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群馬県インクルーシブ教育推進有識者会議(第3回)結果
1 期日
令和7年2月14日(月曜日)午後6時から午後8時
2 場所
県庁24階 教育委員会会議室(対面・オンライン併用)
3 出席者
委員(11名中9名出席)
霜田浩信委員、滝坂信一委員、是永かな子委員、伊藤駿委員、飯島邦敏委員、藤澤都茂子委員、高木沙祐里委員、清田和泉委員、池田克弘委員
モデル校
増田眞次校長
事務局
(職員16名出席)
4 内容
(1) 開会
開会
(2) あいさつ
栗本教育次長によるあいさつ
(3) 次年度の活動計画
配付資料により下記6点について、事務局が説明した。
- インクルーシブ教育推進
- モデル校の取組
- 海外視察
- 国内視察
- 理解啓発イベントの場所、内容等
- 理解促進の取組
(4)協議
- 上記説明への質疑応答
- 各委員より意見
- 各委員より情報提供
5 委員の主な意見(要旨)
(A委員)
- 今年度、行ってきた事業をどう総括し、そこから来年度に向けての必然性について説明をお願いしたい。
- このプロジェクトと連動して、町が今年度の取組をとおして、どのように考え、次年度どう考えているのかということも併せて知りたい。
- 上陽小学校が今年度の取組をとおして、こういうことがあったため、次年度はこういうことを目指しているという展望を知りたい。
- 以上の点を知ることで、このプロジェクト全体が見えてくるように思う。
(B委員)
- 大きく2点。今年度の総括に基づいて、この事業がどう結び付いているのかという点。
- モデル校としての今年度の総括、さらには次年度の展望について。
(事務局)
- 今年度を振り返り、一番の課題はインクルーシブ教育についての理解啓発が足りていないこと。学校現場も含め社会全体。
- 学校現場では、特別支援学級の学び、特別支援学校の学びを教員一人一人がどう捉え、理解しているのかという部分が足りていないと考える。
- モデル校にコラボレーターを配置する部分について、先生方がインクルーシブな授業をするにあたり、スタートの部分ではある程度のマンパワーが必要であると考えている。そのため、コラボレーターの配置を計画した。
- インクルーシブについて、徐々に先生方の理解が進めば、逆に人手がない方が子供たちは主体的に関われると考える。
- 北欧視察の際、子供たちが自分の学びたいように学んでいる姿が見られた。また、誰でも使えるイヤーマフ、パーティションがあった。本県でもモデル校に取り入れていけるように予算付けをした。
- 理解啓発イベントは県庁で行った。一番多かった参観者は県庁の職員。あとは参加した学校の先生や保護者の方等、インクルーシブに興味関心のある方が多かった。県民全体への理解啓発となると、やはり多くの人が集まる商業施設で実施できればと考えている。
- 県民、教員を含め理解啓発をどうのように行っていくのかが今後の課題である。
(A委員)
事業説明にあった内容の大元になっているのは理解啓発であると理解した。
(B委員)
理解啓発は、モデル校における先生方の理解啓発であり、インクルーシブについて先生方の共通認識をつくるという理解でよいか。
(事務局)
県内の特別支援学級等の様子を確認する中で、やはり県内全体において先生方の理解が足りていない現状がある。まずは上陽小学校の先生方に共通理解していただきながら進めていきたい。
(B委員)
県内全体の先生たちにおける理解啓発が課題であり、それをモデル校の中での実践に基づいて、どのような理解啓発を図っていくとよいか。それが課題であり、来年度の取組としたいということで理解した。
(事務局)
- インクルーシブ教育の理解は非常に難しい。我々もはじめはよく理解ができていなかった。
- はじめは、障害のある子供とない子供が一緒に学ぶことが主だと認識しがちであるが、全ての子供たちが一緒に学ぶ、全ての子供たち一人一人がエージェンシーを発揮できるようにすることが大事。
- 行政でよくあることとして、例えば義務教育課が全ての授業のあり方を進めて、特別支援教育課は特別支援のあり方を進めるといった部分がある。そういう縦割りではなく一緒にやっていかないといけない。
- 義務教育課も特別支援教育課も高校教育課もみんなで同じ考えをもって、全ての子供たちの学びをしっかり行っていこうという共通の認識をもてたことは成果の1つである。
