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植物レッドリスト(2018年部分改訂版)

更新日:2018年7月5日 印刷ページ表示

群馬県の絶滅のおそれのある野生生物 植物編の部分改訂について

1 背景・目的

 群馬県では2012(平成24)年に絶滅のおそれのある野生動植物種の一覧を改訂し(以下2012年レッドリスト)、解説を加えて報告書(以下2012年版レッドデータブック)を作成しました(群馬県編 2012)。
 その後も開発や盗掘、動物食害などにより2012年レッドリスト掲載種の生育地が消失または縮小する事態も相次いで報告され、近年急速に絶滅のおそれが増大した種も出現している一方で、絶滅危惧種等の産地や絶滅危惧種と考えられる種も発見されました。従来レッドリストは10年をめどに見直してきましたが、前述のように近年の植物をとりまく状況は急速に変化しています。このため、迅速かつ機動的な種の保全対策を行うためには、部分的であっても短い周期でレッドリストを見直していくことが必要と考えられます。
 群馬県では2012年レッドリストを短い周期で見直し、より現状に即した種の保全対策のための基礎資料を作成するため、2016(平成28)年よりレッドリストの部分改訂作業を行いました。

2 結果

(1)今回調査対象とした種数とその内訳、前回評価との対比

表1 調査対象種の2012年と2018年のランクの比較
2012年 2018年 絶滅 野生絶滅 絶滅危惧1A類 絶滅危惧1B類 絶滅危惧2類 準絶滅危惧 情報不足 ランク外
絶滅 0 0 2 0 0 0 0 1 3
野生絶滅 0 0 0 0 0 0 0 0 0
絶滅危惧1A類 0 0 7 1 2 0 0 1 11
絶滅危惧1B類 0 0 12 7 2 0 0 0 21
絶滅危惧2類 0 0 3 5 4 1 1 0 14
準絶滅危惧 0 0 0 1 0 1 0 1 3
情報不足 0 0 7 4 1 1 1 0 14
ランク外 1 0 14 5 1 2 0 3 26
1 0 45 23 10 5 2 6 92

 注:表の種数には評価作業の結果、ランクの変動がなかった種を含む。

表2 ランクの変動がなかった調査対象種の一覧
和名 科名 ランク 事由
ザイフリボク バラ科 絶滅危惧1A類 原状維持
ホソバオグルマ キク科 絶滅危惧1A類 原状維持
タマミゾイチゴツナギ イネ科 絶滅危惧1A類 状況悪化
アサマスゲ カヤツリグサ科 絶滅危惧1A類 状況悪化
エゾハリスゲ カヤツリグサ科 絶滅危惧1A類 状況悪化
コアゼテンツキ カヤツリグサ科 絶滅危惧1A類 未発見
ツレサギソウ ラン科 絶滅危惧1A類 状況悪化
カラフトイバラ バラ科 絶滅危惧1B類 原状維持
ワタラセツリフネソウ ツリフネソウ科 絶滅危惧1B類 原状維持
ニッコウヒョウタンボク スイカズラ科 絶滅危惧1B類 評価保留
キクアザミ キク科 絶滅危惧1B類 漸減傾向
スナジスゲ カヤツリグサ科 絶滅危惧1B類 状況悪化
ハタケテンツキ カヤツリグサ科 絶滅危惧1B類 原状維持
シズイ カヤツリグサ科 絶滅危惧1B類 新産地発見
ウリカワ オモダカ科 絶滅危惧2類 増減相殺
イヌカモジグサ イネ科 絶滅危惧2類 漸減傾向
チュウゼンジスゲ カヤツリグサ科 絶滅危惧2類 原状維持
モエギスゲ カヤツリグサ科 絶滅危惧2類 原状維持
テバコモミジガサ キク科 準絶滅危惧 評価保留
カワラボウフウ セリ科 情報不足 評価保留

注:科名は「群馬県の絶滅のおそれのある野生生物(レッドデータブック)植物編2012年改訂版」に準拠

表3 2012年及び2018年部分改訂レッドリストのランク別種数
ランク 2012年レッドリスト 2018年部分改訂後
絶滅 53 51
野生絶滅 2 2
絶滅危惧1A類 217 251
絶滅危惧1B類 134 136
絶滅危惧2類 122 118
準絶滅危惧 46 48
情報不足 59 47
633 653
表4 評価対象種に対する絶滅のおそれ要因
絶滅のおそれ要因 影響する種数
自然遷移 22
管理放棄 20
動物食害 20
土地造成 16
池沼開発 16
外来種競合・交雑 13
河川開発 11
湿地開発 10
農薬汚染 8
森林伐採 7
特殊分布 7
踏みつけ 7
園芸採取 6
草地開発 6
分布限界 3
その他(*注) 20(*注)

