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動物レッドリスト(2022年改訂版)
1 背景・目的
野生生物を取り巻く環境は、年ごとの気候の差異や他の生物の繁殖状況、開発や管理放棄など人による土地利用の変化、急激な過剰採取、外来生物の侵入、保護活動による回復など様々な要因から影響を受けており、野生生物の生息・生育状況は常に変動しています。
絶滅のおそれのある野生生物を保護するためには、その実態を知ることが不可欠です。常に変動する野生生物の生息・生育状況を常時確認することは難しいとしても、定期的な調査によって状況を確認し傾向を把握しておくことが重要です。また、新たな生息地・生育地が発見されたり、新たな知見により学術的な取り扱いが変更されるたりすることもあります。このような変化に対応するため、レッドリストやレッドデータブックは適宜見直す必要があります。
群馬県では、2002(平成14)年に発刊したレッドデータブックの動物編について、その後の変化への対応や、より現況に即した内容に見直すため、2012(平成24)年に初めての改訂を行いました。その後、2018(平成30)年にレッドデータブック改訂準備に着手し、このたび、新たに2022年版の改訂を行いました。
2 結果
(1)今回評価対象とした種数とその内訳、前回評価との対比
今回の評価(2022年) | 計 | |||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
絶滅 | 野生絶滅 | 絶滅危惧1A類 | 絶滅危惧1B類 | 絶滅危惧2類 | 準絶滅危惧 | 情報不足 | 掲載なし | |||
前回の評価 (2012年) |
絶滅 | 9 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 9 |
野生絶滅 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
絶滅危惧1類(区分なし) | 4 | 0 | 25 | 26 | 3 | 0 | 1 | 3 | 62 | |
絶滅危惧1A類 | 0 | 1 | 6 | 0 | 0 | 1 | 0 | 2 | 10 | |
絶滅危惧1B類 | 0 | 0 | 3 | 10 | 0 | 0 | 0 | 0 | 13 | |
絶滅危惧2類 | 0 | 0 | 2 | 5 | 77 | 3 | 0 | 3 | 90 | |
準絶滅危惧 | 0 | 0 | 0 | 5 | 9 | 108 | 6 | 8 | 136 | |
情報不足 | 2 | 0 | 5 | 4 | 22 | 59 | 93 | 24 | 209 | |
掲載なし | 0 | 0 | 0 | 3 | 7 | 32 | 20 | 0 | 62 | |
計 | 15 | 1 | 41 | 53 | 118 | 203 | 120 | 40 | 591 |
今回評価対象となった種の総計は551種で、前回評価対象となった種の総計529種よりやや増加する結果となりました。減少したのは哺乳類、鳥類、貝類などで、特に哺乳類は10種減少しています。逆に昆虫類は26種増加しています。昆虫類については10年前より生息が厳しくなった種が増えたことになりますが、前回よりも調査が進展し、絶滅の危険度が明確になった種が増えたことも関与していると思われます。評価別に前回と比較すると、絶滅、野生絶滅、絶滅危惧1類、絶滅危惧2類、準絶滅危惧に該当する種がいずれも増加しました。特に絶滅が6種、準絶滅危惧は60種以上増えています。逆に情報不足は90種ほど減少しています。数字の上からは、絶滅が危惧される種が増えていることになります。しかし、県内における生息状況が前回よりもある程度明らかになってきた結果、絶滅が確認されたり、前回は情報不足としていた種の絶滅危惧の評価が判定されたり、掲載されていなった種が加わったりした事例も多いと思われます。
注:ランクの正式名称は「絶滅危惧(ローマ数字の)1、2類」ですが、ウェブページの閲覧環境によってはローマ数字の表示ができないため、ここでは便宜上1及び2を使用します。以下同様。
群馬県の絶滅のおそれのある野生生物 動物編(2022年改訂版)分類群毎の状況(Excelファイル:19KB)
群馬県の絶滅のおそれのある野生生物 動物編(2022年改訂版)分類群毎の状況(PDFファイル:695KB)
(2)今回の改訂版で評価対象とした551種の一覧(動物レッドリスト2022年改訂版)
群馬県の絶滅のおそれのある野生生物 動物編(2022年改訂版)動物レッドリスト (Excel:54KB)
群馬県の絶滅のおそれのある野生生物 動物編(2022年改訂版)動物レッドリスト (PDF:978KB)
3 評価区分及び基本概念
