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バスとブルーギルの違法放流禁止!
北アメリカ原産のオオクチバスとブルーギルが国内で生息域を拡大していることは、テレビや新聞などでもよく取り上げられるので広く国民にも知られてきています。
群馬県内でもオオクチバスは、榛名湖、神流湖、梅田湖、竹沼、大塩湖、近藤沼、多々良沼、城沼などに生息しており、最近では赤城山麓の溜池などでも生息が確認されています。
左:オオクチバス 右:コクチバス
一方、ブルーギルは主に県南東部の川や沼で生息が確認されていましたが、最近では全県的に生息域が拡大しています。
ブルーギル
また、北アメリカ原産のコクチバスは奥利根湖や烏川などで生息が確認され、地元漁協により駆除が行われています。
これら3種は国により特定外来生物に指定され、飼育や生きた状態での運搬、移植などが原則禁止になっています。
そこで、オオクチバスとコクチバスについて既存の資料を基に解説します。
オオクチバス(ラージマウスバス)
日本へは1925年に芦ノ湖に初めて移植され、70年以上経過した現在では北海道を除く全地域に分布していると思われます。榛名湖のような標高1000メートル以上で冬期全面結氷する湖でも、霞ヶ浦のような低地の富栄養湖でも繁殖しています。
一般的に、雌雄ともに全長20~25センチメートル以上で成熟し、水温16~20度になる4~7月に産卵します。雄は、水深0.5~1.5メートルの湖底に直径50センチメートル前後の円形の産卵床を掘削します。産卵場は砂か礫の湖底で、水の交換のよい波浪の影響を受けない場所を選択します。榛名湖では、主に6月頃に沼の原の水深1メートル付近で産卵が行われ、ボート上から容易に産卵床が観察されます。
成長は各湖沼で異なり、琵琶湖では、1年で全長27センチメートル、2年で38センチメートル、3年で47センチメートルにもなりますが、榛名湖では1年で全長19センチメートル、2年で25センチメートル、3年でも29センチメートルにしかなりません。寿命は10年前後で、理論的には琵琶湖で全長70センチメートル位、榛名湖で全長50センチメートル位になるでしょうが、漁獲強度の高い日本では寿命を全うするのは難しいでしょう。大型魚ほど魚類を補食する傾向があり、ヨシノボリやエビ類が選択的に補食されます。
オオクチバス(ラージマウスバス)1
オオクチバス(ラージマウスバス)2
コクチバス(スモールマウスバス)
経路は不明ですが、福島県の檜原湖などの裏磐梯湖沼群、長野県の野尻湖や木崎湖で数年前から繁殖し、最近では琵琶湖や中禅寺湖で漁獲されています。
オオクチバスとは形態的に判別が可能です。最もわかりやすい判別点は、写真のように、縞模様が縦か横かで区別がつきます。生態的にはオオクチバスと大きな違いはないと考えられますが、オオクチバスより冷水を好み、ある程度の流水にも適応でき、岩場を好むとされています。
このため、県内の利根川流域のダム湖、榛名湖や赤城大沼、あるいは河川の取水堰は生息可能水域に含まれ、マス類、ワカサギ、さらにアユへの食害がオオクチバス以上に心配されます。成長は各湖沼で異なるでしょうが、野尻湖での成長はオオクチバスが2年で全長33センチメートル、3年で41センチメートルに成長するのに対し、コクチバスは2年で31センチメートル、3年で34センチメートルにとどまるようです。一般的にオオクチバスより成長は劣ります。
コクチバス(スモールマウスバス)1
コクチバス(スモールマウスバス)2
※富栄養湖とは?
湖水中の栄養塩が多く、プランクトンなどの生産性が高い湖のことをいいます。
※全長とは?
魚の頭の先から尾の先までの長さのことをいいます