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群馬県社会的養育推進計画の中間見直しについて
1 計画策定の趣旨
群馬県家庭的養護推進計画(策定)<平成27年度~平成41年度>
社会的養護の充実については、厚生労働省において、平成23年7月に「社会的養護の課題と将来像」が取りまとめられ、その中で、社会的養護は、原則として家庭養護を優先するとともに、施設養護もできる限り家庭的な養育環境の形態に変えていく必要があるとされ、施設の本体施設、グループホーム、里親等の被措置児童数の割合を3分の1ずつにすることが目標と掲げられました。
これに沿って、児童養護施設及び乳児院における小規模化及び家庭的養護の推進を実現していくために、平成24年10月に「児童養護施設等の小規模化及び家庭的養護の推進について」が取りまとめられました。
これらの報告では、虐待を受けたこども等、家庭での養育に欠けるこどもに対しては、可能な限り家庭的な環境の下で愛着関係を形成しつつ養育を行うことが重要であり、原則として、家庭養護(里親、ファミリーホーム)を優先するとともに、児童養護施設等における施設養護も、施設の小規模化、地域分散化を行い、できる限り家庭的な養育環境の形態に変えていく必要があるとされました。これを受けて、できるだけ家庭的な環境のもとで児童を育てることができるよう、施設のケア単位の小規模化や里親委託を推進するため、本県の実情に即しながら、そして、15年後の将来を見据えながら、平成26年度に「群馬県家庭的養護推進計画(平成27~41年度)」が策定されました。
群馬県社会的養育推進計画(改定)<令和2年度~令和11年度>
その後、平成28年に児童福祉法等の一部を改正する法律が成立し、昭和22年の制定時から見直されてこなかった理念規定を改正し、こどもが権利の主体であることを位置付けるとともに、こどもの家庭養育優先原則が明記されました。さらに平成29年5月には、児童福祉法及び児童虐待の防止等に関する法律の一部を改正する法律が成立し、在宅での養育環境の改善を図るため、保護者に対する指導への司法関与や、家庭裁判所による一時保護の審査の導入など、司法の関与の強化等がなされました。
これらの法改正を受けて、厚生労働省において取りまとめられた「新しい社会的養育ビジョン」では、こどもの最善の利益を念頭に、「社会的養護の課題と将来像」を全面的に見直し、代替養育としての性格も有する一時保護改革、里親への包括的支援体制の在り方としてフォスタリング機関事業の構築、施設の高機能化及び多機能化・機能転換、小規模かつ地域分散化、パーマネンシー保障としての特別養子縁組の推進と養親やこどもへの支援、こどもの自立支援などが示されました。
こうした理念のもと、「家庭養育優先原則」を徹底し、こどもの最善の利益を実現していくことが求められていることから、令和元年度に「群馬県家庭的養護推進計画」を全面的に見直し、改めて10年後の将来を見据えて、「群馬県社会的養育推進計画」として改定しました。
群馬県社会的養育推進計画(中間見直し)<令和7年度~令和11年度>
上記の計画に基づき、本県においても里親委託推進や施設の小規模化・多機能化等の各種取組を進めてきたところです。そのような中、令和4年6月に児童福祉法等の一部を改正する法律が成立しました。
この改正内容を計画に適切に反映する必要が生じるとともに、これまでの計画では、全国の自治体における記載内容の充実度にばらつきがある点や、一部の項目にしか整備目標が設定されていない点、PDCAサイクルの運用の視点が不十分であるといった点などが課題とされていたことから、令和6年度にこども家庭庁から示された新たな策定要領に基づき、中間見直しを実施したものです。
2 計画の位置づけ
この計画は、「「都道府県社会的養育推進計画」の策定について」(令和6年3月12日付けこども家庭庁支援局長通知)、「「フォスタリング機関(里親養育包括支援機関)及びその業務に関するガイドライン」について」(平成30年7月6日付け厚生労働省子ども家庭局長通知)、「「乳児院・児童養護施設の高機能化及び多機能化・機能転換、小規模かつ地域分散化の進め方」について」(平成30年7月6日付け厚生労働省子ども家庭局長通知)、「一時保護ガイドラインについて」(平成30年7月6日付け厚生労働省子ども家庭局長通知)に基づく「都道府県推進計画」として位置付けられるものです。
