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水試だより47号

更新日:2015年5月1日 印刷ページ表示

水産試験場の新人紹介

水産環境係 渡辺 峻

水産環境係 渡辺峻の写真

水産試験場では県民の日の場公開やインターンシップ、生物の観察会等を毎年行っています。これらのイベントを通して、色々な方にもっと群馬県の水産業を知って興味をもってもらえるように日々努力していきたいです。
水産試験場に勤務して2年目で、まだまだ未熟ですが、山下技師と協力して群馬県の水産業を盛り上げていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

川場養魚センター 山下耕憲

川場養魚センター 山下耕憲写真

今年度から川場養魚センターでお世話になります。昨年度は新規採用職員として、県庁農政課で勤務していました。私の出身は千葉県ですが、大学時代は渓流魚の行動についての研究をしてきており、学んだことを活かしたいということで群馬県に就職しました。事務系の職場から試験研究機関へ移り、わからないことばかりでご迷惑をおかけしますが、群馬県の水産振興のために全力を尽くしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします

【特集】ヤマメ親魚放流試験

はじめに

 渓流釣りで人気の高いヤマメは、主に稚魚の放流により資源増殖されています。しかし、2013年3月に水産庁より発行されたマニュアル「渓流魚の増やし方」では、放流された養殖魚の生残率が自然繁殖魚より低いことが報告されています。

 稚魚放流以外のヤマメ資源の増殖方法としては、発眼卵放流や成魚放流、親魚放流があります。親魚放流とは河川において自然産卵させることを目的に成熟した養殖魚を放流する方法で、詳細な内容は岐阜県河川環境研究所が2013年2月に発行したマニュアル「アマゴ・ヤマメの親魚放流の方法」に記載されています。

 今回は、このマニュアルに基づいて2014年に実施したヤマメの親魚放流試験の結果と、親魚放流の長所・短所および実際に放流を実施する際の留意点を紹介します。

材料および方法

 放流用親魚には箱島養鱒センターで継代飼育しているヤマメ2歳魚(平均体重:825.9g)に、放流直前、背鰭付近に黄色のアンカータグを付けて標識したものを用いました。

 親魚放流は桐生市内の渡良瀬川支流の約430メートル区間で、2014年10月8日にヤマメ親魚45尾(雌15尾、雄30尾)を調査区間内の3箇所に各15尾ずつ放流しました。親魚放流前には調査区間の生息魚をヤマメの大型魚を中心に電気ショッカーにより採捕し、調査区間外へ移動させました。

 放流翌日の2014年10月9日から10月23日までの8日間、調査区間を下流から上流に向けて踏査し、放流親魚、ペアリング、産卵床の有無を目視確認し、産卵床を見つけた時には、黄色のペンキで塗装した石を産卵床の付近において目印にしました。

 目印をした産卵床で、発眼期(積算水温250~300度)と推定された2014年11月4日に産卵床をジョレンで掘り起こして産出卵を確認しました。

結果および考察

 放流翌日の10月9日からペアリングが確認され(図1)、放流後1週間以内に合計12箇所の産卵床を確認しました。放流親魚は徐々に減少しましたが、新たな産卵床が確認されなくなった後も確認することができました(図2)。発眼期に産卵床を掘り起こしたところ、発眼卵を確認することができました。

 今回は、放流したヤマメ親魚が箱島養鱒センター内で人工授精を繰り返して長期間継代飼育してきた養殖魚であり、河川への放流後に適正な産卵行動が行われるか心配でした。しかし、放流翌日からペアリングを確認し、親魚放流は比較的容易に普及可能な増殖方法の1つである可能性が示唆されました。

 前述のマニュアルによると、親魚放流の長所は、全長15cmの渓流魚を1尾増やすのに必要な種苗代が稚魚放流、成魚放流、発眼卵放流よりも安くなることです。

 短所は、親魚の放流時期や放流場所、河川の状況などの産卵に好適となる条件に十分注意する必要があり、条件が悪いと高い増殖効果が見込めないことがあります。

 今後は、時期や適地など技術的な指導により、費用対効果の高い親魚放流が効果的に行われるようにしたいと思います。

(川場養魚センター)

図1ペアリングするヤマメ親魚写真
図1 ペアリングするヤマメ親魚

図2産卵床数と放流親魚数画像
図2 産卵床数と放流親魚数

【水産行政から】内水面漁業の振興に関する法律

背景

内水面漁業は、水産物を提供する他に、漁業者等による増殖や漁場環境保全・管理を通じ、釣りや自然体験活動等の機会を提供する等の多面的機能も発揮しています。しかしながら、河川等の環境変化、コクチバス等の特定外来生物やカワウ等による食害により、内水面の漁獲量は減少しています。また、ニホンウナギのように、資源量の減少が危惧され、養殖形態に実効的な資源管理処置を講ずる必要性がある種もあります。このような状況下で、内水面漁業の振興を図るため、「内水面漁業の振興に関する法律」が2014年6月20日に成立しました。

概要

1 基本方針

 内水面漁業の振興に関する基本的方向や健全な発展、資源の回復や漁場環境の再生等を定めます。

2 施策

  1. 内水面水産資源の生息状況等の調査
  2. 内水面水産資源の回復に関する施策
    • 内水面水産資源の増殖や養殖の推進
    • 特定外来生物等による被害の防止処置に対する支援
    • 内水面水産資源に係る伝染性疾病の予防等
  3. 内水面における漁場環境の再生に関する施策
    • 内水面に係る水質、水量の確保
    • 森林の整備と保全
    • 内水面水産資源の育成に資する施設の整備
    • 自然との共生と環境との調和に配慮し河川整備の推進に必要な処置等
  4. 内水面漁業の健全な発展に関する施策
    • 効率的かつ安定的な内水面漁業の経営の育成
    • 多面的機能の発揮に資する取組への支援
    • 人材の育成と確保
    • 商品開発の取組等への支援等
  5. 届出養殖業
    • ウナギ資源の持続的な利用を確保するため、届出養殖業者による実績報告書提出等の義務づけ

