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令和5年度第1回群馬県文化審議会の概要(通算24回目)
1 開催日時
令和5年11月17日(金曜日)9時30分~11時15分
2 場所
県庁17階 地域創生部会議室(オンライン参加含む)
3 出席者
委員8名
4 議題及び主な意見
(1)魅せる群馬の文化発信プラン(第2次群馬県文化振興指針)評価
令和4年度(2022年度)評価、総合評価(2018~2022年度)について、令和5年8月31日開催の「文化振興指針及び文化振興基金部会(以下「部会」とする)での評価結果を共有し、内容(資料1、2)で承認された。
(部会長)
令和4年度評価について、評価基準のCは「合格ラインをクリアしている」という認識のもとで評価した結果である。まだ、コロナの影響が残っている期間でもあり、数字的には厳しい状況の事業もあったが、様々な制約下での文化を発信する側の努力を加味した評価となった。
また、温泉文化の推進事業は、全国的な取組がスタートした年であり、その牽引役が群馬県であったことも踏まえ、A評価をつけた。
総合評価は、基本的に令和4年度評価結果を基軸に評価したが、それに先立つ過去の年度評価も加味した結果となった。
(2)令和5年度文化振興課所管事業説明
各係から事業説明を行った後、意見交換を行った。
(委員)
- 富岡製糸場の解説員について、地元のボランティアが観光ガイドしてくれた。文化をめぐる意味ではよいが、他地域の世界遺産のガイドと比べると、地域のボランティアの領域を出ない印象であった。観光誘因として、もう少し力入れた方がよいのではないか。施設もカバーで覆われた箇所が多く、写真が撮れない場所も多かった。ガイドとしても、文化を保存する方向に向いているように感じられた。
- 高崎芸術劇場について、全国を興業でまわるトップミュージシャンの人からの評価が高い。群馬に来たことのない人達が、来県するきっかけになればと思う。
(委員)
- 近代美術館のコレクション画像について、チラシ等では多く掲載されているが、近代美術館のHP上ではあまり公開されていない。もっと県民内外から見られるようにしてほしい。
- 温泉文化の登録活動、県民運動になっていない。県議会での努力もあるので、執行部と県議会が連携しながら登録活動を進めていってほしい。
- 富岡製糸場については、繰糸所の自動繰糸機を稼働させて、生糸生産に入ってもよいと考える。
(文振課)
富岡製糸場の解説は、元々地元のボランティアの活動から始まっている。文化庁の補助金による講習会受講等でレベルアップを図っているところだが、課題は多い。
(文振課)
ガイドの服装を富岡製糸場に関連したものにしたり、工事のカバーについても、アートを描いたり、当時の様子を投影したりするだけでも、印象が変わると思うが、うまく進んでいないところ。今後も世界遺産をもつ4市町長と知事の意見交換の場を設けていく予定なので、引き続き検討していきたい。
(文振課)
温泉文化について、引き続き県議会や全国の関係者と連携しながら、全国的な盛り上がりをつくっていきたい。
(文振課)
今後、収蔵品のデジタルアーカイブ化を進める中で、画像の公開方法についても検討していきたい。
(委員)
- 「群馬パーセントフォーアート」推進に興味がある。美術館博物館の財政状況について、シネマテーク高崎で上映予定の「わたしたちの国立西洋美術館」は美術館の舞台裏を描いたドキュメンタリー映画でも、予算が潤沢でない現状が取り上げられている。また、国立科学博物館のクラウドファンディングの話題もニュースになっている中、県立の美術館博物館についても、予算が苦しい状況をもっと県民に知ってもらう必要があるのではないか。
- デジタルミュージアム事業は、県内外の人がアクセスしやすい環境で実施してほしい。また、収蔵庫の場所もどんどん足りなくなっている状況だと思うが、今後の計画について教えてほしい。