- まだ我々の中での認識であって、学校や社会にはいっていない。そこが先ほどの課題とつながってくる。義務教育課で補足あれば願いたい。
(事務局)
- 群馬県教育委員会の中には11所属あり、群馬県教育ビジョンの実現に向けた各所属の取組を今出してもらっているところ。それを義務教育課でまとめてつくっていく。
- 一番元になっているところは、エージェンシーが発揮できる環境の構成。エージェンシーが発揮できる環境をつくるためには、心理的な安全性のあるインクルーシブな環境づくりが大元にあると考えている。
- 特別な支援を必要とする子供への支援の充実というだけではない。授業であれば教師が一方的にさせる授業ではなく、子供たちがいろいろな学び方を選ぶ。させる授業からする授業へ。
- 地域における多様な学びの促進、人権教育、道徳教育、家庭教育等、それぞれの所属で子供たちがエージェンシーを発揮できる環境の構成というものを考え、話し合っているところである。
- 障害の有無だけではなく、外国籍、不登校、性的少数者等、子供たち一人一人が抱える困り感を互いに理解し合うことが大事。キーワードは、多様性と寛容性。特別支援教育課だけで考えるのではなく、我々みんなでインクルーシブを考えないといけないと捉えている。
(B委員)
これまで有識者会議の中でも、インクルーシブ教育に関しての共通理念、共通の考え方をもっていくことが大事だと話題になってきた。教育全体のエージェンシー、その前提となってくるのがこのインクルーシブ教育なんだということで理解した。群馬県の中でのインクルーシブ教育の構造の一端が見て取れた。
(A委員)
群馬県教育委員会の中での共通の認識という話があったが、この有識者会議の中でもメンバー一人一人の認識が異なる可能性がある。共通の認識について議論する必要があると思うが、そのような場面は予定しているか。もしくは、群馬県教育委員会としての考えについて、有識者からそれぞれ考えや立場から発言するとよいのか。
(事務局)
有識者の皆さんと1つの考えでということではなく、群馬県がインクルーシブ教育を進めるにあたり、それぞれの立場から御意見をいただきたいと思っている。
(A委員)
それだと大変だと思う。共通部分と違いを確認しないまま、それぞれの立場からいろいろ発言すると収集つかなくなる可能性がある。
(事務局)
群馬県教育委員会としての共通の考え方をまず御理解いただき、それに対してそれぞれの考えに基づき御意見をいただけるとありがたい。
(A委員)
私の願いとして、群馬県が考えるインクルーシブ教育についてでもよいし、それぞれの委員がインクルーシブ教育についてどのように考えているのかでもよいので、発言する機会をもっていただきたい。
(事務局)
検討する。
(C委員)
資料1のところで、イヤーマフ、パーティションを取り入れるという話があったが各学級に複数個ないといけないと思う。モデル校は12学級程あると思うが各学級に複数個入れる予定であるのか。
(事務局)
各学級に複数個入れる。誰でも好きに使えるように配備する。
(C委員)
いろいろなオプションを自分で選び取ることに慣れていない場合、使用する機会をあえて仕組んでいく必要がある。そうでないと、置いてみたけど、使いませんでしたということがよくある。
(B委員)
イヤーマフ、パーティションは必要な子供には必要であるが、子供たちが学び方を選んでいける、自分が学びたい状況をつくっていくということであれば必ずしもそれだけではないと思う。学びを促していくためのツール、学習集団、ICT活用等、そういうオプションが今後検討されていくとありがたい。
(C委員)
資料2のコラボレーターがそれにあたると思っていた。学びを促すツールとして、ソフト面での集団づくりがコラボレーターの役割かと思う。イヤーマフ、パーテーションはハード面としての物である。コラボレーターが学びを促すためのツールとして機能する可能性があるか伺いたい。
(事務局)
子供たちがグループ学習を始める際、なかなか自分から関わりがもてない場合がある。そのようなときに関わるきっかけをつくる、必要に応じて離れる等、少しテクニカルな動きをしていただきたいと考えている。イヤーマフも使ってみたい子供が使えるように、きっかけをつくってもらいたいと考えている。
(C委員)
コラボレーターは、関わりをつなぐコーディネーター的な役割とICTに関してもアドバイスができるスーパーバイズ的な役割ができるとよい。そのような人を養成するのか。
(事務局)