令和2年に策定・公表された「新・群馬県総合計画(ビジョン)」との関係においては、こども分野の個別基本計画に位置づけられています。同分野の最上位計画であり、こども基本法第10条第1項に規定する都道府県こども計画を始めとした様々な性質を有する「ぐんまこどもビジョン2025」と調和するものとなっています。
なお、「子ども・子育て支援法」において、都道府県は「都道府県子ども・子育て支援事業支援計画」を策定することとされており、同計画には、「保護を要する子どもの養育環境の整備(略)その他の子どもに関する専門的な知識及び技術を要する支援に関する施策の実施に関する事項」(同法第62条第2項第4号)として、社会的養育の施策に関する事項を定めることとされています。このため、本計画については、「都道府県子ども・子育て支援事業支援計画」の一分野としての位置付けにもなることから、それとの整合性に留意しながら策定するものです。
3 計画の期間
本計画は平成27年度を始期とする令和11年度までの15年間を計画期間としますが、平成28年改正児童福祉法の理念に基づき、令和元年に全面的な見直しを行い、取組内容や目標値の修正を行うとともに、計画の名称を群馬県社会的養育推進計画としました。さらに、令和6年には中間見直しを行い、社会情勢に合わせて基本施策を見直すとともに、評価のための具体的な指標を取り入れました。
計画期間中は、進捗状況について毎年度検証するとともに、令和9年度末を目安に進捗状況の自己点検・評価の結果を踏まえ、必要な場合には、計画の見直しを行って取組の促進を図ることとします。
また、計画の推進に当たっては、各児童養護施設及び各乳児院が作成する計画内容も踏まえながら取り組むこととします。
4 計画の基本的な考え方
社会的養育を必要とするこどもの最善の利益の実現
令和4年改正児童福祉法の理念のもと、こどもが権利の主体であるということを十分に踏まえ、こどもが家庭において健やかに養育されるよう、関係機関が協力し、保護者や家庭を支援していきます。
また、代替養育が必要なこどもについては、家庭養育優先原則を徹底し、こどもの最善の利益の実現を目指します。
こどもが健やかに育ち、社会で活躍できるよう、様々な関係機関・関係者との連携を図りながら計画の推進に取り組んでいきます。
1 こどもを健やかに育てる<こどもの健全育成の視点>
家庭の養育・監護機能の低下、不安定な経済状況により、家庭において適切な養育を受けることができないこどもたちが安心して健やかに成長できるよう、里親、ファミリーホーム、乳児院、児童養護施設による社会的養育の充実を図ります。
- 代替養育を必要とするこどものパーマネンシー保障に向けた取組
- 施設の高機能化及び多機能化・機能転換、小規模かつ地域分散化の推進
- 里親制度の普及推進及び里親の確保、里親委託の推進
- 里親・ファミリーホームへの支援
- 里親養育の包括的な支援(フォスタリング業務の実施)
- こどもの状況に応じた一時保護環境の整備
- 障害児入所施設における支援
2 こどもを守る<こどもの安全を守る視点>
こどもの虐待は、家庭における様々な問題に起因することもあることから、虐待が深刻化・顕在化する前に、学校や医療機関等の関係機関と連携し、早期発見・早期対応に努め、家庭に対する様々な支援の充実を図ります。
- 児童虐待の予防・防止の取組強化
- 警察、学校及び医療機関等の関係機関との連携強化
- 被虐待児童の早期保護
- 市町村のこども家庭支援体制の構築等に向けた取組
- 支援を必要とする妊産婦等の支援
3 こどもを支える人を育てる<こどもの支援者育成の視点>
こどもを日々直接処遇する施設職員や里親の資質向上を図るとともに、児童相談所や市町村の職員の専門性の向上を図ります。また、各地域で活動している子育て支援組織や地域住民が、社会的養育の支援者となり得るよう育成を進めていきます。
- 施設職員及び里親の専門性の向上、人材の確保
- 児童相談所職員の専門性の向上
- 児童家庭支援センターの機能強化及び設置促進
4 こどもの将来への自立を支える<こどもの自立支援の視点>
地域の中でこどもの個性が尊重されつつ、こどもが将来自立して生活できるよう、地域社会全体で様々な関係者により支えていきます。
- こどもの自立支援策の強化
- こどもの権利擁護体制の整備(意見聴取・アドボカシー)
- アフターケア(施設退所並びに里親及びファミリーホーム委託解除後の相談支援)への取組