(委員)
- 「群馬パーセントフォーアート」推進条例、昨年度の審議会で初めて知った。ほとんどの県民にまだ知られていないのではないか。全国初の取組ではあるが、非常に難しく欧州では1世紀前に実施して頓挫、群馬はどのようにやっていくのか興味深く思っている。アーティスティックGUNMA(AIR)で対象となる若手アーティストは、どのように選考するのか。
- 高崎芸術劇場は満席状態が続いている印象。このような施設が高崎に出来たことを誇りに思う。
(文振課)
「群馬パーセントフォーアート」推進条例の目指す理念を実現するにあたり、県だけで取組を進めるのは難しいため、企業等にも当該条例の理念を御理解いただき、どのように取組に参加いただけるかを考えているところ。アーティスティックGUNMAでは、若手アーティスト支援は勿論のこと、福祉施設への訪問など、様々な分野・地域への波及効果も含めた条例の趣旨に沿った内容で進めている。
(文振課)
- 美術館博物館の運営費を確保していく方法を引き続き検討していきたい。
- 収蔵庫の収蔵状況は、全体として逼迫している。館によっては内部で収まっていないところもある。収蔵庫自体を新しく拡張することはすぐに出来ないため、収蔵品の整理等様々な方法を組み合わせて対応していきたい。
- デジタルミュージアムは1月にGメッセ、1~2月に県庁昭和庁舎で展示予定。今後広く周知していきたい。
(文振課)
新・群馬県文化振興指針は、今後の社会の変化(人口・ニーズ等)を踏まえて作成した。美術館博物館の運営費の確保の問題は勿論のこと、館自体が新しい時代に対応していかないと成り立っていかない。いかに県民のニーズに応えていくかが大事だと思っている。
(委員)
- アーティスティックGUNMA(AIR)や障害者芸術文化活動センターの事業の詳細を知りたい。
- 文化観光推進法による拠点計画では、中間確認を実施しているか。
- 群馬交響楽団改革プランの進捗について教えてほしい。
- 歴史博物館について、デジタルツールを取り入れるなど、非常に展示に関する努力が行われていると感じた。文化観光推進法の認定計画で特別な予算が割り当てられているのか。
- 近代美術館、予算が潤沢でない中でも工夫して企画展を実施していると感じた。鈴木ヒラクの企画展もよかった。アーツ前橋の10周年企画展、相当な事業費がかけられている。行政だけでは難しく、企業からの資金も相当集めて実施していると思うが、県立でも民間から資金を募るやり方が考えられるのではないか。
(委員)
- アーティスティックGUNMA(AIR)について詳細を知りたい。国内だけでなく、海外のアーティストを招聘するAIRには取り組んでいるか。
- 富岡製糸場の世界遺産の価値は、施設そのものよりも、その時代に世界的な役割(絹の供給、アメリカの女性の社会進出を後押し等)だと思っている。富岡製糸場に関する様々な取組を実施しているが、世界的な価値や位置づけがあまり紹介されていない、活かされていないように感じる。今度どのような方針で富岡製糸場をPRしていくのか。仮に富岡製糸場の施設がなくなっても、富岡製糸場の果たした価値は残ると思う。施設を保存することだけに目的が偏ってしまうのはよくないのではないか。
- 文化観光の推進について、展示方法の改良など現地での取組は行われているが、そもそも群馬に埴輪に関するイメージが持たれているか、認知度の把握ができていないように思う。温泉も含め、群馬の持つ認知度を統一したフォーマットで調査すると、今後の評価もしやすいのではないか。
- 群馬交響楽団の改革プランの目標「人口100万人あたりの演奏会入場者数1位」について、入場者数は県民に限った数か、それとも住所地問わず全ての入場者を想定しているのか。県民に愛される楽団の1位を目指すのか、多くの入場者を確保できる楽団を目指すのか、その方向性について教えてほしい。また、楽団のレベルアップよりも鑑賞機会の増加の方が、入場者数の増加に直結すると思う。
