本文
西毛地域森林計画書<計画の大綱1>
1 森林計画区の概況
西毛森林計画区は、地域の特性から神流川地域、鏑川地域、碓氷川・烏川地域の3地域に分けられます。
神流川地域は藤岡市・多野郡(1町1村)、鏑川地域は富岡市・甘楽郡(2町1村)、碓氷川・烏川地域は、安中市、高崎市からなり、計画区全体では、4市3町2村となっています。
(1) 自然的背景
ア 地勢
本計画区は、県の南西部に位置し、南は埼玉県、西は長野県に接しており、総面積は170,088ヘクタールで、県総面積の27パーセントを占めています。
計画区の東端は関東平野の一角となっており、西部は関東山地の急峻な山岳地帯となっています。
神流川地域、鏑川地域においては、東部は丘陵地帯とそれに囲まれた平坦地ですが、西部に向かって標高が高まり、県境では三国山(標高1,834メートル)から分岐して走る急峻な山脈が連なっています。
また、碓氷川・烏川地域においては、北部から西部は、榛名山(1,449メートル)、浅間隠山(1,757メートル)、妙義山(1,104メートル)等からなる山岳地帯となっていますが、南東部には関東平野の平坦地が広がっています。
イ 地質及び土壌・植生
地質は、荒船山から稲含山をとおり西御荷鉾山を結ぶ線の南側には、中・古生代の地質が広がり、西御荷鉾山の北側から藤岡市(旧鬼石町)には、三波川変成岩が分布しています。榛名山から烏川の北側には、火山噴出物が多く、南牧村北側から妙義山をとおり烏川西側の線の西側には、新第3期層が多くなっています。
土壌は、計画区内の大部分を褐色森林土壌(適潤性、乾性、湿性)が占めています。
植生は、ヤブツバキクラス域(常緑広葉樹林帯)は、海抜450メートル~600メートルを上限として、ブナクラス域(夏緑広葉樹林帯)に移行しています。ヤブツバキクラス域では、スギ・ヒノキ・アカマツの造林地やコナラ・クリ等が分布しています。ブナクラス域は、1,500メートルを上限とし、スギ・ヒノキ・アカマツ・カラマツの造林地や、ミズナラ・クリ・ブナ等が分布しています。
(2) 社会経済的背景
ア 地域経済圏の概況
本計画区は、古くから交通の要衝として産業・経済が発達した高崎市を中心とする平野部と、高度経済成長期以降の若年人口の流出により、集落の過疎化・高齢化が進んでいる山間部とを合わせて持っています。
碓氷川・烏川地域、鏑川地域では、上信越自動車道、国道18号線、国道254号線などの道路や北陸新幹線等の交通網が比較的整備されています。
神流川地域においては高速道路・鉄道から離れた地域として交通網の整備が遅れていましたが、上野村と南牧村を結ぶ「ふるさと林道湯の沢線」が開通するなど、計画区全体において、短時間でインターチェンジや新幹線駅等にアクセスできるような道路整備が進みました。
山間部は豊かな緑と地域の資源を見直す取組がなされており、交通網の整備とともにこの環境を活かした地域発展が望まれます。
イ 産業の状況
本計画区は、冬季の積雪が少ないことや、高速道路等により利便性が向上したことなどから都市住民の憩いの場として多くの人々が訪れています。各地域の産業の概要は以下のとおりです。
神流川地域
この地域の産業は、みそや木工製品など家内工業的な産業が多くなっています。一次産業では、洋蘭、トマト、きのこ等の施設園芸作物のほか、有機農業による農産物が栽培されています。従事者・生産額では二次・三次産業の割合が高く、中でも輸送機器や電気機器等の製造が盛んです。また、平成18年から県内で最大規模の製材工場と原木市場を併設した「県産材センター」が稼働しており、年間約39,000立方メートルの国産材を消費しているほか、この施設の設置により地元の新卒者の雇用にも寄与しています。
観光レクリエーションの面では、関東一の水質を誇る神流川を中心に、西部県境から赤久縄山、御荷鉾山にかけての西上州の山岳地域は、優れた自然環境に恵まれています。また、冬桜の名所桜山や鍾乳洞のある不二洞等の観光資源を有しているほか、神流川の上流では、現在、森林セラピー基地の整備も進められています。
鏑川地域
この地域は、古くから特産のこんにゃく、ねぎを中心に、きのこ・花卉・果物の生産等が行われています。また、国産材を専門に挽く中、小の製材工場があり、建築業者との連携による県産材の振興に取り組んでいます。その他、食料品の生産が、下仁田町、南牧村、甘楽町で盛んに行われています。
観光レクリエーションの面では、西部県境から妙義山にかけた地域が妙義荒船佐久高原国定公園に指定されており、県立森林公園「さくらの里」とともに優れた自然景観を呈しています。
碓氷川・烏川地域
