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水試だより46号

更新日:2014年5月1日 印刷ページ表示

【巻頭】 群馬の水産振興に水産試験場がはたす役割

水産試験場 場長 加藤 恒夫

場長の写真

このたび水産試験場長を拝命いたしました加藤です。責任重大ではありますが、しっかりと職責を果たしていきたいと考えておりますので、皆様のご指導、ご協力をお願い申し上げます。
 水産試験場は、本県水産業の発展のため、ギンヒカリをはじめとしたマス類の育種、アユ漁獲量の復活を目指した優良種苗の供給、不漁原因の究明、今なお残る放射性物質の影響等の研究に加え、各種技術相談や普及活動を行う総合的な技術支援機関です。皆様のお役に立てるよう研究員が懸命に努力をしております。
 具体的な取組といたしましては、まず、マス類の育種があります。ぐんまのブランド魚として着々と認知度をあげているギンヒカリは、徐々に生産が拡大しています。一方、ギンヒカリを欲しいという声の高まりに応えるためには、もう少し改良できるところが無いか新たな研究を進めております。こうした中で、遊漁用ニジマスの新たな系統を作出しました。これを第2のぐんまのブランド魚として育てていくための検討を始めています。
 次に、「県の魚」アユですが、利根川に以前のような釣り人を早く取り戻して欲しいという声が、たくさん寄せられています。そのため、低水温や濁水に耐性のある定着性の高い系統選抜をしております。また、冷水病についてもさらなる研究を進め、本県河川に適した系統のアユの優良種苗を安定的に供給し、漁獲量の回復に向けていきたいと考えております。このためにはカワウやコクチバス対策も重要です。カワウについては、先に、県の適正管理計画が策定され、被害軽減の方針が示されました。先日、県内最大の高崎市のコロニーを見てきましたが、鳥獣被害対策支援センターと連携し、これを何とかしなければと痛感したところです。
 三番目として、放射性物質対策があります。赤城大沼のワカサギは、未だに「持ち帰り自粛」の状態です。水産試験場では、群馬大学、国立環境研究所等と共同で放射性物質の動態解析を進めてきました。これについては、本年度、文部科学省の科学研究費助成事業の内定をいただき、大学等と連携しながら、研究代表機関として引き続き調査をして参ります。
 この他にも早急に取り組むべき課題は、山積している状況です。これらの解決のために職員一同全力で取り組みます。皆様のご協力を重ねてお願い申し上げます。

【特集】 ワカサギ増殖におけるビン型ふ化器の導入と普及状況

はじめに

 ワカサギ釣りは秋から冬季にかけて老若男女を問わず手軽に楽しめるレジャーの一つです。ワカサギは本県において重要な遊漁対象魚となっており、釣り場の管理者や釣り人からはワカサギ増殖の安定化に関心と期待が寄せられています。

 ワカサギのふ化管理は、シュロ枠に受精卵を付着させて行う方法が主流でしたが、ふ化の確実性と作業の省力性に秀れたビン型ふ化器を用いた粘着性除去卵のふ化管理法も普及し始めています。今回、その管理方法の解説と、県内のふ化器の普及状況等を紹介します。

ビン型ふ化器によるふ化管理方法

  1. 受精卵からのふ化管理
     卵の粘着性を細かい粒子等により除去する作業が必要で、この不粘着処理した卵をビン型ふ化器に収容します。その後、発眼期に至るまで毎日30分間、ミズカビ防除のために魚卵消毒剤(製品名:パイセス)による消毒を行います。ふ化開始までの時間は水温に依存し、約9度で収容から20日程度を要します(赤城大沼の例)。種卵は主に網走湖産が用いられています。
  2. 分離卵(発眼卵)からのふ化管理
     特別な処理をしないで、直ちにビン型ふ化器に収容することができ、卵消毒も不要です。ふ化までに要する時間は、上記同様水温に依存しますが、発生ステージが進んでいるため数日でふ化を開始する場合が多くなります。受精卵からのふ化管理に比べ、より手軽に管理ができるため、分離卵のニーズは高まっています。種卵は主に諏訪湖産が用いられています。