そこまでは考えていない。県HP、ハローワークで募集している。
(D委員)
コラボレーターは、具体的にはどのような職種の方を募集しているのか。例えばソーシャルワーカーなのか、学校関係者なのか。
(事務局)
人手不足の時代に集まるかということも含め資格等は問わずに募集している。支援員さんの役割が違うイメージで考えている。
(D委員)
そうなると、コラボレーターのインクルーシブへの理解が必要になる。
(事務局)
コラボレーターへの研修機会を設ける予定。
(D委員)
学習環境整備としてイヤーマフ、パーティションを用意するということであるが、それだけだとニーズがある子供だけの物という意味合いが強くなってしまう。障害のない子供でも、これがあると勉強しやすいという物があると思うため、年度の初めに子供たちが意見を出し合う機会があるとよい。よい案があれば環境整備の中に組み入れることがきると、障害のための物と、みんなが使いやすい物が交わることができてよいと思う。
(事務局)
- 北欧視察の際、各教室にあるイヤーマフ、パーティションは誰でも使ってよかった。印象に残っていることとして、一番勉強ができる子供がイヤーマフを使っていた。それを使った方が周りの音が気にならなく自由進度学習ができると。
- 日本だと発達障害、聴覚過敏のイメージに思われてしまう。誰もが必要な時に使える状況をつくれるよう環境整備として入れた。イヤーマフ、パーティションだけではなく、子供たちから意見が出れば導入していきたい。
(事務局)
上陽小学校で何が必要なのか探ってもらいたい。
(B委員)
先ほど、上陽小学校の中で今年度の取組を振り返り、来年度以降に何をつなげていきたいのかと質問があったが御意見を頂戴したい。
(モデル校長)
- 子供たちがエージェンシーを発揮するためには、居場所のある学校づくりを目指すことが根底にある。居場所というのは、通常学級、支援学級、支援教室等。そこには上下の関係はなく、フラットな関係があるという前提で子供たちの多様性、それを受け入れる寛容性を育成したいと考えている。
- 今年度の主な取組は主に3点。1点目は、システムとしてのチーム担任制。子供たちが多様な教職員に関われるシステムつくり4月から行ってきた。
- 2点目は、授業づくり。現在、技能教科中心ではあるが通常学級の中に特別支援学級の子供たちが多く参加をしている。そこを一歩踏み込んで、特別支援学校の子供たちも入れるような授業づくりを目指していきたいと考えている。今年度は1年目ということもあり、特別支援学級の子供たちと特別支援学校の子供たちの交流及び共同学習の実践をしてきた。本校の児童が特別支援学校に行ったり、特別支援学校の児童が本校に来たりして交流を深めた。
- 3点目は、教職員のインクルーシブ教育に対する捉え方の共通理解を図ること。カリキュラムマネージャーや目の不自由な彫刻家を講師として招き、校内研修を行った。
- 総括で言えば1点目の多様性や寛容性を育てるシステムとしてのブロックチーム担任制は概ね子供たちや保護者の理解は進んだ。教員自身もメリットを感じている。選ぶということも含め、子供たちの自由度はかなり増している。また、先生方の裁量権が増えたことでの心理的な自由度も増している。具体的には、4、5月に保健室を利用する児童が大幅に減った。保護者の相談についてもチームで対応することで、保護者もそれに慣れてきたと感じている。
- 2点目の授業の交流については、今のところ特別支援学級と特別支援学校の交流にとどまっている。関わるからこそ学びがあるというものについて、それぞれどのような学びがあるのかについて今後整理をしていきたい。それぞれの学びについての整理がないと、通常学級においての授業まで進んでいけないと考える。また、今の実践を生かして、技能教科だけではなく国語や算数等、知識や理解を習得するところまでいければと考えている。
- 3点目の教職員の研修については、今のところインクルーシブについて先生方の捉えは様々であるかもしれない。通常学級において、関わるからこそ学びがあるということも、先生方のフリーディスカッションの中から検証を行っていきたい。
(A委員)
- 今年度、先生方で議論を重ね、その中でいろいろな気付きや手応えがあったと思う。来年度、異動で新しく来た先生方に一年間取り組んできたことをどのように伝えていくか。また、実践をしてきた上陽小学校の先生方が他校に異動した際、どんな実践をしてきたのかを聞かれたときに自分の言葉で話せることがとても重要だと思う。
