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水試だより58号

更新日:2026年5月8日 印刷ページ表示

【巻頭】群馬県水産業の発展に向けた取り組み

 令和7年度から、水産試験場に配属され、この4月で2年目を迎えます。
 主な業務は、主席研究員として試験研究の総合調整を行うとともに、生産技術係長として、アユ及び温水性魚類の種苗生産と供給を担当しております。
 さて、群馬県における水産業については、「県の魚」であるアユをはじめ、マス類やコイ、ワカサギなどを対象とした内水面漁業が古くから地域に根差し発展してきました。近年では、カワウや外来魚の食害、温暖化による河川環境の悪化などにより、生産量は減少傾向にあります。また、漁業協同組合員の減少と高齢化、遊漁者数の減少など、非常に厳しい状況となっております。
 こうした状況を踏まえ、群馬県では、本年3月に新たな「群馬県水産振興計画(2期計画)」を策定し、内水面漁業の持続的な振興に取り組むこととしました。
 水産試験場では、本計画に基づき、遊漁振興や漁場環境の再生、養殖業の発展を技術面から支える役割を担うための試験研究を進め、技術の普及・支援や優良種苗の安定供給体制の整備を進めてまいります。
 特に、優良種苗の安定供給では、県産ブランド魚である「ギンヒカリ」、「ハコスチ」、「超絶サーモンV3」を対象として、需要の増加を見据えた生産体制の強化と安定供給を図ることとし、令和7年度に、川場養魚センター及び箱島養鱒センターを種卵や稚魚の生産・供給施設として、整備改修しました。本年度から増産に向けて本格的な取り組みをスタートさせたところです。
 また、アユ種苗については、冷水病対策として、「アユ冷水病防疫対策指針(群馬県版)」に基づき、冷水病の発生を防止する一方、これまで供給してきた冷水病耐性アユ種苗「江戸川系ver.2」に代わり、令和7年には、新たに「江戸川系ver.3」を作出しました。昨年12月から県内の養殖業者への出荷を開始し、本年春から県内河川へ放流が行われています。
 今後も病気に強く、より釣れるアユの作出を進めるとともに、県産アユの増産と放流稚魚の県内シェア率の向上を目指し、現在のアユ飼育棟の一部と餌料培養棟等を含むアユ種苗生産施設の施設整備を計画しており、本年度から施設設計に着手する予定です。
 水産試験場では、施設整備による増産体制と優良種苗の安定供給を図るとともに、これまで培ってきた県内外に誇れる高い技術力を活かし、今後も漁業関係者や関係機関と連携しながら、群馬県水産業の維持発展のため、取り組んでまいります。

(水産試験場 小林泰彦)​

【特集】アユに関する研究で知事表彰を受賞!

はじめに

 群馬県では毎年、「業績職員等表彰」制度により、県政の振興に貢献した優れた研究や業績を上げた職員・組織を表彰しています。表彰には「知事表彰」と「部局長等表彰」があります。
 令和8年3月、水産試験場の職員3名(鈴木主任研究員、阿久津独立研究員、渡辺主任)と、蚕糸特産課水産係の職員1名(塩澤主任)が取り組んだ「アユ凍結細胞から個体を復元する技術の開発」に関する研究が評価され、知事表彰(個人賞)を受賞しました(所属・役職はいずれも当時のもの)。
 本研究は、平成29年度から東京海洋大学との共同研究としてスタートし進められてきたものです。その間、人事異動によって担当者が変わることもありましたが、研究の目的や成果を引き継ぎながら継続的に取り組み、今回の受賞につながりました。

知事との懇談会

 知事表彰の受賞に伴い、令和8年3月17日、群馬県庁舎31階「GINGHAM」において、知事と知事表彰受賞者との懇談会が開催されました。水産試験場の受賞者も全員で参加し、研究の内容やその意義について説明しました。
 なお、水産試験場として知事表彰を受賞するのは今回を含め通算4回目ですが、職員個人としての受賞は今回が初めてとなります。

