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水試だより56号

更新日:2024年5月28日 印刷ページ表示

【巻頭】内水面漁業の発展のために

令和6年4月1日付で水産試験場長を拝命いたしました。

群馬県の内水面漁業は、アユ、ワカサギ、マス類などの和食文化と密接に関わる水産物を供給する場だけではなく、釣りや自然体験活動といった自然と親しむ機会を提供する場となっており、豊かな県民生活の形成に大きく寄与しています。

一方で近年の県内内水面漁業を取り巻く環境は、多くの地域での漁業関係者の高齢化や過疎化等の人材不足による漁場管理の困難、レジャー多様化による遊漁者の減少といった課題を抱えています。

水産試験場では、県内の水産振興を目的に、試験研究、種苗生産及び普及活動の三つの業務を行っており、これまでに県ブランド魚である「ギンヒカリ」と「ハコスチ」の育成、アユの冷水病対策などで成果をあげてきています。

群馬県では内水面漁業の今後の振興を図るため、平成26年6月に成立した「内水面漁業の振興に関する法律」に基づき、令和3年3月に「群馬県水産振興計画」を策定し、振興方針と関係者の役割を明示しました。試験研究分野ではこの計画の中で、特定疾病や県内未侵入疾病の迅速な検査方法、予防・治療技術の開発による魚病対策や漁場管理・養殖業に必要なデータをデジタル化して見える化し、誰でも担い手となれる技術の開発などを目標に研究を進めています。

また、群馬県産ブランド魚の「ギンヒカリ」と「ハコスチ」の増産に向けて、今年度から川場養魚センターと箱島養鱒センターの種卵や稚魚の生産・供給施設の整備改修を行う計画です(図1)。

今後とも、内水面漁業に携わる関係者の方々との綿密な現場課題の共有を大切にし、これまで水産試験場が蓄積してきた業務に関する専門性や技術革新の取組を通じて時代のニーズに即した研究開発を行ってまいります。関係者の皆様には、引き続き、水産試験場に対する御高配を頂けますようお願いいたします。

川場養魚センターと箱島養鱒センター画像

図1 マス類種苗生産施設

(水産試験場長 阿久津 良和)

【特集】画像解析によるアユ卵自動計数法の開発

はじめに

アユ種苗生産では、飼育池に収容する卵量を算出するために、採卵ロットごとに単位重量あたりの卵数を目視で計数しています。直径約1ミリメートルのアユ卵を1回に300〜600粒程度計数することや、最盛期には1日に複数ロットを計数することから、卵計数は非常に労力を要する作業です。そこで本研究では、省力的な卵計数手法として画像解析によるアユ卵自動計数法を開発し、その有効性を検証しました。

試験研究の具体的内容と結果

​1 方法

(1)サンプルの準備と目視による卵計数

アユ未受精卵300〜600粒相当をシャーレに入れ、デジタルカメラで撮影して供試画像としました。供試画像を拡大印刷したものについて卵数を計数し、サンプルの真の卵数としました。そして、撮影済みの卵サンプルは目視で計数し、計数時間および計数結果を記録しました。

(2)画像解析による卵計数

卵計数は画像解析ソフトェアであるImageJを用いました。画像を読み込んで2値化した後、卵と背景の輝度差から両者を分離しました。次に、接触している複数の卵が1つの卵として計数されることを防ぐため、そのような部分を検出して適切に分離しました。その後、粒子解析機能により、画像中に含まれる卵を計数し、計数に要する時間を記録しました。

(3)正確性および省力性の手法間比較

目視および画像解析による計数結果について、真の卵数との相対誤差(%)*1を求め、計数の正確性を比較しました。また、省力性の指標として、サンプルあたりの計数に要する時間を比較しました。

*1 相対誤差(%)=(計数値−真の卵数)/真の卵数×100

2 結果と考察

画像解析では、ゴミ等を卵として誤検出することや検出漏れがみられることがありましたが、目視より正確性の高い計数を行うことができました。目視では、計数値の相対誤差が負に偏る傾向がみられたため、検出漏れが多くなることが示唆されました(図2)。サンプル1つあたりの卵計数に要する作業時間は、画像解析の導入により93%縮減できました(表)。

以上のことから、画像解析によるアユ卵自動計数法は目視計数に比べ圧倒的に省力的で計数結果も正確であり、実用性が高いと判断されました。

(水産環境係 阿久津 崇)

計数値の相対誤差の画像

図2 計数値の相対誤差の比較

表 作業時間の比較
計数方法 作業時間(秒/サンプル)
目視(n=10) 1147
画像処理(n=10) 85

*2 画像解析による作業時間=(撮影)+(画像読み込み)+(画像解析)

【水産行政から】群馬県農政部蚕糸特産課水産係が誕生しました!

皆様方におかれましては、日頃から県の水産行政にご理解とご協力を賜り、厚く御礼申し上げます。令和6年度において、県の農政部が組織改編され、「蚕糸園芸課水産係」から「蚕糸特産課水産係」となり、場所も県庁18階から19階に移動しました。

今回の組織改編は、名称や場所の変更のみならず、蚕糸特産課の業務に水産試験場の予算などが新たに加わることになりました。今までも水産試験場とは連携していましたが、水産試験場の試験研究、種苗生産及び普及活動がより反映されやすくなり、県内水産業の発展に向けて、邁進できる環境が整ったと感じております。また、蚕糸特産課には、鳥獣害対策係も設置されましたので、カワウ対策なども協力して取り組みたいと思っております(図3)。

ところで、県が開発したブランド魚である「ギンヒカリ」と「ハコスチ」を含めた養殖魚は、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた上に、配合飼料価格高騰などが養殖業者の経営を逼迫させています。そこで、県は「ギンヒカリ」もしくは「ハコスチ」を生産し、条件を満たした養殖業者に対して、令和4、5年度の補正予算により、「県産ブランドニジマス配合飼料価格高騰対策支援事業」を実施し、配合飼料の購入経費の一部を補助しました。令和6年度に関しては、ギンヒカリの安定供給に向けて、養殖現場での冷凍実証を行い、有効性を確認していく予定です。

また、河川湖沼に目を向けると、県は漁業権免許切替に伴い、令和5年9月1日付で17の第五種共同漁業権を免許しました。令和6年度は、免許後、初めて本格的なシーズンの幕開けとなりますが、引き続き、カワウ対策やコクチバス駆除、アユ冷水病対策などを実施して、漁業被害軽減を図っていきます。

この他にも県内の水産に関して、漁業協同組合員数の減少や組合員の高齢化、河川環境の悪化、台風や集中豪雨による漁場や養殖場での被害など、諸問題が山積しているのが現状です。これらの問題を解決するのは非常に困難でありますが、関係者と連携して、少しでも改善できるように努めていきます。

令和6年度は新しい組織での船出となりますが、水産振興を図っていく所存ですので、引き続き、皆様のご理解とご協力をお願い申し上げます。

(蚕糸特産課水産係 神澤 裕平)

蚕糸特産課の組織図画像

図3 蚕糸特産課組織図

令和6年度職員の配置図

  • 場長 阿久津 良和
  • 次長 上村 倫恵
  • 主席研究員 田中 英樹
  • 総務係 係長(次長兼務)、角田 ひろみ、櫻木 葉子
  • 水産環境係   係長 鈴木 究真、小西 浩司、鈴木 紘子、阿久津 崇
  • 生産技術係 係長(主席研究員兼務)、清水 延浩、齋藤 駿介、田島 稔明、高橋 伸幸
  • 川場養魚センター  センター長  新井 肇、星野 勝弘、渡辺 峻、井下 眞