注1:集計対象はランク不変種を含む。

(*注)その他の主な内訳と種数
道路工事 5
自然災害 3
植林 3

 今回の部分改訂では、調査対象種となった2012年レッドリスト掲載種66種中46種のランクに変動があり、20種はランクの変動がありませんでした(表1)。また、2012年レッドリスト非掲載種26種のうち23種を新たにレッドリストに加えました(表1)。ランクの変動がなかった種の7種は2012年の段階ですでに絶滅危惧1A類で、そのうち太陽光発電施設の造成によって生育地の大半が破壊されたアサマスゲや、遷移進行と園芸採取により危機的な状態まで株数が減少したツレサギソウなど、2012年の段階よりも状況が悪化している種もありました(表2)。また、ランク変更がない種や絶滅のおそれが低いランクに変更された種の中には、現状のまま推移したり回復傾向にあるのではなく、新産地の発見またはある地点での増加と、別地点での急激な減少が同時に進行している種も存在する点には留意する必要があります(表2)。また、今回の部分改定により新たに23種が群馬県において絶滅のおそれがあるかすでに絶滅したと判断されましたが、一方で、今回3種が2012年レッドリストから除外されました。その結果、今回の改訂で群馬県における絶滅のおそれのある野生植物種(シダ植物・種子植物)の総数は653種となりました(表3)。
 今回の部分改定によって絶滅のおそれが高いランクに変更された種は21種にのぼり、絶滅のおそれが低いランクに変更された9種の2倍以上となりました。特に、絶滅危惧1A類に変更された種は14種にのぼり(表1)、新たに絶滅のおそれがあると判定された23種の中で、絶滅危惧1A類にランク付けられた種も14種と、全体の半数以上を占めました。なお、2012年レッドリストでは絶滅とされたヤマトホシクサは証拠となった標本が発見され、誤同定であったことがわかりました。また、ガガブタとコホタルイは埋土種子より発芽した個体が確認されました。一方で、ツツイトモが1953年にみどり市で採集されていたことが判明しましたが、その後の記録がなく、また現状では本種が生育しうる環境にないことから、絶滅と判定しました。このため、群馬県における絶滅種は2種減少し、51種となりました。野生絶滅は2種で2012年レッドリストと変化がありませんでした。
 今回の評価対象種に対する絶滅のおそれ要因は自然遷移、管理放棄、動物食害、土地造成、池沼開発の順に影響する種数が多く(表4)、特に草地の管理放棄による絶滅のおそれが急速に高まっていることも背景にあると考えられます。また、動物食害の大部分はニホンジカによるもので、ここ5年間に極めて深刻な状況まで悪化していることが裏付けられました。同様に、外来種との競合や交雑も絶滅のおそれ要因中で占める割合が高くなり、近年悪化傾向にあると考えられます。土地造成がこれらと並ぶ絶滅のおそれ要因となっていますが、近年の太陽光発電施設の立地や圃場整備事業が急速に進行していることが背景になっていると考えられます。今回のレッドリスト部分改訂の対象種の中では園芸採取の影響を受けた種は6種のみでしたが、これは当初から絶滅危惧1A類からのランク変動が予想しづらい種を対象から除外し、そのような種には園芸採取の影響が大きいラン科の種が多数含まれていたことが理由としてあげられます。したがって園芸採取の影響は今回の対象種の中では比較的少数の種に対する脅威であっただけで、実際には群馬県希少野生動植物保護条例の特定県内希少種も含めて今なお脅威が継続していることに変わりはありません。さらに、その他の要因として、道路工事の割合が高いことも本県の特徴の一つにあげられます(表4)。

注:ランクの正式名称は「絶滅危惧(ローマ数字の)1A、1B、2類」ですが、ウェブページの閲覧環境によってはローマ数字の表示ができないため、ここでは便宜上1及び2を使用します。

 1解説資料説明(PDF:146KB)(PDFファイル:147KB)

 2資料1_植物レッドリスト部分改訂(2018)の概要(PDF:148KB)(PDFファイル:149KB)

 3資料2_概要説明関連表1~4(PDF:58KB)(PDFファイル:59KB)

