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豊蚕への祈り(養蚕信仰)

更新日:2011年3月1日 印刷ページ表示

 かつての養蚕は、蚕を「オカイコサマ」と呼んで大切にし、労力を惜しみなく投入しました。
 しかし、どんなに大切に飼育しても、病気によって作柄が悪かったり、せっかく掃き立てても、桑が霜でやられて、蚕を捨てなければならなかったり、決して安定した繭の収量が期待できたわけではありませんでした。それゆえ、人々は、ことあるごとに神に祈らずにはいられませんでした。「オカイコは身上(しんしょう)がけ」である以上、その願いもまた、切ならざるを得なかったのです。
 蚕室や神棚に貼られた、数多くの養蚕守護の御札が、その願いを象徴しています。

【昭和30年代の養蚕農家を再現したセット(平成11年の「絹の染織工芸展」より)】

昭和30年代の養蚕農家を再現したセット(平成11年の「絹の染織工芸展」より)の画像

 かつて、元日には初絵売りが縁起の良い絵柄を売りに来ました。その中に必ずあった「絹笠明神初絵」は、これを買って神棚の下などに貼り付けておくと、蚕が当たると言われていました。
 また、正月15日を中心とする小正月に飾られる「マユ玉飾り」も、その名称から明らかなように、カイコのマユを模したもので、豊蚕を願う行事と言われています。
 その他、2月の初午(うま)を、蚕神であるオシラサマの祭日として、前の晩にオシラマチを行う例も、県内各地に見られました。蚕と馬は、深い関係があります。蚕の背の模様は、馬の蹄の跡。東北地方で、オシラサマの起源として語られている「馬娘婚姻たん」も、馬と人間の娘の話です。馬のわらじを神社から借りてきて、翌年倍にして返したりもしました。同じ倍返しとしては、沼田の迦葉山弥勒寺(かしょうざんみろくじ)の天狗の面も有名です。
 また、ねずみは、上蔟直前の蚕を食い荒らし、マユになるとその中の蛹を食べに出没したため、ねずみ除けの信仰も広くあり、蛇や猫が守り神となりました。
 県内のあちこちの寺社の縁日に境内では蚕具市が開かれ、そこで買った道具を使うとカイコが当たると言われていたり、春蚕の掃き立て前には、こうした神社などから、養蚕守護の御札が発行され、受けた御札は神棚や蚕室に貼っておきました。