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平成30年度公営企業会計決算審査意見書

更新日:2019年10月21日 印刷ページ表示

群監第131-1号
令和元年8月23日

群馬県知事 山本 一太 様

群馬県監査委員 丸山 幸男
群馬県監査委員 林 章
群馬県監査委員 中島 篤
群馬県監査委員 安孫子 哲

平成30年度群馬県公営企業会計決算審査意見について

 地方公営企業法(昭和27年法律第292号)第30条第2項の規定に基づき審査に付された平成30年度群馬県公営企業会計の決算について審査した結果は、別紙のとおりです。
(以下、別紙)

第1 審査の概要

1 審査の対象

  • 平成30年度群馬県電気事業決算(企業局所管)
  • 平成30年度群馬県工業用水道事業決算(企業局所管)
  • 平成30年度群馬県水道事業決算(企業局所管)
  • 平成30年度群馬県団地造成事業決算(企業局所管)
  • 平成30年度群馬県駐車場事業決算(企業局所管)
  • 平成30年度群馬県施設管理事業決算(企業局所管)
  • 平成30年度群馬県病院事業決算(病院局所管)

2 審査の手続

 平成30年度の公営企業会計決算の審査は、決算書類が事業の経営成績及び財政状態を適正に表示しているかを検証するため、財務諸表と関係帳票、証拠書類などを照合するとともに、地方公営企業法その他の関係法規に準拠して作成されているかを審査した。
 また、事業が常に経済性を発揮するとともに、その本来の目的である公共の福祉を増進するように運営されているかどうか、経営の分析を行うとともに、関係職員から説明を求め、定期監査及び例月現金出納検査等の結果も考慮して慎重に実施した。

第2 審査の結果

 決算諸表は経営成績及び財政状態を適正に表示しており、その計数は正確である。
 事業の運営に当たっては、経営の基本原則に従って、経済性の発揮と、その本来の目的である公共の福祉の増進に意を用い、おおむね適正に運営されたものと認められた。

参考:定期監査等における指摘事項等の状況
監査結果 内容
指摘事項
(適正を欠くと認められ、改善を要するもの)
該当なし
注意事項
(軽易な誤りがあり、改善を要するもの)
該当なし

1 事業運営

(1)企業局事業

ア 総括意見

 企業局所管の6事業全般にわたる経営状況をみると、経常収益は20,238百万円で前年度に比べ1,574百万円、7.2%減少し、経常費用は15,538百万円で前年度に比べ1,169百万円、7.0%減少した。経常収益と経常費用との差引は、4,701百万円の経常利益となったが、前年度に比べ405百万円、7.9%減少した。
 当年度は、電気事業において販売電力料が404百万円増加した一方で、団地造成事業において分譲収益が2,012百万円減少したことなどにより経常収益が減少した。また、団地造成事業において造成原価が1,334百万円減少したことなどにより経常費用も減少した。
 この結果、経常収益の減少が経常費用の減少を上回ったため、全体としては2期連続の減収減益となったものである。
 また、この経常利益に特別損益を加えた純損益は、3,111百万円の純利益となり、前年度に比べ2,113百万円、40.4%減少した。これは、経常利益の減少に加え、駐車場事業において、駐車場施設一式を高崎市へ譲与したことによる減損損失を計上したことなどにより、特別損失が2,218百万円増加したことによるものである。
 令和元年度が最終年度である「群馬県企業局経営基本計画」(平成28~31年度)(以下「基本計画」という。)は、全体的には、目標達成に向けておおむね順調に進捗しているところであるが、今後も各事業を将来にわたって安定的に継続していくため、効率的な経営に努めるとともに、引き続き、人口減少社会における「群馬の未来創生」に積極的に貢献していくことが望まれる。
 なお、事業別の審査意見は次のとおりである。

イ 事業別意見
(ア)電気事業

 事業収支の状況をみると、総収益は7,932百万円で前年度に比べ464百万円、6.2%増加し、総費用は5,948百万円で前年度に比べ134百万円、2.3%増加した。これは主に、電力受給契約において販売電力料の平均単価が上昇したことにより電力料金収入が増加したことなどによるものである。
 この結果、純利益は1,984百万円で前年度に比べ330百万円、19.9%増加し、増収増益の決算となり、一定の純利益及び内部留保資金は確保されることになる。
 当年度は、平年と比較して少雨であり、河川流量が少なかったことなどの影響により、水力発電所の電力量が目標を下回ったため、供給目標達成率は90.7%と前年度に比べ9.6ポイント低下した。
 平成25年度から再生可能エネルギー固定価格買取制度の適用を受け、さらに、平成29年度からの売電契約の更改により販売電力料の平均単価が上昇したことなどにより、安定した電力料金収入の確保が図られている。
 しかし、平成25年4月に閣議決定された「電力システムに関する改革方針」に基づき、平成28年4月に卸規制の撤廃や小売事業の全面自由化が実施され、さらに令和2年には送配電事業の法的分離が行われる予定であることなど、近年、電気事業制度の枠組が大きく変化している。
 このような状況のなか、今後も、電力の安定供給、効率的な事業運営、新規開発への取組及び地域との関係強化を図りつつ、基本計画の目標達成に向けて、着実な事業推進に努めていく必要がある。