(2)今回改定の新規掲載・変更種解説資料及び植物レッドリスト全種リスト

 4新規種解説資料(PDFファイル:172KB)

 5変更種解説資料(PDFファイル:217KB)

 6附属_全種リスト(PDFファイル:220KB)

 7RL新規種(PDFファイル:94KB)

 8RL評価改訂種(PDFファイル:109KB)

3 評価区分及び基本概念

 今回の部分改訂における評価については、「群馬県の絶滅のおそれのある野生生物(レッドデータブック)植物編 2012年改訂版」と同様、次の区分を用いました。
 なお、これは環境省のレッドデータブック及びレッドリストで用いられている「レッドリストカテゴリー(環境省,2007)」を準用したものです。

絶滅 Extinct(EX)

 我が国ではすでに絶滅したと考えられる種

野生絶滅 Extinct in the Wild(EW)

 飼育・栽培下でのみ存続している種

絶滅危惧 THREATENED

絶滅危惧1類(CR+EN)

 絶滅に瀕している種:現在の状態をもたらした圧迫要因が引き続き作用する場合、野生での存続が困難なもの。

絶滅危惧1A類 Critically Endangered(CR)

 ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの。

絶滅危惧1B類 Endangered(EN)

 1A類ほどではないが、近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの

絶滅危惧2類 Vulnerable(VU)

 絶滅の危険が増大している種:現在の状態をもたらした圧迫要因が引き続き作用する場合、近い将来「絶滅危惧1類」のランクに移行することが確実と考えられるもの。

注:ランクの正式名称は「絶滅危惧(ローマ数字の)1A、1B、2類」ですが、ウェブページの閲覧環境によってはローマ数字の表示ができないため、ここでは便宜上1及び2を使用します。

準絶滅危惧 Near Threatened(NT)

 存続基盤が脆弱な種:現時点での絶滅危険度は小さいが、生育条件の変化によっては「絶滅危惧」として上位ランクに移行する要素を有するもの。

情報不足 Data Deficient(DD)

 評価するだけの情報が不足している種

 群馬県の絶滅のおそれのある野生生物 植物編(2012年改訂版)」評価区分及び基本概念(PDFファイル:11KB)

4 調査

 「群馬県の絶滅のおそれのある野生生物(レッドデータブック)植物編2012年改訂版」部分改訂のための調査及び評価検討は、群馬県自然環境調査研究会に委託して実施しました。
 群馬県自然環境調査研究会では、植物部門の会員が次の作業経過のスケジュールで業務を行いました。また、青木雅夫、石川真一、大平満、大森威宏、片野光一、小暮市郎、増田和明、吉井 広始の8名が編集を担当しました。

植物部門会員名簿

 青木雅夫、石川真一、大平満、大森威宏、片野光一、小暮市郎、里見哲夫、鈴木伸一、須藤志成幸、長島康雄、蛭間啓、増田和明、(故)松澤篤郎、吉井広始

作業スケジュール

平成 28(2016)年 対象種提示、調査方法確認、野外調査、追加種の提示、中間報告
平成 29(2017)年 追加種の提示、現地調査(11 月まで)、評価作業、執筆

参考:群馬県自然環境調査研究会について

 県内の大学教授や高等学校教諭等を中心に1974(昭和49)年に設立された団体で、植物・動物・地形地質の各分野の学識経験者で構成されています。これまでに、環境省から「自然環境保全基礎調査」を、群馬県から「絶滅のおそれのある野生生物(植物編・動物編)」の発行及び今回の改訂のための調査や評価のほか、「良好な自然環境を有する地域学術調査」や「奥利根地域学術調査」、「外来生物調査」といった各種自然環境調査業務を受託実施し、大きな研究成果をおさめています。

会長:斎藤 晋 群馬県立女子大学名誉教授※注2
会員数: 59名(植物部門 15名、動物部門 34名、地形・地質部門 10名)※注2
※注2:2018(平成30)年3 月現在

5 レッドデータブックの入手方法

 「群馬県の絶滅のおそれのある野生生物 植物編(2012年改訂版)」の冊子は、県庁2階県民センターまたは県内各行政県税事務所で購入していただくことができます。「いま買える県の資料一覧」
 また、報告書のファイルが、群馬県立自然史博物館ホームページからPDF形式でダウンロードできます。群馬県立自然史博物館(レッドデータブック)<外部リンク>
※本ページの植物レッドリスト2018年部分改訂版のファイルについては、群馬県立自然史博物館ホームページにも掲載されています。