どんな技術?:未来へつなぐ研究成果

 水産試験場では、県内の河川や内水面漁業を支える立場として、長年にわたりアユの飼育や増殖に関する研究に取り組んできました。その中で、継代56年(令和8年4月現在)にわたって維持してきた「群馬系アユ」は、形質が固定化された研究資源として大変貴重な魚です。このような系統を長期間にわたって維持・管理している点は、研究基盤として水産試験場の大きな強みとなっています。
 今回紹介する技術は、アユの体の中にある「将来、精子や卵になる細胞」を凍結保存し、後に同じ遺伝情報を持つアユを再び得ることを目指したものです。この考え方や基本的な手法は、東京海洋大学の研究成果として確立されたものです。水産試験場では、この手法がアユでも実際に成り立つかを確認するため、同大学との共同研究に取り組みました。
 研究を進めるうえで大きな役割を果たしたのが、長年維持してきた「群馬系アユ」です。群馬系アユは他のアユと見分けやすく、実験が正しく行われているかを確認するための目印(マーカー)として活用できました。また、これまで培ってきたアユの飼育技術をさらに工夫し、実験に必要な少数のアユを安定して飼育できるよう、地道に取り組みました。
 その結果、凍結保存した細胞を用いて、元と同じ遺伝情報を持つアユを得られることが確認されました。この成果は、大学の専門的な研究成果と、現場に近い立場で研究資源を維持・管理してきた水産試験場の取り組みが結びつくことで得られたものです。今後、地域のアユ資源や種苗を将来にわたって守っていくための、新たな方法の一つとして期待されています。

(水産環境係 渡辺 峻)​

【試験研究から】新しい放流用アユ人工種苗の開発

はじめに

 群馬県の県魚である「アユ」は、県内の各河川に年間約14トン放流されており、その全てが人工的にふ化・育成された「人工種苗」です。人工種苗の生産にあたっては、遺伝的かく乱を防ぐため地場の天然遡上アユを親魚として用いることが重要です。また、冷水病による漁獲量の減少を踏まえ、冷水病に強い人工種苗の開発が求められています。そこで水産試験場では、利根川水系を遡上する天然遡上アユを活用し、冷水病耐性を有する人工種苗の開発を進めておりますので、その現状について報告します。

試験研究の具体的内容と結果

1 方法

(1)供試魚

 令和7年4月9日に江戸川河口域で漁獲された天然遡上アユ約3,000尾を水産試験場の隔離された屋内飼育池に収容しました。収容後は、アユ用配合飼料を日間給餌率3.0~3.5%で与え、適切な管理の下で飼育を行い、以下の試験に使用しました。

(2)冷水病選抜試験

 4月21日と25日に天然遡上アユ2,600尾に対し冷水病菌を注射しました。その後、5月21日に生存した487尾に対してさらに冷水病菌を注射しました。

(3)新しい放流用アユ人工種苗の作出

 2回の冷水病選抜試験を経て生残したアユは、配合飼料を給餌して親魚まで育成し、人工採卵・採精に用いました。
 水産試験場では、これまで同様の手法により作出した冷水病耐性系統「江戸川系ver.2」を放流用人工種苗として利用してきました。本研究では、「江戸川系ver.2」の雌と冷水病選抜試験で生残した雄を交配した「江戸川系ver.3」を作出しました。さらに、種苗性の低下を防ぐため、選抜を経た雌雄を用いた新たな耐性系統(新耐性系)の作出にも取り組みました。

2 結果と考察

 冷水病菌を腹腔内に接種後25日間の生残率の推移を図に示しました。両試験とも、接種直後に多数の個体が死亡し、その後死亡数は急減し、接種7日後にはほぼ死亡が止まりました。2回目の選抜試験における生残率は35.5%であり、1回目の生残率19.9%を明らかに上回りました。このことは、冷水病耐性を有する個体が選抜され、集団全体の耐性が向上したことを示しています。
 最終的に雌62尾、雄67尾の計129尾が生残し、2回の冷水病選抜試験を通じた生残率は4.9%(129尾/2,600尾)となりました。これらの生残個体について8月下旬から熟度判別を行った結果、9月10日以降に冷水病選抜・雄から精液を採集することが可能となったため、「江戸川系ver.3」を作出しました。一方、冷水病選抜・雌では成熟の進行が遅く、10月10日になって初めて複数個体で排卵が確認されました。以降は、排卵が確認され次第、随時「新耐性系」を作出しました。
「江戸川系ver.3」はその後の飼育において順調に成育し、県内の河川に放流されています。飼育現場からは、「江戸川系ver.2」と比較して警戒心が強く、遊泳力が高い人工種苗であるとの評価が得られています。一方、「新耐性系」については、初期飼育は難航しました。一般に、継代数の少ない人工種苗は配合飼料への摂餌反応が弱く、初期成長が遅いことが知られており、「新耐性系」においても同様の特性が認められました。現在は、飼料への反応も改善し、順調に成長しています。今後は、冷水病耐性の評価を進め、放流用人工種苗としての早期実用化を目指していく予定です。