(イ)工業用水道事業

 事業収支の状況をみると、総収益は2,041百万円で前年度に比べ75百万円、3.8%増加し、総費用は1,529百万円で前年度に比べ34百万円、2.2%減少した。これは主に、東毛工業用水道における契約水量減量に伴う負担金を特別利益へ計上したことによるものである。
 この結果、純利益が512百万円で前年度に比べ108百万円、26.9%増加し、増収増益の決算となった。
 経常損益では、減価償却費の減などにより営業費用が41百万円減少するなどしたため、経常利益は前年度に比べ33百万円、8.3%増加して428百万円となった。
 当年度の企業債及び他会計借入金の償還額は729百万円、年度末の残高は7,809百万円で、前年度末に比べ6.2%減少したが、今後も長期間にわたって償還が続くため、償還資金の確保について留意する必要がある。
 平成30年度の年間契約水量は、前年度に比べ、渋川工業用水道は0.03%増加し、東毛工業用水道は1.2%減少した。
 今後も引き続き、老朽化した施設の計画的な改修、耐震化の推進及び放射性物質を含む浄水発生土への対応などを通じて工業用水の安定供給を図るとともに、基本計画期間における年間契約水量の確保を達成できるよう、受水企業の契約水量の維持や新規の受水契約獲得などの営業活動を強化して、収入の確保に努める必要がある。

(ウ)水道事業

 事業収支の状況をみると、総収益は6,710百万円で前年度に比べ221百万円、3.2%減少し、総費用は4,770百万円で前年度に比べ156百万円、3.2%減少した。
 この結果、純利益は1,940百万円で前年度に比べ65百万円、3.2%減少し、減収減益の決算となった。
 経常損益では、減価償却費の増などにより、営業費用が126百万円増加するなどしたため、経常利益は前年度に比べ89百万円、4.4%減少して1,914百万円となった。
 県央第一水道、新田山田水道、東部地域水道、県央第二水道の4施設の年間給水計画量に対する給水実績量は100.0%で、安定した水道用水供給が行われていると認められる。
 当年度の企業債の償還額は1,537百万円、年度末の残高は15,290百万円で、前年度末に比べ8.5%減少したが、今後も長期間にわたって償還が続くため、償還資金の確保について留意する必要がある。
 今後も引き続き、老朽化した施設の計画的な改修、耐震化の推進及び放射性物質を含む浄水発生土への対応などを通じて安全で安心な水道用水の安定供給を図られたい。
 また、給水量は基本計画の目標とする計画量を確保する結果となり、基本計画の目標達成に向けて、おおむね順調に進捗しているところであるが、引き続き、基本計画期間における年間給水量の確保などにより経営の健全性維持に努められたい。
 なお、新田山田水道及び東部地域水道は、群馬県企業局の水道用水卸供給事業と群馬東部水道企業団(以下「企業団」という。)の末端給水事業とを統合し、安全かつ安心な水道水の安定的な供給の更なる向上を図ることを目的とし、令和2年4月1日に企業団へ事業を譲渡することが決定されている。
 今後は、適正かつ円滑に引継が行われるよう手続を進められたい。