(文振課)
AIR滞在場所は、榛名湖アーティスト・レジテンス(高崎市)、Dive INN Kiryu(桐生市)、シロオニスタジオ(藤岡市)、うた種・かたやレジテンス(中之条町)、前橋市内のホテル等。アーティストは、彫刻、ドキュメンタリー制作、コミュニケーションデザイン(障害福祉とデザインでコラボ)、現代美術、染色等の分野で制作している。ドキュメンタリー映画の制作では、福祉施設で撮影し、前橋市のまえばしシネマハウスで上映予定。染色のラーニングプログラムでは、繊維業者の方々との交流も生まれるなど、パーセントフォーアートとの関連も考えながら実施している。なお、滞在アーティストには外国の方もおり、シロオニスタジオ(元々外国の方が多く利用しているレジデンス)にブラジル出身のアーティストが滞在した。
(文振課)
- 改革プランの目標における「入場者数」は県民に限ったものでなく、全体の数値。
- プランの進捗状況について、策定時は地方の交響楽団として入場者数3位、目標値に対しては実数で約17,000人の不足(平成30年時点)であった。現状、稼働日数が224日(令和4年度、演奏会リハーサル含む)と比較的高い値であることから、更に公演数を増やして入場者数の増加を図ることは難しい。そのため、入場率の低い演奏会の底上げを行うことで、入場率80%を目標に入場者数増加を試みている。ただ、社会全体の人口減少(特に児童生徒)の影響もあり、12,000人の減少が想定されている。高崎芸術劇場など、群馬交響楽団の持つ強みを活かした取組を検討していきたい。
(文振課)
目標の「入場者数」について、群馬交響楽団に限れば、県民の入場者数の把握は可能かもしれないが、他の交響楽団に同様のデータがなく、比較が困難になるため、全入場者数で目標設定している。また、楽団のレベルアップについては、東京からの集客を増やして安定的な楽団運営につなげる意図もある。
(文振課)
- 富岡製糸場の拠点計画は、令和5年~の5年間の計画期間のため、来年度以降取組状況を評価予定。
- 歴史博物館の拠点計画は、今年で4年目。これまでの実績は、文化庁のフォローアップ調査や中間検査を受ける中で、KPIの達成状況100~120%の評価となっており、評価結果に応じた補助金の配分が行われている。拠点計画の補助金は、国宝展示室・デジタル埴輪の展示室・ストーリー性を持った展示解説等に使用。
- 観光拠点計画の他に、民間と一緒にHANIの商標の活用による商品開発、こども向けのイベント等を実施。また、都市部からの集客を増やすため、東京発着の日帰りバスツアーなども実施し、人の呼び込みにつなげている。ただ、各取組の認知度が低い状況もあるので、他の観光資源とも連携等も含めながら、検討・実施していきたい。
- 富岡製糸場の位置づけについては、世界遺産の保存管理に関する計画の中で、4市町と連携しながらどこに焦点をあてて取り組んでいくか考えたい。また、拠点計画やレガシー事業の中でも取り上げていきたい。
(文振課)
企画展の資金収集方法について、前橋市の事例の他、全国でも取組が増えてくると思うので、そういった事例を参考にしながら考えていきたい。
(文振課)
- 国立の美術館博物館でも、民間企業がスポンサーになった企画展が実施されており、近代美術館でも上毛新聞と「アンコールワット展」を一緒に実施したことがある。
- 群馬交響楽団の目標について、県民の入場者数増加だけでは達成できない値のため、高崎芸術劇場など、群馬ならではの強みを活かしながら、他県からの集客増加にも努めていきたい。
- 認知度把握方法について、世界遺産は既に統一したフォーマットでWEBアンケートを実施しているが、個別にアンケートを実施したら把握出来なかった結果が収集できた(例:富岡製糸場の来場者アンケート結果において、約7割が他の3資産を知らないと回答)
(委員)