(水産環境係 鈴木 究真)

【水産行政から】群馬県における釣獲アユ買取り検証事業

はじめに

 アユは平成元年に群馬県の魚に指定され、友釣り等を通じて県民に親しまれています。県内のアユ遊漁による経済効果は年間2億5千万円と見込まれていますが、釣獲アユの消費は遊漁者に限られていると考えられます。そこで本事業では、河川漁業協同組合が釣獲アユを買取り、活用する取組を試行し、その有効性を検証しました。

方法

1 漁協による釣獲アユの買取り

 本事業は、上野村漁業協同組合(以下、「上野村漁協」といいます)が実施しました。上野村漁協は、令和7年8月から9月にかけて、遊漁者から50グラム以上のアユを、1尾あたり300円で買取りました。また、釣獲アユを買取った遊漁者に対してアンケート調査を実施しました。

2 釣獲アユを用いた試食イベント

 上野村漁協は、令和7年10月13日に川の駅上野の来場者を対象として、冷凍保存した釣獲アユを塩焼きにして無料提供するイベントを開催しました。また、イベント参加者に対してアンケート調査を実施しました。

結果および考察

1 漁協による釣獲アユの買取り

 本事業では、延べ19人の遊漁者から合計132尾のアユを買取り、総重量は11キログラム、平均重量は82グラムでした。
遊漁者へのアンケート調査は8人から回答がありました。年代は40代、50代、60代が各2人で最も多く、次いで20代及び70代が各1人でした。今回の買取り事業の評価については、「良い」が6人、「やや良い」および「わからない」が各1人でした。今後の釣獲アユの買取り利用意向については、「利用したい」が6人、「少し利用したい」および「わからない」が各1人でした。希望買取り価格については、300~500円/尾(中央値:300円/尾、平均:333円/尾)との回答が得られました。また、6人が「利用したい」と回答していることから、買取りによって遊漁者の満足度向上およびリピーターの増加が期待されます。

2 釣獲アユの試食イベント

 試食イベントの参加者は124人で、年代は50代が29人と最も多い結果となりました。イベントの評価については、「良い」が116人、「やや良い」が5人、「わからない」が3人でした。釣獲アユの購入意向については、「買いたい」が45人、「少し買いたい」が37人、「わからない」が33人、「あまり買いたくない」および「買いたくない」が各4人でした。
 未加工魚の希望購入価格は200~1,000円/尾(中央値500円/尾、平均543円/尾)、塩焼きにした場合は200~1,500円/尾(中央値600円/尾、平均676円/尾)との回答でした。釣獲アユの消費者への販売価格を、未加工魚で中央値500円/尾、塩焼きで中央値600円/尾とすると、買取り価格300円/尾との差額として200~300円が見込まれます。
 以上のことから、釣獲アユの買取り事業を実施するにあたっては、買取りおよび販売によって得られる利益に加え、遊漁者や実需者への効果を総合的に検討した上で実施する必要があると考えられます。

(生産技術係 塩澤 佳奈子)
※前蚕糸特産課 ​

令和8年度職員の配置(令和8年4月1日現在)

  • 場長 田中英樹
  • 次長 楠 由子
  • 主席研究員 小林泰彦
  • 総務係 係長 楠 由子(兼務) 係員 山田 智、角田ひろみ
  • 水産環境係 係長 鈴木究真 係員 渡辺 峻、鈴木紘子、齋藤駿介
  • 生産技術係 係長 小林泰彦(兼務) 係員 清水延浩、塩澤佳奈子、田島稔明、高橋伸幸
  • 川場養魚センター センター長 新井 肇 センター員 小林修武、星野勝弘、井下 眞、小西浩司、唐澤 智

水試だより58号 (PDF:902KB)