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森林を取り巻く新たな課題の発生について

更新日:2013年2月20日 印刷ページ表示

1 国の政策転換による奥山等の手入れ不足

 奥山など林道や作業道から遠く、また傾斜がきついなどの要因で伐採・搬出コストがかさみ、現在の木材価格では採算が取れず、林業経営による整備が期待できない条件不利な森林が増加しています。
 さらに、国の政策が抜本的に見直され、比較的生産条件の良い森林を核に集中的に森林整備を推進する(木材生産推進)方針に転換されたことに伴い、条件不利な森林は国の助成対象から外れ、手入れが行われないことで森林の持つ公益的機能が低下する恐れがあります。
 ※群馬県内にある民有の人工林は、約11万ヘクタールあります。それを林業経営が可能かどうかという視点で区分すると次のようになります。

図-1 県内の人工林(民有林)内訳グラフ画像

図-1 県内の人工林(民有林)内訳

林業経営を目指す森林は82千ヘクタール。条件不利な森林は20千ヘクタール。大きく育ち、手入れが不要な森林は9千ヘクタール。

森林の手入れ不足が引き起こす問題

 間伐などの必要な手入れが行われない森林では、立木が混み合い、日が差し込まなくなることから、樹木の成長や根の発達が阻害されて弱々しいものになり、風雪害が起こりやすくなります。
 また、下草が生えなくなり、雨水が表土を流れて土壌を浸食し、土砂災害などを引き起こす危険性が高まります。
 私たちの安全・安心な生活を守るためには、森林を適切に管理して、森林の持つ公益的機能を維持・増進させることが大切です。

手入れ不足の森林は暗く、下草も生えない様子の写真
手入れ不足の森林は暗く、下草も生えない

2 集中豪雨と災害リスクの増加

 近年は局地的な集中豪雨が頻発する傾向にあります。災害防止機能が低下した森林の増加と相まって、洪水や土砂災害が発生する危険性が高まっています。

集中豪雨と災害リスクの増加のグラフ画像
図-2 時間降水量50mm以上の年間発生件数(1,000地点当たり)

3 里山・平地林、竹林の管理放棄

 人家周辺の里山・平地林は、薪や落ち葉などを燃料や堆肥などに利用することで、長い年月を経て特有の生態系を形成してきました。近年は生活様式の変化により薪などが使われなくなり、人の手が入らないためツルやシノが密生し、本来の公益的機能を十分発揮できなくなっています。また、竹林については、竹が利用されなくなったことで密生化が進み、過密化した地下茎は土壌の緊縛力を低下させることなどから、山腹崩壊を引き起こす恐れがあります。
 また、里山・平地林や竹林が密生化することで、人や農作物に被害を与える野生鳥獣のすみかとなっているほか、道路を覆い交通の障害になったり、見通しが悪くなったりすることにより治安面や景観面でも問題が生じています。

台風により崩壊した竹林の様子写真
台風により崩壊した竹林

やぶ化して見通しの悪い道路の様子写真
やぶ化して見通しの悪い道路

4 外国資本による森林買収

 近年、外国資本による森林の買収事例が全国的に増えており、本県でも水源地域の森林約44ヘクタールが買収されました。地域の水資源の確保に対する不安が高まるとともに、管理の行き届かない森林が増加することによる公益的機能の低下が危惧されています。

 住所地が海外にある外国法人又は外国人による森林買収の事例(平成18年1月~平成24年12月農林水産省、国土交通省、各都道府県調べ)

外国資本による森林買収一覧
都道府県名 件数 面積(ヘクタール)
北海道 57件 731.6ヘクタール
山形県 1件 10ヘクタール
栃木県 1件 1ヘクタール
群馬県 1件 44ヘクタール
神奈川県 5件 5.5ヘクタール
長野県 1件 3ヘクタール
兵庫県 1件 2ヘクタール
沖縄県 1件 5ヘクタール
68件 801ヘクタール

※小数点以下の端数処理上、計と内訳は一致しない。

5 地球温暖化を防止する森林の役割

 二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量増大に伴う地球温暖化は、異常気象の頻発や生態系の急変などを引き起こし、私たちの生活そのものを揺るがす深刻な問題になっています。そのため、我が国では京都議定書の第1約束期間(2008年~2012年)における温室効果ガスの排出量を、1990年(平成2年)比で6%削減することを国際的に約束し、そのうち最大で3.8%を森林による二酸化炭素吸収量で確保することとしています。そのため、継続的に間伐などによる森林整備を行うことが必要とされています。
 また、2013年(平成25年)以降も、森林による二酸化炭素吸収量を確保することとしており、引き続き間伐などの森林整備を推進することが求められています。

(参考)京都議定書の概要
概要 先進国の温室効果ガス排出量について、法的拘束力のある数値目標を各国ごとに設定
対象ガス 二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、一酸化二窒素(N2O)、代替フロン等3ガス(HFC、PFC、SF6)
基準年 1990年(代替フロン等については1995年とすることも可能)
約束期間 2008年から2012年までの5年間
数値目標 各国の目標→日本-6%、米国-7%、EU-8%。先進国全体で少なくとも5%削減を目指す。
吸収源 森林等による二酸化炭素の吸収量を削減目標の達成手段として算入可能

※資料:林野庁 森林・林業白書

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