3 協議会

 共同漁業権者の申出により、都道府県知事が河川管理者、学識経験者等で構成する協議会を設置し、内水面水産資源の回復、内水面における漁場環境の再生その他内水面漁業の振興に関し必要な処置について協議します。
 この法律について不明な点等がありましたら、蚕糸園芸課水産係まで連絡ください。水産係では皆さんと連携を密に取りながら、群馬県の水産振興を図りたいと思いますのでご協力お願いします。 (蚕糸園芸課水産係)

【試験研究から】河川におけるコクチバスの成長~鱗と耳石情報から~

はじめに

魚の年齢を知ることは資源の動態を研究する基本であり、コクチバスでは繁殖状況や駆除効果を検証していく上でも重要です。魚の年齢は体に記録されていますが、中でも鱗や耳石はその代表的な年齢形質です。これらの表面や断面に現れる、樹木でいう年輪状の模様を観察することで年齢を知ることができます。この情報を基に、コクチバスの成長や繁殖期間について考察しました。

材料および方法

1 年齢査定 -その方法と適用-

 2012年7月から2013年10月の間に烏川、鏑川、鮎川、および碓氷川で採捕された体長10~40センチのコクチバスを130個体用いて、耳石と鱗から年齢と成長の関係を調べました。

  1. 鱗による年齢査定
    • 左体側の側線上方と背鰭基部の間から剥離した鱗を洗浄後、低倍率の顕微鏡下で観察し、成長線の密度の高い部分を年輪数として計数しました(図1)。
  2. 耳石による年齢査定
    • 頭部から耳石(1対の扁平石)を摘出し、表面を研磨した後、その断面を顕微鏡下(400倍)で同心円状の成長線(日輪)を観察しました。次に耳石高(短軸長)の上部半分における一定間隔の日輪数を計数し、これを基に短軸上部長の総日輪数を算出して年齢を推定しました(図2)。

2 繁殖期間 -秋の小型個体はいつ生まれ?-

 2014年9月25日から30日の間に碓氷川と鏑川で採捕された体長4.9~8.0 センチのコクチバスを15個体用いて、耳石日輪数からふ化時期を推定しました。

結果および考察

1 年齢査定 -魚種や目的に合った方法を選ぶ-

 鱗と耳石による年齢査定結果と各年齢群の平均体長を表1に示しました。同じ年齢群で比較した場合、平均体長に差が認められ、特に若齢魚で顕著でした。耳石の場合、日輪数が少ない若齢魚では正確に年齢が査定できる上、ふ化日の推定まで可能です。魚種や年齢により、鱗の年輪はサケ・マスなどのように明瞭なことは少なく、その確認は困難な場合が多いので誤差も大きくなります。以上の結果から、今回は耳石による年齢査定法を適用し、以下の解析を行いました。
 年齢と体長の関係をベルタランフィー(von Bertalanffy)の成長曲線式にあてはめた結果、t歳時の推定体長Ltは次の式によって表されました。

Lt=50.7{1-e-0.145(t+1.17)}

 この成長式によって求めた成長曲線が図3になります。特に、この曲線式から概ね体長15 センチに満たない個体は0歳と推定されました。春季と秋季にこの体サイズ群の出現程度を確認すれば、前年或いは当該年の繁殖状況(駆除効果)を推定することが可能です。

2 繁殖期間 -遅くとも6月にふ化-

 各個体における耳石の推定日輪数は112から200の範囲でした。日輪が1日に一本作られると仮定して採捕日から逆算すると、これらは3月中旬から6月上旬にふ化した個体と考えられました。また、同サイズの体長の個体であっても成長速度は異なり、ふ化日に最大で50~60日の差を生じることが分かりました(図4)。
(水産環境係)

図1コクチバスの鱗(体長37.5センチ)写真
図1 コクチバスの鱗(体長37.5センチ)

図2コクチバスの耳石(体長35.5センチ)写真
図2 コクチバスの耳石(体長35.5センチ)

【表1】判別手法別の年齢と平均体長
年齢 0歳 1 2 3 4 5 6 7
10.5センチ 16.7センチ 20.2センチ 24.4センチ 27.2センチ 32.1センチ 34.2センチ 34.3センチ
耳石 8.4センチ 11.5センチ 18.5センチ 23.0センチ 24.5センチ 30.1センチ 34.4センチ 36.0センチ

図3河川におけるコクチバスの成長のグラフ画像
図3 河川におけるコクチバスの成長

図4コクチバスの体長と日輪数のグラフ画像
図4 コクチバスの体長と日輪数

平成27年度職員の配置

  • 場長 加藤恒夫
  • 次長(総務係長) 新井一光
  • 主席研究員 久下敏宏
  • 総務係 係長 新井一光(次長兼務)、青柳久仁子、町田紀子
  • 水産環境係 係長 新井肇、鈴木究真、湯浅由美、渡辺峻
  • 生産技術係 係長 小林保博、垣田誉志史、鈴木紘子、清水延浩
  • 川場養魚センター センター長松岡栄一、松原利光、星野勝弘、山下耕憲

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