(エ)団地造成事業

 事業収支の状況をみると、総収益は2,853百万円で前年度に比べ1,967百万円、40.8%減少し、総費用は2,492百万円で前年度に比べ1,332百万円、34.8%減少した。これは主に、分譲収益及び造成原価がそれぞれ減少したことによるものである。
 この結果、純利益は360百万円で前年度に比べ635百万円、63.8%減少し、減収減益の決算となった。
 経常損益では、259百万円の経常利益となったものの、前年度に比べ688百万円、72.6%減少した。
 基本計画では、平成28年度から平成31年度までの間に、新規産業団地造成面積を80.7ヘクタール、産業団地の分譲面積を60ヘクタール、住宅団地の分譲区画数を70区画とする目標を定めている。これに対し、新規産業団地の造成はおおむね計画どおり進められている。また、平成30年度末までの産業団地及びその他団地の分譲面積は約76.1ヘクタール(受託工事を含めると88.5ヘクタール)となっており、既に基本計画の目標に到達している。その一方で、住宅団地の分譲区画数は26区画にとどまっていることから、基本計画の目標達成に向けて、より一層努力することが必要である。
 また、当年度の企業債の償還額は437百万円で、年度末の残高は867百万円となっており、順調に償還が進んでいる。
 今後の産業団地の造成に当たっては、企業や市町村の様々なニーズに対応した造成及び早期分譲に努める必要がある。また、住宅団地分譲においては、当年度は9区画の分譲にとどまったことから、住宅団地の販売増加に向け、より一層努力することが望まれる。

(オ)駐車場事業

 駐車場事業は、高崎市の要望に基づき、高崎駅西口に「ウエストパーク1000」を同市と共同で設置し、平成13年度から同駐車場の営業を行っていたが、建設に要した借入金の償還が完了した時点で同市に移管することを前提として開始した事業であり、平成30年度末に償還が完了したことから、平成31年4月1日付けで事業資産を同市に譲与した。
 事業収支の状況をみると、総収益は704百万円で前年度に比べ555百万円、373.1%増加し、総費用は2,569百万円で前年度に比べ2,421百万円、1,625.7%増加した。これは主に、駐車場事業の廃止に伴い、長期前受金を特別利益へ計上した一方で、関連資産を高崎市へ譲与したため特別損失を計上したことによるものである。
 この結果、純損失が1,865百万円となったが、資本剰余金の全額を取り崩して損失を処理したため、実質的な損失は発生していない。
 駐車場事業は平成30年度末をもって廃止し、会計を閉鎖した。

(カ)施設管理事業

a 全体

 事業収支の状況をみると、総収益は868百万円で前年度に比べ30百万円、3.6%増加し、総費用は687百万円で前年度に比べ16百万円、2.4%増加した。これは主に、ゴルフ場事業において使用収益が増加したことやゴルフ場管理費が増加したこと、賃貸ビル事業において賃貸収益が増加したことによるものである。
 この結果、全体の経常利益及び純利益は181百万円で、前年度に比べ14百万円、8.3%増加し、増収増益の決算となった。
 なお、当年度の電気事業会計から借り入れた借入金の償還額は163百万円、年度末の残高は1,385百万円で、前年度末に比べ8.9%減となったが、今後も長期間にわたって償還するため、償還資金の確保について留意する必要がある。
 今後の事業の運営に当たっては、以下の事業別に記された留意点を踏まえ、取り組むことを望むものである。

b 格納庫事業

 格納庫事業については、賃貸会社のうち1社が平成30年6月末で退去したことなどにより格納庫賃貸収益が4百万円減少するなどしたものの、15百万円の純利益を計上した。
 基本計画では、令和元年度末の格納庫利用率は66%を目標としている。これに対し、当年度平均の格納庫利用率は56.6%となった。
 そのため、効率的な運営を図るべく、短期貸付など施設の空きスペースの有効活用に努める必要がある。

c 賃貸ビル事業

 賃貸ビル事業においては、前年度と同様に純損失となったものの、新たに団体が入居したことや、既入居団体が増床したことなどから賃貸収益は10百万円増加し、前年度に比べ損失額は12百万円、55.6%減少した。
 基本計画では、令和元年度末の公社総合ビルの入居率は80%を目標としている。これに対し、当年度平均の入居率は84.4%となった。
 今後も新規入居者の確保並びにホール及び会議室の利用者の増加に向け、営業活動の更なる充実を図る必要がある。

d ゴルフ場事業

 ゴルフ場事業においては、175百万円の純利益を計上し、前年度に比べ10百万円、6.0%増加した。これは、前年度は天候の影響を受けたことにより指定管理者納付金を減額したが、当年度は協定に基づく本来の納付額を計上したため、使用収益が23百万円増加したことなどによるものであり、電気事業会計から借り入れた借入金の償還額163百万円を上回っている。
 基本計画では、令和元年度のゴルフ場利用者数は250,000人を目標としている。これに対し、当年度の利用者数は261,429人で、目標を大きく上回っている。また、18ホール当たり利用人員は県内ゴルフ場の平均を上回っている。
 ゴルフ場利用者数の維持及び増加に向けて、今後も利用者サービスのより一層の向上を図る必要がある。

