は行わない。
3 訂正をしない旨の決定(条例第25条第2項)は、次のいずれかに該当する場合に行う。
- 訂正について法令又は条例に特別の定めがあるとき
- 知事に訂正の権限がないとき
- 訂正をすることが、当該個人情報に係る事務の目的の範囲を超えるなど、訂正しないことについて正当な理由があるとき
- 訂正請求について求めた補正に対し、相当な期間内に補正が為されないとき
- 訂正請求に係る個人情報が訂正請求できないものであるとき
第7 利用停止決定等の審査基準
条例第25条の8の規定に基づく利用停止をする旨又は利用停止をしない旨の決定(以下「利用停止決定等」という。)は、以下により行う。
1 利用停止をする旨の決定(条例第25条の8第1項)は、請求に係る個人情報が次のいずれかに該当し、当該請求に理由があると認める場合に行う。
(1)条例第7条の規定に違反して収集されたとき
ア 開示決定書において明らかにされた事務の目的の達成に必要な範囲を超えて、又は適法かつ公正な手段によらず収集したとき
イ 一旦明らかにした事務の目的と相当の関連性を有すると合理的に認められる範囲を超えて目的の変更を行い個人情報を収集したとき
ウ 本人以外から収集したとき(同条第3項各号に該当する場合を除く。)
エ 事務の目的を明示せずに、本人から直接書面に記録された個人情報を収集したとき(同条第4項各号に該当する場合を除く。)
オ 同条第5項各号に該当する個人情報を収集したとき(同項ただし書に該当する場合を除く。)
(2)条例第8条第1項及び第2項の規定に違反して利用されているとき
事務の目的以外の目的のために当該個人情報を知事部局内部で利用している場合をいう(同条第2項ただし書及び各号に該当する場合を除く。)。
(3)条例第8条の2第1項及び第2項の規定に違反して利用されているとき
特定個人情報を取り扱う事務の目的以外の目的のために当該特定個人情報を当該実施機関内部で利用している場合をいう(同条第2項に該当する場合を除く。)
(4)番号法20条の規定に違反して収集され、若しくは保管されているとき
同法第19条各号に該当する場合以外において提供された特定個人情報を収集・保管している場合をいう。
(5)番号法第28条の規定に違反して作成された特定個人情報ファイル(同法第2条第9項に規定する特定個人情報ファイルをいう。)に記録されているとき
個人番号利用事務等従事者が、同法第19条第11号から第14号までのいずれかに該当する場合(個人情報保護委員会や国会の調査権に基づき提供する場合等)以外に、個人番号利用事務等を処理するために必要な範囲を超えて作成された特定個人情報ファイルが存在する場合をいう。
(6)条例第8条の規定に違反して提供されているとき
ア 事務の目的以外の目的のために当該個人情報を知事部局以外の者に提供しているとき(同条第2項ただし書及び各号に該当する場合を除く。)
イ 通信回線による電子計算機その他の情報機器の結合(知事が保有する個人情報を条例上の実施機関以外の者が随時入手し得る状態にするものに限る。)により個人情報を提供する場合で、群馬県個人情報保護審議会の意見を聴かずに当該個人情報を提供しているとき(同条第4項各号に該当する場合を除く。)
(7)条例第8条の2第3項の規定に違反して提供されているとき
番号法第19条各号で認められた場合以外に、特定個人情報を提供している場合をいう。
(8)利用停止は、利用停止請求に係る個人情報の適正な取扱いを確保するために必要な限度で行うものとし、例えば、利用停止請求に係る個人情報について、そのすべての利用が違反していればすべての利用停止を、一部の利用が違反していれば一部の利用停止を行うものとする。また、請求者が当該個人情報の消去を求めた場合であっても、利用の停止を行うことで適正な取扱いを確保できるときは、利用の停止を行えば足り、当該個人情報を消去するまでの必要はない。
2 利用停止しない旨の決定(条例第25条の8第2項)は、次のいずれかに該当する場合に行う。
(1)利用停止請求に理由がないとき
(2)利用停止をすることにより当該個人情報取扱事務の適正な遂行に著しい支障を及ぼすおそれがあると認められるとき
当該個人情報取扱事務の内容に照らして事務の適正な遂行が保護に値する場合には、利用停止請求に理由があると認められる場合であっても利用停止義務を負わない。利用停止をするか否かは当該個人情報の取扱いの実態のほか、利用停止することにより保護される本人の権利利益と、利用停止されることにより損なわれる公共の利益との比較衡量を行った上で判断される。
(3)利用停止請求について求めた補正に対し、相当な期間内に補正が為されないとき
(4)利用停止請求に係る個人情報が、利用停止請求できないものであるとき