「群馬県の絶滅のおそれのある野生生物 動物編(2022年改訂版)」における評価については、次の区分を用いました。これは、環境省のレッドデータブック及びレッドリストで用いられていた「レッドリストカテゴリー(環境省,2020)」を準用したものです。
絶滅 Extinct(Ex)
我が国ではすでに絶滅したと考えられる種
野生絶滅 Extinct in the Wild(Ew)
飼育・栽培下、あるいは自然分布域の明らかに外側で野生化した状態でのみ存続している種
絶滅危惧 Threatened
絶滅危惧1類(Cr+En)
絶滅に瀕している種:現在の状態をもたらした圧迫要因が引き続き作用する場合、野生での存続が困難なもの。
絶滅危惧1A類 Critically Endangered(Cr)
ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの。
絶滅危惧1B類 Endangered(En)
1A類ほどではないが、近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの
絶滅危惧2類 Vulnerable(Vu)
絶滅の危険が増大している種:現在の状態をもたらした圧迫要因が引き続き作用する場合、近い将来「絶滅危惧1類」のカテゴリーに移行することが確実と考えられるもの。
準絶滅危惧 Near Threatened(Nt)
存続基盤が脆弱な種:現時点での絶滅危険度は小さいが、生育条件の変化によっては「絶滅危惧」として上位カテゴリーに移行する要素を有するもの。
情報不足 Data Deficient(Dd)
評価するだけの情報が不足している種
群馬県の絶滅のおそれのある野生生物 動物編(2022年改訂版)評価区分及び基本概念(PDFファイル:209KB)
4 調査
「群馬県の絶滅のおそれのある野生生物」(レッドデータブック)動物編の改訂のための調査及び評価検討については、群馬県自然環境調査研究会に委託して実施しました。
調査については、群馬県自然環境調査研究会から依頼を受けた動物研究者、自然愛好家等から構成された調査協力員にも情報提供をいただきました。
動物部門会員名簿
分野 | 氏名 | |
---|---|---|
哺乳類 | 姉崎 智子、夏目 道生、原田 林太郎 | |
鳥類 | 卯木 達朗、柴田 栄、深井 宣男、谷畑 藤男 | |
爬虫類 | 森口 一、山崎 陽平 | |
両生類 | 金井 賢一郎、小島 光明、富岡 克寛、中澤 和則 | |
魚類 | 相澤 裕幸、斉藤 裕也、松井 裕之 | |
昆虫類 | (トンボ) | 荒井 堅一、岡崎 太郎 |
(カメムシ) | 内山 裕司 | |
(コウチュウ) | 須田 亨 | |
(水生コウチュウ・水生カメムシ) | 茶珍 護 | |
(バッタ・ハエ・ハチ他) | 金杉 隆雄 | |
(トビケラ他) | 栗田 秀男、土屋 清喜、峰村 宏、宮原 義夫 | |
(チョウ) | 小池 正之、小林 栄一 | |
クモ類 | 林 俊夫 | |
甲殻類 | 井田 宏一 | |
陸・淡水産貝類 | 清水 良治 | |
土壌線虫類 | 宍田 幸男 |
作業スケジュール
2018(平成30)年度:調査対象種、スケジュール等の検討及び調査(文献、標本、現地)の実施
2019(令和元年)~2020(令和2)年度:調査(文献、標本、現地)及び種毎の評価の実施
2021(令和3)年度:調査結果のとりまとめ及び種毎の評価及び原稿執筆、補足調査の実施
参考:群馬県自然環境調査研究会について
群馬県が実施する自然環境に関する学術調査に参画することを目的に、県内の大学教授や高等学校教諭等を中心に1974(昭和49)年に設立された団体で、植物・動物・地形地質の各分野の学識経験者で構成されています。
群馬県内全域の自然環境の状況について、「良好な自然環境を有する地域学術調査」を実施するほか、近年は「群馬県の絶滅のおそれのある野生生物(植物編・動物編)」の発行・改訂時の調査を行い、成果をおさめています。また、その成果をもとに、県の自然環境保全対策に関する助言や指導を行い、貴重な自然の保護保全に努めています。
会長:斎藤 晋※注1
会員数:52名(植物部門12名、動物部門32名、地形・地質部門8名)※注2
※注1 2022(令和4)年1月13日逝去
※注2 2022(令和4)年3月現在
5 レッドデータブックの入手方法
「群馬県の絶滅のおそれのある野生生物 動物編(2022年改訂版)」の冊子は、県庁2階県民センターで購入していただくことができます。販売価格:2,100円
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また、報告書のファイルを、群馬県立自然史博物館ホームページにPDF形式で掲載する予定です。
群馬県立自然史博物館(レッドデータブック)<外部リンク>