- 今年度は残り1ヶ月となるが、この一年間取り組んできたことを自分の言葉で話せるようになって終わることがとても大切である。校長先生から先生方に働きかけをしてほしい。
(モデル校長)
今、先生方の最終面談を行っている。その中で、先生方にインクルーシブ教育やブロックチーム担任制についてどう捉えているかを先生方自身の言葉で話していただいている。先生方により捉え方はそれぞれであるが、当事者意識が少しずつ芽生えてきていると実感している。残り1ヶ月、今年度の取組について、先生方に浸透していきたい。来年度、新しく異動されてきた先生には、早い段階で共通理解を図りたい。
(A委員)
私の経験談ではあるが、新しく上陽小学校に異動してきた先生は、学校が取り組んでいることについて、ここはよい、ここはどうなのか、よく分からない等、いろいろ感じることがあると思う。その思いは凄く重要なこと。新しく来た先生には言葉にしてもらい、みんなで議論するとよいと思う。この事業に関連して町の動きは何かあるか。
(モデル校長)
校長会(小学校5校、中学校2校)で本校の取組を発信している。先ほどコラボレーターの話があったが、残り2年間で進めていく際、初動のところはマンパワーが必要。そこは、町教育委員会、県教育委員会で話を進めていただいている。
(A委員)
私の経験上、上陽小学校で今年度取り組んできた先生方は、いろいろな気付きや手応えを感じていると思う。その先生方が他校に異動した際、時としてすごくしんどい思いをすることがある。それは、手応えを感じていたことに対して、異動先の学校が全く意識していない場合や、上陽小学校で取り組んできたことを実践しようとしてもできなくて挫折することがある。そのようなことを避けるためには町としての取組が重要。みんなでインクルーシブに取り組んでいく、先駆的に取り組んでいるのが上陽小学校だという位置付けを町として行っているかどうかはすごく大きいと思う。
(B委員)
先生方を核としながら町につなげていくことは大事。検討いただけるとありがたい。
(A委員)
- 今、話されていたことが資料6に集約されていると思う。研修で令和6年度モデル校実践研究が入ってくるため、実践に関しての総括や振返り、インタビューする等、内容として確定するから研修として打ち出されるのだろうと思う。その内容が、居場所がある学級や技能教科を中心とした交流、特別支援学校の子供も含めた交流、ブロックチーム担任制ということになるか。
- 関連して、互恵的な学びとは何か。資料4の国内視察にある常石ともに学園の視察。そこにも障害のある子供がいると思うため、基礎科目の中での交流を見るという視点が入るのではないか。視察の視点があれば教えてほしい。
- 来年度、マルメ市の視察日程が決まっていれば教えてほしい。
(事務局)
- 資料6のモデル校実践研究の周知のところでは、先ほど話にあったように、教職員の理解啓発がまだまだこれからである。モデル校実践研究のエッセンスを協議しながら活用できる部分を整理して教職員に周知していきたい。
- 常石ともに学園のイエナプランは、学習グループが異年齢集団であることや、個性や発達程度の違いが当たり前のように受容されると聞いている。この部分が群馬のインクルーシブ教育を進めていくにあたり、とても必要だと考えている。
- マルメ市の視察は、8月15日から新学期が始まるため、8月25日の週から1週間を予定している。
(C委員)
スウェーデンは、例年9月に行くことになっている。調整できれば同行したい。
(A委員)
- 視察の話がでたため情報提供。福井県立清水特別支援学校は、2000年から2003年まで特別支援学校のセンター的機能の開発をした際の協力校。地域でのインクルーシブな学校を視野におき、センター的機能をずっと開発してきた学校である。当時、福井県立の特別学校は、全てそのような方向で進んだが、その中でも規模の小さい清水特別支援学校は、その中心的な役割を果たした。その後、地域の小学校、中学校がどのように進んでいったのか関心がある。清水特別支援学校は、小学校、中学校だけではなく、就学前の幼稚園、保育園とも連携しながら、いろいろな実践を行ってきた歴史がある。
- 京都府立の特別支援学校を選定しているが、京都市立の特別支援学校4校も、ずいぶん昔から地域の子供たちは地域に戻すということを前提にして展開してきている。そのため、市立の特別支援学校も視察し情報交換できるとよい。京都は明治政府が小学校をつくる前から小学校をつくったところ。地域の子供たちは地域で育てるという意識がすごく強い地域である。その意識が特別支援学校にもある。
