本文
株式会社匡健に対する行政処分(3か月の業務停止命令)
群馬県は、本日、住宅リフォーム等を行う訪問販売業者に対し、特定商取引に関する法律(以下「特定商取引法」という。)第8条第1項・平成28年改正前の特定商取引法(以下「旧法」という。)第8条第1項の規定に基づく行政処分(業務停止命令3か月)を行いました。
認定した違反行為は、「勧誘目的等不明示」「契約書面記載不備」「役務提供契約の締結を必要とする事情に関する事項の不実告知」です。
本県が、特定商取引法に基づく行政処分を行うのは、今回が10回目です。
1 被処分事業者
(1)名称
株式会社 匡健(かぶしきがいしゃ きょうけん)
(2)代表者
代表取締役 佐々木 拓也
(3)本店
埼玉県さいたま市岩槻区大字小溝446番地8
(4)事業所
埼玉県さいたま市岩槻区本町四丁目2番地5 石川ビル2階202号室
(5)設立
平成28年7月28日
2 行政処分の内容
(1)内容
特定商取引法第2条第1項に規定する訪問販売に関する業務のうち、次の業務を停止すること。
ア 訪問販売に係る役務提供契約の締結について勧誘すること。
イ 訪問販売に係る役務提供契約の申込みを受けること。
ウ 訪問販売に係る役務提供契約を締結すること。
(2)停止命令の期間
平成30年8月1日から平成30年10月31日(3か月間)
3 違反行為の主な内容
(1)勧誘目的等不明示
当該事業者の勧誘者は、訪問販売に係る本件役務提供の勧誘に先立ち、消費者に対してその目的 及びその役務の種類を明らかにしなければならないにも関わらず、「屋根のビスが浮いている状態なので修理した方がよい」「ビスを止めるだけなので5千円で済む」や「屋根が浮いているようなので、1回見ておいたほうがよい。」などと告げるのみで、本来の目的である高額な役務提供契約の締結について勧誘すること及びその役務の種類を明らかにしていない。
これは、特定商取引法第3条及び旧法第3条の規定に違反する。
(2)契約書面記載不備
当該事業者の従業員は、本件役務提供を締結した際に提示する工事請負契約書において、工事内容を詳細に記載しておらず、また、料金の支払い期日や、分割代金を受領する場合の各回ごとの受領金額を記載していなかった。更に契約の締結を担当した者の氏名が記載されていない不備の契約書面を交付した。
これは、特定商取引法第5条第1項及び旧法第5条第1項の規定に違反する。
(3)役務提供契約の締結を必要とする事情に関する事項の不実告知
当該事業者の従業員は、本件役務提供契約の締結について勧誘するに際し、「傷んでいる。直ぐに張り替えしないといけない。ほっとくと雨漏りする。」や「これだけ傷んでいると、いずれ雨漏りする。」「梅雨に入る前に直した方がいい。」などと、消費者が契約の締結を必要とする事情に関する事項について事実と異なることを告げた。
これは、特定商取引法第6条第1項第6号及び旧法第6条第1項第6号の規定に違反する。
4 勧誘事例
事例1
平成29年3月頃、消費者宅へ突然訪問した営業員Aは、「いつも通っていて気になったのですが、屋根のビスが浮いていた状態なので修理した方がよい。」「ビスを止めるだけなので、5千円で済む。」と勧誘した。消費者の妻は、「夫に相談するので連絡先を教えて下さい。」と話をすると、営業員Aは会社名と名前が書いてあるメモ紙を渡した。格安であったことから、消費者は、営業員Aに連絡すると、その日の夕方再度訪問し、消費者に「浮いたビスを4カ所止め、シーリング止めをするだけなので、5千円で済みます。この時に屋根の点検もしますが、点検は無料です。」と説明し、消費者は格安だったので依頼した。翌日、営業員Aは、他2人と来て、屋根に上がった。10分位で降りてくると、3人の中の年長の営業員Bが「傷んでいる。直ぐに張り替えしないといけない。」「ほっとくと雨漏りする。」「全面張り替えだとお金がかかるが、今のトタンを一旦剥いでシートを新しくして、トタンを載せて塗装をする方法が安くつく。」と告げられ、工事代金は160万円と言われた。あまりにも高額なのでビックリしたが、「ほっとくと雨漏りする。」と言われたので、修理しない訳にいかないと思い、その日のうちに契約した。
本件役務提供を締結した際、営業員が交付した書面には、工事内容が詳細に記載していない、料金の支払期日が記載していない不備が認められた。