- アーティスティックGUNMA(AIR)に関わる中で、やはりアーティスト活動を支える土壌が出来ていないと感じる。レジデンス施設に滞在していても地域との交流が少なかったり、展示に制限があったり、ホテルなど単なる宿泊施設に滞在するしかなかったりする現状では、このまま続けていても、砂漠に水をまくような感覚に陥る。台湾等アジアでは、レジデンスに対する補助が多く、レジデンスが集まった芸術特区(アーティストビレッジ)も生まれており、「群馬パーセントフォーアート」推進条例でこのような地域が出来たらよい。
- 美術館博物館のクラウドファンディングについて、民間の力を借りて資金調達するのはよいが、行政が文化に対する予算を削減していくことには、非常に危機感を持っている。
- デジタル活用について、全国的に取組が推進されているが、どこもプロジェクションマッピングに落ち着くパターンが多い印象。デジタルはもっと色々出来る。芸術文化なのか、エンターテイメントなのか方向性が曖昧、公金を使って実施すべきなのか疑問が残るところ。
- 富岡製糸場は閉鎖的な印象がある。施設管理が重視されているので、歴史的な役割などを学ぶ場所として、展覧会や朗読会、映画鑑賞などで使用されるとよい。
- 県内には存続の危機にある小規模な温泉地も多くあるので、温泉文化推進の取組の中で、経営難に陥っている施設への補助等、検討出来ないか。AIRへの活用等を検討してほしい。
- 群馬交響楽団の活動がどれだけ県民に還元されているか。例えば、移動教室では楽団員が多く在席する中で、一人あたりどれだけ地元に貢献出来ているのか、詳しく分かるとよい。
(委員)
- 富岡製糸場で音楽のイベント等が実施されているが、イベント実施者の関係者の来場者が多いように感じる。音楽協会や合唱連盟など、様々な分野の団体と連携した利用を増やしていってほしい。
- 演奏会の入場者数の増加においては、選曲も重要な要素である。多角的な選曲をする指揮者を招聘するなど、工夫した方がよい。また、群馬交響楽団は移動教室等、地域に貢献しているが、声楽など県内の他分野との連携が弱いように感じる。例えば、ぐんま新人演奏会の受賞者とのコラボ等が考えられないか。現在、新人演奏会と同様の趣旨のコンクール等が多く開催されていること、音楽大学に進学する生徒が少なくなってきたこと等の理由により、新人演奏会の応募者が少ない状況である。楽団のレベルアップは勿論大事だが、群馬県の若手アーティストの育成につながるような取組も併せて行っていってほしい。
- 今年、県の合唱連盟では、長野県支部との交流事業を行い、大きな成果を上げた。文化振興を考える中で、県内における取組だけでなく、他地域との交流も考えていく必要がある。
(文振課)
- 「群馬パーセントフォーアート」推進については、今後推進会議を設置して内容を検討。アーティストが集う場所づくりについても、引き続き対応を考えていきたい。
- 美術館博物館のクラウドファンディングについて、ご指摘のとおり複数回は難しい。行政の支援の体制について改めて考える必要がある。
- 集客に必要なポイントとして、昔は「モノ」、コロナ禍は「コト」、そして今後は「イミ」になっていく。どんな背景や意味があって存在しているのか、その価値に惹かれて人が集まる時代に変わった。富岡製糸場もこのような視点を持った上で、これからの観光・地域振興方法を検討していきたい。
- 温泉地の振興事業について、モデル事業を検討したが、対象となる温泉地や行政の余力が少ない状況にあり、なかなか思うように進まないところ。
- 群馬交響楽団の地域貢献について、今回の意見交換で改めて県内の音楽の裾野を広げていく存在としての重要性を感じた。
5 会議資料
- 次第 (PDF:32KB)
- 資料1 魅せる群馬の文化発信プラン(第2次群馬県文化振興指針) 令和4年度(2022年度)評価
- 資料2 魅せる群馬の文化発信プラン(第2次群馬県文化振興指針)総合評価(2018~2022年度)
- 資料3 令和5年度文化振興課所管事業 概要