(B委員)
今の御意見を参考に視察場所は検討を。
(E委員)
- 昨年、常石ともに学園の視察に同行した。インクルーシブな教育ではあるが、文部科学省のいうインクルーシブ教育を行っているかというと少し微妙なラインだと思う。常石は選抜があり、福山市の某企業が寄付してつくった学校。常石の基盤にある大事にしているものは、インクルーシブな哲学としてあると思うし、スウェーデンの思想とも近いと思う。
- 障害児教育の方法論を追究している学校ではない。どちらかというとイエナプランで特別支援学級を廃止するところから始まっていると私は理解している。つくった時に特別支援学級は残したが。面白い学校だと思うが、あえてイエナプランの学校を視察するねらいをもう1度教えてほしい。
(事務局)
視察の目的は、特別支援教育ということではない。上陽小学校でも目指していくところは、特別支援教育、特別支援学級ということではなく学校全体。通常学級の子供たちも含めている。常石ともに学園は、先ほど話にあった多様性や寛容性について先進的に取り組んでいるため、視察をとおしてその点を感じたいと考えている。
(E委員)
- 昨年、視察に同行した際、その学級ではない子供が教室にいて他の子供と一緒に学んでいる姿を見て面白い学校だと思った。このような学校を目指していくわけではないと思うが、このような姿が派生して現れる学校になっていくと面白い。
- 最近、教員不足が話題となっているが、学生たちがこのような学校を知ることで、自分も楽しく働けるかもと思うかもしれないし、いろいろな方面によい効果があるかもしれない。
- 単に統合教育として目指していくのではなく、いろいろな人にとってのインクルーシブな学校ができるとよいなと話を聞いていて思った。
- 本日、情報提供させていただいたシンポジウムは、常石ともに学園の事例をもとにインクルーシブな学校をつくるとどうなるかについて、根室市が取り組んだ事例。興味があれば参加してほしい。
(A委員)
これまで自由進度学習につい何度か話題になったが、自由進度学習に慣れた子供たちは、その後、自由進度学習ではないスタイルに戻そうとすると、ものすごくしんどく感じる。逆に、一斉授業に慣れている子供を自由進度学習に移行させようとする際も同様。就学前の子供は特にそう感じる。自由進度学習は、みんなが主体的、対話的に学べるかというとそうではない。逆にしんどくなる子供たちもいる。場合によっては学校に行かなくなることもある。そのような子供たちのことも含めてどう対応するかは重要なポイントである。これまでの学びのスタイルとは違うスタイルを提供した際、やりやすくなるのか、しんどくなるのかを丁寧に見ていく必要がある。
(モデル校長)
全てを移行するのではなく、学習の方法を選択できるようにすることだと思う。例えば、板書を写せる子供はノートに書けばよいし、難しい子供は写真で撮ればよい。タブレットの方がよい子供もいれば、紙媒体の方がよい子供もいる。そのため、学習形態の多様化の中の1つと捉えている。自由進度学習とは、どういうものかということを子供たちや保護者、教職員が理解していかなければならないと思っている。
(A委員)
従来型であると、この中から選んでね、自分で選んでいいよと言われることに戸惑いを感じる子供はそんなに少なくない。ただ、そこから力を付けていかなければならない子供たちもいるため、そのあたりも含めてほしい。
(B委員)
子供たちが選ぶ力も学びにとっては必要であるが、選ぶことそのものも少し検討が必要だということか。
(C委員)
恐らくそれはエージェンシーのことか。自立した学習者へというものを群馬県教育ビジョンで出していて、就学前から高校まで自立した学習者をつくるということになっていると思う。そことリンクさせれば問題ないか。
(事務局)
- 全国的に自由進度学習は話題になっている。群馬県として自由進度学習を進めていくんだと思い切って舵を切っているわけではない。先ほども話したように先生方が授業の中で話しすぎてしまう傾向にある。こうあるべきのような授業がまだまだ多い。これだと、どうしても多様な意見は集まりづらくなってしまう。先生が話す量を少し減らすことが大事。ある教育事務所では、先生が話す量を半分にしてくださいと言って授業改善をしているところもある。