ビン型ふ化器の導入状況

 ビン型ふ化器は、大きく分けて既製品{(株)マツイ製の付着沈性卵用ふ化装置}(写真1)と塩ビパイプ等を加工した自作品(写真2)の2つのタイプがあります。本県の導入例は、表のとおりです。どちらのタイプでも、シュロ枠での管理では難しかったふ化の確認を確実に行うことができ、利用者の評価も高くなっています。
 ワカサギの資源は成育する湖沼の餌、水温、他魚種による捕食圧等の環境によっても大きく変動してしまいますが、増殖における第一段階としてのふ化がほぼ確実に見込めるビン型ふ化器での卵管理は今後さらに普及していくと考えられます。当場としても積極的に現場での指導や、より良いふ化管理方法の開発に向けた試験研究に取り組んでいく予定です。

赤城大沼漁協の導入例写真
写真1 赤城大沼漁協の導入例

両毛漁協(梅田湖)の導入例写真
写真2-1 両毛漁協(梅田湖)の導入例

神流川漁協(神流湖)の導入例写真
写真2-2 神流川漁協(神流湖)の導入例

表 ビン型ふ化器の導入状況
漁場 導入年 備考
鮎川湖 2006年 マツイ製
赤城大沼 2012年 マツイ製
梅田湖 2012年 自作
榛名湖 2013年 マツイ製
神流湖 2012年 自作
三名湖 2013年 自作
バラギ湖 2013年 自作
鳴沢湖 2014年 マツイ製

 (水産試験場調べ)
 (水産環境係 小野関由美)

【水産行政から】 コイヘルペスウイルス病の新たな防疫指針

 コイヘルペスウイルス病(KHV病)は、持続的養殖生産確保法に基づく特定疾病で、国内では平成15年11月に霞ヶ浦のコイで初めて確認されました。群馬県内では、平成16年5月3日に安中市のため池のコイで初めて確認されて以降、平成25年末までに55か所で発生が確認されています。
 KHV病については、農林水産省消費・安全局により定められた「特定疾病等対策ガイドライン」に沿って、まん延防止措置を講じてきました。しかし、平成22年度に国が実施したKHV病の浸潤調査結果を踏まえ、昨年8月にガイドラインが一部変更され、食用コイの移動制限に関する扱いが一部変更されました。

水域の区分

 これまでのKHV病の確認状況に応じて河川・湖沼、養殖場が以下の3つの水域に区分されました。

  1.  既発生水域 これまでにKHV病の発生が確認された河川・湖沼、これらの水を直接利用している養殖場
  2.  未報告水域 過去にKHV病の発生がない河川・湖沼、これらの水を利用している養殖場
  3.  陰性確認水域 KHV病の発生がなく、年2回以上の検査でKHV陰性が確認されている養殖場

既発生水域の養殖場における対応

 既発生水域の養殖場からは、次の1又は2の場合を除きコイを移動することはできません。

  1. .コイにKHV病の症状が確認されない状態で以下に該当する活魚を事前に移動の手続きを行った上で移動する場合
    (1)既発生水域の養殖場へ移動する食用コイ
    (2)加工場、宿泊施設、飲食店又は小売店に施設内で食用に加工処理するために出荷されるコイ(ただし、施設からの排水先は既発生水域もしくは下水道に限る)
  2. 移動前に移動元の養殖場でエラを除去する場合
    既発生水域の養殖場からコイを移動する場合は事前に県への報告が必要です。詳細については、蚕糸園芸課水産係にお問い合わせください。

 (蚕糸園芸課水産係 神澤裕平)

【試験研究から】 ニジマスにおける釣りやすさの比較

はじめに

 水産試験場では「鰭の欠損しにくい箱島系」と「引きが強くて姿形のきれいなスチールヘッド系」のニジマスを交配することにより、新たな遊漁用ニジマスの作出(以下「箱スチ」という)を試みています。そこで、箱スチの釣りやすさについて、餌釣りとルアー釣りで他系統のニジマスと比較しました。