事例2
平成29年4月頃、消費者宅へ突然訪問した営業員Aは、名前も会社名も名乗らず、「この家の近くを、仕事でよく通ります。屋根が浮いているようなので、1回見ておいたほうがいいですよ。」と屋根の不具合を指摘した。不安になった消費者がオロオロしていると、営業員Aは書類を取出し「ケバラ調整7,000円、明日15時頃伺います」と書き始めた。消費者は、屋根のことが不安だったのでお願いすることにした。営業員Aから渡されたのは見積書で、それを見てやっと株式会社匡建の社員だと分かった。
翌日、営業員Aは他の2人と訪問し、屋根に上がり20分位で下りてきた。年長の営業員Bが、「屋根が傷んでいる」と言って来て、カメラ付きのタブレットで屋根の写真を見せながら、「これだけ傷んでいると、いずれ雨漏りする。」「梅雨に入る前に直した方がいい。」と言った。消費者が、雨漏りしては大変だと思い幾らかかるか尋ねると、工事代金3,240,000円と書かれた工事請負契約を示した。あまりにも高額だったが、消費者は、屋根を全部葺き替えすればこの位お金がかかるかもしれないと心の中で納得して契約した。
本件役務提供を締結した際、営業員が交付した書面には、工事内容が詳細に記載していない、料金の支払期日、分割代金を受領する場合の各回ごとの受領金額が記載していない等の不備が認められた。
事例3
平成29年9月頃、消費者が車で帰宅すると、営業員Aが名前や会社名を名乗らず突然訪問し、「太陽のパネルのほこりや、鳥の糞などないか点検させてほしい。」と言われた。点検は無料だと思い依頼すると、直ぐに車で一緒に来た他の2人と一緒に屋根に上り、20分位で下りてきた。屋根を撮影したカメラ付きのタブレットを見せながら、営業員Bから「太陽光は大丈夫だが、屋根の継ぎ目の塗装が剥げている。コーティングしないとダメだ。」と言われ不安になった。さらに、営業員Bが庭に落ちているビスを見つけ、「屋根のビスが落ちている。」と言われた。今までビスが落ちているのは確認したことがなかったので不審に思ったが、一層不安になった。
修繕費用について尋ねると、「屋根のコーティングをするためには、太陽光パネルを外さなければならない。外すのに40万円、総額250万円になるが、今なら220万円で出来る」と言われた。家は雨漏りなどしていないが、安くしてもらえるのであれば契約してもよいと思った。事業者にお金がないことを話すと息子名義でのローンを勧められた。しかし、最終的には契約に至らなかった。
事例4
平成29年12月頃、消費者宅へ訪問した営業員Aは、「ソーラーの点検をさせて下さい。」と勧誘してきた。消費者はソーラーは使っていない話をすると、今度はソーラーの撤去の話をしてきたので、点検を承諾した。
後日、営業員Aは、営業員Bと再度訪問し、屋根に上がり10分位で下りてくると、ソーラーの撤去の話ではなく、屋根の修繕工事の話をしてきた。営業員A又はBがデジタルカメラで撮った屋根の写真を見ると、ソーラー付近の瓦が剥がれ、瓦止めの針金が切れていた。営業員Bは「何時崩れるか分からない危険な状態だから、瓦が通行人に当たったら大変な事になる。」「この状況では雨漏りがしているはずだ」と話した。消費者は不安を覚えながら、以前屋根を修理しているのでこんなに酷くなっているはずはない、前頼んだ業者にも見てもらいたいと考え、それを伝えると、営業員Bは口調が荒くなり、帰ってくれそうも無かったことから、幾らで工事をしてくれるか尋ねた。営業員Bは、260万円と金額を提示したが、最終的には150万円に値引したので、仕方なく契約を結んだ。
本件役務提供を締結した際、営業員が交付した書面には、工事内容が詳細に記載していない、契約の締結を担当した者の氏名が記載されていない等の不備が認められた。
5 今後の対応等
特定商取引法に基づく命令に従わない場合は、同法第70条及び第74条の規定により、法人が3億円以下の罰金に、違反行為者が3年以下の懲役又は300万円以下の罰金(これらの併科を含む。)に処せられることがある。
6 その他
- 同社に対しては、群馬県消費生活条例に基づく業務改善の勧告も実施した。
- 同社に対しては、埼玉県も本県と同様、業務停止命令3か月の行政処分を本日付で実施した。