- 現在、我々は単元内自由進度学習、時間内自由進度学習を行っている。上陽小学校でもこのような形で行っていると思うが、子供たちが学び方を選ぶことをもっと進めていきたいと思っている。先ほどの話にあったように、何でも自由は実は不自由である。そのため、発達段階や実態に応じて、慎重に子供たちの自由度を増やしていくことを進めている。子供たちがエージェンシーを発揮できるようなインクルーシブな環境。心理的安全性のある環境をつくりたいというのが我々の今の思いである。
(F委員)
- 私は車椅子使用の当事者であるが、群馬県のインクルーシブ教育がどんどん推進されていることは大変嬉しく思う。私が個人的に求めているインクルーシブ教育の推進、最終的に目指すところは極端なことを言うと特別支援学校の廃止、会社であれば特例子会社の廃止である。特別支援学校のより充実ではなく、本人、家族の意向に沿って多様な人がいかに同じところでやっていけるかを常に目指したいと思っている。
- 私の仲間の話で、重度の知的と脳性麻痺があり、肢体の特別支援学校が適と判断された子供がいる。幼少期から周囲の友達に恵まれていたため、母の意向もあり、地元の学校に行きたいということで市と協議をし、重度ではあるが地元の小学校に通っている。食事は胃ろうで、車椅子は自分でこげないためバギーを使用している。そのような子供が実際に小学校で学んできており、これから中学校にあがろうとしている。その保護者より手紙をもらったためここで紹介させていただきたい。
(※手紙内容省略)
- いろいろな御家族や当事者の方からの話を聞くと、やはり地域に溶け込んで、同年代、もしくは異年齢の人とも一緒に小学校、中学校、その先の高校、大学とあがっていくことがとても大事である。
- 先ほどの手紙をくれた方も、私の子供は高校、大学へ行くのは無理だが、地元の中学校まで行けることにすごく嬉しさを感じていると言っている。
- いろいろな方が一緒に学ぶことの大切さ。学校で勉強することはもちろんであるが、多様な人が社会性を学ぶ、体験をする場が学校であることを知ってもらうことが大事であると強く感じている。ここを解消していかないと、大人になってもずっと分離した社会である。障害児教育をしてきた方は大人になっても隔離されたところに行ってしまう。
- 周りに友達や知り合いをつくっていくと、大人になっていく過程で周りの人に助けてもらったり、救いを求めたりして一緒に地域で暮らしていける。そこには働くという部分が入ってくることもある。そうすることで、互いに暮らしやすくなるのではないかと思う。その基礎ベースをつくるためにインクルーシブ教育はすごく重要である。
- 重度の子供に手厚く何かをするということも大事ではあるが、先生方が全てするのではなく、子供自身にどうするとよいかを考えてやってみようというのが大事だと思う。
- 以前、ある小学校において、車椅子に乗っていた子供が2階に上がる際、階段を上ることを先生も児童も手伝うことを禁止する触れ書きがされていた。理由を尋ねると怪我をさせたら困るし、手伝っている子供も怪我をしたら誰が責任をとるのかと。学校の先生も手伝わないため、お母さん方でチームを組み、人によっては仕事を休んで車椅子の子供が2階に上がるとき、下りるときに手伝いに入る事例があった。つい最近の話である。このようなことが当たり前に起きている教育現場をもう一度見直すことが必要である。子供たち同士でどうやって上げたらよいか、どう協力していけばよいかを考えることもインクルーシブ教育として重要な部分ではないかと思う。
- 私が思うこととして、同年代の子供が一緒に通学し、そして下校をする。親が送り迎えをするのではなく、できる限り一緒に。こういった時間を過ごすことがとても大事ではないかと思う。
- 資料4にあるように、いろいろな場所に視察に行くことはとてもよい。できれば当事者やその家族の方が視察メンバーに入ることが重要ではないかと思う。
(事務局)
そのあたりの視点について、今後、検討していきたい。
(G委員)
-
全ての子供が一緒に学べる環境が徐々に進んでいることは、とても嬉しく感じる。一番の課題は理解啓発と先ほど話しにあったが、これまで障害のある方や生きづらさを抱えた人と関わる中で非常に難しいことと実感している。
-
ソーシャルワーカーの仕事として、ミクロとメゾとマクロというのがある。ミクロは個人にアプローチしていく、メゾは集団や学校といったところに焦点をあてていく、マクロは地域や社会全体をどうつくっていくか。ソーシャルワーカーの大切な仕事として、マクロのソーシャルに働きかけていくことがある。