(2)病院局事業

 事業収支の状況をみると、総収益は29,032百万円で、延べ入院患者数が増加し入院収益が増加したことなどにより、前年度に比べ1,536百万円、5.6%増加した。総費用は29,163百万円で、給与費が増加したこと、手術件数の増加や高額薬剤の使用等により材料費が増加したこと、減価償却費が増加したことなどにより、前年度に比べ1,205百千円、4.3%増加した。
 この結果、純損失は131百万円で、前年度に比べ赤字額が331百万円減少した。
 病院別にみると、精神医療センターは298百万円の純利益となり、前年度に引き続き黒字決算となった。心臓血管センターは176百万円、がんセンターは252百万円、小児医療センターは1百万円の純損失となり、赤字決算となった。
 県立病院は、それぞれの専門分野において高度専門医療を担い、施設整備や高額医療器械導入などの設備投資が行われており、その財源として発行した企業債の残高は18,408百万円となっている。前年度に比べ残高は2,063百万円減少しているものの、今後、多額の償還資金が必要となることに加え、診療報酬は近年抑制傾向であり、改定による大きな収入増は見込めないことや、人口減少、消費税率の引上げによる影響などにより、病院経営は依然として厳しい状況が続くことが予想される。
 このような経営環境の中、医療技術の向上を図り、県民に安全で安心な高度・専門医療サービスの提供を続けていくためには、人材の確保と定着及び職員の資質向上に向けた取組を強化することに加え、地域医療連携などによる病床利用率の向上など、経営の健全化に向け、より一層経営改善に努める必要がある。今後の事業運営に対しては、次の事項を望むものである。
 (注)上記において表示した各病院の金額・比率は、病院局総務課分として計上された収益及び費用を各病院に振り分けて算出したものである。(総務課は管理部門であり、医業を実施していないため)

ア 経営の健全化を図るための取組について

 県立病院の経営の健全化については、平成30年3月に「第四次群馬県県立病院改革プラン」(平成30~令和2年度)(以下「第四次改革プラン」という。)を策定し、「第三次群馬県県立病院改革プラン」(平成27~29年度)で定めた役割を継承しつつ、患者増へつながる魅力ある高度・先進医療への挑戦や一歩踏み出した収支改善の取組を推進し、一般会計繰入金を抑制しながら、計画期間内において経常収支を黒字化させることを目標としている。
 第四次改革プランで定めた平成30年度の経常収支、医業収支の目標数値と決算数値とを比較すると、目標数値には達していないものの、地域医療連携の強化による積極的な患者の受入れ等により医業収益が増加し、純損失は病院局が設置された平成15年度以来最少の131百万円となり、収支改善の兆しがみられた。
 今後も、第四次改革プランに定めた目標の達成に向けて、更なる病院運営の効率化と経営改善に努められたい。

イ 高度先進医療従事者の確保と資質の向上について

 県立病院には、地域における高度先進医療を担う役割がある。高度で専門性の高い医療を推進するためには、これを支える人材の育成が必須であり、医療従事者の確保と資質の向上は、第四次改革プランにおいて重点的に取り組む項目の一つとされている。
 平成30年10月には、がんセンターが県内で初めてがんゲノム医療連携病院に指定され、また、令和元年6月には、同センターに手術支援ロボットが導入された。これら新しい治療法や高度医療器械等が十分にその機能を発揮し、県民に高度な先進医療を安定的に提供することができるよう、また、必要な医療サービスの提供を維持できるよう、引き続き、医師、看護職員をはじめとする専門性の高い医療従事者の確保及び定着に努めるとともに、研修などによる在職医療従事者の育成及び資質の向上に努める必要がある。

ウ 安全・安心な医療の提供について

 近年の医療事故に係る報道により、県内の医療機関における医療の透明性、医療に関わる場所での安全性について、県民の意識が高まっている。
 また、第四次改革プランにおいて取り組む重点項目の一つに、安全・安心な医療の提供を挙げている。
 県立病院において、平成29年度に発生した医療事故及びヒヤリ・ハット事例の報告件数は、医療事故が20件で前年度と比べ16件減少し、ヒヤリ・ハット事例が5,796件で前年度と比べ1,011件増加した(平成30年度公表)。
 ヒヤリ・ハット事例が増加した要因は、危険レベルの低い事例も報告するよう徹底した結果によるものであり、今後、事故等の実態や潜在的なリスクの把握に役立てられたい。
 地域の拠点病院として、県民が安心して安全な医療を受けられるように、職員の意識を向上させるとともに、今後も、徹底した医療安全対策に取り組む必要がある。

平成30年度群馬県公営企業会計決算審査意見書(全文)(PDF形式)

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