材料および方法

 供試魚は川場養魚センターで飼育している箱島系(以下「箱島」という)、スチールヘッド系(以下「スチール」という)、早期採卵系(以下「早期」という)および箱スチの計4系統を用い、供試魚の標識方法、平均体重と試験日は表1に示しました。

 釣獲試験は餌釣りとルアー釣りの2種類でそれぞれ2回ずつ行い、供試魚は釣獲試験ごとにすべて交換しました。試験池は川場養魚センター屋外コンクリートA池(4.2メートル×5.5メートル×水深0.7メートル)を餌釣りで、屋外コンクリートB池(15.3 メートル×7.0メートル×水深0.8メートル)をルアー釣りで使用しました。釣獲試験は各系統を50尾ずつ混ぜて試験池に収容し、実釣時間は180分としました。
 餌釣りは渓流竿(長さ4.5メートル)にナイロン0.8号を使用し、針はマス針7号、餌は釣り餌用イクラでした。ルアー釣りはトラウトロッド(長さ1.8 メートル)にPEライン0.6号を使用し、ルアーは市販スプーン(2グラム)で、PEラインにはリーダーとしてフロロライン2.5号を1メートル接続しました。

結果および考察

 餌釣りの釣果は系統間に有意な差が認められ(χ2検定:P<0.01)、ルアー釣りの釣果では系統間に有意な差が認められませんでした(χ2検定:P>0.05)(表2)。また、各系統ともルアー釣りの釣獲率が餌釣りより低い傾向でした(図)。このようなことから、箱スチは餌釣りで釣りやすいので、引きの強さを子供から大人まで楽しめます。そして、ルアー釣りでは釣りにくいので、釣法などで駆け引きを楽しめる上級者好みといえます。今後は管理釣り場での実証試験などから地域ブランド魚の確立を目指します。

表1 供試魚の標識方法と平均体重および試験日
系統 標識方法 餌釣り ルアー釣り
1回目(6月4日)平均体重(グラム) 2回目(6月4日)平均体重(グラム) 1回目(7月9日)平均体重(グラム) 2回目(7月17日)平均体重(グラム)
箱スチール 脂鰭カット 476グラム 476グラム 566グラム 516グラム
箱島 左腹鰭カット 494グラム​ 537グラム 585グラム 569グラム
スチール 右腹鰭カット 484グラム 488グラム 504グラム 491グラム
早期 カットなし 486グラム 517グラム 598グラム 536グラム
表2 釣獲試験の結果
系統 餌釣り ルアー釣り
釣獲尾数(尾) 未釣獲尾数(尾) 釣獲率(%) 釣獲尾数(尾) 未釣獲尾数(尾) 釣獲率(%)
箱スチール 79尾 21尾 79% 9尾 91尾 9%
箱島 55尾 45尾 55% 17尾 83尾 17%
スチール 64尾 36尾 64% 15尾 85尾 15%
早期 76尾 24尾 76% 23尾 77尾 23%

供試魚の釣獲率グラフ画像
図 供試魚の釣獲率

(前 川場養魚センター 新井 肇)

【新人紹介】 よろしくお願いします 水産環境係 渡辺 峻

渡辺の写真

 今年度から水産試験場でお世話になることになりました。私は3月まで長崎大学水産学部に在学し、大型魚類に小型ビデオカメラやセンサーを取り付け、データを記録・解析をして、その遊泳行動を研究していました。
 海面から内水面へとフィールドが大きく変わり、分からないことも多いと思いますが、群馬県の水産業を盛り上げたいと考えています。どうぞよろしくお願いします。

平成26年度職員の配置

  • 場長: 加藤恒夫
  • 次長(総務係長): 武井桂子
  • 主席研究員: 久下敏宏
  • 総務係: 係長 武井桂子(次長兼務)、杉山晃嗣、青柳久仁子、町田紀子
  • 水産環境係: 係長 田中英樹、新井肇、小野関由美、渡辺峻(今年度入庁)
  • 生産技術係: 係長 小林保博、垣田誉志史、鈴木紘子、清水延浩
  • 川場養魚センター: センター長松岡栄一、松原利光、星野勝弘、鈴木究真

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