-
ソーシャルワーカーというと福祉の専門家と言われることがある。福祉の専門家としてケースワークだけではなく、どう社会に働きかけていくかも大切。
-
群馬広報に「全ての県民が幸福を実感できる社会の実現を目指す。インクルーシブ教育は、そうした社会を実現するための取組の一つ」とある。まさにそのとおりだと思う。
-
ソーシャルワーカーが社会を変えていく際にどう動くかというと、マクロの視点をもってメゾとミクロにアプローチしていく。その際、本人、家族の状態は多様である。そして、支援者や先生方の経験、専門性、所属、機関のもつ特徴もそれぞれである。多様な人たちが関わって社会を変えていく際に必要となるのが基盤となる価値や倫理になってくる。関わる人の全てが大切にしてもらいたい原理原則となるような共通の考え方をもっていることが非常に大切である。
-
先ほど話にあったように、群馬県のインクルーシブ教育は、こういうものと共通理解していくためには、共通の考え方が少し形になった言語化されたものがあると良い。インクルーシブ教育推進は、まだゴールしていないということ。インクルーシブ教育推進のプロセスを通じて理解啓発を図っていく際にも、それが必要になってくる。イベントなど啓発活動をした時にも発信ができる。
-
教育ビジョンをつくる際に携わった者として、全ての子供がエージェンシーを発揮できる、これを実現できるためにはインクルーシブでなくてはならないということが一つの特徴である。障害の有無だけではなく、不登校や生きづらさを抱えた人も入っている。「群馬県のインクルーシブ教育」をみんなで理解していくために基盤となるものを言葉にしていけるとよいと感じている。
(事務局)
- 群馬モデルの構築を目指しているが、現在、言葉で表現できていない。スタート時より、それを模索しながら進めていければと考えていた。本事業は3年計画のため、どこかで示せればよいと考えている。
- 委員の皆様から資料5にある理解啓発イベントの内容案について意見をいただきたい。次年度、4月から動き出さないと8月の実施が難しいため内容を固めたい。
(B委員)
特に商業施設でのイベントでよいのか。ここに示されているものは計画しているものなのか。
(事務局)
現在、考えられるものを挙げている。
(D委員)
特別支援学校の作業製品販売について、特別支援学校の子供たちだけで販売するのではなく、地域の学校の子供たちも混ざり、一緒に製品の良さをお客様に伝えて販売できるとよいか。
(C委員)
- 今、話にあったようにコラボが重要だと思う。例えば、喫茶での飲み物は特別支援学校の生徒が作り、サーブは高校生が行う、もしくはその逆でもよい。ステージ発表についても、どれだけコラボを出せるかが重要。
- 12月のイベントで好評であったダブルニジマスバーガーのように、飲食系が充実してくるとそこで一息ついたり、テイクアウトしたりすることで参画できるかと思う。
(D委員)
イベントでは、学校関係の商品になってしまうのかもしれないが、子供たちはいずれ大人になり地域で生活していく。例えば、その地域の作業所とコラボするのもよいか。地域で生活するにあたり、地域のことを知る機会になるのではないか。
(A委員)
- これから群馬県としてのインクルーシブ教育をつくっていく場合、一般市民の方たちとの対話の場が必要なのではないかと思う。例えば、県内の3か所ぐらいでフォーラムやパネルディスカッションをする機会をつくっていく。そこにはぜひ子供たちにも声をかけてほしい。障害のある当事者の方も、外国につながりのある方もいろいろな人たちが来ていろいろな意見を言い合う。そういう中で議論をしていくことで群馬県としてのインクルーシブが形成されていく。
- 学校だけではなく、成人の人たち、高齢者の人たちもいろいろな人たちで考えていく。最初の1、2年はぎくしゃくするかもしれないし、運動体の人も来るかもしれないが、みんなでディスカッションをして、みんなでつくっていくんだという県の考え方がそれぞれの地域に展開されていけば、最終的に3、4年経った時、その方向性が県民全体として考える方向にいくのではないか。
(事務局)
- 地域の学校と協力して作業製品の販売をすることは面白い取組だと思う。検討したい。
- ダブルニジマスバーカーは好評であった。参加した子供たち、生徒たちも生き生きと取り組めていた。あっという間に完売したため、達成感も強かったのではないかと思う。いかにこのような機会をつくれるかを検討していきたい。