高度な商業集積を持つ高崎市を中心に二次・三次産業が発達しており、製造業では電気機器の製造が盛んです。また、都市の周辺部から山間地域にかけてはウメ、ナシ、ブドウ等の果物の生産が盛んに行われています。
地域の北西部は、県立榛名公園、上信越高原国立公園、妙義荒船佐久高原国定公園に指定されており、都市から山地帯、さらに景勝地に至る土地利用が高度に発達した地域です。
ウ 人口の状況
本計画区における人口は575,125人(平成30年1月)で県人口の29パーセントを占めています。
神流川地域、鏑川地域においては、141,632人で県人口の7パーセントとなっており、人口密度は147人/平方キロメートルと県全体の313人/平方キロメートルの半分よりも低くなっています。西部の山間地は急峻な地形により主要な産業が育ちにくいことから、人口減少率の高い町村が多い地域となっています。
碓氷川・烏川地域においては、433,493人で県人口の22パーセントとなっており、人口密度は589人/平方キロメートルと高くなっています。高崎市の経済圏にあり産業活動が活発であることから、市街地では人口の増加が見込まれるものの周辺部では人口が減少しており、全体としても人口減少傾向にあります。
エ 林業の概況
本計画区の民有林面積は84,000ヘクタールで、県内民有林の36パーセント、蓄積は30,914,000立方メートルで、県内民有林の44パーセントを占めており、面積・蓄積ともに県内の4計画区の中で最大となっています。また、民有林の人工林率も55パーセントと県全体の48パーセントに較べ高い値となっており、県内有数の林業地帯として、早くからスギ、ヒノキ等の造林が盛んに行われてきたことがうかがえます。各地域の林業の概況は以下のとおりです。
神流川地域、鏑川地域
民有林56,000ヘクタール(76パーセント)、国有林18,000ヘクタール(24パーセント)からなっており、県内では国有林の占める比率の低い地域となっています。
民有林の人工林面積は31,000ヘクタールでその蓄積は17,532,000立方メートルとなっており、森林1ヘクタール当たりの蓄積も561立方メートルと他の地域に較べると大きく、人工林を主体に森林資源が充実している地域です。
特に神流川地域の東部を中心とした御荷鉾林業地帯及び鏑川地域の西部を中心とした鏑川林業地帯は、スギを主体の県内有数の林業地帯となっています。そのため、県内素材の集散地となっており、特に群馬県素材生産流通協同組合は藤岡市の県産材センター内に素材共販のための原木市場を有しているため、西毛地域最大の取扱量になっています。
鏑川地域においては、地元の豊富な木材資源を背景に、富岡市における製材団地や下仁田町、南牧村の産地型製材工場群が成立し、特異な製材品を生産しています。
神流川地域においては、原木市場と製材加工施設からなる「県産材センター」が藤岡市(旧鬼石町)に建設され、県内各地から原木が持ち込まれるなど流通加工体制が整っており、地域の素材生産に貢献しています。
県産材センターの「県産材加工協同組合」では、製材品の全量を人工乾燥し、モルダー加工して出荷しているほか、富岡市・下仁田町・甘楽町では、建築部材に応じて、人工乾燥機を使い分けるなど、木材の高付加価値化の取組がなされています。
特用林産物では、しいたけ生産において共同出荷体制が整備された当地域は、県内最大のしいたけ産地となっており、また、高崎市(旧吉井町)では、機械化された大規模施設でなめこ生産が盛んで、いずれも山村地域の重要な産物になっています。
碓氷川・烏川地域
民有林27,000ヘクタール(71パーセント)、国有林11,000ヘクタール(29パーセント)からなっており、国有林の占める比率は低くなっています。
民有林の人工林率は52パーセント、針葉樹のヘクタール当たりの蓄積は542立方メートルと人工林を中心とする森林資源の成熟度は高い状態にあります。
当地域の製材工場は、都市近郊という立地条件から規模的にも小規模で、外材製品を主体とする木材流通から、その生産量も低位にあります。
また、特用林産物では、近郊山間地域において、生しいたけやなめこ、まいたけの生産が活発に行われています。
オ 森林組合の現況
森林組合は神流川地域、鏑川地域においては6組合あり、その平均経営面積は6,016ヘクタール(組合員所有面積・平成29年次)であり、作業班員102人(29年次)は県全体の39パーセントを占め、林産事業量も県内森林組合の34パーセントを占める等、活発な事業を行っています。
碓氷川・烏川地域においては、森林組合は2組合となっています。作業班員数は22人(29年次)と少ないですが、平均経営面積は7,038ヘクタール(組合員所有面積・29年次)、林産事業量は県内森林組合の18パーセントとなっており、効率的な事業を行なっています。