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サケ科魚類の卵からの飼い方
ニジマスの発眼卵
発眼卵からの飼育方法
1 飼育水
ヤマメやサケは冷水性の魚ですから15度以下の水温が適しています。この時期直射日光が当たらなければ15度以下に保てます。
用水はきれいな井戸水か湧き水が理想ですが、水道水でも十分です。ただし、水道水には消毒用の塩素が含まれていますので、1日汲み置きして塩素がなくなるのを待つか、ペットショップで販売しているハイポ(チオ硫酸ナトリウム)で中和します。ハイポの量は水10リットルに対して5mm程の粒剤1粒です。
2 水槽
ヤマメやニジマスの卵200粒ほどの配布を受けた人は、ペットショップで市販されている60cm水槽(W60×D30×H36cm)が使いよいでしょう。上部に専用の循環濾過装置をセットし、エアーポンプでエアーレーションをすれば酸素補給は十分です。
冬になり水温が10度を下回るようであれば、ヒーターを10度にセットして下さい。なお、蛍光灯は必要ありません。
サケ科魚類のふ化稚魚を飼育するのに最も大事なことは「さいのう」と呼ばれる栄養物の入った袋を吸収し終わるまでそっとしておいてやることです。できれば、水槽の底に数cm大の小石を敷いてやります。このようにすればふ化稚魚は石と石の間に横たわっておとなしくしています。
また、サケ卵で20粒ほどの配布を受けた方は、小さな水槽で十分です。
水槽の置き場所として適しているのは次のような所です。
- 直射日光が当たらず
- 一日の温度変化が少なく
- 水交換が手軽にでき
- 風通しがよく
- 人目に付きやすいところ
小石を入れた60cm水槽
ヤマメのふ化稚魚
3 卵の収容から放流まで
1) 卵を受け取る日の前日までに水槽をセットし、水を入れて循環させておきます。
2) 水温が15度以下になっているか確認します。もし、なっていなければ、今置いてある所より涼しい所を探して下さい。
3) 卵を受け取りましたら、強い衝撃を与えないように注意し、直ちに持ち帰り、卵同士が重ならないよう水槽に収容します。
4) 水槽の上や周りを段ボール等で囲み、水槽内を暗くします。
5) 卵を収容後1~2週間過ぎるとふ化が始まります。ふ化までの日にちは、水温の高い方が早くふ化します。
6) 濾過装置のない水槽では、卵膜のかすや泡が出ますので、ふ化稚魚を刺激しないように数日間網でていねいに取り除いて下さい。飼育水が濁るようであれば、水交換をします。汲み置きしておいた水を、週1~2回の割合で数回行います。1回に取り替える水量は最初は全体の5分の1ぐらい。2回目から3分の1程度にします。
7) ふ化後18日~25日経過すると「さいのう」を吸収し、スマートな体形になり水面に泳ぎだします。ふ化した稚魚の半数が泳ぎだしたら餌を与えます。
8) 水槽を覆っていた段ボール等を取り除き、餌付け後1週間ぐらいは人間の赤ちゃんと同様に1日に何回も餌を与えます。その後、徐々に減らしていき、40日後は1日2回でよいでしょう。最初は餌が無駄になりますので、残餌をこまめに取り除いて、水の汚れを防いで下さい。
9) 餌の量は水温10度で魚体重の3%、15度で4%ぐらいで良いでしょう。浮上した稚魚の大きさは、ニジマスで0.1g、ヤマメで0.15g、サケで0.4gぐらいです。
10) 一例として10度の水で体重0.1gのニジマス100尾飼育していると、0.1g×100尾×3%=0.3gが1日の餌の量です。家庭のはかりでは0.3gがはかれなければ、0.3g×10日=3gとして10等分すれば1日の量が出ます。また、サケ10尾を10度で飼育すれば、0.4g×10尾×3%=0.12gが1日の餌の量です。1gの餌を8等分すれば1日分が作れます。この様に1日分の餌は非常に少ないものですから、くれぐれも与えすぎないよう注意して下さい。
11) 春先までの魚の成長は、狭い水槽内ですので、ニジマス、ヤマメで3倍、サケで2倍ぐらいでしょう。1gを超すサケを作れば飼育方法が上手な人です。
12) 春になると水槽の水温も上昇して、魚が飼いづらくなりますので、愛情を込めて育ててきた稚魚を川に放してあげましょう。ニジマス、ヤマメの稚魚は、上流に仲間がいる川に放流して下さい。
サケの稚魚は、3月上旬までに放流して下さい。サケがのぼる南限に位置している利根川水系では、利根川を下ったサケは、北海道の沖合で他県で放流された仲間と一緒になって6~7月頃に餌の豊富な北洋に旅たちます。これに遅れると大きくなって4年後に群馬県まで帰ってくることができません。県内各地の団体が3月初めに放流式を行うのはこの様な理由によるものです。
サケ稚魚の放流風景