- フォーラムについては、例えば、高校生、特別支援学校の高等部生も含め、夏休みの商業施設でのイベントにおいて、トークイベントのようなものができると面白いという話が係内で出た。検討していければと考えている。
(A委員)
やはり大人がしっかりと議論していかないといけない。いろいろ意見が違うということを許容しながら、みんなで考える素地を大人が見せていくことが大事。長期的に見るとすごく大きいと思う。
(B委員)
それこそまさにインクルーシブである。
(E委員)
- 理解啓発のところが障害に特化していないかということが若干気になる。もう少し幅を広げてもよいのではないか。
- 我々のところには、よく高校生から探究の問合せがくる。例えば、インクルーシブという大きな枠を与え、高校生が自分で探究したことを発表する場をつくるのでもよい。我々が考えている以上に小中高生はインクルーシブというものを広く考えていると感じる。これは若干リスクもある。私の反省すべき点でもあるが、インクルーシブ教育、インクルージョンという人は、大概、マジョリティ側にいることが多いと思う。見せかけのインクルーシブというか、私は分かっていますのようなことを表明すると、当事者からは気持ち悪さを覚えてしまう。このようなことは、必ず派生するため、このあたりのリスクをどう考えるかを踏まえて検討していただきたい。こちらから何かを発信していくというよりは、今、子供たちが取り組んでいることを吸い上げたり、こんなことを考えたのかということが分かったりしても面白いと思う。
(H委員)
今年度のイベントでは、高校生や特別支援学校高等部生徒とのコラボがあったが、次年度は夏休みに実施することもあり、小・中学校や小・中学部との交流やコラボレーションを含めていけると全体的なバランスとしてよいと感じた。
(A委員)
- インクルーシブを行っていくベースとなるのはローカルコミュニティである。群馬県の見通しとして、県の提案をどのような道筋で市町村の主体性に任せていくのか、ロードマップ作成のような検討はされているのか。
- エージェンシーやインクルーシブという言葉のように、横文字が多様化される傾向にあるのは少し気になる点。このような言葉は、なんとなく分かったような気持ちになるが、きちんと考えようとすると全然分かっていなかったということがある。印象だけで分かってることは議論が進まず、何かあった際につまずくことがある。私が今関わっているところでは、インクルーシブという言葉を他の日本語に言い換えている。インクルーシブという言葉を使わずとも、自分の言葉で説明できるようにしようと言っている。私の持論であるが、できるだけ訳の分からない言葉を使わないようにしている。
(I委員)
- インクルーシブの捉え方は、私も含め人によってまちまちである。話を聞いていて、群馬県では教育ビジョンの示すものがインクルーシブの実現につながるのだと理解した。今後、さらに具体化されていくとよいなと感じた。
- 今年度、高校通級に取り組んでいる。群馬県は全国的にも高校通級の人数がとても多く全国で3位くらい。発達障害等があり学校に馴染めない生徒が学んでいるところである。地域で自立支援協議会に参加すると、高校通級があることを知らない方がほとんどである。
- 通級に通う高校生は、卒業後に社会に出ていく。学校の中では守られて育っていくが、現実的な社会とのギャップがあり、そこでの共生社会というのがまだまだ実現されていないと思う。そのため、イベントの中で一般の方々がどのように考えているのか意見交換ができるとよい。共生社会になっていかないと、学校で学習しても出口のところで駄目になってしまう。そのあたりのところも整えていかないと社会と繋がっていかないところが多くあると思う。来年度の理解啓発イベントでは、高校通級について、ぜひ取り上げていただきたい。
(B委員)
- 社会との接点だからこそギャップを感じ、そこにこそインクルーシブの必要性があると理解させていただいた。
- 一年間取り組んできた中で、インクルーシブの共通する認識をつくりながらではあるが、やはり共通する認識をもたなければ、進んでいかない可能性があるという意見があった。そこも検討しつつ、モデル校での教育実践も発展させていってほしい。
6 その他
事務局から事務連絡を行った。
7 あいさつ
栗本教育次長によるあいさつ
8 閉会
閉会
9 資料
02 資料1_インクルーシブ教育推進 (PDF:340KB)